皮膚科の臨床 61巻6号 (2019年5月)

特集 変わりつつあるアトピー性皮膚炎の常識―最新の知識と治療の極意

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「皮膚科の臨床」誌において,アトピー性皮膚炎を特集とするのは20年ぶりとなります。20年前と比較すると,アトピー性皮膚炎をめぐる状況は大きく変化しつつあります。2018年4月,アトピー性皮膚炎の新薬として,デュピルマブが発売されました。また,新たな薬剤開発も国内で続々と進んでおり,病態についても新たな知見が出てきています。まさに今,『常識』とされているアトピー性皮膚炎の情報を,整理する必要があるのではないでしょうか。

第Ⅰ章 最新の知識

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最新の知識

◆2型サイトカインであるインターロイキン(IL)-4やIL-13がアトピー性皮膚炎の炎症に根幹的に関与することが,本症にデュピルマブが奏効するという事実から確実となった。

◆IL-4やIL-13はフィラグリンの発現を低下させ,バリア障害を惹起する。

◆バリア障害をきたした表皮細胞からthymic stromal lymphopoietin(TSLP),IL-25やIL-33が産生されることによって2型免疫偏移が助長される。

◆主要なアレルゲンはプロテアーゼ活性を示し長鎖IL-33を切断し,より活性化された短鎖IL-33に変換するために2型免疫偏移が助長される。

◆2型サイトカインであるIL-31は知覚神経に作用し痒みを引き起こす。

◆IL-4やIL-13は,IL-31による痒みを増強する。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎の発症は遺伝的要因と環境要因の組み合わせでおこる。

◆アトピー性皮膚炎はバリア・細菌叢・免疫システムの相互作用でおこる。

◆STAT3欠損は相互作用を解析できるモデルである。

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最新の知識

◆角層の主要構成蛋白であるフィラグリンの遺伝子変異などによる皮膚バリア機能障害が,アトピー性皮膚炎の発症因子となる。

◆皮膚バリア機能障害により,経皮感作が亢進すると,アトピー性皮膚炎だけでなく,喘息,食物アレルギーなどの全身のアレルギー疾患の発症リスクがあがる。

◆炎症部表皮では,表皮タイトジャンクションバリアの外側に樹状突起を伸ばす活性化したLangerhans細胞が増加しており,表皮バリアの脆弱性により蛋白抗原への経皮感作が亢進している可能性がある。

◆皮膚バリアをよい状態に保ち,外来抗原の侵入を抑えることにより,新たな経皮感作やIgEを介したアレルギー反応を予防できることが期待される。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎には,自然免疫が関与している。

◆IL-33などのアラーミンが2型自然リンパ球などの自然免疫系の細胞を活性化する。

◆IL-33やTh2サイトカインは,炎症だけでなく,瘙痒やバリア破壊にも関与する。

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最新の知識

◆ヒスタミンだけでなく,IL-31,TSLP(thymic stromal lymphopoietin)など,痒みをおこすさまざまな起痒物質とその受容体が同定されてきた。

◆痒みを特異的に伝達する神経の存在や,それらの神経の特徴が明らかになってきた。

◆痒み伝達機構だけでなく,痒みを修飾する機構も存在していることが明白となった。

◆今後,これらをターゲットとした痒み治療薬の開発が期待される。

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最新の知識

◆汗は皮膚の恒常性に必須のものであるが,アトピー性皮膚炎の悪化因子になり得る。

◆アトピー性皮膚炎の悪化因子を含めた汗の成分の解析が進んでいる。

◆汗をかいた後の適切な対応が重要である。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎におけるdysbiosisは黄色ブドウ球菌のクオラムセンシング発現に関与し,PSM毒素が発現する。

