総合リハビリテーション 47巻4号 (2019年4月)

特集 リハビリテーション医療・介護連携

今月のハイライト
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 2018年度診療報酬・介護報酬同時改定では,地域包括ケアシステムの推進が基本的な考え方の1つとして掲げられ,医療・介護の役割分担と多職種での連携をより一層強化するためにさまざまな加算の創設や見直しが行われました.このように国の施策の一環としても医療・介護連携の推進が求められています.そこで,本特集では,リハビリテーション領域における医療・介護連携の現状と課題に続いて,リハビリテーション関連の施設形態のそれぞれの立場から医療・介護連携に関する取り組みについて解説いだきました.

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はじめに

 団塊の世代が90歳台に入る2040年にかけて,85歳以上高齢者(以下,超高齢者)が急増する.超高齢者は,他の年齢層に比べ,医療や介護,生活支援に対するニーズが高い.また,入院や死亡に対するリスクも高い.さまざまな環境の変化の影響も受けやすく,状態変化も来しやすい.生活上の課題も多領域にわたるため,単一職種だけでは課題が解決できないことも多い.これら特性,特徴を有する超高齢者が,住み慣れた地域で,安全かつ安心な生活を送るためには,医療・介護・生活支援サービスの包括的提供体制の構築と多職種間の連携強化が必要となる.こうした背景のもと,厚生労働省は,さまざまな多職種連携策を推進しているが,これら施策の意図や内容を理解するためには,まずその背景を理解しておく必要がある.

 そこで,多職種連携が求められる背景について,人口構造の変化,高齢者の医療・介護ニーズの視点から整理を行う.次に,多職種連携の機能強化に関する制度改正/報酬改定のなかから,リハビリテーションに関する3つのテーマ(① 入退院・退所時の連携強化,② 入院中〜退院後の一貫したリハビリテーション提供の促進(同一職種間の縦の連携強化),③ 自立支援・重度化防止の推進)に焦点を当て,リハビリテーションの視点からみた制度改正/報酬改定のポイントとリハビリテーション職に期待される役割について解説する.最後に,同一職種および他の職種間との連携強化策について私見を述べる.

急性期病院 小山 照幸
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退院に向けた介護保険サービスとの連携

 平均寿命が延長し,高齢者人口は増加している一方で,少子化が進み,人口構成が大きく変化している.2018年7月の65歳以上の人口は3547.1万人で,全国民の28.5%を占めており,2042年に約3900万人(35.3%)でピークを迎え,その後も,75歳以上の人口割合は増加し続け,2065年には38.4%になると予想されている.高齢者は,加齢により臓器機能が低下し,そこに疾病を合併することにより,医療や介護サービスなどの援助を受けることになり,日常生活を安心・安全に送ることができるように,さまざまな支援が必要となってくる.

 そこで重度の要介護状態となっても住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的(包括的・継続的)に提供されるこれらのサービスや支援が,日常生活圏域の中で提供される仕組み,いわゆる地域包括ケアシステムの構築が重要な政策課題として取り上げられ,実施されるようになった.このシステムは日常生活圏の行政単位ごとにそれぞれ独自に行われている.その理由は,人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部と人口が減少し75歳以上人口の増加が緩やかな町村部など,地域ごとに状況が異なるためであり,保険者である市町村や都道府県が,地域の自主性や主体性に基づいて,その地域の特性に応じて独自に実施することができるようになっている.入退院支援についてのマニュアルやガイドラインも自治体から提示されており,各病院はそれを参考にして独自の入退院支援のフローチャートを作成している(図1,2)1,2)

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はじめに

 回復期リハビリテーション病棟は,疾患管理と障害をもつ患者の日常生活における活動能力の向上,在宅・社会復帰のためリハビリテーションを行うことが主な役割である1)

