Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「明日へ—戦争は罪悪である—」—あえて差別・迫害される側に身を置く者たちの系譜と戦時下の知的障害者が交差する
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.395
発行日 2019年4月10日
Published Date 2019/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201620
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自主上映を生業としている知人が,「明日へ—戦争は罪悪である—」(監督/藤嘉行)の上映について逡巡していた.それはそうだろう.1990年代半ばにして,映画業界の方からタイトルに「戦争」の文字が入ると客が入らない,という話を聞いており,しかも「戦争は罪悪である」とくれば,型通りの説を唱える教条的作品として忌避される可能性大である.商業的な成功を収めるという観点が希薄であり,それどころか,あえて不利な条件を自らに課しているかのようにみえる.とはいえ筆者の見立てにおいて,以下四つの点で優れている.
第一に,1960年代から1970年代前半にかけてクレージーキャッツの一員かつ“無責任男”として一世を風靡し,1970年代後半からは個性派俳優として燦然と輝いていた植木等(1926〜2007)の父親でもあり,戦時中は反戦活動によって投獄された僧侶・植木徹誠(てつじょう:1895〜1978)を重要な役回りで登場させていることだ.ワンシーンではあるが,反対する徹誠の怒声を軽くいなしながら芸能界入りをめざす若き日の植木等も描かれている.
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