臨牀消化器内科 37巻9号 (2022年8月発行)

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食道疾患の診療

本扉 37巻9号 , 2022年8月 , pp.979-979

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執筆者一覧 37巻9号 , 2022年8月 , pp.980-980

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序文 37巻9号 , 2022年8月 , pp.981-982

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目次 37巻9号 , 2022年8月 , pp.983-990

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Ⅰ　扉 37巻9号 , 2022年8月 , pp.991-991

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Ⅰ　食道疾患の理解に必要な基礎知識　1　食道の解剖高木　靖寛 37巻9号 , 2022年8月 , pp.992-995

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食道とは食道入口部から食道胃接合部までをいい，食道入口部は輪状軟骨の下縁レベルに一致する．食道の区分はまず三つに大別される．すなわち入口部より胸骨上縁までを頸部食道（cervical esophagus；Ce），胸骨上縁から食道裂孔上縁までを胸部食道（thoracic esophagus；Te），食道裂孔上縁から食道胃接合部までを腹部食道（abdominal esophagus；Ae）と呼ぶ．胸部食道はさらに三つに亜分類され，気管分岐部下縁までを胸部上部食道（upper thoracic esophagus；Ut），気管分岐部下縁から食道胃接合部までを2等分した上半分を胸部中部食道（middle thoracic esophagus；Mt），2等分した下半分を胸部下部食道（lower thoracic esophagus；Lt）と区分されている．

Ⅰ　食道疾患の理解に必要な基礎知識　2　食道の血行動態林　涼子 , 山本　果奈 , 中村　真一 , 徳重　克年 37巻9号 , 2022年8月 , pp.996-1001

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本稿では食道疾患を理解するうえで基礎となる食道の血行動態―動脈，静脈系―について解説する．また，静脈系では門脈圧亢進症に伴う病態である食道・胃静脈瘤の発生機序を理解するための血管構築についても併せて概説する．

Ⅰ　食道疾患の理解に必要な基礎知識　3　食道の生理機能舟木　康 , 加藤　駿介 , 田村　泰弘 , 井澤　晋也 , 小笠原　尚高 , 春日井　邦夫 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1002-1009

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食道のおもな生理機能は，嚥下された食物を咽頭部から胃に運搬することと，それが胃から逆流するのを防ぐことである．食道腺などの分泌機構も存在するが，その生理的な役割については現時点では不明な点が多い．機能性消化管障害の指針であるRome Ⅳ基準では，食道機能障害を機能性胸やけ，食道由来機能性胸痛，機能性嚥下困難，球症状の四つに分類している．近年，高解像度内圧測定装置（high resolution manometry；HRM）やインピーダンス・pHモニタリング検査法などが開発され，食道の詳細な生理機能の評価が可能となり，食道疾患の病態の解明が期待できる．

Ⅱ　扉 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1011-1011

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Ⅱ　胃食道逆流症の診療　1　「胃食道逆流症（GERD）診療ガイドライン2021」の概要岩切　勝彦 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1012-1016

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2015年10月に「胃食道逆流症（GERD）診療ガイドライン2015」（改訂第2版）が発刊された．その後もGERD診療の新たな知見が報告されるとともに，2015年2月には逆流性食道炎治療薬として新規酸抑制薬であるpotassium―competitive acid blocker（P―CAB）が世界に先駆けて上梓された．GERD診療における新たな知見データをガイドラインに加えるとともにP―CABの位置づけを示す必要があり，2018年7月に開催された日本消化器病学会ガイドライン委員会により，改訂作業の開始が決定された．本稿では改訂作業の経過および今回の改訂ポイントについて解説する．

Ⅱ　胃食道逆流症の診療　2　胃食道逆流症の成因と疫学沢田　明也 , 藤原　靖弘 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1017-1022

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胃食道逆流症（gastroesophageal reflux disease；GERD）は日常診療でよく遭遇する疾患の一つである．本邦での逆流性食道炎の有病率は約10％と推定されており，非びらん性胃食道逆流症も含めると約20％程度に達する．GERDの発症にはさまざまな要因が関与し，胃食道逆流のみならず食道知覚の異常も病態の一つであることが明らかとなってきている．