◆黄色ブドウ球菌のPSMファミリー外毒素は角化細胞からのアラーミン放出や,肥満細胞の活性化を介して皮膚炎を惹起する。

◆常在細菌叢をコントロールすることでアトピー性皮膚炎の新規治療および予防法を開発しようという試みがなされている。

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最新の知識

◆新規ダニアレルゲンの同定:多数のダニアレルゲンコンポーネントが新規に同定された。グループ1およびグループ2がダニ主要アレルゲンとして認知されていたが,新たにグループ23アレルゲンの重要性が示唆された。ダニのゲノムが解明された。

◆ダニ由来分子のアジュバント活性:ダニ由来の生物活性(プロテアーゼなど)によるバリア破壊と自然免疫応答に関する基礎研究が大きく進展し,基礎免疫学的にも重要な発見がなされている。

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最新の知識

◆乳児期早期のアトピー性皮膚炎はその後の食物アレルギーの発症リスクが非常に高い。

◆乳児湿疹を放置しない。

◆アトピー性皮膚炎診断基準としてThe U. K. Working Party’s Diagnostic Criteriaが世界的によく使われる。

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最新の知識

◆乳幼児期発症の食物アレルギーの多くは,アトピー性皮膚炎(AD)や乳児湿疹を基礎疾患とした経皮感作によって成立している可能性が高い。

◆成人ADも経皮感作による食物アレルギー発症のリスクファクターである。

◆ADの治療を徹底することで,食物アレルギーの感作を防ぐことが可能である。

◆経皮感作によって成立した食物アレルギーは,感作経路を断つことができれば治り得る。

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最新の知識

◆アトピー素因のある人においてアレルギー疾患が次々と発症していく様子を「行進曲(マーチ)」に喩えた自然歴がアレルギーマーチであり,経皮感作と経口免疫寛容からみた予防策が注目されている。

◆皮膚バリア保護により経皮感作を防ぐという視点から,新生児期からの保湿剤定期塗布を行うランダム化比較試験が発表されているが,保湿剤のみで経皮感作を防ぐことができるかは大規模試験の結果を待つ必要がある。

◆経皮感作は「経湿疹感作」でもあり,皮膚の炎症を早期に治めるための介入試験が進行中である。

◆さらに積極的に経口免疫寛容を誘導するために,離乳食早期導入による食物アレルギー発症予防の検討が報告されるようになったが,皮膚の治療を並行することも重要であることが判明してきている。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎の皮疹は年齢により特徴が異なり,アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018においても年齢による皮疹の特徴が記載されている。

◆アトピー性皮膚炎の免疫学的病態が徐々に明らかになり,小児と成人の違いも明らかになってきている。

◆それらの明らかになった因子を標的とした治療薬の開発が進んでおり,その効果によって,さまざまな因子の本当の病的意義が明らかになってくると考えられる。

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◆アトピー性皮膚炎(AD)はひとつの疾患概念であり,どのAD患者にも共通した病態や症状はある。しかしサブタイプの存在は以前より知られていた。

◆サブタイプの代表が,内因性(intrinsic)ADと外因性(extrinsic)ADである。外因性ADは日常診療で診ることが多いタイプであり,血清IgEが高値でダニなどのアレルゲンに対する特異的IgEも高い。これに対し内因性ADは,IgEが正常域かそれに近く,特異的IgEが認められないタイプである。

◆外因性ADは,mixed type,allergic typeあるいはclassical typeと過去によばれ,一方,内因性ADはpure type,non-allergic typeあるいはatopiform dermatitisともよばれてきた。

◆内因性ADであってもアレルギーは関与しており,とくに金属アレルギーの頻度が高い。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎では角層を介して異物や環境蛋白,細菌・真菌が角層より皮膚に侵入しやすい。またアトピー性皮膚炎の皮膚で免疫担当細胞(Th2,Th17,Th22,Th1細胞)が皮膚に集合し,サイトカイン異常による炎症をおこしている。

◆アトピー性皮膚炎の角層にはフィラグリン,細胞間脂質の減少,タイトジャンクションの脆弱化などのバリア機能の低下があり,同時に角層の水分含有量が低下し,乾燥が進んでいる。

