看護学雑誌 44巻5号 (1980年5月)

特集 老人のターミナルケア

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I.終末の特徴の変化

 ターミナルケアを考えるには,まず終末の特徴を理解する必要があると思われる.というのは,近年の終末は,短期に終結するものが少なく,長いプロセスをもつものが多くなってきたからである.

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現在老人ホームは,養護老人ホーム,特別養護老人ホーム,軽費老人ホーム,有料老人ホームという4つの種類に分類されている.いわゆる寝たきり老人等が主として利用するのがこのうちの特別養護老人ホーム(以下,特養ホームと略す)である.本稿においては,主としてこの特養ホームでの問題を中心に,老人の死とそのケアについて述べていきたいと思う.

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老人の死はゆるやかに訪れることが多い,そのため老人のターミナルケアは長期化しがちであり,また痴呆化などケアの困難を倍加するような問題が伴いがちである.そうしたことが一因となって,老人の死は,ときとして,家族にとってもまた老人自身にとっても‘救い’として受け止められることがある.例えば,家族にとって,それは多額の入院費や施設利用費負担からの解放であり,親や配偶者を施設や病院に入れたことで感じている罪障感からの解放,また頻繁に見舞いや付き添いに行くわずらわしさ,行かなければ行かないで感ずる罪障感からの解放を意味する,とユスバーグは指摘している1)

 また,それは老人にとっても,役割や地位の喪失,それに伴う依存的立場への転落という不面目からの解放,施設などに入れられたことからくる恥辱感,身体的苦痛,能力の低下,機能喪失,配偶者の死などに起因する抑うつや絶望からの解放,を意味する場合があるといわれる2)

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老いは選べるが,死は選べない

 老いは人間にとって自ら選ぶことの許された最後の時間だ,と私は思っている.老いの生き方は選ぶことができる.しかし,死は選べない.いつどこで,どんな死に方をするか,それを選べないことはまことに理不尽であり,だからこそ,他人の死に,他の生者がどうかかわるかが問われるのだと思う.また,死を選ぶことができないのは理不尽だという思いが募れば,いやでも安楽死の問題に突き当たるだろう.それぞれ,できれば考えたくない問題だが,避けて通れない時期がそろそろやって来たようだ.

特別論稿

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はじめに

 老人と,病人である家族との心中事件が目立つ.老人が病気を患っており,病人も老年期に入っているような場合も多い.ともかく一方が老人であり,他方が病人であるといういわば“老病心中”とでも言うべき心中事件は,今後も増加し続けるのではないかと推測される.このような‘行き詰まり’のケースに象徴的な現象を分析し,社会や看護の側の欠陥を明らかにすることは,その改善を通じて,真の医療福祉の実現に重要な役割を果たしうると思う.

 筆者は先にこのような老人と病人が引き起こす心中事件を“老病心中”と名付け,その具体的ケースを中心に,その発生要件を検討してきたが1),本稿では,最近の1つの老病心中事件を中心に,その問題点を探ってみたい.

ホスピス イギリスの末期医療の現場報告・5

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ドクター・ドイルのプロフィル

 セント・コロンバス・ホスピス(St. Columba's Hospice, Challenger Lodge, Boswall Road, Edinburgh, EH53RW, Scotland)は,スコットランドにおける第1番目のホスピスとして,1977年12月5日にオープンした.

 スコットランドにホスピスを創設しようという動きは約10年前に始まった.そして,各方面からの寄付を集める運動が展開された.10年の歳月の後,以前孤児の収容施設であったChallenger Lodgeを買い入れ,内部を改造して15床のホスピスとして発足した.1978年1月1日より,1979年3月31日までの15か月間に298名の患者が入院し,163名の患者がホーム・ケアを受けた.患者の平均入院期間は男性14日,女性19日であった.入院患者の平均年齢は男性63歳,女性70歳であった.

ナーシングホーム アメリカ合衆国の医療と看護の実態・5

ナーシングホームの歴史 岡本 祐三
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ナーシングホームの発展した理由

 ナーシングホームという中間的な医療施設が,どうしてアメリカにこのように発展したのでしょうか.これまでにも述べてきたように,ナーシングホームの経営が事業として採算がとれるようになったこと,あるいは病院医療費のコストを下げるため,この十数年間にナーシングホームのベッド数が急増してきたのはもちろん事実であります.けれども,それ以前にも相当数のこのような施設が作られ,既に存在してきたのはどういう事情によるのでしょうか.

 ひとつは,アメリカの老人問題の反映,すなわち老人が身体不自由になった場合,若い世代が家に引き取って面倒をみるということが,今世紀の初めごろから非常に少なくなってしまったということです.第2は,アメリカの医療・看護におけるPPC(Progressive Patient Care)の考え方の徹底,合理化の追求です.第3には,もともと一種の救貧施設として,このようなタイプの施設が以前から作られてきた,ということになると思います.