Ⅱ　胃食道逆流症の診療　3　胃食道逆流症の診断和田　将史 , 畑　佳孝 , 水流　大尭 , 牟田　和正 , 伊原　栄吉 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1023-1028

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胃食道逆流症（gastroesophageal reflux disease；GERD）は「胃内容物の逆流により，不快な症状あるいは合併症を生じた状態」と定義される．GERDは，粘膜傷害を伴う逆流性食道炎と粘膜傷害を認めない非びらん性胃食道逆流症（non-erosive reflux disease；NERD）に分類される．GERD診療の難しさは，症状から診断されるNERD（広義のNERD）の約半数にGERD以外の病態が紛れ込んでしまうことにある．最近，食道機能を可視化する食道生理機能検査の発展と共にGERD診療が飛躍的に進歩した．本稿ではGERD診断およびその鑑別診断に重要な検査法とその診断基準について概説する．

Ⅱ　胃食道逆流症の診療　4　胃食道逆流症の薬物療法小池　智幸 , 伊丹　英昭 , 大原　祐樹 , 齊藤　真弘 , 正宗　淳 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1029-1038

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胃食道逆流症（gastroesophageal reflux disease；GERD）は，胃食道逆流により引き起こされる食道粘膜傷害と煩わしい症状のいずれかまたは両者を引き起こす疾患であり，食道粘膜傷害を有する「逆流性食道炎」と症状のみを認める「非びらん性逆流症（non―erosive reflux disease；NERD）」に分類され，胸やけと呑酸が定型症状である（図1）．GERD患者の長期管理の主要目的は，症状のコントロールとquality of life（QOL）の改善であり，酸の胃食道逆流を防ぐ治療はGERD患者のQOLを改善する．GERD症状が消失した場合には低下したQOLは健常者のレベルまで改善する．なお，1週間に1回以上のGERD症状発現は，QOLに対して悪影響を与え，薬物療法において症状の消失効果が高くかつ速やかな薬剤のほうがより高いQOLの改善が得られることが報告されている．

Ⅱ　胃食道逆流症の診療　5　胃食道逆流症の非薬物療法島村　勇人 , 田邊　万葉 , 年森　明子 , 鬼丸　学 , 井上　晴洋 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1039-1045

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胃食道逆流症（gastroesophageal reflux disease；GERD）患者のほとんどが内科的治療で食道粘膜傷害の治癒や症状の改善が得られる．内科的治療の第一選択はプロトンポンプ阻害薬（proton pump inhibitor；PPI）であるが，酸逆流抑制効果が強力かつ即効性を有するボノプラザン（potassium―competitive acid blockers；P―CAB）が登場し，PPI抵抗性GERDに対しても有効である症例が増えている．ただし，それでも治療に効果不応な薬物治療抵抗性GERDが少なからず存在する．そのような場合には内視鏡的治療や外科的治療が考慮される．本稿では，薬物治療抵抗性GERDに対して行われている内視鏡的治療を中心に概説する．

Ⅲ　扉 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1047-1047

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Ⅲ　食道癌の診療　1　「食道癌診療ガイドライン」の概要坊岡　英祐 , 北川　雄光 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1048-1054

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2002年に初版として発刊された「食道癌治療ガイドライン」は，その後診断に関する記載が追加され，「食道癌診断・治療ガイドライン」として2007年，2012年と5年ごとに改訂された．第4版（2017年版）の改訂に際しては，5年に一度というタイムスケジュールは踏襲したものの，名称を「食道癌診療ガイドライン」に変えただけでなく，いわゆる「ガイドライン作成の手順」に準拠し2017年6月に発刊した．現在は第5版改訂作業中で，第4版の作成方法および5年ごとのタイムスケジュールを踏襲し2022年の発刊を予定している．

Ⅲ　食道癌の診療　2　「食道癌に対するESD/EMRガイドライン」の概要石原　立 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1055-1059

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日本消化器内視鏡学会が中心となり，「食道癌に対するESD/EMRガイドライン」（以下，ガイドラインと略す）を作成した．このガイドラインでは，食道癌内視鏡切除の術前診断，適応，切除法，治癒判定，切除後サーベイランスに関する18のclinical question（CQ）に対する推奨を提示した．

