今月の臨床 早期癌—診療ストラテジー
子宮頸癌
治療
11.拡大全摘—適応と術式
平川 俊夫
1
,
嘉村 敏治
1
1九州大学医学部婦人科産科
pp.748-749
発行日 1994年6月10日
Published Date 1994/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901772
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一般に子宮頸癌に対する根治術式は広汎子宮全摘出術(以下,広汎全摘と略)であるが,早期癌であるIa期癌に対しては合併症や後遺症の軽減のために切除範囲を縮小する術式が試みられてきた.わが教室においてはその試みの過程で,拡大単純子宮全摘出術(以下,拡大全摘と略)と骨盤リンパ節郭清術を導入し,広汎全摘に比較して手術侵襲の軽減や術後膀胱機能の回復に良好な成績を得てきた1).ここでいう拡大全摘とは準広汎子宮全摘出術(以下,準広汎全摘と略)と同義であり,日産婦子宮癌登録委員会でその呼称が準広汎全摘に統一されて以後は当教室でも拡大全摘の呼称は用いなくなっている.この術式の意図は,担癌部分である子宮頸部をぎりぎりに切除せず基靱帯に1〜2cmの余裕をもって切除を行うという点と,文献的に多いとされる腟断端再発を予防するために腟壁切除部分を約1cmとる点の2点にあった.骨盤リンパ節郭清術については転移頻度検索の目的で行われてきた.この術式の導入は,まだIa期癌の診断基準そのものが明らかでなかった時期に縮小手術を試みた点で大きな意義があった.
しかし1978年12月に日産婦子宮癌登録委員会によりIa期診断基準が提示されてからは,それに該当する症例に対しては原則として単純子宮全摘出術を行っており2)現在までに再発例を1例も経験していない.
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