総合リハビリテーション 46巻5号 (2018年5月)

特集 筋力トレーニング—エビデンス&プラクティス

今月のハイライト
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 筋力トレーニングは,整形疾患や脳血管障害のリハビリテーションには欠くことができないものであるだけでなく,心臓リハビリテーション・呼吸リハビリテーションや内部疾患に対する運動療法の中でも重要な役割を果たしています.一方,患者さんにとっては速歩などの有酸素運動に比べて筋力トレーニングはなじみが薄く,適切かつ丁寧な指導を必要としています.

 そこで今回は,筋力トレーニングの基礎から,評価,各疾患での筋力トレーニングの実際について,専門の先生方にご解説いただきました.

筋力トレーニングの基礎 山田 実
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はじめに

 レジスタンス運動は,数多くの基礎研究や臨床研究による強力なエビデンスによって構築されており,医学的リハビリテーション分野や予防医学分野,スポーツ分野など,さまざまなフィールドにおいて広く用いられる運動療法の1つである.近年では,高齢者に対するレジスタンス運動や各種疾患罹患者に対するレジスタンス運動など,リスクを有した方々に対するレジスタンス運動の効果も明確に示されるようになってきた.なかでも,2010年以降はサルコペニアやダイナペニア,フレイルなどの用語の普及が加速し,これまで運動にそれほどかかわっていなかった管理栄養士や保健師などの専門職にまでレジスタンス運動の重要性が浸透するようになった.

 なお,レジスタンス運動による筋力増強,筋肥大の効果を理解する際には,加齢に伴う筋力低下,筋萎縮を理解しておくことが重要である.本稿では,骨格筋の加齢変化を抑えながら,レジスタンス運動関連の情報を整理する.

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はじめに

 今日,筋力トレーニングの重要性は,運動器や脳卒中のリハビリテーションはもちろん,心血管,呼吸器,腎臓,そして,がんのリハビリテーションにおいても広く認められるところとなっている.最近は,レジスタンストレーニング(resistance training;RT)の総称で,フレイルやサルコペニアに対する最大の予防策として,その効果が注目されている.

 なぜ筋力トレーニングは,このように多岐にわたってその重要性が認められてきたのであろうか.それは,筋力増強と筋肥大の効果だけではなく,トレーニングの意味をもって筋萎縮に陥った対象者の「活動」を高める効果があるからだと思われる.なぜならば,筋力トレーニングは,リハビリテーション医学の方法論である活動機能構造連関1)(生物の機能と構造はその活動のレベルに適応して調整されているという考え方)を利用した治療だからである.すなわち,この身体の適応の能力を利用して,運動が一定の計画のもとに身体発達に用いられる場合がトレーニング2)であり,筋力トレーニングの普遍的原理となった「過負荷の原則」もこのような活動と機能構造の関連性を利用したものといえよう.

 こうしてみると,筋力トレーニングの目的は,対象者の活動障害改善のための方法論を確立し,種々の領域において,その効果をいかに上げるかではないかと考える.しかし,筋力トレーニングの効果をいかに上げたらよいかについては,関連するエビデンスを検索しても,まだまだ明確な答えは出ていないようである.そこで視点を変えて,対象者(患者)自身がいかに筋の収縮の仕方を意識し,いかに強化するかを体得して継続していけるかが重要と考える.なぜならば,次のステップとして,鍛えられた筋力を対象者自身が日常行動の中でいかに有効に発揮するかという,いわゆる運動学習の導入が課題となると考えるからである.才藤3)によれば,Parsonsの役割理論から,リハビリテーション医療場面では,治療者は教師としての役割をもち,患者は学習者としての役割をもつ.

 本稿では,筆者が経験した整形外科疾患患者のうち,大腿四頭筋萎縮例と高齢障害者を通じて患者教育に関する問題点を抽出し,それらの問題点を改善する治療法の効果をエビデンスの観点から検討する.そしてこれら症例検討を軸として,評価,治療/介入の今日的課題について,関連するシステマティック・レビュー,ガイドライン等から検討する.合わせて患者教育の視点に立った筋力トレーニングの進め方について述べてみたい.

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はじめに

 脳卒中に関連する死亡率は世界的に減少傾向である一方,脳卒中後の障害に関連した障害調整生命年(disability-adjusted life year;DALY)は増加傾向にあり1),依然として脳卒中は成人における障害発生の主要な原因であり続けている.脳卒中後にもたらされる障害とそれに伴う身体機能の低下に対する介入が重要視されている一方で筋力増強トレーニングに関する報告は少なく十分なエビデンスがあるわけではない2).今回は脳卒中治療ガイドライン2015を基に筋力トレーニングのエビデンスを概観するとともに,脳卒中後の筋力低下の特徴についても解説する.

