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はじめに
滋賀大キッズカレッジ(SKCキッズカレッジ)は,2005年にNPO法人としての認証を得て発達障害,とくに学習障害の相談・アセスメントと学習支援を目的として活動している.滋賀大学教育学部の教育相談活動の延長として生まれ,現在も教育学部と相互協力の協定書を結ぶなど,発達障害児の学習支援だけでなく,研究活動もNPO法人の定款に位置づけている.
主たる対象は読み書き障害のある発達障害児であるが,実際には単独の学習障害は少なく,多くは自閉症スペクトラム(autism spectrum disorder;ASD),注意欠如・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder;ADHD)など他の障害を併存していることが多い.
本稿ではまず簡単に学習障害がなぜ「見えにくい」のかを論じながら,学習障害の特徴を述べる.次に,発達障害児への教育的対応において滋賀大キッズカレッジの基本理念である「安心と自尊心」がなぜ重要であるかを,特に最近の特別支援教育の病理学化,スキルトレーニングの流行という現象に対比して明らかにする.そして,発達障害の理解および対応において,弁証法的階層論的理解が不可欠であることを論じる.最後に滋賀大キッズカレッジの学習指導の方法について具体的に素描することにしたい.
学習室の指導はきわめてシンプルである.シンプルさゆえにその趣旨がわかりにくいらしい.それゆえ,見学は事前の研修を受けることを前提にする以外はお断りしている.シンプルさゆえに,理論的背景を理解してもらう必要がある.
「安心と自尊心」をキーワードとする場,そこで子供たちは自分自身のしんどさを受け止め,ある時期に「飛躍的な発達的変化」を急激に成し遂げる.それは,病理学化され,認知科学的に細分化されて理解されている一般的な発達障害のとらえ方の再考を迫るものである.
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