看護学雑誌 44巻4号 (1980年4月)

特集 痛みと鎮痛剤—看護からの視点

  • 文献概要を表示

鎮痛剤不使用は看護婦の能力評価につながる

 本誌 今まで鎮痛剤使用に関しては,看護婦は患者になるべく使わない方向でいくという考えが一般的でした.鎮痛剤を使うことに一種の後ろめたさがあるんですが,鎮痛剤をなるべく使わないで,がまんさせるということが,いったい看護婦のどういう意識,看護観から生まれてきたのか.それが一般的になったのはなぜだったのかというところから話を進めていきたいと思います.

 佐久間 できるだけ少なくしたほうが患者さんのためと考えて…….

  • 文献概要を表示

はじめに

 癌は原発臓器のみならず,周囲組織への浸潤や遠隔臓器への転移などにより,全身を侵すことも少なくない.治癒の見込みのない予後不良の患者は,死の転帰をたどるまで程度の差こそあれ痛みに苦しみ続けている.昼夜を分かたぬその痛みは,しばしば人格をも脅かす結果ともなる.私たち看護婦も癌末期の痛みに苦しむ患者に対して,少しでも安楽が得られる手だてはないものかと悩み苦しみ続けている.たとえ予後不良であろうとも死を甘受する必要はなく,癌と闘いながら生きるための援助をすることが癌患者の看護に携わる看護婦に求められることであり,人間が人間を援助することの意味を癌末期の痛みと闘う患者を通して考えてみたい.

  • 文献概要を表示

 私は国立がんセンターの婦人科病棟に勤務して6年目になるが,その間,多くの苦痛を持つ患者と接してきた.その苦痛の中のひとつとして疼痛がある.

 痛みを感じることは,生きていることの確証であり,人間の一生から痛みを切り離すことはできないものである.痛みを感じるからこそ,個体が危害から保護され,個体の生長や人間性の形成に役立てられる.

  • 文献概要を表示

はじめに

 阿片から初めてモルヒネの抽出に成功したのは,Sertüner(1803)である.彼が定量的にモルヒネの作用を調べあげて以来,今日では手術時の鎮痛薬,手術後,末期癌の強力な鎮痛薬として広く用いられるようになった.モルヒネの安全性,中毒,依存性などの薬理作用については,既に多くの研究者によって明らかにされているが,どの場所に,どのように作用するかなど詳細な作用機序は,現在なお不明な点が多い.

 最近,モルヒネの経口投与をはじめとして,新しい投与方法がターミナル・ケアの中で考えられるようになり,今回はモルヒネに関する新しい知見と正しい使用方法について述べる.

ホスピス イギリスの末期医療の現場報告・4

  • 文献概要を表示

ドクター・ソンダースのプロフィル

 ドクター・ソンダースは1980年現在62歳である.

 彼女は最初ナイチンゲール学校とセント・トーマス病院で看護教育を受けナースとなった.ナースとして患者の看護に当たっているうちに,患者にとって病気そのものはもちろんのこと,心の問題や家庭的な問題,経済的な問題,その他の社会的問題も非常に大切であることに気づき始めた.

ナーシングホーム アメリカ合衆国の医療と看護の実態・4

  • 文献概要を表示

ナーシングホームのリハビリテーション

 長期療養患者のためのケア(long-term care)にとって不可欠のものとして,リハビリテーションがあります.日本の特別養護老人ホーム(特養)にも,またアメリカのナーシングホームにも,一応,必ずリハビリテーション室が設けられています.

 しかし,実際どれぐらい活用されているかということが,実はいちばん肝心なところですが,これが千差万別ともいうべき状態なのです.病室からリハビリテーション室への患者の出し入れ,リハビリテーションの介助と,非常に人手を必要とするため,経費節減の場合,真っ先にしわ寄せがくるのが,このリハビリテーション部門であるため,施設間の格差が極端に出ます.手抜きしやすいし,ピカピカの器具さえそろえておけば,家族の目をくらますのも簡単ということになるからです.

マイ・オピニオン

  • 文献概要を表示

 酒に身も心もとらわれ,そこから抜けられなくなって心身を害し,周囲に迷惑をかけているアルコール中毒者たちは,世間からうとんじられる存在である.そのような彼らでも,ある転機が訪れて人間的に脱皮することができれば,毎日酒を飲まずにいられなかった悪い習慣から抜けでることが可能となる.