◆アトピー性皮膚炎ハイリスク群の新生児において経皮感作によるアレルギーマーチ獲得の可能性が指摘されている。

◆痒みの発症メカニズムにヒスタミンの関与しない経路としてサイトカイン(IL-4,IL-13,IL-31)の関与がある。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎の疫学はこれまで小児を対象とした調査が多かったが,成人を対象とした国際的な大規模調査が実施された。日本の成人アトピー性皮膚炎有病率は2.1%と報告され,欧米と比較して低かった。

◆小児アトピー性皮膚炎の有病率は日本では,近年横ばいから低下している。

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最新の知識

◆以前にはなかった,感度の高い,病勢の客観的指標が使用できるようになった。

◆治療前の病勢,治療効果を客観的に正確に評価できる。

◆TARCをモニターすることは,プロアクティブ療法の精度を高めることに有用。

◆病勢を数値化することで患者のアドヒアランスも向上する。

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◆アトピー性皮膚炎における「subclinicalな炎症」と「皮膚バリア機能」をコントロールする必要性がますます高まっている現在,それらを反映したバイオマーカーが求められている。

◆これまで使用されてきた血清総IgE値,血中好酸球数,血清LDH,血清TARCに加え,血清SCCA2が保険適用申請中である。

◆皮膚バリア機能を反映した経表皮水分蒸散量も注目されている。

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◆アトピー性皮膚炎のさまざまな症状の評価ツールを標準化しようとする動きがある(HOME meeting)。

◆HOMEの推奨する客観的な重症度評価ツールはEASIである。

◆アトピー性皮膚炎の生物学的製剤を含む新規治療を行うにあたり,EASIによる重症度評価が必要となっている。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎患者のQOLに配慮した診療が重視され,QOL評価は治療のアウトカム指標としても必須の項目として取り入れられている。

◆成人患者だけでなく小児や患者家族のQOLを評価する尺度が開発されている。

◆患者の視点からみたアトピー性皮膚炎の症状や治療効果の評価が治療の質の向上には重要であり,アトピー性皮膚炎の症状の自己評価ツールであるPOEM(Patient-Oriented Eczema Measure)の使用が提案されている。

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最新の知識

◆Visual analogue scale(VAS)の妥当性・信頼性が検証され,極値(最大値)の表現,重症度別の層別化における国際標準が定められた。

◆Numerical rating scaleはVASと高い相関があることが示され,VASの代わりに用いることができる。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎の病態の理解にパラダイムシフトが進み,ステロイド外用療法はアトピー性皮膚炎の「根本治療」のひとつと位置づけられるに至った。

◆臨床医の努力により,アトピー性皮膚炎のステロイド外用療法が技術として成熟し,標準化が大きく進んだ。

◆ステロイド外用薬が処方せん医薬品に指定されなかったことや,後発薬が先発薬と必ずしも同等でないことは,アトピー性皮膚炎の外用療法の将来に課題を投げかけている。

◆新たな全身治療や外用治療が登場するなか,今後,ステロイド外用療法の正しい施術や適切な位置づけがより一層求められる。

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最新の知識

◆タクロリムス軟膏はヒスタミン遊離抑制,IL-31産生抑制作用などを介して瘙痒を軽減する。

◆タクロリムス軟膏は頸部色素沈着,眼周囲の皮疹に対して効果を発揮しうる。

◆タクロリムス軟膏の妊婦に対する禁忌は解除され,治療上の有益性が危険性を上回る場合に使用する旨の注意喚起に変更された。

◆添付文書上の悪性腫瘍に関する警告については,まもなく終了を迎える10年間の前向き調査の最終結果に基づき,文言の見直しの検討が待たれる。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎の皮膚病変においては,外見上皮疹が消失してもsubclinicalな炎症や機能異常が残存している。そのため抗炎症外用薬の中断により再燃を招く。