 回復期リハビリテーション病棟の入院患者は,獲得した身体機能や日常生活動作(activities of daily living;ADL)の維持もしくは向上を目的に退院後に介護保険サービスを利用することが多い.そのため,回復期病棟における医療者は介護保険サービス担当者との連携を行う必要がある.回復期リハビリテーション病棟の医療介護連携は発足当時から行われてきており,既にシステム化されているため,ある程度の質が維持されていると思われる.また,医療介護連携については全国的に各地域の連携シート,情報通信技術(information and communicatuion technology;ICT)を使用したさまざまな連携ツールがあり,各回復期リハビリテーション病棟でもその地域で工夫された連携方法で運用していると思う2).一方で,介護保険には医療職以外の職種も多くかかわるため,医療介護連携においては以前から課題があることが知られている3)

 ここでは,川崎医科大学附属病院(以下,当院)の回復期リハビリテーション病棟における医療介護連携について,倉敷地域の医療介護の現状にもふれながら,当院の回復期リハビリテーション病棟で活用している「医療介護連携シート」について述べる.

介護老人保健施設 折茂 賢一郎
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介護老人保健施設とは

 1985年1月24日の社会保障制度審議会の意見書では「重介護を要する老人には,医療面と福祉面のサービスが一体として提供されることが不可欠で,両施設を統合し,それぞれの長所を持ちよった中間施設を検討する必要がある.」とあり,これを受けて同年8月2日の中間施設に関する懇談会による中間報告では「医療施設,福祉施設,家庭との間に存在する課題を解決し,要介護老人に対して通所,短期入所サービス及び入所サービスをきめ細かく実施する中間施設の体系的整備を図っていくことが必要」とされ,「① 入院治療後に家庭・社会復帰のためのリハビリテーション,生活訓練等の実施,② 病院に入院して治療するほどではないが,家庭では十分なケアのできない要介護老人に対し,医学的な管理と看護を中心としたサービスを提供」が発表された.こうした趣旨から1986年12月に老人保健法が改正され,老人保健施設が規定されたのである.つまり,老人保健施設誕生のキーワードとしては,① 重介護を要する老人,② 医療面と福祉面の長所を持ち寄った中間施設,③ 医療施設,福祉施設,家庭との間の課題を解決する,④ 医療施設と家庭との中間的な施設としてリハビリテーションや生活訓練を実施,⑤ 医学的・看護的サービスを提供,ということになろう.その後,1987年2月のモデル施設の指定7か所を経て,1988年4月に老人保健施設が本格稼働することになった.そして1995年12月の介護保険法の成立により,根拠規定が老人保健法から介護保険法に移行し,介護老人保健施設(以下,老健)と呼ばれるようになったのである(表1).

 こうした経過からわかるように,老健の本来的意義は「医療と家庭の中間」でもあり「医療と介護」の両面をもち合わせる目的で創設されたものであるから,医療・介護連携は当然の使命であるといえる.

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はじめに

 2018年度診療報酬改定の際,地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化,連携の推進において医療と介護の連携の推進が示され(図1),同年介護報酬改定での地域包括ケアシステムの推進においては,医療・介護の役割分担と連携の一層の推進,医療と介護の複合的ニーズに対応する介護医療院の創設が示された(図2).地域包括ケアシステムの構築においても,『団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に,重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう,医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を実現』と示されている(図3).つまり地域では,医療・介護の協働による地域包括ケアシステムのさらなる推進が求められている.今回,医療・介護連携の制度的背景を再確認し,通所リハビリテーションにおける医療・介護連携のありようを考える.

訪問リハビリテーション 宮田 昌司
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はじめに

 リハビリテーション医療・介護連携という枠組みで訪問リハビリテーションとの関連性を述べるとき,大きくは2種類考えられる.1つは医療保険と介護保険を代表するサービス間の連携であり,入院から自宅退院する時に円滑な情報交換を行うような,受け渡しのための連携である.たとえば,回復期リハビリテーション病棟から自宅に退院する場合に介護保険サービスの1つである訪問リハビリテーションが必要とされ,訪問療法士が介護支援専門員を通じて退院前カンファレンスなどに参加するような場合.もう1つは退院後に在宅生活で多くの課題を抱えた患者,例えば医療依存度の高い事例において医師の継続した訪問診療が必要(疾病の特性などでハイリスクな状況)であり,医師や訪問看護師と訪問療法士間の連携が想定され,このように在宅ケアの中のサービス間の連携を行う場合などである.

