マイ・オピニオン
患者からの学びを看護に生かして
森田 和子
1
1国立久里浜病院
pp.353
発行日 1980年4月1日
Published Date 1980/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922658
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酒に身も心もとらわれ,そこから抜けられなくなって心身を害し,周囲に迷惑をかけているアルコール中毒者たちは,世間からうとんじられる存在である.そのような彼らでも,ある転機が訪れて人間的に脱皮することができれば,毎日酒を飲まずにいられなかった悪い習慣から抜けでることが可能となる.
アルコール病棟に入院しているうちに,酒を断とうと真剣に考えて,同じ仲間たちと真剣に取り組み,アルコールのこわさを学習していくと,ほんとうの気づきが生まれる.アルコール中毒であるということを素直に認めた時から本当の治療が始まり,主体的に治療を受けようとする.それはほかからの強制でなく,自分の自由意志で選んだものでなければ意味はない.自分のありのままの姿を認め,それまでの自分を捨て去る勇気を持たなければならない.何回失敗を繰り返しても,自分の失敗に対して,ほんとうになんとかしなければならないが,どうすればよいのかを真剣に考え,決断しなければならない.その時初めて,酒を断とうと真剣に考えている仲間たちと共に,アルコールのこわさを十分学習し,明日への希望が生まれてくる.本来の自分を取りもどし人間的に脱皮できれば,初めて外面的なものにとらわれていた自分を反省する.この時から1人でやめることの難しさに気づき,同じ悩みをもつ仲間たちと手をつなぎ助けあって,酒なしの人生に立ち向かう決心をする.
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