臨床雑誌内科 108巻4号 (2011年10月)

最新版 糖尿病虎の巻-新時代の糖尿病診療を実践する

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・インクレチン関連薬は、従来の糖尿病薬とは異なる作用機序により血糖依存的にインスリン分泌を促進する薬剤であり、インスリンやSU薬、グリニド薬などで認められていた低血糖や体重増加などのデメリットが少なく、分泌不全を主体とする日本人2型糖尿病に対する治療方法として期待が高まっている。・インクレチン関連薬は、内因性インクレチンの作用増強を可能にするDPP-4阻害薬、そしてGLP-1受容体作動薬に大別される。いずれも日本人の2型糖尿病患者において優れた効果が示されている。・インクレチン関連薬の登場により現在糖尿病治療に大きな変革が起こっており、本邦において第一選択薬として幅広く普及することが予測される。

糖尿病患者の内科診察 渥美 義仁
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・糖尿病患者を診る内科医は、採血結果を指標とした薬物療法に偏らず身体所見を診ることも重要である。・身体所見をとらなければ把握できない合併症に関しては、内科医がゲートキーパーとして、定期的に診察する必要がある。・ゲートキーパーとして診るべき身体所見には、口腔内の歯周病の有無、手の腱鞘炎、足病変がある。・足病変の予防的フットケアは、靴や靴下の中の足が対象で診察機会が少ない。よって、対象をハイリスク患者に絞って、リスクに応じたフットケアを行う必要がある。

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・HbA1cは1993年のDCCT報告と同様に現在も糖尿病の管理指標である。・HbA1c(JDS値)と空腹時やOGTT 2時間値とは高い相関関係にあるが、ばらつきが大きかった。このことから、日本では1999年から疫学研究などで糖尿病頻度を推計するためにHbA1c(JDS値)≧6.1%が用いられてきた。・1999年の基準では、糖尿病を確定するためにHbA1c(JDS値)≧6.5%とされた。・2010年からはHbA1c(JDS値)≧6.1%を糖尿病型として血糖値で糖尿病型である場合は臨床的な糖尿病と診断できることになった。このHbA1c(JDS値)6.1%は欧米のHbA1c(国際基準値)6.5%に相当しており、日本の基準値が世界の基準値と足並みがそろっている。・HbA1c(JDS値)の意味づけは1999年とは違っているものの、もし過去の基準を順守してHbA1c(JDS値)が6.5%から6.1%に低下したと仮定すると、糖尿病と診断される症例は4%程度増加することが推測される。

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・血糖コントロール指標の代表であるHbA1cは長期にわたる血糖変動の平均値を反映する指標であり、日々の細かな血糖変動を反映しない。・近年、皮下間質液中のブドウ糖濃度を連続測定することにより血糖変動の全容を把握できる、持続血糖モニター(continuous glucose monitoring)が登場してきた。・耐糖能正常の症例では、食後の血糖上昇はほとんどみられない。耐糖能が悪化すると、食前の血糖値は上昇しないが、食後の血糖上昇が目立つようになり、病状の進行とともにそのピーク値はさらに上昇する。・本稿で示す血糖変動パターンに介入できる薬物を適宜用いて、血糖変動を適切にコントロールすべきである。

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・近年、糖尿病は心血管疾患に加え、一部の癌、感染症による死亡のリスク要因であることが明らかになってきた。・わが国でも糖尿病患者が増加しており、糖尿病対策は急務となっている。・糖尿病は、「健康日本21」の9分野の1つとして、その達成に向けてさまざまな施策が進められてきたが、その中間評価では、糖尿病の中高年男性での有病者数、男性の肥満割合や歩数のように、「健康日本21」開始時よりも悪化している項目があり、これまでの進捗状況は十分でなかった。・糖尿病患者の増加を踏まえ、「健康日本21」の次の施策では、個人へのアプローチのみならず環境へのアプローチという視点をさらに強くもった施策の推進が必要である。