マイ・オピニオン

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 私が助産婦学校を卒業してから,もう4年が過ぎた.あっという間の4年間だった.その早い流れの中で,多くのかたがたと出会うことができた.それは,陣痛に苦しむ産婦さんであったり,子育てに走り回っている母親であったり,私と同じ助産婦の大先輩であったりした.そしていま思うことは,‘この4年間何をしてきたのだろう’という自分自身への問いかけである.

 私の知り得た人たちは,いつも生き生きとしていた.おのれの信念をもって,いつも前向きに生きていた.前向きに生きるということは,絶えず自分をみがいていることだとも言える.なかでも私は,すばらしい2人の助産婦の先輩を知る機会を得た.1人は,40年来,母乳をとおして,多くの悩める母と子のために手を貸し,尽くしてこられたかたであり,もう1人は,分娩は自然の営みだから,無理をせず自分の持つ力を生かして,楽しくよいお産を夫婦共にしてもらおうと,産婦さんに働きかけているかたである.この2人に共通していることは,自然の行為を大切にしていること,絶えず自分をみがこうという姿勢をもっていることである.

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 ‘音楽療法’(Musicotherapy,Music Therapy,Musiktherapie)は,音楽がもつあらゆる機能を医学に応用する治療法で,‘演奏療法’と‘鑑賞療法’とがある.筆者は1965年10月より老年病患者(主として寝たきり症候群,老人性痴呆症,脳血管障害)の演奏療法を行ってきたが,‘演奏療法’の目的は,身体および精神機能の退行の予防,障害された機能の維持,改善にある.一方,‘鑑賞療法’は,音楽を提示することによって精神機能の診断と治療を目的とする.筆者は若年者から老年者まで臨床に応用している.

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本患者は,自然気胸の再発を繰り返し,呼吸困難と極度の不安状況で入院した.私たちは患者の持つ不安の軽減に看護目標をおき,常に患者の視野内において援助することで,家庭復帰への意欲を持つまでに至ったので,その看護の経過について述べる.

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 高カロリー輸液(IVH)を行うに先立って必要な器械,カテーテル,フィルターなどの準備については,前号で述べたが,今回は,中心静脈内カテーテル挿管の手技と看護について,著者らのIVH臨床例の経験から得られた成果を中心に紹介したいと思う.

 IVHをするにあたって,最も大切なことは,I-VHを実施する医師,看護婦のチームスタッフが,患者が安心して処置をまかせるその信頼に十分こたえられるだけのIVHの知識と技術を身につけていることである.看護上の問題としては,IVHに先立って,患者が抱いている不安に対し,なぜIVHを必要とするのか,IVHとはどんなものかなど,患者側に立った説明をして,十分納得,了解していただくことが心要である.カテーテルを穿刺,挿管する時から始まり,IVH維持中の患者側の問題点など,看護面からの適切な指導は,スムーズなIV-H管理に欠くことができない.

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はじめに

 癌性疼痛は,消えることのない,また希望のない痛みといわれる.またその痛みを鎮めるためには,最終的には麻薬を用いるしかないともいわれる.そのような痛みを持つ患者を受け持ち,鎮痛剤以外の何らかの看護的な方法で疼痛を軽減させることが可能ではないかと考え,実習を行っていった.そのなかで,痛みの続く患者に対しては,鎮痛手段そのものばかりに目を向けその効果をうんぬんする前に,その患者の持つ‘痛み’そのものについて,より詳しく知ることが重要なのではないかと気がついた.例えばその人の痛みはその人に,精神的にまた身体的にどういうかかわりを持つのか,またその人自身が自分の痛みをどうとらえているのか,などについてである.‘その人の痛み’そのものについての考察を深め,痛みに対し看護者も共に取り組んでゆくことが最も重要なのではないかと,この実習で学んだ.

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病院でダンスパーティーがあり、それがきっかけでソシアルダンスを始めた。仕事を終えてから、練習場で汗を流すのがたまらなくいい。競技ダンスては日本でトップの実力をもつ。「ソシアルダンスは奥がないのが魅力です」

バイタルサイン・2

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単純で,最も基本的なバイタルサインの現れである脈を,日常のしケアの中でおろそかにしてはいないでしようか.あなたの助けを求めている患者さんの脈をみるとき,以下のシリーズで述べる事柄を念頭において,分析的にそして確実に脈の所見をとらえ,その背景にある病態を的確に判断してケアに役立てるというルーチンを繰り返し行うことによつて,ケアの質は一段と向上するはずです.

 脈拍の所見は心臓,血管,血液,神経系,内分泌,そして代謝の状態を現す重要な徴候です.脈の所見では何を,どこで,どのようにしてとらえるかが問題です.まず基本の技術を確実にマスターしなければなりません.

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老人たち,それも健康で自立した老人ではなく,ADL(日常生活動作)にも介護の手を要するような‘寝たきり老人’や‘ボケ老人’に,音楽を演奏させたり聞かせたりすることによって,心と体の両面から失われた人間性の回復を図る—というユニークな試みがある.音楽による老人のメンタル・リハビリテーションとして,近年大きな注目を集めている《音楽療法》がそれである.