変形性関節症 帖佐 悦男
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はじめに

 高齢社会から超高齢社会に突入したわが国では,新国民病といわれるロコモティブシンドローム(運動器症候群:以下,ロコモ)1,2)の疑いがある人が約4,700万人いると報告されている3).ロコモの人の多くは,腰痛や膝痛などの運動器疾患を訴え4),日常生活動作(activities of daily living;ADL)のみならず生活の質(quality of life;QOL)も低下している.特に,高齢者の運動器(骨・関節など)が障害されると移動機能が低下し,いわゆるロコモの状態となり,放置すると要支援・要介護となるため予防が重要である.早期から運動療法・体操の指導に加え生活環境まで包括した適切な介入を行えば,ロコモ予防のみならず関節症に伴う疼痛の軽減,機能の維持・改善も期待できる.運動療法として,筋力増強訓練,関節可動域訓練,柔軟性訓練(ストレッチング)やバランス訓練などがあり,本稿では,変形性関節症(主に膝関節症)に対する筋力トレーニング(増強訓練)を中心に述べる.

心疾患患者 山本 壱弥
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はじめに

 心疾患患者における骨格筋機能は運動能力に大きな影響を及ぼすだけでなく,患者の日常生活動作(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL),さらには生命予後にも直結している.心疾患患者の末梢骨格筋は,表11)に示すような形態学的・組織学的な異常が認められている.心疾患患者の骨格筋異常は以前から指摘されていたが,心疾患患者に対する筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)は長期間,専門家の間では収縮期血圧や心拍数が上昇し,不整脈や心筋虚血を誘発するなどの理由から心疾患患者には好ましくないとされていた(表2)2)

 しかし,1990年以降から心疾患患者に対するレジスタンストレーニングの安全性および有効性についての検証が進み,現在ではレジスタンストレーニングの絶対禁忌,相対禁忌も定義されている(表3)3).このような理由から,レジスタンストレーニングは有酸素運動とならび心疾患患者に対する有効性の確立された運動様式として,ガイドライン4)で推奨されている.

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はじめに

 慢性呼吸器疾患,特に慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)では,閉塞性換気障害の進行とともに,労作時の息切れが顕著となる.息切れは苦痛な症状であるため,患者はそれを避けることで生活習慣が身体活動を抑制する傾向にある.その結果,身体非活動性(physical inactivity;PI)の状態になり廃用に陥る.廃用に陥った身体では身体活動が苦痛となり,ますますPIが進行することとなる.このように,息切れによって廃用とPIは悪循環となり,状態を悪化させていく大きな要因となる.特に,COPDの管理の有症状期にはこのような悪循環を防ぐことが必要となる.適切な薬物療法に加えて,身体活動性を維持するリハビリテーション的なアプローチが必須となる.

 呼吸リハビリテーションは,COPDの領域のエビデンスの蓄積とともに確立されてきた.慢性呼吸器疾患における呼吸リハビリテーションは必須の治療と位置づけられており,COPDはそのゴールドスタンダードとなる疾患である1)

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 今,AIは人間のさまざまな社会活動に入りこみ,人間もこれを利用しようとしています.その一番大きな原因は何と言っても人手不足です.将来日本では,少子化とともに労働人口が確実に減少してきます.そのときにAIを搭載したロボットが人口減少対策,労働生産性維持の切り札としてその活躍が期待されています.もちろん医療現場もその例外ではありません.診断から手術に至るまで,AIの活用が重要となってきます.

 ところで,将棋の羽生竜王は,その著書の中で,最善手を選ぶ時にどうやったらうまくいくかを考えるのではなくて,どうやったらダメかを選択肢から排除していく過程が重要だと述べています.その過程では数多くの経験によって裏打ちされたものがどうしても必要になります.一般社会における問題の解決に答えは1つではないことがほとんどでしょう.しかし数ある選択肢の中で,ダメだというものはあるはずです.それを早期の段階で間引くようにすることが,問題解決への近道であると述べています.もちろんAIには過去の経験などというものはありませんから,ダメな選択肢を間引くことなく,膨大な経験データをひとつひとつ計算,検証することによって最善手を探し出していきます.