Ⅲ　食道癌の診療　3　食道がんの罹患率・死亡率の動向井上　真奈美 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1060-1064

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食道がんは日本人のがんのなかでは比較的少ないがんである．喫煙と関連の深いがんでもあるが，近年は肥満や近接する胃がんの要因であるヘリコバクター・ピロリ感染の減少に伴い，その動向が注目されている．本稿では，がん統計からみた食道がんの実態について概説する．

Ⅲ　食道癌の診療　4　食道癌治療成績の全国集計渡邊　雅之 , 藤　也寸志 , 土岐　祐一郎 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1065-1068

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がん登録は，がんの診断・治療・経過などに関する情報を収集し，保管・整理・解析する仕組みである．わが国のがん登録には，全国がん登録，院内がん登録，臓器がん登録の三つがある．全国がん登録は，2016年に施行された「がん登録等の推進に関する法律」に基づき，すべての病院と指定された診療所は各都道府県の登録室へがん患者の罹患情報を届け出ることが定められている．院内がん登録は全国のがん診療拠点病院と都道府県から推薦された施設から情報を集め，その病院のがん治療がどのように行われているかを明らかにする調査である．一方，臓器がん登録は各がん腫の臓器別学会が主体となり，臨床病理学的特徴の正確な把握や治療方針の策定，治療成績の把握を目的としている．食道癌全国登録は日本食道学会の全国登録委員会が主体となって登録を担っている臓器がん登録である．本稿では食道癌全国登録の歴史と成果，課題について述べることとする．

Ⅲ　食道癌の診療　5　食道癌の危険因子古江　康明 , 堅田　親利 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1069-1073

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食道癌の患者では，食道粘膜に多発する異型上皮を認めることがあり，ヨード色素内視鏡検査では多発ヨード不染帯として視認することができる．上部消化管に複数の腫瘍性変化が発生することは，アルコールやタバコの煙などの発がん物質に繰り返しさらされることに関連する「Field cancerization」という概念で説明されてきた．2009年10月に世界保健機関（World Health Organization）の下部組織である国際がん研究機関（International Agency for Research on Cancer；IARC）は，エタノールの最初の代謝産物であるアセトアルデヒドをGroup 1の発がん物質と認定しており，現在に至るまでさまざまな食道癌の危険因子が解明されてきた．本稿では，食道癌の危険因子であるアセトアルデヒドと食道癌の関係について概説する．

Ⅲ　食道癌の診療　6　食道癌のゲノム，エピゲノム異常竹内　千尋 , 張　春東 , 牛島　俊和 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1074-1078

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食道発癌のメカニズムを考えるうえで，ゲノム，エピゲノムの異常が重要である．実際にTCGA（The Cancer Genome Atlas）などの次世代シークエンサーを用いた大規模研究において，食道癌に存在する数々の遺伝子突然変異，DNAメチル化異常が報告されている．また食道癌が発生する以前の正常食道上皮にも，突然変異やDNAメチル化異常がすでに蓄積していることも明らかになってきている．本稿では，食道癌および正常食道上皮に存在する突然変異・DNAメチル化異常について述べた後，食道癌の分子的特徴に基づく抗癌剤治療や病態診断についても紹介したい．

Ⅲ　食道癌の診療　7　食道癌のX線，CT，PETによる診断田中　努 , 大西　祥代 , 山田　啓策 , 田近　正洋 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1079-1083

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食道癌の治療方針を決めるためには，さまざまな画像診断法を用いて病変を多面的に評価し，より正確な病期診断を行うことが重要となる．本稿では，画像診断法のうちとくに食道造影X線，CT，PETの食道癌診断におけるポイントについて概説する．

Ⅲ　食道癌の診療　8　食道癌の超音波内視鏡診断大岩　恵祐 , 古川　和宏 , 川嶋　啓揮 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1084-1088

