総合リハビリテーション 46巻4号 (2018年4月)

特集 障害児の学校教育と学外活動

今月のハイライト
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 在宅で生活している障害児がどのような日常生活を送っているのかということを,障害児を主な対象とする専門家を除けば,その他多くのリハビリテーション関係者は,実はよく知らないのではないでしょうか.しかし,18歳以降に,例えば就労支援の場面などでかかわる機会はあり,それまでの生活について一定の共通認識を確立する必要性を感じます.

 学校に通う教育年齢の障害児を対象として,日中活動の大半を占める学校での活動と学校以外での活動について,現状と課題を明らかにすることを目的に本特集を企画しました.

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はじめに

 多くの子どもにとって,学校は,生活のなかで重要な位置を占めるものである.本稿では,前半で,障害のある子どもの学校教育をめぐる動向と課題を概観する.そして,後半では,「学校教育」と「学外活動」の両方を考えるという特集の趣旨をふまえ,学校外の生活と深く関係する学校の営みとして「通学」,「部活動」,「寄宿舎」に特に目を向け,それらについての課題を示す.

放課後等デイサービス 中村 尚子
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はじめに

 「放課後等デイサービス」は,児童福祉法に規定された障害のある学齢児のための福祉サービスで,放課後や学校休業日に活動の場を提供する事業である.就労などにより,日中,保護者が不在であるために実施されている「放課後児童健全育成事業」(いわゆる学童保育)とは異なる制度であり,障害児支援の一環として2012年4月から実施されている.

 放課後等デイサービスを新しく規定した児童福祉法(改正児福法)では,同時に障害児支援が全般にわたって改正され,地域で生活する障害児が利用する福祉サービスは表のように再編された.行政統計上,新制度発足後5年間の利用実態が比較されることが多いが,それらのなかで,事業所数や利用者数において最も急速な伸びを示しているのが放課後等デイサービスである.「伸び」の背景を探りつつ,現状と今後の課題について述べる.

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はじめに

 本稿では,学齢障害児の学外スポーツ活動について,筆者が勤務する障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(以下,ラポール)の取り組みを紹介する.取り組みには,ラポールの中で行うものと外で行うものがあり,どちらも障害児の余暇と地域生活を支え,生活の質(quality of life;QOL)の向上につながる大切な活動である.

 ラポールは,横浜市総合リハビリテーションセンターや市内4か所の療育センター(以下,療育部門)とともに,社会福祉法人横浜市リハビリテーション事業団が運営している.横浜市における障害者スポーツ振興の中核拠点に位置づけられ,スポーツを通じた障害者のQOL向上とノーマライゼーション社会の実現が事業の目的である.そのため,障害者に適切なスポーツ活動の導入を図ることと,身近な地域でスポーツに親しめる環境整備が重要な役割となっている.

 障害児に対しては,生涯にわたって運動・スポーツに親しむための素地を養わせることが大切なため,障害特性にあったプログラムの工夫から,スポーツは楽しいという意識を高め,興味をもって自発的に活動していける場の充実に努めている.

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はじめに

 滋賀大キッズカレッジ(SKCキッズカレッジ)は,2005年にNPO法人としての認証を得て発達障害,とくに学習障害の相談・アセスメントと学習支援を目的として活動している.滋賀大学教育学部の教育相談活動の延長として生まれ,現在も教育学部と相互協力の協定書を結ぶなど,発達障害児の学習支援だけでなく,研究活動もNPO法人の定款に位置づけている.

 主たる対象は読み書き障害のある発達障害児であるが,実際には単独の学習障害は少なく,多くは自閉症スペクトラム(autism spectrum disorder;ASD),注意欠如・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder;ADHD)など他の障害を併存していることが多い.