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・高齢者の医療の確保に関する法律により、2008年度から医療保険者の実施義務となる40~74歳の被保険者・被扶養者を対象とした、内臓脂肪型肥満に着目した特定健診・特定保健指導が開始された。・標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)によって、4つのステップによって健診結果と問診結果によりリスクが階層化され、情報提供、および特定保健指導としての動機づけ支援、積極的支援が実施されている。・2008年度の特定健診の対象者数は約5,190万人で、受診者数は約2,019万人、実施率は38.9%であった。特定保健指導の対象者になった者は19.9%であり、そのうち特定保健指導を終了した者は7.7%であった。

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・全国11保健所管内の40~69歳の男女約14万名を対象とした「多目的コホート研究(JPHC Study)」で、糖尿病診断の自己申告をアウトカムとして生活習慣との関連を調べた。・女性および筋肉運動をあまり行わない男性において、米飯摂取は糖尿病発症のリスク上昇と関連していた。・大豆製品・イソフラボン摂取は肥満および閉経後女性において、またカルシウム摂取はビタミンD摂取が多い男女において、糖尿病発症との予防的関連を認めた。・喫煙、飲酒、BMI高値、20歳から中年期にかけての体重増加および中年期における体重増加、ストレスは糖尿病のリスク上昇に、コーヒーはリスク低下と関連していた。

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・1型糖尿病患者のインスリン療法は、生活リズムに合ったインスリン分泌パターンをできるだけ再現することが重要である。そうするためには、患者自身が能動的にインスリン調整できるような能力の育成が重要である。・2型糖尿病と同様な食事・運動療法は必要ないが、どの食品が血糖をどのように上昇させるのか、また運動をするとどのくらい血糖が低下し、どう対応するかという知識は必要である。・地域ごとに医療連携を進め、血糖コントロール不良例、急性・慢性合併症の際にはスムーズに専門施設に紹介できるような環境を整えることが重要である。

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・内分泌疾患や膵外分泌疾患などの糖尿病以外の疾患による多くの二次性糖尿病は、2型糖尿病と思われていた中に隠れていたり、既存の糖尿病のコントロールの悪化の原因となる。原疾患を治療すれば糖尿病の改善も期待できるため、疑ってみつけ出すことが重要である。・Cushing症候群だけでなく、臨床症状に乏しいサブクリニカルCushing症候群も糖代謝異常を呈する。・中年以降の糖尿病コントロール悪化時には、膵癌や自己免疫性膵炎の併発も念頭に置き、腹部超音波検査などを行う。・1型糖尿病や2型糖尿病として治療されている中に、MODYやミトコンドリア糖尿病(MDM)が潜んでいることがある。・MODYやMDMの診断には遺伝子検査が必要であるが、治療法の変更などの有益性が十分にあるか検討する。

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・食事療法は2型糖尿病治療の基本であり、出発点である。・最初に摂取エネルギーを決定し、そのうえで3大栄養素のバランスを考えるカロリー制限食が通常の治療法である。・一方で糖質量に留意するという概念が定着しつつあり、カーボカウント(糖質量を定量する、あるいはそれに合わせてインスリン注射量を変更するという治療法)や糖質制限食(糖質量を制限する)が広まりつつある。

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・2型糖尿病の運動療法は単に血糖値や体重、血圧などのコントロールだけではなく、日常生活活動の維持や、社会復帰にもつながる。・運動療法にはメディカルチェックは必須であるが、簡易的には5~6分程度の歩行の前後で心電図をチェックする。・運動の指導は、運動種、強度、頻度、時間、運動量を的確に指示する。・有酸素運動(代表として歩行)とともに筋抵抗運動を組み合わせることが、運動療法の効果を増強する。

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・インクレチン製剤の国内発売により「インクレチン元年」と呼ばれた2010年に象徴されるように、2型糖尿病の治療薬は近年大きな進歩を遂げ、治療の選択肢も広がっている。・現在国内で使用可能な抗糖尿病薬はスルホニル尿素薬、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、グリニド、インスリン、そしてインクレチン製剤であるdipeptidyl peptidase 4(DPP-4)阻害薬とglucagon-like peptide 1(GLP-1)受容体作動薬がある。・さまざまな作用機序による薬剤の登場で、より2型糖尿病の病態に即した治療の選択が可能となった一方で、治療の多様化により個々の患者に対する最適な治療の選択に迷う場合も多くなっている。