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食道癌は現行の「食道癌診療ガイドライン2017年版」におけるアルゴリズムに従って治療方針が決定される．検査モダリティとしては食道造影検査，上部消化管内視鏡検査，超音波内視鏡検査（endoscopic ultrasonography；EUS），CT検査，PET検査などが挙げられる．治療方針を決定するうえでは各種検査を組み合わせて行う必要があるが，とくに表在型食道癌の治療方針を決定するうえでは深達度診断が重要となる．食道癌診療において，EUSは画像強調法併用拡大内視鏡と共に深達度診断を担う重要な検査である．また表在型食道癌のなかでも，リンパ節転移が陽性となる症例がある．食道壁は比較的薄いことから，EUSで壁外のリンパ節腫大も観察することができるため，診断および治療に寄与する場合がある．

Ⅲ　食道癌の診療　9　食道扁平上皮癌の内視鏡診断―拾い上げ診断から質的診断まで小山　恒男 , 高橋　亜紀子 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1089-1094

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食道扁平上皮癌（ESCC）の危険因子は喫煙，飲酒であり，以前はヨード散布によるスクリーニングが推奨されていた．しかし，ヨード染色は胸やけ，胸痛などの副作用があり，日常臨床での使用は困難であった．一方，近年普及しつつあるNarrow Band Imaging（NBI）に代表されるImage Enhanced Endoscopy（IEE）は，ESCCの拾い上げに有用とされる．本稿ではESCCの「存在診断」，および治療方針決定に必要な「質的診断」に関して解説する．

Ⅲ　食道癌の診療　10　Barrett食道表在腺癌の内視鏡診断―拾い上げから質的診断郷田　憲一 , 阿部　圭一朗 , 金森　瑛 , 近藤　真之 , 田中　孝尚 , 鈴木　統裕 , 山宮　知 , 富永　圭一 , 飯島　誠 , 入澤　篤志 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1095-1099

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Barrett食道腺癌は欧米諸国において急増しているが，本邦では依然まれである．しかし，本邦における逆流性食道炎とBarrett食道の罹患率増加に伴い，漸増傾向にあるとされる．Barrett食道腺癌は解剖学的に複雑な食道胃接合部に好発し，慢性炎症を背景に発生するため，内視鏡診断の難易度が高い場合が多い．そこで，本稿ではBarrett食道表在腺癌の拾い上げから質的診断のコツとポイントについて解説したい．

Ⅲ　食道癌の診療　11　食道癌の生検病理診断小嶋　結 , 日下　恵理子 , 小柏　剛 , 立石　陽子 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1100-1104

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食道の腫瘍性病変の生検診断は，治療方針の決定のうえで重要な判断材料となるが，生検検体は切除検体と異なり小さな組織片であるため，腫瘍・非腫瘍の判別や異型度の評価が難しい場合がある．本稿では，扁平上皮癌，扁平上皮内腫瘍および腺癌の生検診断について概説する．

Ⅲ　食道癌の診療　12　食道癌切除標本の病理診断塚本　徹哉 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1105-1112

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食道には，さまざまな悪性腫瘍が発生しうる．欧米では腺癌が優位となっているが，日本をはじめとしたアジア諸国では依然，扁平上皮癌が大部分を占めている．本稿では，病理報告書の理解の一助として，食道の正常組織所見を呈示し，とくに扁平上皮系の上皮内病変と浸潤癌の特徴について概説したい．

Ⅲ　食道癌の診療　13　食道扁平上皮癌に対する内視鏡的切除辻　陽介 , 坂口　賀基 , 藤城　光弘 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1113-1118

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消化管上皮性腫瘍に対する内視鏡的切除は広く普及し，食道扁平上皮癌においても例外ではない．内視鏡的切除の方法については，内視鏡的粘膜切除術（endoscopic mucosal resection；EMR）ならびに内視鏡的粘膜下層剝離術（endoscopic submucosal dissection；ESD）が行われている．本稿では食道扁平上皮癌の内視鏡的切除の適応や治療の実際，また治療後フォローアップで気をつけるべき点について解説する．

Ⅲ　食道癌の診療　14　食道腺癌に対する内視鏡的切除鈴木　悠悟 , 布袋屋　修 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1119-1124

