Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
バルザックの『ルイ・ランベール』—統合失調症者への献身と理解
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.386
発行日 2018年4月10日
Published Date 2018/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552201287
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1832年に発表されたバルザックの『ルイ・ランベール』(水野亮訳,東京創元社)の主人公ルイは,フランスの片田舎で皮なめし業を営む夫婦の一人息子として大事に育てられた「やせぎすのほっそりした」天才肌の少年だった.1797年に生まれた「彼の記憶力はおどろくべきもの」で,学校でも「並はずれた能力」をもつ「未来の天才」と目されていたのである.
しかし,その一方で,ルイには,「病的な虚弱さ」,「神経質」,「慢性の憂鬱症」などの病的な要素が強調されるほか,「おのれの天才に悩んでいた」,「詩人たちをしばしば狂気に近づけることになる鋭さ」,「わたくしには彼の額が天才の圧力によっていまにも破裂しそうに思われた」など,天才と狂気の関係を示唆する表現も並んでいる.
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