 アルコール病棟に入院しているうちに,酒を断とうと真剣に考えて,同じ仲間たちと真剣に取り組み,アルコールのこわさを学習していくと,ほんとうの気づきが生まれる.アルコール中毒であるということを素直に認めた時から本当の治療が始まり,主体的に治療を受けようとする.それはほかからの強制でなく,自分の自由意志で選んだものでなければ意味はない.自分のありのままの姿を認め,それまでの自分を捨て去る勇気を持たなければならない.何回失敗を繰り返しても,自分の失敗に対して,ほんとうになんとかしなければならないが,どうすればよいのかを真剣に考え,決断しなければならない.その時初めて,酒を断とうと真剣に考えている仲間たちと共に,アルコールのこわさを十分学習し,明日への希望が生まれてくる.本来の自分を取りもどし人間的に脱皮できれば,初めて外面的なものにとらわれていた自分を反省する.この時から1人でやめることの難しさに気づき,同じ悩みをもつ仲間たちと手をつなぎ助けあって,酒なしの人生に立ち向かう決心をする.

  • 文献概要を表示

はじめに

 小児の末期慢性腎不全患者の治療は,人工透析により効果を上げているが,最終目標として,近年腎移植が広まってきている.

 当院でも,1976年1月から1978年3月までに20例の腎移植が行われ,その腎生着率,患者生存率は極めて良好な経過をたどっている.私ども看護婦も看護にあたり,医師から臨床講義や,指導を受け,また独自の学習会をもってきたが,腎移植に関する資料も少なく,最初は試行錯誤の看護であった.しかしこれまで20例の看護を経験した中から,1事例を取り上げ,拒否反応および合併症の看護の実際を述べ考察を試みた。

  • 文献概要を表示

はじめに

 当院では,慢性関節リウマチ,片麻痺等の温泉治療を主目的とした,リハビリテーション患者が多い.長期療養にもかかわらず,円滑な社会生活を営むことができない患者の精神的苦痛ははかり知れない.これらの人々が,障害を克服し,身体的・精神的・社会的に自立してゆく過程における看護婦の多面的援助は重要である.今回私たちは,後縦靱帯骨化症で下半身不全麻痺,特に両下肢の絞扼性強直痙攣が頻発するためリハビリテーションに対する意欲を喪失し,挫折,絶望感から長期間抑うつ状態にあった患者が,看護婦の働きかけにより,徐々に自己の病状を受容し,たゆまぬリハビリテーションへの援助と努力によって,車椅子のADL自立が可能となり,ともすれば,悲観的になりやすい身近の長期療養者に対し,自分の過去の体験を話し,励ましを与えるほど,心身ともに自立できた事例の看護を経験したので,ここに報告する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 日常の看護の中で癌末期患者の看護は最も難しいもののひとつである.死に直面している患者を最後まで生きる希望を失わせず,いかに余生を安楽に過ごさせるか,日ごろの看護の姿勢が問われるときでもある.そのために私たちは最良の技術と知識,そして誠実な態度をもって患者に接しなければならないという大きな課題がある.

 今までの死に直面した患者の看護を見直すとともに,今後末期患者の看護に役立てたいと思い,訴えが少なく最後まで生きる希望を失わなかった患者を看護し,考えさせられた点,反省した点が多かったので,この事例を取り上げ再入院より死の転帰をとるまでの期間を,第1期,第2期,第3期と分け,各時期における看護を分析,考察してみた.

  • 文献概要を表示

はじめに

 高カロリー輸液(以下IVHと略す)が,アメリカ合衆国のDudrick, S. J. らにより開発されて以来,従来の末梢輸液法では困難な高カロリー液を,中心静脈内に留置したカテーテルによって投与が可能となり,その臨床上の有用性も広く認められている.