 本稿ではまず簡単に学習障害がなぜ「見えにくい」のかを論じながら,学習障害の特徴を述べる.次に,発達障害児への教育的対応において滋賀大キッズカレッジの基本理念である「安心と自尊心」がなぜ重要であるかを,特に最近の特別支援教育の病理学化,スキルトレーニングの流行という現象に対比して明らかにする.そして,発達障害の理解および対応において,弁証法的階層論的理解が不可欠であることを論じる.最後に滋賀大キッズカレッジの学習指導の方法について具体的に素描することにしたい.

 学習室の指導はきわめてシンプルである.シンプルさゆえにその趣旨がわかりにくいらしい.それゆえ,見学は事前の研修を受けることを前提にする以外はお断りしている.シンプルさゆえに,理論的背景を理解してもらう必要がある.

 「安心と自尊心」をキーワードとする場,そこで子供たちは自分自身のしんどさを受け止め,ある時期に「飛躍的な発達的変化」を急激に成し遂げる.それは,病理学化され,認知科学的に細分化されて理解されている一般的な発達障害のとらえ方の再考を迫るものである.

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はじめに

 発達障害者支援センターでは,乳幼児期から成人期までライフサイクルを通してさまざまな相談に対応している.学齢期の発達障害児の支援では,地域での学齢期の発達障害児や家族を支援する体制の整備が求められる一方,学齢期では教育・福祉・保健・医療と多様な支援機関がかかわるため,本人・家族にかかわる支援機関の連携が必要となってくる.

 本稿では,地域の発達障害者支援の中核として位置づけられている発達障害者支援センターに寄せられる相談,区市町村などの関係機関への支援を通してみえてくる学齢期の発達障害児支援の現状と課題について述べる.

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障がいをもつ子供たちのための法律

 スクールバスを提供しないある学校の放課後風景に出くわした.子供を迎えに来た保護者の車で混雑する学校へ続く道,車椅子を必要とする子供の親は,そうでない子供の親と同じように車列の中で駐車の順番を待っていた.

 アメリカの障がいをもつ子供たちの教育法の歴史は,1975年に制定された連邦法Education for All Handicapped Children Act(EHA)から始まる1,2).当時,この法律に基づき,障がいをもつすべての子供の教育が保障されていたが,彼らの教育は,一般学校からは隔離された特殊教育諸学校や特殊学級で行われていた1).1990年,EHAはその名称を,Individuals with Disabilities Education Act(IDEA)に改名された.これは,それまでの,“Handicapped Children”という「障がいの状態」に注目する名称が不適切だとされたことから,“Individuals”という「個々人」のための教育や人々の意識改革を目指したことが背景にある3).この連邦法は,IDEAが定める障がいをもつすべての子供たちの早期発達支援を含む無償公共教育と関連サービスを保障した.今日,600万人以上の障がいをもつ子供たちのほとんどが,地元の一般学級または,地元学校内に設置された部分的特殊学級で教育を受けている2)

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 この号が皆様のお手元に届くころには,2018年度診療報酬改定・介護報酬改定への対応の協議を終えているころでしょう.今回の介護報酬は,自立支援・重度化防止の観点のみならず,「リハビリテーション」があらゆる事項で取り上げられ,エビデンスを積み上げてこられたリハビリテーション専門職の成果が評価された改定になったといえます.

 今後の高齢化・少子化のさらなる進展を考えると,サービスの効率化・生産性の観点はますます重要となってくるでしょう.ヘルスケア専門職の関わりや態度は,リハビリテーションを必要とするすべての人々の心身の健康や機能向上に“良い”影響を及ぼすはずですが,患者・利用者の“真の”自立へのインパクトはどのように評価されるのでしょうか.

入門講座 リハビリテーション従事者のための論文の検索・収集・整理の仕方・1【新連載】

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はじめに

 超少子高齢社会,2025年問題,医療過疎地域問題,医療費の増加,受療者の意識の変化など,わが国の保健,医療,福祉を取り巻く状況は,大変厳しい課題に直面している.このような状況において,リハビリテーションの対象者1人ひとりが,できるだけその人らしく生活していくことができるよう,包括的な視点から支援していくことが,わが国のリハビリテーション領域における重要な課題となる1).そして,そのような課題に応えていくためには,リハビリテーション従事者が,日々の臨床活動において,できるだけ安全で効果的な介入に関する適切な臨床判断(clinical decision making)を行うことが重要な鍵となる.

