総合リハビリテーション 47巻3号 (2019年3月)

特集 介護ロボットの開発と普及

今月のハイライト
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 超高齢社会を迎え,自立支援や介護者の負担軽減を目的とした福祉用具においても,ロボット技術を応用した機器の開発が盛んに行われています.経済産業省から示されたロボット新戦略のアクションプランでは,2020年までに介護ロボットの国内市場規模を500億円に拡大する,ロボットを用いて介護者が腰痛を引き起こすハイリスク機会をゼロにする,新しい介護方法などの意識改革を行うといった目標が掲げられています.しかし,国内介護ロボット分野の市場規模は,統計による差はあるもののまだ低いレベルにとどまり,また他の目標の達成も簡単ではないと思われます.

 とはいえ,多額の研究費などが投入され,行政も力を入れている分野であることは確かです.有用なロボットの開発とその普及は,われわれリハビリテーション関係職にとっても,また日本の産業全体にとっても期待されることと考えます.本特集は,ロボット開発と普及に携わるさまざまな立場から,介護ロボットの開発と普及についての現状と課題を解説していただくことを目的に,企画しました.

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はじめに

 わが国は少子高齢化が進展し,世界に先駆けて超高齢社会を迎えている.団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年には,65歳以上の高齢者数が約750万人増加し,2010年からの15年間で社会全体の高齢化率(総人口に占める高齢者の割合)が23%から30%に上昇すると予測されている(図1)1).2025年には,65歳以上の高齢者1名を20〜64歳の1.8名で支える社会構造になると想定される.介護職員の不足や介護現場の負担増加,介護離職者の増加等の問題が深刻化している.

 「未来投資戦略2017—Society5.0の実現に向けた改革」2)の中で,健康・医療・介護分野においては,「技術革新を活用し,健康管理と病気・介護予防,自立支援に軸足を置いた,新しい健康・医療・介護システムの構築」が挙げられている.介護に関する具体的施策としては,「④ 自立支援・重篤化防止に向けた科学的介護の実現」,「⑤ ロボット・センサー等の技術を活用した介護の質・生産性向上」が提言されている.さらに「未来投資戦略2018—「Society5.0」「データ駆動型社会」への変革」3)においても,次世代ヘルスケア・システムの構築に関する具体的施策として「効率的・効果的で質の高い医療・介護の提供,地域包括ケアに関わる多職種の連携推進」が掲げられている.

 ロボット介護機器あるいは介護ロボットは,ロボット技術(センサー技術,アクチュエータ技術,制御技術など)を利用した機器と定義し,経済産業省と厚生労働省は共同で「ロボット技術の介護利用における重点分野」4)(図2)を定め,ロボット介護機器の開発支援と介護現場での実証・モニター評価を実施してきた.未来投資戦略2017による議論を踏まえて2017年10月に重点分野を改訂し,高齢者の自立した生活の支援や生活の質の維持・向上と,介護負担軽減・介護業務の効率化を図るため,重点分野Cの4分野5項目を新規に追加した.

 経済産業省と厚生労働省は,ロボット介護機器の開発と普及促進に関する支援事業について連携を図りながら進めている(図3).それぞれの支援事業について後段に紹介する.

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はじめに

 本稿では,「ロボット介護機器開発・導入促進事業(基準策定・評価事業)」の成果物として2018年9月10日に公開した「ロボット介護機器開発ガイドブック」,「ロボット介護機器開発のための安全ハンドブック」,「ロボット介護機器実証試験ガイドライン」,「倫理審査申請ガイドライン」の内容を中心に,ロボット介護機器の「開発プロセス」,「安全」,「実証試験」について概略を紹介する.

 ロボット介護機器開発・導入促進事業(基準策定・評価事業)の各種成果物は,ロボット介護機器ポータルサイト1)よりダウンロードが可能である.

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はじめに

 高齢者や障害者の自立を支援し,介護者の負担を軽減する福祉用具・介護ロボットは,利用者の心身機能の維持・向上,さらには活動や参加を促すものとして,大切な役割を果たすものである.