 著者らも,1973年にIVHを導入して以来3),110症例を超え,その対象も慢性栄養障害,吸収不全症候群,イレウス,腹膜炎,膵炎,消化管瘻孔,縫合不全,大量消化管切除(short bowel syndrome),大量消化管出血,先天性消化管異常,照射後腸炎,呼吸不全を含むshock,肝不全(黄疸,腹水),急性および慢性腎不全,広汎熱傷,敗血症,多発性骨髄腫合併手術例,悪性腫瘍根治大手術の術前術後管理,制癌剤との併用など多様な病態におけるIVHを経験している4)

  • 文献概要を表示

はじめに

 私は今回の実習で,右半身不全麻痺の54歳になる男性(I氏)のリハビリテーション援助を行った.この麻痺はACバイパス手術後に現れたものであり,手術後の創部の治癒経過が著しくなく,リハリビテーションも遅れていた.

 受け持った時点では創部の持続吸引と点滴を施行しており,ベッド上起座はもちろん,右上下肢の各関節の自動的屈曲・伸展も不可能で,寝返りさえも介助なしではうてない状態だった.患者自身にも機能回復に対する意欲がみられず,何事も周囲に対して依存的であった.しかし,3週間にわたって機能回復への援助をしていくなかで,最終的には,手すりにつかまっての6-7mの歩行が可能という思わぬ結果が得られた.その間の看護計画とその実践を通して患者の反応がどのように変化していったか,またどのようなケアに効果があったかを振り返りながら,看護者として機能回復への援助という役割をどう受け止めるべきか,ということを学んだ.

  • 文献概要を表示

体が弱かったので健康のことを考えてはじめた。週に一、二回練習するが,道着もすぐ汗でベトベトになってまう。仕事がら中腰の姿勢が多いが,練習で体を動かすと腰痛なんか吹き飛んでしまう。日本空手道常心門初段。

バイタルサイン・1

バイタルサインとは何か 岡安 大仁
  • 文献概要を表示

 患者のケアに当たるということは,なんという厳粛な,そしてまた喜びでありましょう.それは,他人の生命に関与するということであるからです.バイタルサインとは,ヒトの生命(vital)の基本的な徴候(signs)ですので,バイタルサインを正確にとらえることは,他人の生命への関与,すなわちケアの基礎でなければなりません.“脈拍・呼吸・体温”の3者,あるいは“血圧”を加えた4者をバイタルサインとして1つにまとめた最初の人の名は知りませんが,すばらしいセンスだったといえます.全く,これらの徴候こそは,生命維持に必要な身体的状況を的確に反映し,しかもみな数量的にとらえられるという客観性があるのです.また徴候の数が余り多くては,ただ生理現象の列挙に過ぎなくなるという点からも,適切という外ありません.

  • 文献概要を表示

 子供が生まれる.どんな家庭にとっても喜びがあふれる.しかしその子供が障害をもつ子とわかったとたん,喜びの訪れが,一転して厳しい重荷へと変わっていく.“この子は独りでは生きていけない,生涯親が手を貸さなければならない子”と親は思い込み,子供はいつまでも生まれたての赤ん坊と同じように,親の腕の中に抱かれていて,自立などとうてい考えられない.

 障害児という言葉はとても強く親を,子を支配してしまっている.肢体不自由児にとって障害のある部分は機能的な部分だけにすぎないのに,あたかも全身が,そして,精神までも障害を受けているように錯覚してしまう.

輸液 ある個人教育の経験より・4

  • 文献概要を表示

基礎輸液は学問的な概念

維持輸液は実際的な概念

 近藤 今までのお話から,基礎輸液量というのは単なるひとつの概念にすぎないと考えてよいのでしょうか.

 和田 そうですね.こんなものが生体に本当にあるのか疑問です.患者さんが‘基礎状態にある’なんていわれても,なんだかわかったようなわからないような感じですね.だから,これはお話としてあるのであって,実際問題として病棟で出てくるのは維持輸液になるわけです.

性の臨床・3

性と心理 河野 友信
  • 文献概要を表示

 性には,大きく分けると3つの意味があります.男性・女性という性別の性,生殖のための性,そして快楽を求めるための性愛の性です.このそれぞれの性に対して,心理はかかわりがあります.

 人間の性は個別的で多様性に富んでいますが,それを規定する要因には,生物学的なもの,心理的なもの,環境的なもの,社会文化的なものがあります.なかでも心理的な要因は,精神分析学にみられるように,性格形成に影響を与え,深層心理に働いて様々な病的現象の原因になるので,臨床的には最もやっかいな,性のかかわる問題を生じさせることになります.