 リハビリテーション従事者におけるこのような臨床判断の根拠は,従来,自身の知識,経験則,得手・不得手,先輩からの助言・指導,教科書や参考書の情報,そして,職場の方針などを拠り所としてきた傾向が強いものと推察される.これらの要素のなかでも医療者の経験則は,判断の根拠として大きなウエイトを占めるものと考えられるが,もし,そのなかに,ごく少数の症例における偏った経験則や,単に慣習的に行ってきたような偏った経験則などのバイアスが含まれていると,その後に行う介入内容の安全性や効果に対して,マイナスの影響を与えてしまう可能性もある.

 医療におけるこのようなバイアスをできるだけ少なくして,患者中心型の安全で効果的な臨床判断を実践していくための行動様式が,1991年カナダのマクマスター大学のGuyatt2)によって提唱された,根拠に基づく医療(evidence-based medicine;EBM)である.EBMの定義としてSackettら3)は,「EBMとは,個々の患者のケアに関する意思決定において,最新で最良の根拠を,良心的に,明示的に,そして思慮深く用いることである.EBMの実践は,個人の臨床的専門能力と,系統的な研究による入手可能な最良の外的な臨床的根拠とを統合することを意味する」としている.

 その後,EBMの概念と手法は,根拠に基づく看護(evidence-based nursing;EBN),根拠に基づく理学療法(evidence-based physical therapy;EBPT)など多様な領域における行動様式として発展してきたため,包括的な表現として根拠に基づく実践(evidence-based practice;EBP)として表現されるようになってきた4)

 これまでのEBPに関する定義を参照してリハビリテーション領域におけるEBPの定義を考えてみると,「対象者に関する臨床的疑問に対して,① 医療者の臨床能力(知識・技能・中立的な経験則),② 質の高い臨床研究による実証結果(エビデンス)の内容,③ 施設の設備や環境,④ 対象者の意向や価値観とを統合した最適な臨床判断を行うことによって,対象者の状況に即した安全で効果的な医療を実践するための行動指針」と位置づけられると思われる5)(図1).EBPの実践において大切な点は,「エビデンス“を”参照した臨床判断を行う」とすると,エビデンスを中心とした硬直的な判断になってしまうため,「医療者の臨床能力,施設の設備・環境に,エビデンス“も”加えた基本的な方針と,対象者の意向や価値観との折り合いを取りながら総合的な臨床判断を行う」と位置づけることによって,対象者中心型の質の高い医療を実践することにある.

 このようなEBPの行動様式は,わが国の看護や理学療法の分野などでも導入されつつあるが,実際の臨床現場における実践状況は,決して十分とはいえないのが実情ではないだろうか.この背景として,リハビリテーション従事者の卒前・卒後教育におけるEBP教育の不足,EBPの概念や具体的な進め方に関する理解の不足,EBPに対する誤解,EBPに関する知識と実践との間のギャップ(knowledge to practice gap)6)などが要因として挙げられるものと思われる.これらの要因のなかでもEBPの具体的な進め方としてのエビデンスの検索・収集方法と整理の仕方,多忙な臨床現場におけるエビデンスの読み方と対象者への適用の吟味の仕方などの具体的な進め方に関する理解の不足は,EBPがなかなか浸透しないことの大きな要因の1つになっているように感じられる.

 そこで,本号から7号の4回にわたり,「リハビリテーション従事者のための論文の検索・収集・整理」というテーマを掲げ,多忙なリハビリテーションの現場において,どのように効率よくエビデンスを検索・収集・整理し,リハビリテーションにおける安全で効果的な臨床判断に活用すればよいのかという観点から,邦文データベースである医中誌Webの使い方を5号で,英文データベースであるPubMedの使い方を6号で,そして,ENDNOTEやRefworksなど文献管理ソフトの使い方を7号で解説する.