◆頻回に再燃を繰り返す湿疹病変に対し,外見上の寛解後も週2回程度の間歇外用を継続するプロアクティブ療法によって長期寛解が得られやすい。

◆プロアクティブ療法を厳密に行えば,最終的に薬剤をほとんど必要としないdisease-freeとなる患者も相当数存在する。

◆抗炎症外用薬は従来単に症状緩和の対症療法と位置づけられていたが,使用方法に精通することでアトピー性皮膚炎の自然経過を修正することが可能な薬剤である。

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最新の知識

◆皮膚炎の悪化予防やアトピー性皮膚炎の発症予防の観点から,保湿外用薬の重要性が増した。

◆医薬品・医薬部外品を問わず,さまざまな種類や剤型の保湿外用薬が登場し,患者の皮膚状態と使用感に基づいた保湿外用薬の選択肢が増えた。

◆保湿外用薬の塗布量の目安であるFTU(finger-tip unit)や理想的な外用方法が,皮膚科医・小児科医だけではなくメディカルスタッフにも広く浸透しつつある。

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アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis,以下AD)の外用療法では,アドヒアランスや治療効果および病変などに応じて,皮膚外用薬を混合・希釈するなどの「自家調合」が広く行われている。皮膚外用薬は,基剤中に溶けている主薬が皮膚を透過し効果を発現する。クリームは軟膏に比べて,主薬の溶解性が優れることに加え,基剤が乳化していることから,数倍~数百倍透過が優れている。リドメックスコーワクリームは軟膏に比べ,8倍透過が優れることが示されている1)2)

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎に対しての抗ヒスタミン薬は第二世代の使用が基本である。

◆ヒスタミン以外の痒み惹起物質は多々あるため,抗ヒスタミン薬が奏効しない場合は,シクロスポリンや抗IL-4抗体製剤を含めた選択肢も検討する。

◆これまでの臨床経験から,アトピー性皮膚炎を含む瘙痒性皮膚疾患の治療に際しては,外用薬を用いての治療が基本であるが,抗ヒスタミン薬を積極的に行い,掻破行動を十分に抑制することが必須と考える。

◆皮膚の破壊を防ぐことが大事であり,また掻破に伴う白内障・緑内障などの眼の合併症を防ぐことも必要である。

◆ただしヒスタミンが関与しない痒みが存在することの理解も必要で,シクロスポリンの内服が奏効する症例や,適応外ではあるがロイコトリエン拮抗薬が有効である症例もある。また抗IL-4抗体製剤を含めた新規治療が奏効することも多い。

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最新の知識

◆1日1回などの低用量での治療の工夫が主流となっている。

◆費用対効果(後発品の活用も含む)が優れている。

◆止痒効果を期待して使用されることもある。

◆ガイドラインの遵守により,安全に使用することが認知されている。

◆データが蓄積されたことで,妊婦への投与や併用禁忌薬剤など,添付文書に改変点がある。

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最新の知識

◆アトピー性皮膚炎には病態に由来する多くの悪化因子があり,その認識と対策は診療上重要である。

◆多くの悪化因子は,不十分な治療や難治であることによる慢性炎症に起因する易刺激性などに作用するため,デュピルマブなどの有効性の高い新規治療薬の使用により,症状がコントロールされると,従来の悪化因子が悪化因子でなくなる可能性がある。

◆今後は治療薬・治療法の選択により,皮疹のコントロールレベルが異なることが予想され,悪化因子の重要度に影響すると思われる。

◆有効性の高い治療が主体になると,悪化因子への配慮がおろそかになり,治療手段によっては診療レベルが低下する可能性がある。

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最新の知識

◆以前は,照射プロトコールや適切な光源はなかったため,アトピー性皮膚炎に対する光線療法は一般的ではなかった。

◆ナローバンドUVB療法の登場とともに,アトピー性皮膚炎に照射治療が行われるようになったが,いまだプロトコールがあいまいである。

◆新たな治療であるデュピルマブが登場した現在,光線療法のポジショニングについてあらためて検討が必要である。

◆今後,UVA1(340~400nm)療法による光線療法の幅が広がり,ホームフォトセラピー(在宅光線療法)によって,光線療法の大きな問題点(頻回の受診の必要性)が解決される可能性がある。