 このような前提として,地域包括ケアの推進があり,病院から在宅へ,そして在宅ではより安全で快適な生活が送れるかが命題となる.2018年度医療・介護報酬同時改定においては医療-介護連携について意識した改定がなされた.しかし,訪問リハビリテーションがもともと医療-介護連携と深く関係するサービスであり,永年の課題であることは述べておく.以上の前提のもとに時期別リハビリテーションの流れと訪問リハビリテーションの役割について整理し,先に挙げた2つ形について各論として事例を挙げ解説する.

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 私が国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院(当時)の学生だった昭和45年ごろ,3年制だったリハビリテーション学院を4年制にすべきとして渋谷駅前で街頭署名運動を行った.そのころはリハビリテーションの言葉さえ知る人はおらず,リハビリテーションとは何かを説明することが大変だった.あれから半世紀になろうとしている.今ではリハビリテーションという言葉がもう日本に根付いて久しい.しかし,多くは運動回復の機能訓練の意味で知れ渡っているだけで権利名誉の回復という意味理解までは至っていないのは残念である.

 同じように身近なところで用語が適切なのか疑問に思うことが多々ある.例えば『介護予防』.もうこの言葉に慣れた方が多いとはいえ,原点に返って考えてみると,そもそも介護は予防すべきなのか,介護を利用して安心な生活を送るはずではなかったのか.厚生労働省(以下,厚労省)はもっと適切な用語を創れなかったのだろうか.使うなら予防医学にあわせ予防介護にすればまだましな感じがする.

入門講座 リハビリテーション医療のエビデンス—理学療法・1【新連載】

中枢神経疾患 松田 雅弘
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はじめに

 エビデンスに基づく医療が急速に浸透し,経験的な医療がなされることが多かったリハビリテーション医療にもevidence based medicine(EBM)を活用することが求められている.EBMは“最良の研究成果(エビデンス)に基づく医療を患者に提供する”ことを意味しており,そのためには質の高いエビデンスが必要とされ,無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)を中心にまとめられている.そのなかで,日々の理学療法の臨床で最も活用しやすく,理解しやすくまとめられているのが診療/理学療法ガイドラインである.

 本稿では,「脳卒中治療ガイドライン2015(追補2017対応)」1),「理学療法診療ガイドライン第1版2)」を中心とし,さらに昨今のシステマティックレビューから理学療法の中枢神経疾患のエビデンスについて概説したい.また,中枢神経疾患で「理学療法診療ガイドライン第1版」2)に取り上げられている疾患は,脳卒中,パーキンソン病,脊髄損傷,脳性麻痺である.現在,本ガイドラインは改訂中であり,その改訂版が出版されればさらに積極的に日々の診療に活用するべき情報となるであろう.本稿は誌面の都合上で一部抜粋や要約が多いので,ぜひ成書を参考にしていただきたい.

実践講座 義足歩行を見据えた下肢切断術・4

小児の下肢切断術 岡田 慶太
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はじめに

 小児期における切断術は手技的には成人と共通する部分が多い.しかしながら,体格が小さかったり,断端が成長したりと,細かいところで注意しなければならないポイントがある.そのため,成人の治療と同様に考え安易に手術を行うと義足装着が困難となってしまうこともある.本稿では,小児の下肢切断術の注意すべき点と成人と異なる点を中心に解説する.