 本稿では,まずEBPの基本的な進め方である「5つのステップ」とその要点について概説する.

実践講座 脳卒中患者の体力評価・4

調整力の評価 大隈 秀信
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はじめに

 本稿では,『障害者の体力評価ガイドライン』1)に拠って,行動体力の構成要素のうち,運動や行動をコントロールする要素を「調整力」と呼ぶことにする.脳卒中患者の運動障害には,片麻痺による筋出力の低下に加え,さまざまな調整力の問題が関与している.片麻痺が重度になるほど,行動体力における調整力の影響は,相対的に大きくなるともいえる.

 本稿では,脳卒中患者の調整力を評価することの意義と,その評価方法について述べることにする.

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要旨 【目的】本研究の目的は,軽度要介護者の通所サービス利用日と非利用日の日内歩数推移の特徴を明らかにし,高齢者の活動性向上に資する基礎的データを提供することである.【方法】対象は,通所介護サービスを利用する65歳以上の軽度要介護者35名(女性19名),要支援2〜要介護2,年齢80.3±8.0歳とした.身体活動量計にて24時間1週間の歩数を連続的に測定した.1日あたりの歩数を算出し,利用日・非利用日の歩数および3時間ごとの日内歩数推移の比較を男女別に行った.【結果】男性の利用日の歩数は中央値2,058.3歩,非利用日は1,438.5歩であった(p<0.05).女性の利用日の歩数は3,105.5歩,非利用日は2,645.0歩であった.利用日別の日内歩数推移で,男性は6〜12時で利用日の有意な歩数増大を認めた.女性は6〜9時で,利用日の有意な歩数増大を認めた.【結論】軽度要介護者は日常的に不活動であるものの,男女ともに利用日の午前中に歩数が増加する日内歩数推移を示した.

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要旨 【目的】理学療法士,作業療法士,言語聴覚士に対しソーシャルメディア(social media;SM)の私的利用に関する質問紙調査を行い,その実態について検討を行った.【対象と方法】対象はA法人グループ理学療法士,作業療法士,言語聴覚士440名とし,無記名自記式調査票を各施設へ発送した.【結果】回答の記入漏れケースを除外し,367名分を解析対象とした.SMにおけるトラブルの経験「あり」と回答した者は7.1%だった.ロジスティック回帰分析の結果,オッズ比が有意であった項目は「年齢」と「情報発信の程度」であり,これらの項目がSMトラブルと関連していることがわかった.【考察】本調査の結果,大半の職員は何らかのSMを利用しており,トラブル経験者もいることがわかった.さらに,年齢が低い場合や情報発信の程度が高い場合がSMトラブルを経験しやすくなる可能性が示された.そのため,新人教育の時からSMの私的利用に関する教育を行っていくことや,情報発信の程度を事前に調査したうえでその内容を検討する必要性が示された.

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要旨 【はじめに】運動イメージが脊髄前角細胞に及ぼす影響については,さまざまな方法を用いて研究がなされている.筆者らは,効率的に脊髄前角細胞の興奮性を高める方法を検討している.今回,運動をイメージする際の実際の手の肢位の違いで脊髄前角細胞の興奮が変化するのかを検証した.【対象】右利き健常者34名を対象に誘発筋電計を用いて短母指外転筋のF波を導出し,脊髄前角細胞の興奮性の指標とした.なお分析項目はF-wave amplitude/M-wave amplitude ratio(F/M振幅比)を用いた.【方法】前腕回外位で手掌面にボールを乗せた安静肢位の状態と,前腕回内位でボールの上に手を置く機能的肢位の状態との比較を行った.イメージはボールを握る等尺性収縮イメージを行った.【結果】前腕回外位で握るイメージは回外位安静と比較してF/M振幅比の差はないが,機能的肢位でのイメージは機能的肢位での安静と比較してF/M振幅比の増加に有意な差を認めた.【考察】機能的肢位でイメージすることでCM関節(carpometacarpal joint)周囲のメカノレセプターからの入力が脊髄レベルで変化し,さらに錐体路や錐体外路からの下行性入力が脊髄前角細胞や周囲の介在ニューロンに影響を及ぼしている可能性が考えられた.運動イメージの具体的な方法に関する研究は少なく,本研究の結果からただ単にイメージさせるだけでは不十分で,機能的な手の肢位を意識して行うことが効率的に脊髄前角細胞の興奮性を高めることができることが明らかとなった.