 一方,これらの介護ロボットなどを安全で快適に利用するためには,利用者の身体的および心理的,精神的な要因はもちろんのこと,住環境や介護者の有無など,日常生活に適用した用具を選択することが重要であり,当該用具の性能や機能に熟知した販売従事者をはじめ,医療・福祉の関係者,とりわけリハビリテーションなど専門職の関与が不可欠といえる.

 少子高齢化が進展するわが国では,高齢者や障害者のニーズは多様化・複雑化しており,2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」では,ロボット技術の介護利用に係わる重点分野に基づき,ロボット・センサーについて,利用者を含め介護現場と開発者などをつなげる取り組み,現場のニーズを捉えた開発支援および介護現場への導入・活用支援を一層進めるとされた(表1).

 本稿では,現在,国内で行われている福祉用具・介護ロボットに関する取り組みの一部について紹介する.

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はじめに

 2012年に8.4兆円であった介護に係る社会保障費は2025年に19.8兆円まで増大し1),介護職員は38万人不足する2)という厚生労働省の推計を背景として,持続的な財政と社会保障システムの維持のために介護需要増加の抑制と労働環境改善を含む介護サービスの効率化に資する介護ロボットの開発と普及が求められている3).また,産業育成の観点から,経済産業省は介護ロボットの国内市場規模を約500億円に拡大することを目標としている.厚生労働省と経済産業省は介護ロボットの開発と普及を促すために支援事業を実施しており,重点的に開発をすすめる分野として6分野13項目を策定している.厚生労働省による導入効果実証研究では,市販されている移乗支援ロボット5種類と見守りロボット7種類を対象として効果検証が実施され,見守りロボットの導入により夜勤帯の業務が効率化される結果が報告されている4).そして,2018年度介護報酬改定により,一定数以上の見守り機器を導入しているなどの条件を満たすことで夜勤職員配置加算の条件が緩和された.

 こうした背景などから,介護ロボットの中でも見守りロボットは最も普及が速いと期待されており,近年多くの機器が市販されている.本稿では,前述の厚生労働省の導入効果実証研究の対象となった見守りロボットの1つで筆者がその開発と普及に長年携わっているシート型体振動計(商品名:眠りSCAN®)について,その経験と今後の展望を解説する.

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はじめに

 厚生労働省は,ロボット技術の介護現場での普及が進みにくい現状に対し,施設での介護ロボットを活用した効果的な介護方法の開発を支援するために,2015年度から「介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業」を実施している.当該事業は受託機関,メーカー,介護施設が連携して実施するものである.

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 昨年,15年ぶりにカナダのトロント市を再訪した.2003年に訪れた際,カナダでは,社会福祉教育の新しいガイドラインが示され,そこでは社会正義を教育の柱に置き,反抑圧的ソーシャルワークの実践(anti-oppressive practice;AOP)の必要性が謳われていた.しかし教育や実践現場では,まだこの内容が定着しておらず,理念先行といった状況に思えた.今回いくつかのコミュニティで活動しているNPOを訪問する機会を得て,改めて社会正義の理念や,AOPが実際に現場に根付いている状況を確認することができた.

 今回訪問したNPO団体は,精神障害,薬物依存,移民・難民,LGBTQなどのマイノリティを対象とした地域支援団体であった.そこで支援する人たちの口からごく普通に,「ここでは,AOPを活動の中心においている」という言葉が出てきた.実際には,例えば女性ホームレスの支援をしているコミュニティ団体では,その人の現在の問題状況だけをみるのではなく,彼女たちがこれまで置かれてきた歴史的背景(人種問題,DVなど)を理解することと,そこに働きかける実践の必要性が強調されていた.実際には,薬物依存のホームレスの女性たちのために,注射の回し打ちなどでより生命のリスクが高まらないように,あえて清潔な注射キットを配布していた.また,スタッフとして過去に薬物使用を経験した人も採用し,peer(仲間的)サポートも活用していた.支援拠点は街中のごく普通のビルにあるのだが,入口でこういったキットを配布し,食事や服,居場所を提供していた.薬物依存のホームレスが,周りのお店などに来る場合もあるが,同じ地域住民でこの活動に協力している人たちが,どのように彼らに対処するかといった情報提供や教育を住民に実施していた.あくまで当事者の立場に立ち,彼らを深く理解するところから支援をスタートすることが,薬物依存や暴力から,その人を解放するのだという.