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要旨 【背景】随意運動介助型電気刺激装置(integrated volitional control electrical stimulator;IVES)併用下でmodified Constraint-Induced Movement Therapy〔修正CI療法(以下,本介入)〕を実施した東京湾岸リハビリテーション病院(以下,当院)回復期脳卒中患者の上肢麻痺に対する介入効果を検討した.【対象】2014年5月〜2016年12月の期間で,当院が定める修正CI療法の適応基準を満たした者のうち,本介入を実施した回復期脳卒中片麻痺患者8名.【方法】1日8時間IVESを麻痺側総指伸筋に装着しながら,3時間/日を週5日,3週間の課題指向型訓練とtransfer packageを実施した.【結果】すべての上肢機能評価〔Fugl-Meyer Assessment(FMA),Wolf Motor Function Test-Functional Ability Scale,Simple Test for Evaluating Hand Function,Motor Activity Log〕において,介入前に比べ介入後に有意な改善を認めた.特に,上肢遠位部(FMA-d)の改善度は効果量「大」であり,介入前のFMA値が50点以下の4名は,意義のある改善を示した.【結語】本介入により,上肢遠位部の機能回復を促進する可能性が示唆された.特に,介入前の上肢機能が比較的低めの患者を対象とした本介入の実践が効果的であると考える.

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要旨 【目的】机上検査で問題が検出されず,ドライビングシミュレータ(driving simulator;DS)や実車評価で半側空間無視(unilateral spatial neglect;USN)由来の症状が顕在化する右半球損傷(right hemisphere damage;RHD)患者の神経心理学的検査,DS成績,実車評価上の問題と運転可否判定の関連性を明らかにすることである.【方法】自動車運転評価を実施したRHD患者20名を後方視的に調査した後,基本属性,神経心理学的検査,DSトラッキング課題を運転可能群・不可群の二群間で比較し,二群間比較で有意差を認めた項目についてReceiver Operating Characteristic analysis(ROC解析)でカットオフ値を算出した.さらに,先行研究をもとに抽出した実車評価上の問題の有無について二群間でχ2検定を実施し,その頻度を比較した.【結果】運転可能群と比較して,不可群におけるDSトラッキング課題の誤差率が大きく(p<0.05),ROC解析の結果,DSトラッキング課題の誤差率のカットオフ値は40.7%(感度85.7%,特異度84.6%)であった.また,実車評価の「走行全体の車線維持・車幅感覚不良」,「車庫入れや方向転換の失敗」,「走行全体の適正速度への調整不良」の問題も運転可能群に比べ不可群に多く認められた(p<0.05).【結語】RHD患者における軽度のUSNの問題は,DSや実車評価などの動的評価の活用により事前に検出できる可能性が示唆された.

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要旨 【背景】国内でのダウン症候群児(以下,ダウン症児)の嚥下造影についてのまとまった発表や,同一児での複数回の検査の報告はあまり見当たらないため,東京都立小児総合医療センターでの例を報告する.【対象】2010年3月〜2016年12月に,リハビリテーション科で嚥下造影を行ったダウン症児11例(計16件).【方法】検査依頼理由,嚥下造影所見,検査後の方針などについて後方視的に検討した.【結果】検査依頼理由は肺炎・上気道炎5件,哺乳時の症状5件,現状評価4件,経口開始判断2件.口腔機能の障害は12件(75%)に,食道機能の障害は判定不能の4件を除いた12件中5件(42%)に認めた.咽頭機能の障害は14件(88%)であり,そのうち喉頭侵入・誤嚥は11件(69%)であった.複数回検査を行った3例(8件)のうち2例(5件)では,誤嚥が継続して確認された.検査後の方針では現状継続6件,哺乳中止3件,哺乳・経口量制限2件,経口開始2件,とろみ付加2件,経口量増加1件であった.【結語】ダウン症児では,誤嚥のみならず哺乳量不足や嘔吐などへの配慮,定期的な経過観察・評価などが必要である.