連載 職業リハビリテーション関連機関の知識

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はじめに

 障害者が働き続けていくためには,安定した生活が切り離せない.しかしながら,障害によっては仕事と生活を両立して自己管理することが難しくなることがある.そのため,仕事と生活の両面から支援を組み立てていくことが必要となる.

 本稿では,雇用,保健,福祉,教育等の地域の関係機関との連携の下,障害者の身近な地域において就業面と生活面における一体的な支援を行う『障害者就業・生活支援センター』(通称として『なかぽつセンター』)の役割と支援のながれを解説する.

連載 患者会・支援団体の活動

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組織の概要

 日本リウマチ友の会(以下,当会)は,1960年国立伊東温泉病院(現市立伊東市民病院)で治療を受けた152人の患者で発足し,1970年に社団法人の認可を受けて社会的責任を持つ患者会となった.以来「リウマチに関する啓発・リウマチ対策の確立と推進に関する事業を行い,リウマチ性疾患を有する者の福祉の向上に寄与すること」を目的に活動を続け,2012年4月に公益社団法人と認定された.

 現在,会員は10歳台から80歳台まで13,000人.会員構成は,患者・家族に加え医療・福祉関係者など,会の目的に賛同する賛助会員とである.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 1832年に発表されたバルザックの『ルイ・ランベール』(水野亮訳,東京創元社)の主人公ルイは,フランスの片田舎で皮なめし業を営む夫婦の一人息子として大事に育てられた「やせぎすのほっそりした」天才肌の少年だった.1797年に生まれた「彼の記憶力はおどろくべきもの」で,学校でも「並はずれた能力」をもつ「未来の天才」と目されていたのである.

 しかし,その一方で,ルイには,「病的な虚弱さ」,「神経質」,「慢性の憂鬱症」などの病的な要素が強調されるほか,「おのれの天才に悩んでいた」,「詩人たちをしばしば狂気に近づけることになる鋭さ」,「わたくしには彼の額が天才の圧力によっていまにも破裂しそうに思われた」など,天才と狂気の関係を示唆する表現も並んでいる.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 筆者は1966年,高校入学後の1年間,新左翼某セクトの機関紙を購読していた.とはいえ,現実から乖離したスローガンや言説に同調できず,その戦列に加わることはなかった.それゆえ,「三里塚のイカロス」(監督/代島治彦)には格段の思いが過ぎる.そこにあるのは,二者択一を迫られた筆者が選択しなかった生き方であり,胸中痛みが走った.

 本作は,新東京国際空港(現成田空港)を三里塚に建設する1966年の閣議決定に端を発した三里塚闘争を多軸的に振り返ったドキュメンタリー.とりわけ,筆者をして瞠目させたのは,現地の農家に嫁いだ<支援妻>たちの現在の素顔である.

私の3冊

私の3冊 池永 康規

学会印象記

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 第33回日本義肢装具学会学術大会が,2017年10月8日,9日の両日,東京・お台場のTFTビル・ホールにて,大会長森田千晶先生(国際医療福祉大学保健医療学部作業療法学科教授)のもと開催された(図1).作業療法士の先生が大会長となるのは実に24年ぶり2回目のことであった.会期中は天候にも恵まれ,スーツのみで丁度良いといった,素晴らしい秋晴れの日であった.会場のTFTホールはファッションショーなども開催されているということもあり,スタイリッシュかつ開放的な印象であった.さすが東京と言ったところだろうか,会場までのアクセスは抜群であり,周辺施設についても非常に充実した環境であった.