入門講座 リハビリテーション医療のエビデンス—回復期リハビリテーション・3

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はじめに

 回復期リハビリテーションのエビデンスは,狭義には回復期リハビリテーション病棟というシステムに関するものだが,広義には本邦および世界における回復期のリハビリテーションに関するエビデンスを意味する.さらにリハビリテーションに関するエビデンスのほとんどが,回復期リハビリテーションにも通用する.そのため,本稿で「回復期リハビリテーションのエビデンス」のすべてを網羅することはできず,ある程度ポイントを絞る必要がある.

 本邦では以前から回復期のリハビリテーションは存在したが,2000年の診療報酬改定において「回復期リハビリテーション病棟入院料」が新設されたことを契機に,回復期リハビリテーションに従事するスタッフ数や回復期リハビリテーションに関する論文は,一気に増加した.回復期リハビリテーション病棟の開始から18年以上が経過し,回復期リハビリテーションに関するさまざまなエビデンスが明らかにされている.本稿では,2017年までの日本の回復期リハビリテーションに関するエビデンスについて,日常生活活動(activities of daily living;ADL)の向上と在宅復帰を中心に紹介する.

実践講座 義足歩行を見据えた下肢切断術・3

断端ケア 戸田 光紀
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はじめに

 近年,本邦でも欧米と同様に糖尿病(diabetes mellitus;DM)の罹患率増加や高齢化に伴い,末梢循環障害(peripheral arterial disease;PAD)による重症下肢虚血(critical limb ischemia;CLI)を原因とした下肢切断が著しく増加している.現在,日本の人口は1億2,642万人,65歳以上の高齢者は3,557万人であり総人口に占める高齢者人口の割合は28.1%となっており,過去最高を更新している1).1980年代以前の下肢切断原因は外傷や腫瘍であったが,1980年代以降その原因は高齢化の進行に伴いDMやPADが過半数を占めるようになった.高齢者が人口の25%を占める兵庫県淡路島(調査当時.現在は高齢者人口の割合が34.4%2))において橋本ら3)が行った調査では,下肢切断の原因の85.7%をPADが占めると報告しており,また北九州市におけるOhmineら4)の調査では,下肢切断の発生割合は人口10万人あたり5.8人でPADを原因とした下肢切断が全体の77.8%,65歳以上の高齢者においては83.5%と報告している.このように,近年の下肢切断者は高齢,かつDMやPADをはじめ多くの合併症を有し,義足の適応,ならびに義足リハビリテーションやリハビリテーションゴール設定が困難であることも少なくないと思われる.

 下肢切断における切断高位の決定について,過去においてはPADによる下肢切断術の第一選択は,大腿切断において一期的治癒率が高いことやPADに対して下腿切断術を行った場合の創傷合併率が高いこと,さらには下腿切断術後の大腿切断への変更率が比較的高いといったことにより,大腿切断術が第一選択とされていた.しかしながら,一般的に大腿切断の義足歩行獲得率は下腿切断に対して非常に低い.特にPADを原因とする下肢切断においては,9〜20%と厳しい結果であったと報告されている5-7).義足訓練に関して多くの経験を有する兵庫県立リハビリテーション中央病院(以下,当院)でも,60歳以上の膝関節より近位での下肢切断者に対しての義足歩行獲得(独歩または1本杖で100m以上の連続歩行可能)率は68.8%であった8).一方,PADによるCLIに対しては集学的治療の実践,すなわち血行再建術の積極的な実施,機能面を考慮した膝関節温存の重要性の認識の高まりなどにより,近年は下腿切断の割合が増加傾向にある9-11)