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近年，本邦では食の欧米化や逆流性食道炎の有病率の上昇を背景として，西洋と同様にバレット食道を発生母地とする食道腺癌の有病率も上昇傾向にある．一方で画像強調内視鏡や拡大内視鏡などの内視鏡技術や機器の進歩も相まって，早期の食道腺癌を発見し，内視鏡的に治療する機会も増えてきている．そこで本稿では食道腺癌に対する内視鏡的切除の適応，治療の実際，治療後のフォローアップについて概説する．なお占拠部位が扁平上皮領域である食道腺や異所性胃粘膜由来の食道腺癌については，頻度がきわめてまれであるため，本稿ではバレット食道癌のみを対象とした．

Ⅲ　食道癌の診療　15　食道癌に対する光線力学療法（PDT）浦部　昭子 , 矢野　友規 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1125-1129

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光線力学療法（photodynamic therapy；PDT）は，光感受性物質（photosensitizer；PS）とPSを励起するレーザーによる光化学反応を誘発して腫瘍細胞にダメージを与える治療方法である．PDTのおもな抗腫瘍メカニズムは，光化学反応によって活性酸素を発生させ腫瘍細胞を死滅させるもので，本邦では1994年に第一世代のPSを用いたPDTが表在食道癌に対する内視鏡治療として承認されている．米国では，第一世代PDTは異形成を伴うバレット食道に対する予防的治療や症状のある閉塞性食道癌の緩和治療として承認されている．しかし，その有害事象や手技の煩雑さ，さらには内視鏡的粘膜下層剝離術（ESD）やラジオ波，冷凍アブレーション療法などの内視鏡的治療法の発達により，世界的に食道癌に対するPDTの実施は少なくなっていた．

Ⅲ　食道癌の診療　16　食道癌に対する開胸手術尾﨑　麻子 , 峯　真司 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1130-1135

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右開胸食道切除術は食道癌に対する外科的治療として現在でも標準術式である．一方で近年では鏡視下食道切除術が急速に普及し，2018年の調査では食道表在癌の72.2％，進行食道癌の62.2％に対して鏡視下手術が行われている（図1）．右開胸食道切除は術野が狭く深いため他臓器の手術以上に鏡視下手術が急速に普及したのではないかと考えている．当初はサルベージ食道切除や隣接臓器浸潤が否定できない症例には右開胸アプローチが選択されていたが，そのような症例に対しても近年では徐々に鏡視下手術が適用されるようになってきた．

Ⅲ　食道癌の診療　17　食道癌に対する鏡視下手術，ロボット手術瀬戸　泰之 , 八木　浩一 , 西田　正人 , 愛甲　丞 , 山形　幸徳 , 森　和彦 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1136-1140

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cStage Ⅰ，Ⅱ，Ⅲ食道癌に対する治療の中心は手術（外科的切除）となっている．また，Stage Ⅱ，Ⅲ症例に対しては根治切除前に術前化学療法（neoadjuvant chemotherapy；NAC）を行うことが推奨されている．その詳細は他項を参照されたい．日本食道学会による食道癌登録によれば，2013年に治療を受けた8,019例中手術を受けたのは4,910例であり，61％になる．世界71カ国，37,513,025例（18癌腫）の予後比較（CONCORD―3）では，食道癌5年生存率は日本36％であり，もっとも良好な結果であった．わが国における食道癌診療水準の高さを示しているものと考えられる．

Ⅲ　食道癌の診療　18　進行・再発食道癌に対する薬物療法中田　晃暢 , 室　圭 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1141-1148

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本邦における食道癌は，予後不良な疾患であり，他癌種と同様に高齢発症が多い．食道癌の5年相対生存率は47.5％と，胃癌の72.1％や大腸癌の72.6％と比較して予後不良である．とくに，化学療法の主要な適応であるⅣ期の食道癌の5年相対生存率は9.2％とかなり低い．また，昨今の高齢化を反映して，粗罹患率は増加傾向である．このように治療成績が悪く，積極的な治療が困難な高齢者が多い点から，治療の進歩，発展が望まれる癌種の代表といえる．このように，進行・再発食道癌（以下，進行食道癌）の薬物療法を取り巻く状況は厳しいが，近年の免疫チェックポイント阻害薬（immune checkpoint inhibitor；ICI）の開発は目覚ましいものがあり，すでに二次治療以降の標準治療として広く使用されている．さらに，一次治療におけるICIの使用が本邦で承認され，これまでの抗癌剤治療のみの標準治療から一変した．