呼吸器病Q&A・1

  • 文献概要を表示

肺気腫の病態生理と診断

 Q 今日は肺気腫・慢性気管支炎についてお話をうかがいたいのですが,先生は肺気腫の診断には,どのようなことを根拠になさっていますか.

 A 一般に肺気腫とひと言でいいますが,正しい病名は‘慢性肺気腫症’なのです.なぜかというと,肺結核症や術後の肺に起こるような続発性の部分的肺気腫は,区別しなければならないからです.

脳卒中の病理・7

脳動脈瘤 岡崎 春雄
  • 文献概要を表示

 前回は,脳実質に起こる出血の代表的なものとして高血圧性の出血を考えましたが,今回はクモ膜下出血の原因の主なものである,先天性動脈瘤について考察しましょう(前回の図1を参考).

  • 文献概要を表示

 藤田家の応接間には、五月に東宝系で放映される予定の〈看護婦のオヤジがんばる・近代映画協会〉のポスターが壁にはってあり、そこに「いとしの妻よ働くキミは美しい」とサブタイトルが書かれている。まさしく夫の健次さんにとって、看護婦として働く陸子さんは美しい人。「カアちゃんはがんばっているんだ、すばらしいんだ」といつも健次さんは二人の子供に話している。

 〈看護婦のオヤジの会〉ができたのは今から五年前。当時産婦人科病棟勤務だった陸子さんの夜勤回数が、今までの月十二、三回から十五回にもなるということを夫が聞いて、これ以上多くなったら辞めるしかない、辞める前に一言みんなに実態を訴えたいと新聞に投書をしたら、全国の看護婦の夫たちからの反響がものすごく、それをきっかけに会が生まれた。それから本も二冊出版され、オヤジの方は全国的にかなり有名(?)になったが、そもそもオヤジが立ち上がるキッカケとなった看護婦である陸子さんの方は未だ無名(?)。そこでルノアール描く裸婦に似ているという彼女に登場していただいた。

こんにちはメヒコ 看護交換留学記・4

素顔のメキシコ合衆国 古瀬 敬子
  • 文献概要を表示

物乞いにも高いフライド不自由で貧しくても何かできる

 例のイルカのマーク入乗り合いバスで研修先を往復していると,車中で盲人や身障者と一緒になることがあります.ところが,我々のような一般客とはちょっと異なり,発車後間もなく得意の楽器を取り出して,何やら軽快なリズムをかなで始める人がいます.ハーモニカを吹いたり,打ち出の小槌(こずち)のような物をカチカチ鳴らしたりいろいろですが,立っていたおばさんが突然大声で歌い出すこともあります.

 体の不自由な人々のみならず,2人組みの若者がギターを持ち,耳に慣れ親しんだラテン・ミュージックを2,3曲披露してくれた時などは,生演奏を聞きながら,市内観光バスに揺られているような心地がして,降りるのが大変惜しかったほどです.

余白のつぶやき・9

天質 べっしょ ちえこ
  • 文献概要を表示

 「あ、アキラさん?わたし。いま先生をお送りしてきたとこ。ええ、これでぜんぶ終わり。迎えにきて下さる?」

 ホテルのフロントで、Uさんのかける電話を何気なく聞いていた。頼まれてM市の病院で講演をしたその夜のこと。Uさんは、駅への出迎えから宿の手配まで、私に付ききりで世話をしてくれた地元の看護婦さんである。

看護ミニ事典

  • 文献概要を表示

 森田療法は1921年頃,森田正馬によって創始さた.神経質,心身症の治療には非常に効果がある.森田は,クレペリンの素質論にヒントを得て,“神経質”という神経症者の分類を行った.彼は偶然の機会に臥褥の効果を知り,ビンスワンゲルの生活規法からヒントを得て作業療法中心の治療法を確立した.精神分析療法が精神内界(無意識)に深く立ち入って葛藤を明らかにし,疾病の原因を排除しようとするのに対して,森田療法は不安の葛藤をそのままに認め(あるがまま),一方日常行動の変化を計って,それを内的洞察にまでもってゆこうとする.

  • 文献概要を表示

〔商品名〕セフメタゾン静・筋注用,点滴用 Cefmetazone intravenous Cefmetazone intramuscular(三共)

〔薬効〕抗感染剤

基本情報

03869830.44.4.jpg
看護学雑誌
44巻4号 (1980年4月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月20日~9月26日
)