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・実臨床ではインスリン導入のタイミングが遅れがちである。しかし近年、より早期から良好な血糖管理を維持することで合併症の発症を抑制しうることが明らかとなり、症例によってはより早期のインスリン導入を検討する必要がある。・4-T studyなどの臨床試験により各インスリンレジメンの特徴が明らかとなった。これらを踏まえたうえで症例ごとに最適なインスリンレジメンを選択し、必要に応じて強化療法へとステップアップすることが重要である。・GLP-1アナログとインスリンのどちらを導入するのがよいかは症例ごとに判断する必要がある。少量であってもインスリンを導入しなければならない症例も多数存在する一方、GLP-1アナログ導入のほうが適している症例の臨床プロファイルなども解明されつつあり、今後の研究結果が待たれている。

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・自己血糖測定(SMBG)を糖尿病診療に役に立てるために、患者がSMBGの意義を理解するようにする。・SMBGは無駄に測るのではなく意味のある時間帯に測るように指導する。朝食前や夕食前または就寝前、食後2時間などから指導することが多いが、患者によって測るポイントを見極め必要な時間帯をアドバイスする。・SMBGを使用することで、インスリン使用者では、日々の生活の中でその結果(血糖値)がわかることで、インスリンや食事の調整が患者自身でできるようになると、患者が治療の主導権をもち、治療に前向きになる。・SMBGはインスリン・GLP-1不使用者の場合であっても(保険適用ではないが)、治療の効果判定に役立ち、患者の行動変容につながる。

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・現在のチーム医療は、患者からみると必ずしも「患者中心」ではない部分がある。・コンプライアンスの考え方は「医療者中心」であり、セルフマネジメントが主体の糖尿病の診療にはそぐわない。・「患者中心」の理念としてエンパワーメントが提唱された。エンパワーメントとは、医療者と患者の協働作業に基づき、患者が本来備えている自己管理能力と自律性を最大限に引き出そうと支援することである。・エンパワーメントをチームの基本理念として共有し、患者のニーズに基づくチーム医療を展開することが求められる。

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・定期的な糖尿病網膜症のスクリーニングを充実させることにより、糖尿病網膜症による視力障害を減少させる可能性がある。・眼科医による糖尿病網膜症のスクリーニングには限界があり、最新の眼底撮影方法を用いるスクリーニング法を普及させることが求められている。・糖尿病網膜症と鑑別すべき疾患は、網膜血管性疾患をはじめ多岐にわたり、注意が必要である。

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・糖尿病と診断すれば、尿アルブミンと血清クレアチニン測定による推定糸球体濾過量(eGFR)の測定を行う。早期に診断し治療介入すれば、腎症の寛解を得やすい。・アルブミン尿や蛋白尿の減少を目指して積極的な多角的治療を行えば、腎症のみではなく心血管合併症を抑制できる。・ガイドラインに基づいた厳格な血糖・血圧・脂質管理は、腎症の寛解・進展抑制に有効である。厳格な降圧によって腎リスクが増大することはない。・腎機能低下時は、HbA1c値が低くなるため留意する。腎機能低下に応じて薬剤を変更することも必要である。・糖尿病腎症以外の腎疾患の合併、腎動脈狭窄や神経因性膀胱による腎機能低下の可能性を考えておく。

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・糖尿病性神経障害は、患者のQOLおよび生命予後をも左右する重要な合併症である。・神経障害の診断基準として、「糖尿病性多発神経障害の簡易診断基準案」と「Michigan Neuropathy Screening Instrument」が用いられている。・神経障害の発症・進展阻止および治療の基本は厳格な血糖コントロールの維持にある。・成因に則った治療薬であるアルドース還元酵素阻害薬による介入が有用である。・自覚症状の強い場合には症状に合わせた対症療法薬を用いることにより、QOLの改善が期待される。