Ⅲ　食道癌の診療　19　食道癌に対する集学的治療―周術期補助療法前田　修 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1149-1153

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cStage ⅡおよびⅢの食道癌に対する治療は，食道切除術および周術期治療が標準治療である．ここでは日本における治療の変遷と，海外におけるエビデンス，今後の治療の展望などについて述べる．

Ⅲ　食道癌の診療　20　食道癌に対する集学的治療―化学放射線療法髙木　正統 , 吉武　忠正 , 石神　康生 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1154-1157

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初回の根治的治療例，手術後の残存例や再発例，内視鏡的治療後の粘膜下層浸潤陽性例などCRT（chemoradiotherapy）の適応は多岐にわたる．化学療法と放射線治療の併用のおもな目的は増感作用による局所制御率の向上であり，放射線治療に化学療法を同時併用することで生存期間の延長が報告されている．一方で有害事象も高率に認められるため，年齢や全身状態，合併症を考慮して症例ごとに適応を検討する必要がある．

Ⅲ　食道癌の診療　21　食道癌に対する放射線療法―粒子線治療も含む溝口　信貴 , 高草木　陽介 , 加納　希生 , 島　聖 , 土田　圭祐 , 芹澤　慈子 , 鎌田　正 , 吉田　大作 , 加藤　弘之 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1158-1164

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1980年代後半に米国のRadiation Therapy Oncology Group（RTOG）で施行されたランダム化比較試験（RTOG 8501）により，食道癌に対する根治的化学放射線療法は放射線単独療法と比較して有意に生存率が向上することが示されている．根治的化学放射線療法は，切除可能であるT1―3N0―3M0（UICC TNM第8版）に対しては食道温存を図ることができる治療選択肢の一つとして，切除不能であるT4N0―3M0や所属リンパ節転移でないリンパ節転移（M1 LYM）症例に対しては標準治療として行われている．

Ⅲ　食道癌の診療　22　食道癌に対する緩和治療―ステント治療も含む松山　仁 , 上田　正射 , 中島　慎介 , 谷田　司 , 池永　雅一 , 山田　晃正 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1165-1169

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緩和治療はすべての癌領域で共通に行われるべき医療であるが，食道癌では嚥下障害や栄養障害などによりQOL（quality of life）の低下をきたす場合が多く，治療の初期段階から症状緩和やQOL改善に向けた治療法について検討する必要がある．

Ⅳ　扉 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1171-1171

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Ⅳ　その他の食道疾患の診療　1　「食道運動障害診療指針」の概要栗林　志行 , 草野　元康 , 浦岡　俊夫 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1172-1178

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高解像度食道内圧検査（high―resolution manometry；HRM）や食道アカラシアに対するper―oral endoscopic myotomy（POEM）が登場し，食道運動障害に対する診療が大きく変化した．本邦でもHRMを導入する施設が増加し，POEMを行っている施設も増加傾向となっている．こうした背景から，日本消化管学会ガイドライン委員会ガイドライン小部会で食道運動障害診療に関するガイドラインを作成することとなった．しかし，残念ながらガイドラインを作成するには食道運動障害に関する本邦からのエビデンスは十分ではないことから，食道運動障害診療における教科書となりうる診療指針を作成する方針となった．本稿では，日本消化管学会が中心となり，日本食道学会の協力を得て編集された「食道運動障害診療指針」の概要について紹介する．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　2　「POEM診療ガイドラインの概要」と最新の知見塩飽　洋生 , 岡田　浩樹 , 塩飽　晃生 , 長谷川　傑 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1179-1187

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経口内視鏡的筋層切開術（peroral endoscopic myotomy；POEM）は2008年に本邦で開発された食道アカラシア（以下，アカラシア）に対する画期的な治療法で，現在では国内外において標準治療の一つとして行われている．本稿では，2018年に公開された「POEM診療ガイドライン」（以下，ガイドライン）が，実際の臨床現場でどのように生かされているかにつき，自験例や国内外からの報告も併せ解説をする．また，ガイドライン公開以降に新たにわかった知見についても併せて述べる．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　3　食道アカラシア井上　晴洋 , 福田　舞 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1188-1192

