臨床雑誌内科 115巻3号 (2015年3月)

高齢者のリウマチ・膠原病はこう診る

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発症年齢の平均が65歳以上に分布しているリウマチ・膠原病疾患は,顕微鏡的多発血管炎(MPA),巨細胞性動脈炎(GPA),リウマチ性多発筋痛症(PMR)があげられる.関節リウマチ(RA),全身性エリテマトーデス(SLE),多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)は,平均発症年齢は65歳未満だが,罹病率,有病率のピークは65歳以上である.日常診療においてRAとSLEは疾患自体が心血管イベントのリスク因子であることを認識する必要があり,リスク軽減のためには他の動脈硬化リスク因子の管理と疾患活動性の管理が重要である.RA,SLE,PM/DMは悪性腫瘍の頻度が一般人口と比較して多いことにも留意が必要である.とくに高齢発症の間質性肺炎を合併していないDMは頻度が多い.

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高齢者に発症する関節リウマチや全身性エリテマトーデスは,通常の症例(若年者)と臨床像がやや異なる.高齢発症リウマチの鑑別診断として,リウマチ性多発筋痛症,RS3PE症候群,変形性手関節症が重要である.高齢者における不明熱では,巨細胞動脈炎や顕微鏡的多発血管炎などの血管炎症候群も念頭に置くべきである.

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高齢者の不明熱では,若年者と比較して診断が確定することが多い.病歴が大切になる疾患で,病歴を聴取できないことがある.症状がはっきりしないことや,非特異的な症状しか認めないこともある.発熱の原因が複数ありうる.結核,感染性心内膜炎,リンパ腫といった疾患は最後まで鑑別に残る.

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多くの関節痛は問診と身体所見で診断可能であり,定式化(パターン化)することにより鑑別診断が容易となる.初診時は,確定診断をすることより,深刻な病態(化膿性関節炎)の可能性から考えて診療する.

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訴えがない=「症状がない」ではない.高齢者では患者自身が症状に気付いていないことがある.臨床的に改善した後で「以前はどうだったか?」と繰り返し尋ねることで気付かれなかった症状の存在が明らかになることがある.まれに,最初から最後まで「症状がない」症例がある.所見がある=「疾患の存在証明」ではない.「時間」はときに最大の診断ツールになりうる.加齢による変化というバイアス(フィルター)は患者・医療者の両方に起こりうることを理解しておく.

関節リウマチ 金子 祐子
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近年,関節リウマチは治療進歩に伴い予後が著明に改善した.関節リウマチの発症年齢が上がっていることが報告されており,長寿化も伴って,高齢の関節リウマチ患者は増加している.高齢者の関節リウマチは,症状が若年者とは異なる特徴があるため診断が困難であり,身体機能や各臓器機能低下から,治療薬による副作用が出やすく副作用の重症化も多いなどの特徴がある.高齢の関節リウマチでは,診断・治療両面で特徴を理解し,注意することが大切である.

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リウマチ性多発筋痛症(PMR)の診断はステップを踏むことが重要である.まずPMR症候群として捉え,類似疾患を除外する.PMRは,少量ステロイドに対する治療反応性が良好である点もその特徴である.高齢発症RAや傍腫瘍症候群が,PMR類似疾患のなかで頻度が高い.巨細胞性動脈炎の緊急症状は虚血性視神経炎による失明のほか,まれだが大動脈瘤や大動脈解離があげられる.巨細胞性動脈炎の診断には側頭動脈生検が必須であり,ステロイド開始後であっても積極的に行う.

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高齢発症SLEの特徴として,漿膜炎,呼吸器疾患,血球減少などがみられやすい.薬剤誘発性ループスの除外のため薬剤歴の聴取に留意すべきである.長期罹患の高齢SLEでは,ステロイド性骨粗鬆症などに注意が必要である.SLEのクラスター解析では,年齢によって臨床的特徴が区別できる可能性が示された.