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・糖尿病患者の心血管イベント予防のためには、LDLコレステロールの厳格なコントロールが必要である。・血糖コントロールに関しては、患者背景を考えて、個々の症例で目標値を設定することが必要である。・血圧管理に関しては、厳格な血圧管理の意義に疑問がもたれつつある。

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・炭水化物摂取では食後の血糖値とインスリン値が急激に上昇するが、脂質や蛋白質摂取ではほとんど上昇しない。・炭水化物摂取を制限して脂質摂取を増やすのがlow-carbohydrate diet(LCD)で、摂取エネルギーを基本的に制限しない。・LCDではケトン体と脂肪酸がエネルギー源で、エネルギー代謝は従来のカロリー制限食とはまったく異なる。・LCDは従来のカロリー制限食に比べてHbA1c、体重、血清脂質の改善効果に優れており、食欲も低下する。・炭水化物制限は総摂取エネルギーに対する比(%C)で示され、長期の安全性から厳しい制限(20%C前後)より緩やかな制限(40~45%C)が推奨される。

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・糖尿病の地域医療連携の基本は、定期的な勉強会による病院の専門医から診療所の非専門医への診療技術の移転とシームレスな診療連携体制の構築である。・次の段階が、定期的に病院と診療所を循環する循環型医療連携であり、患者個々人の病態に最適化した継続的な診療を可能にする強力なツールが糖尿病診療連携パスである。・その次の段階が、地域の糖尿病患者集団から疾病管理マップを活用して重症化リスクの高い患者群を層別化して介入する地域疾病管理であり、メインプレーヤーはプロのコメディカルである。

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・糖尿病では膵島β細胞から分泌されるインスリンの量的および質的な不足のみならず、α細胞より分泌されるグルカゴンの分泌異常も認められ、両者のバランスの破綻が糖平衡異常を引き起こしている。・グルカゴン分泌はエネルギー状態や神経系、内分泌系などにより複雑かつ高度に調節されているが、近年とくにインスリンを介した膵島内調節やGLP-1による調節機構が見出され、インスリンとグルカゴンはそれぞれ別個ではなく、密接に関連しながら分泌・機能調節されていることが明らかとなってきている。・それゆえ、インスリンのみならずグルカゴンをも標的とした新たな糖尿病治療戦略が注目されている。

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・糖尿病の再生医療的アプローチとして、膵β細胞の再生が注目されている。・とくに幹細胞を用いた再生ストラテジーの検討が進められている。・幹細胞は大きく分けて、胚幹細胞(ES細胞)と組織幹細胞に分類できる。・ES細胞は全能性細胞で、細胞治療の材料として注目されている。・近年、成体の細胞からES細胞様の未分化細胞(iPS細胞)が確立され、胚を扱うという倫理的問題も回避可能となった。・組織幹細胞は生体に存在する幹細胞で特定の細胞系譜に分化することが知られている。・体内にある幹細胞に直接働きかけ、再生を促す再生誘導療法も今後の再生医療の方向性として位置づけられる。

診療controversy medical decision makingのために 肝門部悪性胆道閉塞の内瘻化

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生物学的製剤を投与し、初回投与の直前、投与翌日、投与1週間後に血液検査を行った関節リウマチ患者81名を対象に白血球系細胞数の変化を検討した。製剤はinfliximab(IFX)、etanercept(ETA)、tocilizumab(TCZ)、adalimumab(ADM)、abatacept(ABT)の5製剤を使用した。初回投与後に白血球総数が有意に減少したのはTCZのみで、白血球分画ごとにみると好中球はTCZおよびIFX投与で有意に減少した。なお、IFXによる好中球減少は投与後7日目には回復したが、TCZでは完全な回復に約4週間を要した。また、TCZ投与後には単球数も減少した。リンパ球数はTCZ、IFX、ADM投与で増加傾向を示すも有意ではなく、好塩基球数、好酸球数はいずれの投与においても有意変化を示さず、ETA、ADM、ABTは白血球系細胞数に影響を及ぼさなかった。