 以上のことを考慮すると,PADによる下腿切断患者に対し適切なリハビリテーションを提供することは,切断者に対するリハビリテーションのなかできわめて重要な位置を占めるといってよいであろう.一般的に切断のリハビリテーション経験が十分な病院や医師・医療スタッフは少なく,下肢切断のリハビリテーションに関しては,まず下腿切断に対して確実な義足歩行獲得をめざすのが重要である.大腿以上の高位切断については,義足の適応の有無を含めて専門的経験のある病院で行うか,または十分に相談することを勧める.

 本稿では切断後の義足リハビリテーションにおいて前半部分の要である断端ケアに関し,従来型の方法と最近の方法について当院の経験を加えて解説する.

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要旨 【目的】第一に高齢整形外科術後患者におけるH固定法の検者内および検者間絶対信頼性を明らかにすること,第二にH固定法とベルト固定法の方法間の絶対信頼性を明らかにすることである.【対象】九州労災病院門司メディカルセンター(以下,当院)整形外科病棟もしくは地域包括ケア病棟へ入院した36名(平均年齢75.1±8.1歳)とした.【方法】検者は臨床経験1年目の女性理学療法士1名と臨床経験30年目の男性理学療法士1名とした.評価期間は,退院前5日間のなかのいずれか3日間とした.相対信頼性は測定値の級内相関係数(intraclass correlation coefficients;ICC)(1.1),(2.1),絶対信頼性はBland-Altman分析を用いて系統誤差の有無を解析した.【結果】H固定法における検者内および検者間信頼性は,ICC(1.1),ICC(2.1)いずれにおいてもICC>0.9と高値を示し,系統誤差は認めなかった.また,H固定法とベルト固定法の方法間の相対信頼性に関しても同様に,ICC(2.1)>0.85と高値を示し,系統誤差も認めなかった.【結語】H固定法はベルト固定法よりも手軽に短時間で測定できるため,高齢者の大腿四頭筋測定法として推奨できる.

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要旨 【問題と目的】漢字書字指導における指導方法の違いによって学習過程や文字産出過程に及ぼす影響の違いを,実際の症例を通じて検討した.特に,「聴覚法」など聴覚言語性の記憶力をバイパスとする機能的再編成が,漢字を習得し運用するうえでどのように影響しているか検討を行った.【対象】限局性学習症に該当する診断既往があり「読み書き困難」を主訴とする小学校通常級4年在籍男児(指導開始時).【方法】神経心理学的評価を実施し書字障害の背景要因を検討した後,指導1では「文字パズル指導」と「聴覚法」を採用し指導方法の順序が結果に与える影響を検証した.指導2では文字構成要素を音声言語化して学習する「聴覚法」の手続きにおいて音声言語化する程度(全体・部分)が結果に及ぼす影響を検証した.指導文字は画数を統制し音読可能であるがベースラインで自発書字困難であった文字で各群を構成した.【結果・考察】指導1ではパズル指導を先行させた場合に比して聴覚法先行指導で指導効果の維持が高く,指導2では指導直後の効果に差は認められなかったが指導効果の維持は部分聴覚法が保たれていた.既知漢字の想起効率には対象となる文字イメージの強さ「depth of the encoding」(エンコーディングの深さ)が影響し,聴覚法での学習が文字構成要素の想起方略として機能することが示された.

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はじめに

 荏原病院(以下,当院)は東京都の区南部医療圏における中核病院の1つである.リハビリテーション科においては,中枢神経疾患や運動器疾患,廃用症候群,呼吸器疾患などを中心に,急性期から早期リハビリテーション介入を行っている.がん患者に対するリハビリテーションは2015年に所定のがんのリハビリテーション研修を修了し,がん患者リハビリテーション料が算定可能となった.