入門講座 リハビリテーション従事者のための論文の検索・収集・整理の仕方・2

各論 論文検索1 医中誌Web 下坂 充
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はじめに

 医学中央雑誌刊行会によると,「医中誌Web」とは,特定非営利活動法人医学中央雑誌刊行会が作成する国内医学論文情報のインターネット検索サービスであり,国内発行の医学・歯学・薬学・看護学および関連分野の定期刊行物,のべ約6,000誌から収録した約1000万件の論文情報を検索することができる1)とされている.

 医中誌Webは国内の1977年以降の文献を収録して2000年より提供され,2017年時点でバージョン5(Ver. 5)となっている.医中誌Webの利用は有料である.契約形態は法人契約とパーソナル契約の2種類がある.契約内容の詳細は医学中央雑誌ウェブサイトの「医学中央雑誌とは(サービス案内)」2)で確認できる.

 本稿では,臨床家が臨床場面でよりよい実践を行うためのレビューをつくるという場面を想定し,多忙ななかで短時間に関連する論文を検索する方法に絞って紹介する.医中誌Webが有する種々の検索機能やその補助機能の詳細な解説は,文献一覧に示した資料に譲る.

実践講座 地域包括ケア時代のさまざまな住まい方,新しい居住の形・1【新連載】

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はじめに

 「地域包括ケアシステム」とは,ニーズに応じた住宅の確保を基本として,さまざまな生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で提供されることにより,その人らしい暮らし方を尊重した地域居住の維持を可能とするネットワークを意味する.包括的な地域づくりの方向に発展しようとしているこの枠組みのなかで,障害のある人の住まいと地域居住について議論し,その課題を整理することは,地域社会が多様な人々を包摂する共生社会となるために有意義であろう.

 障害のある人の暮らしは,本人の意向を尊重した「暮らしの場」と「支援」が権利性の観点から協調される時代となっている.日本政府も2014年に批准している障害者の権利に関する条約19条では,「障害者が,他の者との平等を基礎として,居住地を選択し,及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」を締結国に求めている.これは障害者に特別な権利を認めるというものではなく,他の障害のない人と同様に地域社会に住まう権利があることを明確にし,それを実現していこうとするものである.逆にいえば,歴史的に,障害のある人がどこに住むかを自由意思で決めることは難しい状況があり続け,今もなおその制約は障害のない人と同程度とはいえない.

 その制約の1つとして,障害者グループホームの設置に関する住民の反対運動が現在でも頻繁に起きている.また特に障害が重い人たちにとっては,まだまだ地域での居住支援は十分ではなく,入所施設待機者は多く,後述するとおり入所施設からの地域生活移行率は低下している.さらに,少なくとも量的には地域生活支援の要となりつつある共同生活援助事業(以下,グループホーム)も課題を抱えている.以下,これらの課題を検討することを通して,地域包括ケア時代における障害のある人の地域居住支援のあり方について展望したい.

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要旨 【序論】自身の運転能力の過大評価は運転の危険因子とされているが,脳損傷者の運転の過大評価に対する介入研究はない.本研究では,ドライビングシミュレータ(driving simulator;DS)訓練とDSのリプレイ機能を用いたフィードバック(feed back;FB)が運転パフォーマンスや過大評価を改善させるかを検証した.【方法】対象は自動車運転評価とDS訓練を実施した脳損傷者20名とした.介入は,市街地を走行するDS訓練とリプレイ機能を用いたFBを組み合わせて計3〜6回実施した.アウトカムは,介入前後に測定した効果判定用コースの7項目の走行データを比較した.また,効果判定用コース走行後に6項目のVisual Analogue Scale(VAS)を用いて計測した自身の運転の評価と作業療法士による他者評価について,一致度をみる級内相関係数を算出した後,介入前後間・自己他者間の二要因の反復測定二元配置分散分析を実施した.【結果】介入後において,走行データの急ブレーキ回数,不適切な方向指示提示の回数,速度超過の平均の項目が改善した.VASは全項目で一致度に加え,自己・他者両評価が向上した.また,VASの交差点・コーナー・レーンにおける位置取り,注意,総合的な運転技能の項目では交互作用を認めた.【結論】脳損傷者に対するDS訓練とリプレイ機能を用いたFBは,運転パフォーマンス向上や適正な自己評価を促し,運転行動を改善させることが示唆された.