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71歳男。67歳時に食欲不振、体重減少、両側肩甲帯から上肢の疼痛による両上肢の挙上困難、赤沈の亢進、好酸球増多を認め、リウマチ因子、抗核抗体は陰性であったが、リウマチ性多発筋痛症(PMR)の診断基準を満たした。プレドニソロン(PSL)を投与したところ、症状の著明な改善を認めた。PSLは漸減し中止したが、食欲不振、嘔気がみられたためPSL 10mg/dayを再開した。その後、症状は消失し、PSLは減量していたが、患者の自己判断で中止していた。今回、臍周囲痛、嘔気にて食事摂取困難となり消化器内科に入院となった。興奮状態で起立困難、血糖の低下を認め、ブドウ糖投与にて改善したが、血圧が60~90mmHgと低下し、意識障害をきたした。ブドウ糖とメチルプレドニソロン投与にて意識は回復し、神経内科に転科となった。検査所見は、軽度の貧血、低コレステロール血症、低カリウム血症を認めた。ACTH、コルチゾールは測定感度以下の低値で、ACTH以外の下垂体前葉ホルモンの基準値は正常であり、ADHの軽度上昇、尿中17-KSの低値、尿中17-OHCSは正常下限であった。腹部CTでは両側腎嚢胞、頭部MRIではempty sellaを認めた。以上のことから、ACTH単独欠損症と判断し、hydrocortisone投与にて症状が軽快した。

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71歳女。呼吸器障害はなかったが、胸部CTで右S6に結節影と空洞性病変を指摘された。洗浄液培養でM.avium陽性より、M.avium complex(MAC)症と診断され、抗結核薬による治療が12ヵ月間行われ、結節影は縮小したが空洞性病変は残存した。投薬なしで約3年間経過観察したが、発熱と右胸痛が出現し、胸部X線で右胸水貯留を認め、細菌性胸膜炎と診断された。levofloxacin内服治療開始3日後に右胸水が増加、低酸素血症も認めたため入院となった。赤沈の亢進、CRPの高値、胸水細胞診の陰性、胸水ドレナージ後のCTで右S6の空洞の壁肥厚とニボー周囲の浸潤影を認めた。第6病日に喀痰の抗酸菌培養陽性が判明し、肺MAC病再燃と結核性胸膜炎を疑った。isoniazid、clarithromycin、rifampicin、ethambutolの内服とkanamycin筋注を行った。投与開始後、解熱し胸痛も消失し、CRPは低下し胸水も減少した。受診時・入院時・入院後に採取した喀痰と入院時に採取した胸水のいずれもM.aviumのPCR陽性、培養陽性が確認された。以上から、胸膜炎を合併した肺MAC症と診断した。clarithromycin、rifampicin、ethambulolを12ヵ月継続し、胸水は消失し、投与終了後2年の現在、再燃は認めていない。

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69歳男。65歳時より耐糖能異常で、今回は口渇、多尿、体重減少、頻脈を自覚し、近医にて随時血糖値およびHbA1cの上昇、腹部造影CTで左副腎腫瘍を指摘され精査加療目的に入院となった。尿中ケトン体は陰性であったが、HbA1cは10.2%まで上昇していた。著明な内因性インスリン分泌能低下は認めず、グルカゴン負荷試験での6分後CPRは3.03ng/mlと著しい低下は認めないため、2型糖尿病の悪化と考えられた。腹部MRIで左腎に4.6cmの充実性腫瘍を認め、対側の萎縮はなく、各種内分泌検査より、非機能性副腎偶発腫瘍と診断した。各種腫瘍マーカーは陰性であったが、サイズが大きいため強化インスリン療法を行い、良好な血糖コントロールが得られたため、腹腔鏡下左副腎摘除術を施行した。肉眼所見では、灰白色充実性腫瘍を認め、端部に健常副腎が認められた。病理所見では、副腎悪性リンパ腫でCD20陽性、CD3陰性で、転移は認めず骨髄所見も悪性所見は認めず、sIL-2Rも基準値範囲内であり、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma)stage1Eと診断した。術後化学療法としてrituximab併用CHOP療法を施行中である。

基本情報

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臨床雑誌内科
108巻4号 (2011年10月)
電子版ISSN:2432-9452 印刷版ISSN:0022-1961 南江堂

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