 がんのリハビリテーションガイドラインでは,周術期がん患者に対するリハビリテーションは呼吸器合併症の減少・入院期間の短縮のため勧められるとされている1).しかし,当院ではがん患者リハビリテーション料算定可能となった後も,がん患者のリハビリテーション科依頼は少なく,周術期がん患者に対して十分なリハビリテーション介入を行えていなかった.

 さらに,周術期の呼吸器合併症の予防で有効な手段として口腔機能管理が挙げられる.周術期の口腔機能管理は,口腔ケアによる口腔細菌数の減少,口腔感染源の除去,挿管・抜管時の歯牙保護が主な目的であり,周術期口腔機能管理料を算定できる.2016年度の診療報酬改定において,医科歯科連携の推進として,周術期口腔機能管理後手術加算の引き上げ,栄養サポートチームに歯科医師が参加した場合の歯科医師連携加算が新設され,現在,医科歯科連携がいっそう求められている.

 当院では2016年度に外科,歯科口腔外科(以下,歯科),看護部,リハビリテーション科が協働して,がん患者の周術期サポートチームを立ち上げた.このチームをSupport Team of Rehabilitation,Oral care and Nursing care Group for perioperative patientsの頭文字を取り“STRONG”とした.

 これまで,医科歯科連携として,手術を行う主科と歯科の連携の報告は散見するが,歯科とリハビリテーション科が連携して呼吸器合併症を予防する取り組みは報告が少ない.

 今回,当院の外来におけるがん患者周術期サポートチーム“STRONG”の取り組みを紹介する.

連載 リハビリテーション医療に必要な薬物治療・第3回

高血圧 小森 孝洋 , 苅尾 七臣
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 高血圧患者は非常に多く,リハビリテーション対象患者の多くにも高血圧が合併している.さらに,リハビリテーションを必要とすることが多い脳血管疾患,心血管疾患は高血圧が原因の一つであり,それらの患者の高血圧管理は二次予防の点からも重要である.本稿では,高血圧の治療目標値,リハビリテーション実施においての血圧の留意点,脳血管疾患・心血管疾患患者に対しリハビリテーションを行う際の血圧管理について高血圧治療ガイドライン2014を基に概説する1)

連載 生理検査レポートのみかた・第1回【新連載】

心電図の読み方 白石 裕一
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 本稿ではリハビリテーション治療の過程における心電図モニター波形,ホルター心電図の読み方について解説をしたい.

 まず通常のモニターの装着では縦方向(Ⅱ,Ⅲ,aVF)方向の誘導ないし,V56の誘導が表示される.ホルター心電図でも胸骨の上に縦方向に貼る誘導(NASA誘導:宇宙飛行士の心電図モニターに使われたといわれている.最も体動による影響を受けにくいとされる)と,V56方向に向けて貼る誘導(CM5誘導)の2チャンネルを表示する.理由として呼吸運動,体動の影響が入りにくい部位を選んでいることと,P,QRSの軸が左下方へ向かうため陽性波として表示され,認識しやすいことが挙げられる.心電図の基本波形と読み方を図1に示す.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 千家元麿が1931(昭和6)年に発表した詩集『霰』(『千家元麿全集上巻』,彌生書房)には,千家が1929(昭和4)年に入院した松沢病院で出会った患者を描いた詩が収められているが,それらの詩には,当時の精神医療に対する批判が含まれている.

 たとえば,『葉桜』は,「刈り込みのすんだ人が出て来て 葉桜の下を歩いてゐる 大抵坊主頭に刈ってゐる 刈り込んでもふけを落しても洗ってもくれない 葉桜の下へ行って毛を払ひ落す」という一見牧歌的な詩で,当時の入院患者の多くは,坊主刈りにされていたらしいことがわかる.しかし,入院患者は坊主頭に刈られるだけで,ふけを落としてもらうわけでも,頭を洗ってもらえるわけでもないため,患者は葉桜の下へ行って自分で毛を払い落とさなければならないという情景を,この詩は描いているのである.

