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はじめに
筆者は看護教育学を専門としており,神奈川県立保健福祉大学の基盤分野に所属し,2012年より看護管理学・看護教育学領域の統合実習を担当している。統合実習は,4年生前期に配置された3単位3週間の実習であり,それまでに習得した知識と技術,経験を統合し,看護を総合的にとらえ実践していくとともに,自らが課題を発見,追求していく実習として位置づけられている。また,実習の専門領域は,基礎看護学・看護管理学・看護教育学領域,急性期看護学領域,慢性看護学領域,高齢者看護学領域,精神看護学領域,小児看護学領域,リプロダクティブ・ヘルスケア領域,地域・在宅・学校保健領域の8つに分かれている。学生は,各専門領域が提供する実習の場や方法のオリエンテーションを受けた後,統合実習を通して探究したいテーマを決めて専門領域の希望を提出し,原則,第3希望までの領域に配置される(統合実習の全体像および基礎看護学領域の実習については,前掲の水戸原稿p782を参照)。
看護管理学・看護教育学領域の統合実習は,学生がチームを組み,日替わりのリーダーを決めて,受け持ち患者全員へのチームナーシングを展開する形をとっており,2010年当時,看護管理学領域の准教授であった加納佳代子先生(現 東京情報大学特命副学長 看護学部担当)が考案された方法を基本としている。看護管理学・看護教育学領域を希望する学生の多くは,複数患者受け持ちにおける優先順位の決定やタイムマネジメント,チームナーシングにおける効果的な情報共有や協働をとおした個別性のある看護実践などを探究したいテーマとしている。また,チームナーシングは,看護方式の1つであり,チームナーシングそのものが看護の目的ではないため,(チームナーシングをとおした)言語的コミュニケーションが困難な患者への看護,病院から在宅への継続した看護など,各専門領域に共通した要素が,学生の探究したいテーマとしてあがる場合もある。
前任校に勤めていた頃,筆者は,基礎看護学領域の統合実習を担当し,学生1名が患者2名を担当する複数受け持ち実習や準夜勤帯の看護をシャドーイングする夜間実習を取り入れていたが,統合していく力を学生が「自ら」培うことに課題を感じていた。現在,取り組んでいる方法は,統合実習をとおして何を(あるいは何に向けて)どのように統合していくのかという視点のうち,「どのように」という部分を重視しており,学生が主体性,自律性を発揮し自己教育力を育みながら,質の高い看護実践に向けて知識・技術・経験を統合していく過程を歩めることに手応えを感じている。
本稿では,看護管理学・看護教育学領域が取り組んでいる統合実習の概要と学生の学習経験を紹介し,統合実習における統合,統合実習の可能性について考えてみたい。
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