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要旨 【目的】脳卒中患者の運転支援に関する知見は蓄積されてきているが,雨天の影響は十分考慮されていない.石川県は全国で最も雨天日数が多く,地域の特性を踏まえると雨天の影響を評価することは大変重要である.本研究の目的は,プレスタディとして,石川県済生会金沢病院(以下,当院)に通院中の脳卒中患者に対して雨天走行に関する実態を調査し,雨天に影響する因子を探究することである.【方法】当院に通院中で雨天時の運転を経験している脳卒中患者11名に対して,半構造的面接を1人1回30分程度実施し,Berelsonの内容分析の手法を用いて分析した.また,カテゴリ分類の一致率をFleissのK係数を用いて算出した.【結果】運転を再開して困ったことは,68記録単位が抽出され,【困難さ】,【精神・心理的負担】の2コアカテゴリが形成された(K=0.76).入院中に練習しておいたほうがよいことは,36記録単位が抽出され,【シミュレータでの練習】,【シミュレータ以外での練習】,【なし】の3コアカテゴリが形成された(K=0.70).カテゴリ内の雨天に関連する項目として,運転時のワイパー操作や駐車時の配慮,イメージ・体験の必要性などがきかれた.【考察・結論】今回の結果から,雨天走行に影響する因子として,運転時のワイパー操作,駐車場所の確認,車からの乗り降り,雨天走行の体験・イメージづけ,改造に関する情報を考慮する必要性が示唆された.

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 回復期リハビリテーション病棟では,診療報酬において質の評価が行われている.2008年度に日常生活機能評価がプロセスとアウトカムの指標として導入され,数年ごとに基準が厳しくなった.その結果,重症患者の割合・重症患者の改善度・在宅復帰率という3つの指標に注意が必要となり,日常生活機能評価の採点の信頼性に疑問も生じている.日常生活機能評価が10点の患者数と9点の患者数の比は,1以下(診療報酬導入前)だったのが,2(2010年),3.3(2013年),3.9(2016年)に上昇した.

 2016年度には,Functional Independence Measure(FIM)を用いた実績指数がアウトカム指標として導入された.実績指数は,FIM改善度が大きく在院日数が短いほど高くなるもので,27以上の数値が求められている.これは,脳血管系と整形外科系の疾患が混在する回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム指標としてそれなりの妥当性を有するとされる.入院時運動FIM,認知FIM,年齢による除外が可能であり,どのような患者を除外すべきかに注目が集まっている.実績指数の導入後に,全国では平均FIM改善度が17.0点(2015年)から20.3点(2016年)に上昇し,熊本県ではFIM改善度に有意な変化はなかったものの,脳卒中の平均在院日数が,92.7日から81.1日に有意に短縮した.

連載 職業リハビリテーション関連機関の知識

職業能力開発校 井上 かおる
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はじめに

 障害者の就職件数・就職率は障害者の法定雇用率の引き上げや企業の障害者雇用に対する関心の高まりなどから,年々増加している.また職業訓練の受講が必要な求職障害者については多様化・重度化の傾向があり,既存の職業訓練が対象としている障害種別や訓練科目では,十分な対応が難しくなっている状況がある.そのため,厚生労働省は「障害者職業能力開発校の在り方に関する検討会」の報告書(2016年8月3日発表,以下,報告書)にて,現状の課題と対応策をまとめている.

 本稿では,障害者を対象に職業訓練を提供している「障害者職業能力開発校」の現状と課題,および利用方法等について解説する.

連載 患者会・支援団体の活動

全国ポリオ会連絡会 今田 雅子
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組織の概要

 国内で,ポリオの遅発性二次障害〔ポストポリオ症候群(post-polio syndrome;PPS)〕が少しずつ知られるようになり,1990年代中ごろから当事者間の情報交換などを目的とするポリオ会が各地に次々に誕生しました.そして各地の会が協力し2001年に全国ポリオ会連絡会が発足しました.

 現在は,エンジョイポリオの会(九州),ポリオネットワーク(関西・四国・中国),ポリオ友の会東海(東海・北陸),大阪ポリオの会(大阪),仙台ポリオの会(東北),北のポリオの会(北海道)の6団体が構成団体(会員)として,持ち回りで代表を選出し運営しています.ポストポリオに関する情報の提供や,障害者が生活しやすい環境整備のため社会に訴える活動を行っています.各地の会の会員の合計は,約920人になります.

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 明治32年に内村鑑三が発表した〔『米国ペンシルバニヤ州東部白痴院第45年報』書評〕(『内村鑑三全集第7巻』,岩波書店)には,米国の「白痴院」の現状が記されているだけでなく,わが国の精神科医療や障害者福祉の遅れに対する先駆的な批判が含まれている.