 世界的にも類のないこの試みに日本で最初に取り組み画期的な成果をあげつつあるのが,老人ケアの専門家として知られる田中多聞医師である.

輸液 ある個人教育の経験より・5

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低ナトリウム血症とは何か

 近藤 血清ナトリウム濃度が低いということは,低ナトリウム血症と同じということですか.

 和田 これは難しい問題ですね。低ナトリウム血症というのですから,何か症状があるはずです.ナトリウムが低くて,何か症状を出しているのではないかという感じがしますね.もうひとつ,低塩症候群という言葉があるんですが,この言葉は聞いたことがありますか.

性の臨床・4

性の異常と正常 河野 友信
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 今回は,生殖の性ではなく喜びを求める性愛の性について述べたいと思います。そして性を,行為のみを意味するセックス(sex)という言葉のもつ概念としてだけでなく,人間関係の中でとらえたいと思います.人間の性行動を単なる生物学的な過程としてではなく,心理的側面,文化・社会的側面,倫理的側面からも評価して考えたいと思います.

 このように,性に全体的な意味を包含させた概念を表す言葉として,近年セクシュアリティ(sexuality)が使われています.

呼吸器病Q&A・2

気管支喘息 岡安 大仁 , 福田 幸子
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気管支喘息の主な症状と他の呼吸器疾患とのけ方

 Q 今日は気管支喘息のお話をうかがいたいと思うのですが,まず気管支喘息の患者さんは,先生の所にはどんな訴えで来るわけですか.

 A そうですねえ,私の働いている所は大学病院で,しかも専門の呼吸器内科ですから,紹介患者が多いのです.そこで,喘息だとわかっていて,治らないからとか,皮内反応などの検査をしてもらいたいとか,そのような意味の開業医の紹介状を持って来る方がほとんどです.

脳卒中の病理・8

脳動脈瘤と脳動静脈奇形 岡崎 春雄
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前回は,頭蓋内で動脈瘤と1呼ばれているもののうちで,脳卒中の原因として最も重要な先天性の嚢状動脈瘤について説明をしましたが,今回はそれ以外に動脈瘤と呼ばれているものについて考察しましょう.

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 現在ではほとんど考えられないことだが、今から三十数年前の看護界では、看護婦は結婚すると仕事を続けることが許されなかった。未亡人などになって、やむを得ず復職した場合などは「出戻り」と言われ、正職員になれず臨時職のままだった。

 そんな時代だったので、看護の仕事を一生貫きたかったが結婚で断念。家庭に入り、二十年以上の長い間育児と夫の両親の世話に明け暮れていたが、舅・姑に仕える日々はとてもつらく、どこへも持っていきようのない気持ちを、ぐっと自分の心の中に抑え込んでいた。だがそんな苦しさが、内なる創作意欲をしらずに育てていったようだ。「あんまり幸せだと書きたくないんですね。悲しい時苦しい時が続くと書きたい意欲が出てくるんです」

こんにちはメヒコ 看護交換留学記・5

メヒコで暮らす知恵 柴田 美千代
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日本人の下宿人は‘お客様です’‘神様です’

 首都メキシコ・シテイーは,東京より多い人口を抱えているのに,中南米からはもちろん欧米からも留学生やビジネスマンが続々訪れています。国内の人口の大都市集中化現象は,ここ10年間とどまるところを知らない,といわれています.地方からは勤労者が家族ぐるみで,近郊からは学生が押し寄せている現状です.

 このような社会的要求もあってか,下宿屋・アパートの募集を専門にする新聞が発行され,古い建て物をどんどん壊して,高層ビルを建築しているのが目立ちます.

余白のつぶやき・10

コーエン べっしょ ちえこ
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 近頃看護婦さんたちによばれて方々でお喋りをするようになった。私のお喋りなど講演とはとても言えないから、コーエンと書く。

 頼まれるままに看護雑誌に与太を書き散らしていたら、お固い専門の話に肩を凝らしていた某病院の人たちが,今度はちょいと毛色の変わったのをよぼうや、ということで声をかけてきたのが発端。よんでみたら、内容はともかく、暇人だから日程調整の苦労も要らず、いつ何処へでもホイホイ来てくれる。それに何よりお安いのがうれしいね、てなわけで、ヨコの連絡もすばやく、去年の秋などたて続けに五件も依頼がくる繁盛ぶりであった。

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 ホスピスとは,疼痛その他の苦痛な症状を持っている患者(予後3か月以内)に対して,その症状を緩和するためのケアを行い,苦痛のない状態の中で,最後まで生きぬき,平和の中に死を迎えることができるようにするための施設であり,その多くは,キリスト教を基盤にして運営されている(安楽死の場所ではない)

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〔商品名〕リーマス100,リーマス200 Limas 100,Limas 200(大正)

〔薬効〕躁病・躁状態治療剤

基本情報

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看護学雑誌
44巻5号 (1980年5月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

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