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 1951年2月生まれの筆者は,ご多分に漏れずビートルズとボブ・ディランと共にあった世代の一人であり,その殻の中で,時にはその殻を美化,肥大化させながら人生をやり過ごしてきた.したがって,1970年代半ばから世に出てきたクイーンを聴く必要もなかったし,その存在を知ろうともしなかった.同年代の居酒屋音楽談義でクイーンが俎上に上ることもなかった.このような筆者,あるいは筆者の世代の一部が抱えていたと思われる浅薄さを「ボヘミアン・ラプソディ」(監督/ブライアン・シンガー)は,完膚なきまで叩き潰す.

 本作は,イギリスが生んだ世界的ロックバンド「クイーン」のボーカルだったフレディ・マーキュリー(1946〜1991)の半生にスポットを当てた伝記映画としての性格をもつ.それはとりもなおさず,クイーンのデビューアルバム発売(1973)までのエピソードからアフリカの難民飢餓救済を目的とするチャリティコンサート「ライブエイド」(1985)に至るまでの生成,発展,対立・葛藤,止揚の過程を描くことになる.

私の3冊

私の3冊 増田 知子

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 「初心者が最初に読んで研究全体の流れやめざすべきもの,各段階で必要となる考え方や進め方など研究(テーマ/プロジェクト/論文/者)の育て方が1冊でわかる本」(序)である.研究方法や論文の書き方だけでは研究を実施できない.試行錯誤や途方に暮れた日々があり,また論文がアクセプトされたときの喜びがある.このような経験や感情を含めて研究のプロセスであり,よりよい研究にするために手間をかけ力を尽くして育む,まさに「研究の育て方」である.

 本書は,学生目線で学生に語り掛けるように書かれている.学生がつまずいたり陥りやすい落とし穴について取りあげ,具体的な対処法を提示する.知りたいことについてすぐ答えを求めたい今どきの学生のために,研究プロセスにおける進め方や考え方について,あの手この手で理解できるように工夫されている.文章の表現の仕方を例示したり,コラム,図表を多用したり,研究の各段階でやることの落ちがないようにチェックリストで確認できるようにしている.分析の視点について理解を促すために,「串だんご」(p162),「駅のプラットフォームの写真」(p174)などを例示し,「なるほど」と納得させる.本の表の見返しには,「目的」「対象と方法」など各研究段階が書かれているページが,また裏の見返しには各チェックリストの書かれているページが示されており,すぐに目的のページにたどり着くことができる.なかでも,「優れた文献だけを20〜50本選んで引用する」(p74),「目的が3つあれば結論も3つ」(p74),「考察分量の目安は,1:3〜4:1〜2程度」(p177),「5〜7回は推敲する」(p190)と数字で目安を断定した記載は小気味よいほどであり,学生の心強い目安となり安心感を与えてくれることだろう.これは卓越した研究実績と豊富な学生指導の経験をもつ著者ならではのエビデンスに基づくものであり,どれも納得のいく数字である.これらはまさに「見える化」である.

第30回日本末梢神経学会学術集会

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 1位「ドラえもん」,2位「ガンダム」,3位「鉄腕アトム」.ロボットといえば? で思い浮かぶキャラクターのランキングだそう.2015年の調査ですが,20,30代はドラえもん,40代はガンダム,50代はアトムが1位とのこと.そうかなあ.しかもガンダムって乗り物じゃん,と引っかかっていたところ,あれは「モビルスーツ」というそうで.パワーアシストスーツの仲間なんでしょうか?

 ちょうど本号を編集中,羽田空港でパワーアシストスーツが導入されたことがニュースで話題となっていました.特集記事でも取り上げられていますが,「移乗介助機器(装着型)」は「ロボット介護機器の開発重点分野」の1つ.これまでにも建設現場や農業などの介護以外で導入された事例はありましたが,あまり一般のニュースで取り上げられることはなかったような気がします.この度,羽田導入が多くニュースとして取り上げられているのを見て,介護ロボットの開発と普及が一歩ずつ前進していることを感じた次第です.

基本情報

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総合リハビリテーション
47巻3号 (2019年3月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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