連載 リハビリテーション医療に必要な薬物治療・第4回

糖尿病 的場 圭一郎 , 宇都宮 一典
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はじめに

 リハビリテーション訓練を実施する場面において,糖尿病患者に接するケースは多いと思われる.糖尿病は世界的に増加傾向にあり,わが国でも生活習慣の欧米化と急速な高齢化によって患者数が増加し,大きな社会問題となっている.この患者増加の背景には,検診の普及による糖尿病診断率の上昇や,加齢に伴うインスリン分泌能低下が考えられる.

 糖尿病はインスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群であり,細小血管合併症(網膜症,腎症,神経障害)および動脈硬化性疾患(冠動脈疾患,脳血管障害,末梢動脈疾患)を生じる.これらは日常生活の質(quality of life;QOL)を低下させ,生命予後を悪化させることから,血糖値のみならず血圧,血清脂質,体重を包括的に管理して合併症の発症・再発を抑制することが重要である.そのためには多職種からなるチームアプローチが効果的であるが,そのなかでもリハビリテーションは糖尿病合併症によって生じた身体機能や生活機能の改善に果たす役割が大きい.しかし,糖尿病では使用している薬物や合併症の程度によって留意すべき事柄が多数ある.本稿ではリハビリテーションの場で必要な糖尿病の薬物療法について概説する.

連載 生理検査レポートのみかた・第2回

血圧脈波検査 岩倉 具宏 , 安 隆則
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 血圧脈波検査は,末梢動脈疾患(peripheral arterial disease;PAD)のスクリーニングとしてもっとも有用な足関節上腕血圧比(ankle brachial blood pressure index;ABI)1-4)と動脈の硬化度(動脈スティフネス)を捉える脈波伝播速度検査(pulse wave velocity;PWV)や心臓足首血管指数(cardio-ankle vascular index;CAVI)を同時に評価でき,病態診断や重症度評価を行える.また,個人の心血管イベントリスク層別化にも有用である2).最近の研究知見によると,心血管疾患に対する運動療法の介入が,動脈スティフネスの改善をもたらし生命予後の改善に寄与していることが報告された.本稿では脈波検査レポートの形式に沿って,その見方について概説する.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 昭和24年に田中英光が発表した『月光癲狂院』(『田中英光全集7』,芳賀書店)の冒頭には,精神病の特徴を論じて,「(精神病患者の最大の疾患は,自分を患者と意識しないこと)にある」と指摘する部分がある.終戦間もないこの時期,田中は,病識の欠如という問題を,精神病者の第一の特徴として挙げているのである.

 それに次いで田中が指摘するのが,「精神病という,病気をいかに定義するか」という問題である.これについては,「現代の進歩した精神病理学の,ある学派の定義によると,(精神病とは,決して脳や,人間の肉体の一部の疾患ではなく,その人間の反社会性の量により,その人間が,病人かどうかが決る)といわれる」としたうえで,「諸君がもし,仮にも革命家か,芸術家であるならば,その精神病理学者の眼からは,否応なしに精神病者と定義せられ,ある場合には,社会から隔離せられた精神病棟にぶちこまれる可能性まである」と警告するのである.

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 自主上映を生業としている知人が,「明日へ—戦争は罪悪である—」(監督/藤嘉行)の上映について逡巡していた.それはそうだろう.1990年代半ばにして,映画業界の方からタイトルに「戦争」の文字が入ると客が入らない,という話を聞いており,しかも「戦争は罪悪である」とくれば,型通りの説を唱える教条的作品として忌避される可能性大である.商業的な成功を収めるという観点が希薄であり,それどころか,あえて不利な条件を自らに課しているかのようにみえる.とはいえ筆者の見立てにおいて,以下四つの点で優れている.

 第一に,1960年代から1970年代前半にかけてクレージーキャッツの一員かつ“無責任男”として一世を風靡し,1970年代後半からは個性派俳優として燦然と輝いていた植木等(1926〜2007)の父親でもあり,戦時中は反戦活動によって投獄された僧侶・植木徹誠(てつじょう:1895〜1978)を重要な役回りで登場させていることだ.ワンシーンではあるが,反対する徹誠の怒声を軽くいなしながら芸能界入りをめざす若き日の植木等も描かれている.