Sjogren症候群 松本 功
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高齢者では30%近くが口腔乾燥感を自覚しているといわれている.乾燥症状を問診,診察,検査でしっかり捉えることが重要で,服用中の内服薬の副作用の影響にも留意する.成人女性に好発し,自己免疫疾患の代表的疾患の1つであるが,ステロイドによる分泌腺機能の改善は期待できない.多くの場合,患者の主訴である乾燥症状に対する対症療法に留まる.抗ガンマグロブリン血症,膠質反応陽性,RF陽性,赤沈高値などを検診で指摘され受診することがある.2015年1月より厚生労働省の指定難病に認定された.

多発性筋炎・皮膚筋炎 上阪 等
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PM/DMは,筋,皮膚,肺に高頻度に自己免疫性炎症をきたす疾患である.筋力低下が主症状であるが,高齢者では日常生活の活動性が低下しているために症状が出にくく,嚥下障害による繰り返す誤嚥性肺炎が初発症状となりうる.しばしば合併する悪性腫瘍の検索は,とくに高齢者で重要である.治療は,悪性腫瘍合併例では悪性腫瘍の治療を優先し,それ以外では,副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬が中心となる.急速進行性間質性肺炎ないしそれが疑われる場合には,両者を初期から併用する.高齢者では免疫力低下による有害事象を招きやすいことを考慮し,日常生活に支障をきたさない程度の低疾患活動性を治療目標にすることも正当化されうる.

全身性硬化症 桑名 正隆
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全身性硬化症(SSc)では,長い罹病期間を経た高齢者で機能障害が顕性化することが多い.変形性関節症による手指腫脹,Dupuytren拘縮など加齢に伴う変化があるとSScの診断が難しい場合がある.高齢者では動脈硬化が末梢循環障害を悪化させる.高齢発症の抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性例では悪性腫瘍の存在を疑う.肺高血圧症では,肺動脈性肺高血圧症に加えて心筋拡張障害など多彩な病態が併存して複雑な病態を呈する.

血管炎症候群 山村 昌弘
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わが国では抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の顕微鏡的多発血管炎(MPA)が多い.高齢者の不明熱や進行性腎障害では必ず鑑別する必要があり,ミエロペルオキシダーゼ(MPO)-ANCA検査は有用であるが,寡免疫性の半月体形成性糸球体腎炎など小型血管炎の病理組織学的証明が診断に重要である.寛解導入には副腎皮質ステロイドとcyclophosphamideまたは抗CD20抗体rituximabの併用が基本になるが,高齢MPAに対してはステロイドおよび免疫抑制薬の用量・用法ともに慎重な調節が必要である.

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痛みは,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,心因性疼痛に分けて治療を検討する.鎮痛薬は,作用点の違いを利用して併用を考慮し,各薬剤の有効性と安全性を高める.高齢は,消化管障害や心血管イベントの危険因子であり,また腎機能低下があるため,とくにNSAIDs使用時には用量や薬剤選択の工夫が必要である.

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高齢者では生理機能の低下や併存疾患により,若年者と比べてステロイドの副作用にはより注意が必要である.併存疾患や内服薬については,ステロイド使用前によく確認しておく.副作用では,とくに早期では精神への影響,高血糖,不整脈,浮腫などに,中期~長期の使用では感染症,骨粗鬆症,白内障・緑内障,筋症,消化性潰瘍,心血管・脳血管合併症に注意する.

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関節リウマチをはじめとする種々の免疫疾患で,生物学的製剤は劇的な治療成績の改善をもたらし,さらにANCA関連血管炎に対する抗CD20抗体療法など適応を拡大しつつある.わが国では高齢化の急速な加速に伴い,高齢者に対する安全かつ有効な医療の提供は重要な課題である.高齢者における免疫疾患では,免疫疾患自体による障害と併存症による不可逆性の障害が,治療適応の決定に重要である.加えて,高齢者では,有害事象とくに感染症に対する危険性が高く,事前のリスク評価と適切な予防策を行うことが大切である.高齢者における課題を熟知したうえで,生物学的製剤の適応判断と治療管理を行うことで,より多くの患者に生物学的製剤の恩恵を提供することが期待される.

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ロコモティブ症候群は,運動器障害のために要介護となる危険の高い状態である.ロコモティブ症候群の原因疾患には,関節リウマチや変形性関節症などがある.ロコモティブ症候群の女性患者の多くはビタミンD不足と思われる.ロコモティブ症候群の骨粗鬆症治療には,新規薬剤が有用である.ロコモティブ症候群の診療には,内科医と整形外科医との協力が重要である.