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最新の知識

◆デュピルマブはアトピー性皮膚炎に対する初めての生物学的製剤である。

◆特異的な分子[IL-4受容体(IL-4Rα)]をターゲットとした,まったく新しい機序のアトピー性皮膚炎治療薬である。

◆副作用の少ない,効果的な治療法として強く期待されている。

◆治療効果を詳細にみることで,病態形成におけるターゲット分子の役割が,明らかとなる。

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最新の知識

◆IL-31受容体抗体のnemolizumabは主に痒みに対して有効であることが臨床試験で示された。

◆PDE4阻害外用薬のOPA-15406は皮疹に対して有効であることが臨床試験で示された。

◆JAK阻害外用薬のJTE-052は皮疹に対して有効であることが臨床試験で示された。

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最新の知識

◆プロバイオティクスによるアレルギー疾患の発症予防および治療効果に関するエビデンスが集積されてきている。アトピー性皮膚炎の発症予防および治療効果のメタ解析結果は,エビデンスレベルは低いものであるが推奨してはいる。

◆プロバイオティクスは生きた菌であるが,最近では死菌であっても効果がみられるとする報告があり,効果の機序は単一ではないと考えられる。

◆菌種・菌量,投与時期・期間,住居・食事などの生活環境,人種などさまざまな因子が影響していると考えられ,今後さらなる検討が必要である。

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最新の知識

◆近年,アトピー性皮膚炎の病態への皮膚微生物叢の関与が指摘され,黄色ブドウ球菌に対する静菌的治療が再注目されている。

◆ブリーチバス療法のエビデンスが集積されるに従い,欧米の主要なアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでも推奨されており,今後国内のアトピー性皮膚炎患者の関心も高まると予想される。

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最新の知識

◆日本皮膚科学会と日本アレルギー学会で協調して,ひとつのアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018を作成した。

◆ステロイド外用薬のランクは,年齢や皮疹の面積ではなく,個々の皮疹の重症度によって決めることにした。

◆小児も成人と同様に皮疹の重症度によってランクを決めるが,「短期間で効果が現れやすいので使用期間に注意する」ことを記した。

第Ⅱ章 治療の極意

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治療の極意

◆乳幼児のアトピー性皮膚炎治療の前提として,保護者にアトピー性皮膚炎の原因,病態について最新情報を提供し,そのうえで治療の具体案を提示する。

◆治療には① 悪化因子の回避,② スキンケア,③ 軟膏療法の3つの柱があることを示し,特に皮膚のバリア機能異常の早期是正が重要であり,スキンケアと軟膏療法指導に重点を置く。

◆皮膚炎を完全寛解に導き,寛解を維持するためにはステロイド,タクロリムス,保湿剤を中心とした外用薬が必須であり,それらを駆使してプロアクティブ療法を実践する。

◆アトピー性皮膚炎の乳幼児でも夜間に熟睡でき,翌日の遊びや活動に支障なく,健やかに成長するという目標を保護者と共有し,治療とスキンケアを継続するモチベーションを高める。

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治療の極意

◆外用はFTU(finger-tip unit)を意識して十分量を塗布させる。

◆皮膚感染症の拡大・予防のために,抗菌薬治療とともにアトピー性皮膚炎の治療・スキンケアも同時に行う。

◆顔面の症状が強い場合は定期的な眼科的フォローが必要である。

◆過度の日焼けによる症状悪化を防ぐために,帽子や長袖の着用およびサンスクリーン剤のこまめな塗り足しが大切である。

◆「学校生活指導管理表(アレルギー疾患用)」などを利用して,学校,家庭,医療機関の三者が協力して連携を図り,学校生活のなかで十分にスキンケアができるようにする。

◆プール授業ではサンスクリーン剤塗布やラッシュガード着用が大切である。

◆宿泊行事では,外用・内服薬の持ち忘れや塗り忘れの注意および前後の外用治療・スキンケアが重要であると指導し,皮膚の症状によっては一部の日程を休ませるなどの配慮が必要となる。