 学会テーマは「Fun and Happiness for All.〜義肢装具・支援機器で豊かな生活を〜」.作業療法士の視点を生かした企画が盛りだくさんで,義肢装具・福祉用具にかかわるすべてのひとの楽しい,幸せな生活に着目した森田先生にふさわしいテーマであった.医師,義肢装具士,理学療法士,作業療法士,エンジニアなど約2,000名の参加者が活発な議論を繰り広げていた.

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 日進月歩で成長を続ける医療水準を背景に,少子高齢化が進んでいます.このことは,要するに「障害を持った人が増える」ということになります.しかもこの世の中,今後さらに情報化社会が進み,価値観の相違や権利意識,個別化,自己主張はより強くなるでしょう.また,必要な時期に必要なサービスを受けられる環境を求められるでしょう.

 例えば,おとなの場合,地域包括ケアシステムを構築できる資質と環境があり,高度急性期医療や急性期医療,包括病棟,回復期リハビリテーション後の在宅施設,サービスを周辺に整備することによりチームケアや情報の共有が可能となり,住み慣れた地域においてノンストップで最期まで安心して任せることが可能になるところに,全てが集約されていくことになるでしょう.まさに,これからは医療と介護がしっかりと手を取り1人の人を最期までサポートできる体制づくりが必須となるでしょう.

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 日本は超高齢社会を迎えようとしており,医療の現場では既にその波が押し寄せ,高齢患者が急増しています.医療の現場では平均在院日数が短縮する中,時間に追われながら入院患者の対応をしているのが現状です.そのような状況で本書の『あなたの患者さん,認知症かもしれません』というタイトルは,とても気になりました.

 一般病院に入院中の2〜6割の患者に認知症が疑われます(本書p.9より).患者の入院生活を通じて「なにか変?」という違和感を抱きながらも高齢者だから……と認知症を見過ごすことも多くあると思います.

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 “道免和久先生と竹林崇先生の本!”と聞いて,「これは読まずにはいられない」と思った.道免先生はわが国における神経科学に基づいた,いわゆるニューロリハビリテーションの第一人者であり,わが国にCI療法を導入し,普及させ,さらにその機序について神経科学的手法を導入することで明らかにした.竹林先生はその道免先生のもとで,作業療法士として上肢機能障害に対する治療を行うとともに,研究を重ねてきた.現在の日本を代表するリハビリテーション科医と作業療法士であり,研究者であるといえる.このお二人が監修,編集をされたのが本書である.

 本書のコンセプトは従来からあるような治療法のマニュアル本とは異なり,「単に麻痺を回復させる治療法という二元論的理解を超えて,機能障害を課題指向的に改善させ,改善した機能障害を日常生活活動につなげる(転移させる)という新たなアプローチの考えかたである」と謳っている(「監修の序」より).

リハ栄養フォーラム2018

第29回日本末梢神経学会学術集会

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 平昌パラリンピックの真っ最中にこの編集後記を書いています.平昌オリンピックに引き続き,選手の皆さんの活躍に目が離せません.中継画面の冬景色の一方で,世の中はすっかり春めいてきました.厳しい寒さだった今年の冬ですが,意外なことに桜は例年よりも早い開花が予想されています.これは冬に十分な寒さにさらされたことで,「休眠打破」が順調に進んでいるからだそうです.

 ところで,満開の桜といえば入学式のイメージ.なのにどうも近年は卒業式のころに満開になっているような気がしていたのですが,どうやら気のせいではなかったようです.実際に観測上でも桜の開花は早まっていて,これも温暖化の影響によるものだとか.今年の東京の満開予想はまさに卒業シーズン真っただ中の3月22日ごろとされています.今月号が皆さまのお手元に届くころには,もう桜も終わっているかもしれません.

基本情報

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総合リハビリテーション
46巻4号 (2018年4月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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