内科医が知っておくべき精神疾患の知識

Focus On

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約70年ぶりに国内流行が発生したデング熱は,最終的に162名の患者が報告された(2014年52週時点).2014年8月から10月にかけて,東京の代々木公園,またはその周辺で感染したと推定される症例が大部分であった.その媒介蚊はヒトスジシマカであり,かなり多数の蚊に刺された患者がおり,代々木公園に生息するヒトスジシマカが多数であったことが推測される.その原因となったデングウイルスは血清型1型のウイルスであり,遺伝子解析からは同一のウイルスによる流行であったと考えられる.今後のデング熱国内流行を防止する対策としては,媒介蚊の発生を抑えることが重要である.ヒトスジシマカの活動は5月から10月であり,8月がそのピークである.海外からのデング熱輸入症例も8月,9月がピークであり,この時期が国内流行の可能性が高い時期となる.デング熱は突然の高熱で発症し,その症状は,発熱・発疹・痛みが3主徴である.したがって,とくに7月から9月にかけてこのような症状の患者を診た場合は,デング熱を疑う必要がある.

PATHO-Words講座 病理のことばを読み解こう(Vol.10)

食道上皮内病変のキモ 福嶋 敬宜

よくわかる透析療法「再」入門(number 23)

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55歳男。高血圧、脂質異常症で治療中であった。腰痛が出現し、血液検査で芽球の出現を認めた。急性リンパ性白血病(ALL)(L2)、Pro-B cell typeと診断し、JALSG-ALL202プロトコールにのっとり寛解導入療法を開始した。7日目に白血球減少に対してG-CSFを開始した。9日目より心窩部の激痛、嘔気が出現した。激痛は持続し、14日目に突然ショック状態となった。このときの尿は黒褐色調であった。貧血の進行を認め、重篤な血管内溶血の存在が考えられた。糖尿病の既往はなく入院後も血糖値は正常であったが異常な高血糖を認めた。心肺蘇生を行ったが、急変から3時間後に死亡した。後日、血液培養結果が判明し、B.cereusを検出した。B.cereus敗血症による血管内溶血と診断した。

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34歳男。30歳時に痔瘻根治術、健康診断で軽度の肝機能障害と高LDL血症を指摘された。忘年会に参加し、泥酔状態となった。比較的急性発症の下腹部痛を自覚し、痛みが持続した。腹膜刺激症状を認めた、尿意切迫感があったが、自力排尿はできなかった。自己排尿が不能であったため、導尿したところ肉眼的血尿を呈した。腹部単純CTでは大量の腹水があったがfree airはなく、膀胱壁の一郡が不整であった。膀胱破裂を疑って経尿道的膀胱造影検査を施行し、膀胱底部右側から骨盤腔上部に向かって漏出する造影剤を認め、膀胱壁損傷部位と確定した。膀胱破裂の診断で緊急手術を施行した。開放性膀胱損傷の診断で膀胱破裂閉鎖術を施行した。術後経過は良好で、第4病日に退院した。

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37歳女。25歳時にBasedow病を発症し、29歳時と33歳時にアイソトープ治療を施行した。その後は甲状腺機能低下症となった。36歳時に妊娠した。妊娠27週時に胎児心拍数(FHR)が180/分以上となり、TRAb刺激による胎児甲状腺機能亢進症と診断した。胎児甲状腺機能のコントロール目的で、母体治療はレボチロキシン(LT4)増量に加えてチアマゾール(MMI)を併用した。妊娠37週時に帝王切開を行い、健児を出産した。新生児甲状腺機能は、甲状腺機能亢進症に進行したので、ルゴール液を3日間、MMIを生後10101日まで投与した。甲状腺機能は生後22日に正常化し、TRAb値も生後126日に26%まで低下した。