私の3冊

私の3冊 増田 司

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学術集会概要

 2018年11月2日(金)から4日(日)にかけて,第2回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会が開催された.本学術集会の大会長は,東北大学大学院医学系研究科内部障害分野教授・東北大学病院リハビリテーション部部長の上月正博教授でメインテーマは,「リハビリテーション医学はAdding Life to Years and Years to Life(ADL・QOLの改善と寿命の延長)」であった.会場となった仙台国際センターは,仙台駅から地下鉄で3駅・駅直結と,至便かつ広い会場で,会期中は連日爽やかな秋晴れに恵まれ,多くの参加者が訪れていた.うっすらと紅葉した青葉山を背景に,多数の発表および活発な議論が繰り広げられた.

お知らせ

リハ栄養フォーラム2019

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 本書は,医療法人社団悠翔会理事長の佐々木淳医師が主催して行われている研修会「在宅医療カレッジ」のこれまでの講義のエッセンスを「地域共生社会を支える多職種の学び」との副題でまとめたものである.報道キャスター,記者として各方面で活躍し,自らの両親の介護に向き合った経験を持つ町亞聖さんを学長に迎えたことからわかるように,利用者(当事者)本位を基本理念において,最前線で活躍中の多彩な教授陣からのオリジナリティのある実践に裏打ちされた濃い内容の講義がコンパクトにまとめられており,あっという間に読了した.

 第Ⅰ部「認知症ケアの学び」,第Ⅱ部「高齢者ケアの学び」,第Ⅲ部「地域共生社会の学び」の3部構成で21の講義が編集されている.それぞれを丁寧に紹介できないのが残念だが,ここでは各講義の語りから印象的なフレーズを引用し,順次つなぐ形で内容をお伝えしたい.

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 脳卒中のリハビリテーションに携わっていて,日々感じていることがある.それは脳卒中患者さんの障害像はすべからく異なっており,定型化されたパターンで予後を論じることは困難であるという点である.さらに,進化してきているリハビリテーション医療・医学の知見と方法論を導入することで,障害像への新しい援助の介入が可能となってきている点である.

 本書籍の編集者の吉尾雅春氏(千里リハビリテーション病院・副院長)は,理学療法士として長らく臨床における実績を積んだ後に,札幌医大解剖学第二講座に在籍して神経系を含めた解剖学的知見を修得し,キャリアアップをされている.本書においてはその経験がいかんなく発揮されており,現在の千里リハビリテーション病院において指導している後進の手で執筆されている.

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 「子猫」,「ブランコ」,「ボートレース」,「踏絵」,「遍路」,医学に関係ある言葉では「麻疹」なんてのも……全部春の季語だそうですが,あんまり春らしくありませんね.仕切り直します.春眠暁を覚えずと申しますが,春の朝寝に慌てて駅に向かう途中ですれ違った真新しいランドセルの新入生の姿に,エイプリルフールで騙されたことも笑って流そうとほっこりした気持ちで見上げた空から桜の花びらがひらひらと舞い散ちる季節となりました.どうでしょう? 春らしい言葉を思いっきり散りばめてみました.

 さて,新年度の始まりです.4月から大学院に進学し,いよいよ本格的に研究をはじめるという方もいらっしゃると思います.そんな方々にお勧めの本が『研究の育て方—ゴールとプロセスの「見える化」』.「総合リハビリテーション」で大好評の連載「集中講座 研究入門」(第44巻1号〜第45巻3号)が昨年10月に書籍化,すでに第3刷が決定しました.研究に関する考え方,進め方,論文の書き方などなど研究を行うために必要な全体像がぎゅっと1冊に惜しみなく詰め込まれています.新たな研究生活の相棒としてぜひお手元に!

基本情報

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総合リハビリテーション
47巻4号 (2019年4月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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