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食道アカラシアは嚥下障害，胸痛などを主訴とする食道運動機能障害の一つである．2008年に本邦で開発された経口内視鏡的筋層切開術（per―oral endoscopic myotomy；POEM）は，体表に傷がないこと，また必要に応じて従来の外科手術より長い筋層切開をおけることなどにより，今では世界標準の治療となった．ここでは，食道アカラシアの診断・治療について概説する．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　4　食道憩室桑井　寿雄 , 楠　龍策 , 田丸　弓弦 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1193-1197

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食道憩室は良性疾患で無症状のことが多いが，なかには嚥下困難や逆流などの原因となり，患者のQOLを著しく低下させることもある．そこで本稿では食道憩室の疫学と病態，そして最新の内視鏡治療を含めた実際の診療について解説した．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　5　食道裂孔ヘルニア望月　暁 , 八木　浩一 , 石岡　充彬 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1198-1202

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高齢者人口の増加に伴い，外科的手術を要する大きな食道裂孔ヘルニアを有する患者は増加している．胃食道逆流症（GERD）手術件数は年々増加し，2007年は170件であったのに対して，2017年は358件と2倍以上に増加している．今後，さらなる増加が予想されるため，手術療法の適応についても知っておく必要がある．本稿では，食道裂孔ヘルニアの疫学，病態，そして実際の診療について概説する．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　6　先天異常に伴う食道疾患内田　広夫 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1203-1210

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先天異常に伴う食道疾患であるが，多くは新生児期，もしくは乳児期に明らかになって外科的な治療が必要なことが多い．発生の段階で問題が起きているため，気管の異常を伴うことも多い．また，その他の合併奇形を有することも多いため全身検索が必須である．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　7　食道カンジダ症小田島　慎也 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1211-1214

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食道カンジダ症は皮膚や粘膜に常在する真菌であるカンジダ属が食道粘膜に増殖した状態である．検診の内視鏡で無症状の健常者に対しても認められる疾患である一方で，ヒト免疫不全ウイルス（HIV）感染症などとの関連も強く，免疫抑制状態の患者に対しては臨床上問題となる場合も想定される疾患である．本稿では，食道カンジダ症の病態から診断，治療について解説する．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　8　好酸球性食道炎阿部　靖彦 , 佐々木　悠 , 水本　尚子 , 八木　周 , 小野里　祐介 , 上野　義之 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1215-1222

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好酸球性食道炎（eosinophilic esophagitis；EoE）は，消化管壁の好酸球性炎症により種々の消化管機能障害をきたす好酸球性消化管疾患（eosinophilic gastrointestinal disorders；EGIDs）のうち，病変が食道のみに限局するもので，胃や小腸など消化管に広く病変を認めうる好酸球性胃腸炎（eosinophilic gastroenteritis；EGE）とは別個に定義されている．EoEは近年，成人の嚥下障害の原因として増加し注目されており，2020年には厚生労働省（厚労省）研究班より「幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン」が公表され疾患の理解が進むことが期待されている（国立成育医療研究センター，日本小児アレルギー学会などのwebページよりフリーで閲覧可能）．本稿ではEoEの病態，診断，治療について概説する．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　9　その他の食道炎舩坂　好平 , 堀口　徳之 , 大森　崇史 , 宮原　良二 , 柴田　知行 , 廣岡　芳樹 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1223-1227

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食道の炎症は胃酸逆流による逆流性食道炎が大部分を占めており，近年では好酸球性食道炎も増加している．一方，感染性食道炎には食道カンジダ症，ヘルペス（HSV）食道炎，サイトメガロウイルス（CMV）食道炎などがあり，とくにウイルス性食道炎はまれである．これらの多くは宿主側の免疫異常が発症に関わっている．その他の食道炎としては薬剤性食道炎，剝離性食道炎，腐食性食道炎，全身性疾患に伴う食道病変などがある．自覚症状は嚥下時痛，胸部痛，つかえ感，黒色嘔吐，吐血などがあるが，スクリーニングで見つかる無症状例もある．疾患特異的な症状はないため，発症契機，基礎疾患，内服歴などの丁寧な病歴聴取に加え，内視鏡所見，生検病理，血液検査により食道炎の原因を特定し治療につなげていく．この稿では鑑別の進め方と代表的な疾患について述べる．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　10　バレット食道，バレット食道癌松崎　一平 , 横井　太紀雄 , 角嶋　直美 , 菊池　正和 , 服部　昌志 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1228-1232