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治療の極意

◆悪化要因への対応を行う。

◆外用薬は十分に使用すれば効果があることを患者に実感してもらう。

◆プロアクティブ療法は理解を得るまで説明を繰り返す。

◆TARC(thymus and activation-regulated chemokine)の高値例は治療マーカーとして有用である。

◆難治例には難治・悪化要因に可能な限り対応し,適切な外用療法を行ったうえで長期間にわたりコントロールされない重症例は,シクロスポリンやデュピルマブの投与を検討する。

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治療の極意

◆妊娠中は環境,ストレス,サイトカインバランスの変化からアトピー性皮膚炎が増悪することが多い。

◆早期にステロイド外用薬によって寛解させ,適量のタクロリムス軟膏で維持する治療が望ましい。

◆妊娠期間中はstrong以上のステロイド外用量が総量300gを超えないようにする。

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治療の極意

◆ステロイド外用薬はその薬効(強さ)により,日本では一般にストロンゲスト(Ⅰ群),ベリーストロング(Ⅱ群),ストロング(Ⅲ群),ミディアム(Ⅳ群),ウィーク(Ⅴ群)の5段階のランクに分類される。

◆皮疹の重症度,部位,年齢など,症例により適切なランクのステロイド外用薬を見極め,適切な量を必要十分な期間にわたり外用する必要がある。

◆適切なランクのステロイド外用薬を外用しても効果が得られない場合,再度鑑別診断を検討したり,悪化因子,スキンケアの方法,ステロイド外用薬を十分量外用しているかを確認したりする必要がある。

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治療の極意

◆全身療法は,アトピー性皮膚炎の重症度や,QOLなどを適正に評価して適応を見極めることが重要である。

◆重症度評価法(SCORAD,EASI)や患者申告型スコア(DLQI)など客観的な評価法は活用する。

◆個々の症例の重症度に加え,社会的背景,治療の副作用,合併症などを総合的に勘案して,全身療法の導入を検討する。

◆全身療法開始前に,アドヒアランス低下に関連する要因に対する解決を試みる。

◆疾患の理解,外用療法の方法など患者教育を再考し,治療へのモチベーションの向上を促進する。

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治療の極意

◆慢性疾患の治療では,初診時に疾患の病態や見通し,治療の意義と具体的な方法を説明するとともに,段階的で具体的な治療の目標とゴールを示すことが大切である。

◆アトピー性皮膚炎の治療の目標は,「症状がないか,あっても軽微で日常生活に支障がなく,薬物療法もあまり必要としない状態に到達しその状態を維持すること」,治療のゴールは,「適切な治療によって皮疹が安定した状態を維持し寛解(ここでは薬物療法を必要としない状態を指す)に至る」ことである。

