今月の臨床 早期癌—診療ストラテジー
Overview
2.子宮体癌
泉 陸一
1
,
藤村 正樹
1
1富山医科薬科大学医学部産婦人科
pp.726-727
発行日 1994年6月10日
Published Date 1994/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901763
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早期癌の発生過程について
周知のごとく,近年わが国においても体癌の絶対数自体が増加しているとの報告が相次いでおり,とくに若年層(50歳未満)における増加が目立つとされている.リスクファクターとして,年齢,肥満,糖尿病,高血圧,未妊,未産,不妊,外因性エストロゲンなどが知られてきたが,このうち日本では肥満,糖尿病,高血圧などとの関連性を否定する調査結果が得られている.外因性または内因性エストロゲンの発癌への関与は明らかであるが,それが発癌のどの段階に,そしていかなる機序で働いているかについてはいまだ十分な解明はなされていない.
閉経後婦人に好発する機序について,第一には月経によって内膜がくり返して機械的に剥脱されるという現象が起こらないこと,第二には低レベルであっても黄体ホルモンに拮抗されないエストロゲン(unopposed estrogen)が存在し,それが持続的内膜刺激を引き起こす結果,内膜腺の過形成(腺腫様増殖症)(adenomatous hyperplasia)が発生し,それを発生母地として体癌が発生してくると理解されている.しかし体癌発生のメカニズムを理解するうえできわめて重要な過程である,腺腫様増殖症から体癌に至るプロセスについては,現在いろいろな角度から究明がなされている段階である.
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