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バレット食道，バレット食道癌の疫学および病態と，食道胃接合部（esophagogastric junction；EGJ）領域の詳細な内視鏡観察方法，内視鏡的粘膜下層剝離術（以下，ESD）後標本の拡大内視鏡観察を用いた病理標本との対比を解説する．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　11　マロリーワイス症候群片岡　陽佑 , 豊島　治 , 和田　友則 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1233-1236

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・マロリーワイス症候群の特徴的な症状は，繰り返す嘔吐後の吐血である．・腹腔内圧上昇時に胃が食道内に脱出し，食道下部から胃噴門部近傍に裂創が生じる．・自然止血が得られることが多いが，活動性出血や深い裂創を認める場合には，おもにクリップによる止血・縫縮を行う．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　12　特発性食道破裂島田　英雄 , 西　隆之 , 千野　修 , 數野　暁人 , 谷田部　健太郎 , 小柳　和夫 , 幕内　博康 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1237-1241

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特発性食道破裂は器質的疾患のない正常な食道で，食道内圧の急激な上昇により食道壁が全層性に損傷を受けて破裂する疾患である．1724年にオランダ人医師のHerman Boerhaaveが初めて報告しBoerhaave症候群と呼ばれている．比較的まれな疾患なため，日常診療において遭遇する頻度は低い．発症から急速に全身状態の悪化を認める症例もあり，早期診断・適切な治療法の決定がきわめて重要な疾患である．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　13　食道静脈瘤和栗　暢生 , 大﨑　暁彦 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1242-1250

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食道静脈瘤（esophageal varices；EVs）は肝硬変をはじめとする門脈圧亢進症の主たる表現型として肝硬変患者の50〜60％にみられるとされ，その破裂出血は未だに致死的となる病態である．内視鏡治療により止血に成功しても，肝硬変は出血による血行動態の悪化を契機として予後不良のacute―on―chronic liver failure（ACLF）に陥ることがあるため，EVsの制御・管理は依然重要な臨床課題であるといえる．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　14　食道粘膜下腫瘍吉永　繁高 , 高丸　博之 , 牧口　茉衣 , 阿部　清一郎 , 野中　哲 , 鈴木　晴久 , 斎藤　豊 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1251-1255

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粘膜下腫瘍とは粘膜ではなく粘膜深層や粘膜下層，固有筋層にできた表面が非腫瘍粘膜に覆われた腫瘍である．日常臨床において食道粘膜下腫瘍はしばしば遭遇する疾患であるが，腫瘍が粘膜の下で増殖し非腫瘍粘膜に覆われた隆起を呈するため，その診断はしばしば容易ではない．本稿では，臨床上よく見られる疾患を中心に食道粘膜下腫瘍に関して，その疫学，診断などを中心に述べる．

Ⅳ　その他の食道疾患の診療　15　食道異物西本　正幸 , 井口　幹崇 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1256-1259

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食道異物は日常診療でもしばしば遭遇し決してまれな疾患ではない．小児・高齢者・精神疾患患者に多いとされ，高齢化社会に伴い異物誤飲の頻度も増加することが予想される．異物の種類や大きさ，形状により摘出術が必要か判断されるが，食道に入った異物は自然排出することが大半である．摘出を要する場合には内視鏡的摘出，食道穿孔を併発した場合などには外科的摘出を要する場合もある．食道異物診療に際して摘出術の是非，摘出方法が重要となる．

索引 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1260-1265

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奥付 37巻9号 , 2022年8月 , pp.1266-1266

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基本情報

臨牀消化器内科
37巻9号
(2022年8月発行)

電子版ISSN：2433-2488 印刷版ISSN：0911-601X 日本メディカルセンター

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