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83歳男。右肩痛を自覚し、NSAIDs(ロキソプロフェン)2錠をほぼ毎日服薬した。胃痛が出現したたため、NSAIDsを中止し、PPIを処方した。その頃より午後になると発熱を認め、全身倦怠感および食欲不振もみられた。第8病日にDLSTを実施し、ロキソプロフェンのみ陽性であった。薬剤性尿細管間質性腎炎(TIN)を疑い策16病日に腎生検を施行した。ロキソプロフェンによる薬剤性TINと診断した。また、間質の線維化を認めなかったため、ステロイドを使用せず経過観察とした。薬剤中止に伴い解熱も認め全身状態および血液検査も改善したため、第18病日退院とし、保存的加療を継続した。

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76歳女。高血症と2型糖尿病で通院加療中に、頸部超音波検査で甲状腺右葉に腫瘤性病変を指摘された。甲状腺右葉に、単純CT検査で低吸収域として描出され、造影CT検査にて造影効果の乏しい、境界明瞭な腫瘤性病変を認めた。その下方に単純CT検査で等吸収域、造影CT検査で造影効果を認める内部不均質な充実性の腫瘤を認めた。FDG-PET検査では甲状腺右葉に異常集積を認めた。穿刺吸引細胞診では、濾胞がんの可能性が高いと診断した。甲状腺濾胞腺腫と甲状腺濾胞がん疑いとの共存と診断し、甲状腺峡部・右葉切除術や気管傍リンパ節郭清術を施行した。術後病理所見では濾胞腺腫と診断した。手術切除断端では脈管侵襲像と甲状腺周囲の脂肪組織内にリンパ節転移を認め、病理学的には広汎浸潤型濾胞がんと診断した。

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75歳男。7年前に中部食道がんに対して化学放射線療法を施行され完全寛解となった。1年ほど前よりときおり労作時の咳嗽と呼吸困難感を自覚し、徐々に増悪した。胸部X線検査にて左胸水の貯留を認め、精査目的で入院した。胸水の試験穿刺を施行した。外観は白色で混濁し、胸水中トリグリセリド高値より乳び胸水と診断した。胸腔ドレナージを行い、脂質制限食、その後絶食のうえで完全静脈栄養としたがなおも排液を認めたため、オクトレオチドの持続静注とOK-432の胸腔内注入を行い、排液の減少が得られた。経過中、明らかな有害事象は認めなかった。現在は外来通院中であるが、胸水の再貯留は認めていない。乳び胸をきたすほかの原因を認めず、過去の放射線療法による影響がもっとも考えられた。

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54歳男。自らの意思で断食を決意し、食事を摂取しなかった。兄が無理矢理水分やヨーグルトを摂取させていたが、10日前から歩行時にふらつくようになりベッドから降りることができなくなった。このころより物が二重にみえる、揺れてみえるといった症状が出現した。呼びかけに反応不良となり救急要請となった。絶食のヒストリー、神経学的所見、特徴的なMRI所見よりWernicke脳症と診断し、塩酸チアゾリウムを5日間連続投与した。第2病日より意識レベル1~3と回復した。第6病日より作話がみられたが、第9病日で消失し正常の会話となり、意識レベルも清明となった。第2病日にみられた眼球運動障害は第6病日より消失した。入院初日は歩行不能であったが、第6病日より失調性の歩行となり、第12病日には正常となった。策15病日、後遺症なく退院となった。

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35歳女。年に3回程度の嘔気と水様便をきたすエピソードを繰り返した。右臀部および大腿後面の疼痛が出現し、腰椎椎間板ヘルニアの疑いで入院となった。硬膜外ブロックにて疼痛はやや軽減した。37.8℃の発熱および低酸素血症を認めた。発熱、頻脈、頻呼吸、白血球数増加などがあり、全身性炎症反応症候群(SIRS)と考えられ、PCTも高値であることから細菌感染による敗血症と判断した。呼吸不全の原因については敗血症に伴うARDSと診断した。抗菌薬を投与したが肝胆道系酵素上昇も改善なく、呼吸状態の改善は得られなかった。人工呼吸管理を開始した。血液培養・尿培養・便培養のすべてから非チフス性サルモネラ菌を検出し、抗菌薬をレボフロキサシンに変更した。その後解熱し、炎症反応および呼吸状態が改善した。右臀部や右大腿の疼痛は、サルモネラ菌血症に伴う仙腸関節炎と診断した。第30病日に退院した。

基本情報

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臨床雑誌内科
115巻3号 (2015年3月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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