◆治療の目標やゴールは,個々の患者の重症度や治療歴,社会的な背景などを勘案して個別に設定することが大切である。

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治療の極意

◆患者の年齢や生活および保護者の生活を考慮すること。

◆なぜできないのか,続けられないのか,という理由を考えること。

◆なるべく,手間がかからず手早く塗れる処方にすること。

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治療の極意

◆外用薬では外用部位や外用量などのきめ細やかな指導が必要である。

◆薬剤の塗布量は,finger-tip unitを用いて具体的に説明する。

◆ステロイドのランクダウンよりも,塗布回数を減らすことを優先する。

◆頻回の通院を促すことで,アドヒアランス向上を図る。

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治療の極意

◆アトピー性皮膚炎は外部環境や生活行動中に悪化因子が存在することがあり,これらの要素を考慮した患者指導が重要である。

◆IoTデバイスの活用が,治療アドヒアランスの向上と適切な生活指導・外用指導につながる可能性がある。

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治療の極意

◆患者がフォビアとなった経緯について把握するとともに,フォビアの患者が抱いている危惧や不安を理解し,科学的根拠に基づいてその危惧や不安に対応する。

◆ステロイド外用薬に関して「処方しっぱなし」を避け,患者との信頼関係を構築しながら,寛解導入・維持ができているかを医師が経過を確認しながら治療を進める。

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治療の極意

◆除去ではなく食べることが食物アレルギー発症を予防する。

◆しかし,食べる指示は慎重に行う。

◆患者の不安に理解を示して具体的な食事の指示をする。

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治療の極意

◆アトピー性皮膚炎患者は皮膚バリア機能・保湿機能が低いため,健常人よりも化粧品での接触皮膚炎や刺激感などを生じるリスクがある。

◆ベースメイクでの色素沈着や赤みの補正に加え,目元,口元のポイントメイクを行うことにより魅力的に魅せることができるので,患者のQOLは高まる。触らなくなるなどの副次的な効果も期待される。

◆ベースメイクの下に保護作用のある保湿剤を塗り,低刺激性の化粧品を用いるのが無難である。

◆メイククレンジングを行う際は,適量のクレンジング料を用いて擦らないように優しく行い,洗顔後は忘れずに保湿剤を塗布する。

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治療の極意

◆アトピー性皮膚炎を皮膚心身症のひとつと捉える。

◆患者の抱える「病」を理解しようと努める。

◆世代に特有のストレス因子を念頭に置いて問診する。

◆心身相関に気づくために,セルフモニタリングが効果的である。

◆物事の捉え方にアプローチしてストレス対処スキル向上を図る。

◆ストレス解消法,ソーシャルサポート,コミュニケーションスキルを提案する。

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治療の極意

◆アトピー性皮膚炎では,悪化因子を見つけ,それから離れることが重要である。

◆抗アレルギー薬の内服,外用薬への反応が悪く,紅斑が持続し紅皮症を呈したり,痒疹や苔癬化局面が広範囲にみられたりする症例では,シクロスポリンやデュピルマブを選択する。

◆ステロイド内服を使用する際には,可及的速やかに他の治療法への転換を検討する。

◆偏食など生活習慣の異常についても考慮する。

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治療の極意

◆アトピー性皮膚炎では表皮のバリア機能の低下や免疫の変調により易感染性となっている。

◆ウイルス感染症や細菌感染症,真菌感染症などの皮膚感染症が合併症としてみられる。

◆皮疹をよく観察し,早期にアトピー性皮膚炎の皮疹とは異なる徴候を察知し,皮膚感染症を疑い,適切な検査と治療を行う。

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治療の極意

◆アトピー性角結膜炎と眼瞼皮膚炎に対する,眼科と皮膚科の連携治療が大事。

◆悪化時にはステロイド薬と免疫抑制剤を併用する。

◆改善期は徐々に点眼と軟膏を減らし,寛解しても再発予防にプロアクティブ療法で薬を継続するとともに,日常的なスキンケアを試みる。

◆白内障や網膜剝離を発症した場合には通常の手術よりも高難度技術を要する。

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治療の極意

◆しっかり外用をしていても湿疹が改善しない場合は接触皮膚炎を疑う。

◆抗生物質含有製剤はアレルギー性接触皮膚炎をおこしやすい。

◆検査にはパッチテストを行うが1週間後判定まで行うとよい。

◆湿疹のためパッチテストが困難な場合はrepeated open application test(ROAT)を行う。

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治療の極意

◆アトピービジネスとは混乱するアトピー性皮膚炎医療をめぐる詐欺的療法である。

◆アトピービジネス問題は,2000年代を中心としたわが国の社会問題であった。

◆アトピービジネスの背景には強いステロイドバッシングが存在する。

◆日本皮膚科学会がアトピービジネス問題に対応し,現在では社会問題としてのアトピービジネス問題はほぼ終焉している。

◆治療の極意は特にない(皮膚科医は淡々と診療すればよい)。

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アトピー性皮膚炎と鑑別すべき疾患を集めてみました。

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目次

奥付

基本情報

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皮膚科の臨床
61巻6号 (2019年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0018-1404 金原出版

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