 内村はまず,この年報は,明治18年に内村が看護人として勤めていた白痴院のバー院長から贈られたものであるとして,現在の白痴院の状況を,次のように伝えている.「全院今や891名の入院生あり,60余名の役者に依て支配さる」,「昨年度の総歳入20万6千弗(我40万円以上),支払18万弗余(37万円余),中6万弗はペンシルバニヤ州の支出に係り,ヒラデルヒヤ府亦2万7千余弗を寄附す」,「白痴一人1ケ年の扶持費は117弗にして1週間3弗26仙の割合なり」.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 「最低。」(監督/瀬々敬久)は,<最低の職業>として家族や周囲から祝福されることのない3人のAV女優,釧路から東京に出てきた二十代の専門学校生・彩乃,三十代半ばの主婦・美穂,女子高生・あやこの母親・孝子のバックグラウンドを,ひとまず並列的に描く.

 筆者にとっての主役は,5歳から祖母のいる田舎町で暮らす女子高生・あやこ.母親は元AV女優.父親を特定できない.学校では,「撮影中に子供ができてお金がなくなって実家に戻ってきた母親」の子供として,いじめ・嘲笑の対象になっている.絵画の才能に恵まれ,コンクールでの受賞記事が校内の掲示板に貼り出されたりすることも<芸術系女子>としての孤高性を一層高めている.<映画はあやこのような子供の味方にならねばならない>とする筆者の映画観に呼応するがごとく,本作はあやこ救済の物語へと収れんしていく.

私の3冊

私の3冊 高畠 英昭

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 本書はSerge Tixa氏の著書『触診解剖アトラス(第3版)』の日本語訳本である.頸部,体幹・仙骨,肩,上腕,肘関節,前腕,手関節・手,股関節部,大腿部,膝関節周囲,下腿部,足関節および足部という12章で構成されている.

 本邦にも触診解剖あるいは体表解剖の類書は複数あるが,本書は550ページを超える大著である.骨学と筋学を中心に構成されているが,神経および血管についても記載されている.触診方法の特徴としては,関節を特定のポジションに保持して神経の触診を容易にする工夫や,「性差」について述べられている箇所もある.学習書として第1章から順次読み進めることももちろん良いが,必要な情報が網羅されているため,索引を用いて辞書的に活用することも可能である.また随所に記述されている「クリニカルヒント」は,運動器疾患患者を検査・評価する際に遭遇するさまざまな場面を想定して大変詳細に述べられている.

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 超少子高齢社会という情勢において,理学療法には,治療的介入と予防的介入の両面からの対応による,国民の健康や生活の質向上に向けての貢献が求められている.このような中で,安全で効果的な理学療法を実践していくために理学療法士の力源となるものは,対象者の健康や生活の質の向上を願う熱意と,自身の専門性の向上を追求し続けるプロフェッションとしての自律的な向上心である.

 その志を具現化するための第一歩は,対象者の臨床的,心理・社会的特性と,自身が実施した理学療法の内容,そして,その結果に関する正確な記述と振り返りである.このような臨床活動の記述と振り返りという能動的な学びが継続されなければ,臨床実践の経験は,個々の理学療法士の記憶の引き出しの中に,無形の「暗黙知」としてとどまることになる.そこで,理学療法における臨床実践の経験的事実を,可能な範囲で「形式知」として明示化し,経験科学という枠組みの中で体系的に整理していくことが,生涯学習における重要な礎となる.この臨床実践の形式知化を通して,評価・治療・指導方法やその効果に関する疑問などさまざまな臨床的疑問(Clinical Question:CQ)が生じることになる.

お知らせ

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 見て見ぬふりをしてきた体脂肪率がいよいよ抜き差しならない数字になったため,昨年の夏,意を決して筋トレをはじめました.トレーニングマシンに触れたことすらない全くの筋トレ初心者ですので,まずはトレーナーについていただくことにしたのですが,これがなんとも厳しい.「10回は持ち上がるけど11回目はぎりぎり持ち上げられない重さ」を3セット.9回目で「もうダメだ……」からあと1回,筋肉がプルプルするまで追い込まれます.これは1 RMの70〜80%の負荷で8〜12回程度行うレジスタンス運動で,筋肥大にもっとも効果的なトレーニングとのことです.

 さて,最初は半べそで行っていた筋トレですが,最近は自分なりの「コツ」をつかみ,余裕がでてきました.しかし効果はあまり上がっていません.なぜなら「コツ」といっても「もう限界です!いっぱいいっぱいです!」という「表情」でトレーナーを欺くコツをつかんだわけで,おそらく1 RMの50%ぐらいの低負荷×10回程度の反復トレーニングとなっている模様…….筋肉ではなく演技力が身につきました.初心に戻って頑張ります.

基本情報

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総合リハビリテーション
46巻5号 (2018年5月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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