画像診断 39巻8号 (2019年6月)

特集 進展経路からアプローチする頭頸部癌の画像診断

序説 久野 博文
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「頭頸部癌の読影レポート作成は難しい」という声をよく耳にする.原発巣または転移性リンパ節への生検によるアプローチが他の癌腫に比べ容易であることから,読影レポートを作成するタイミングで,臨床的に頭頸部癌の診断がついている(もしくは強く疑われている)ことがほとんどである.したがって,画像診断医が臨床医に伝えるべき画像情報は,腫瘍そのものの存在診断や質的診断よりも,その腫瘍がどこにどの範囲まで進展しているかが優先されるべきであり,治療方針への影響を考慮した上で詳細な情報・記載が求められる.しかし,必ずしも頭頸部領域を専門としない画像診断医や初学者にとって,それらの進展を正確に読影し,レポート作成やカンファレンスなどで臨床医に伝えることはハードルが高く,“難しさ”を感じさせる原因と考えられる.頭頸部癌の読影を深く勉強するには,洋書を含めても尾尻博也先生の『頭頸部の臨床画像診断学』(通称尾尻本)が名著である.ただ,忙しい日常診療の限られた時間の中で,頭頸部にあまり慣れていない診断医が腫瘍進展に関する記載を成書から探し出し,実際に読影に応用することは容易ではないかもしれない.

総論 久野 博文
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頭頸部癌は,原発部位により,上咽頭癌,鼻副鼻腔癌,口腔癌,中咽頭癌,喉頭癌,下咽頭癌,唾液腺癌,甲状腺癌などに分けられる.現在の頭頸部癌に対する治療は,手術治療,放射線療法, 化学療法を,同時もしくは異時的に組み合わせる集学的治療が中心である.呼吸や食事(咀嚼,嚥下,消化)など生命を維持する上で必要な機能,さらに社会生活を送る上で重要な発声の機能に影響を及ぼすため, 根治性と予想される機能予後の双方を考慮しながら, それぞれの原発巣や亜部位と局所進行度により治療戦略が決定される.適切な治療方針や術式決定には治療前の画像による進展範囲の評価が必要不可欠であり,きわめて臨床意義が高い.

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上咽頭癌の腫瘍進展において,最も重要なのが側方進展である.側方進展はMorgagni洞を介した傍咽頭間隙への深部進展が最も頻度が高い.傍咽頭間隙浸潤(T2因子)は局所再発や頸部再発,遠隔転移,生存率などと有意な相関を示す重要な予後因子であり,画像(特にMRI)で正確に同定・否定する意義が高い.また,傍咽頭間隙進展は咽頭頭底筋膜のバリアを越えたことを意味し,頭蓋底浸潤(T3)や頭蓋内進展(T4)の経路となる.

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上咽頭癌はRosenmüller窩を含む側壁から発生することが最も多い.Morgagni洞などを介した側方進展(1.1 p.818-819参照)からさらに後側方へ進展した腫瘍は,傍咽頭間隙後茎突区(頸動脈鞘もしくは頸動脈間隙)に浸潤すると,頸静脈孔や舌下神経管への進展の経路となる.画像所見のみで頸動脈鞘に至る進展はT4とはならないが,腫瘍が同領域を走行する下位脳神経(IX〜XII)に浸潤し,臨床的に神経症状を来すとT4の診断となる.そのため,診察時の下位脳神経症状の有無については確認しておく必要がある.また,頸静脈孔・舌下神経管は頭蓋内進展(T4)の経路となる.

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上咽頭癌の頭蓋底骨構造への浸潤はT3に分類され,頭蓋底浸潤の有無とその範囲の診断は,正確な病期診断と照射範囲の決定に重要である.さらに,腫瘍が頭蓋内に達する場合にはT4に分類され,重要な予後不良因子となる.上咽頭癌の上方進展による頭蓋底浸潤の好発部位は,破裂孔周囲や蝶形骨体部であり,それらの好発部位の知識が早期の頭蓋底浸潤の同定に重要である.頭蓋内進展に関しては,頭蓋底浸潤を介する直接浸潤,あるいは神経周囲進展による海綿静脈洞領域への進展が多い.

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上咽頭癌に関連する神経周囲進展は様々な経路から生じうるが,三叉神経の上顎神経(V2),下顎神経(V3)の走行に沿った経路がほとんどである.神経周囲進展は神経鞘や神経周囲腔に播種する腫瘍進展形式であり,頭蓋内への経路(T4)として重要である.また,末梢方向への神経周囲進展を正確に同定することは,放射線治療における照射範囲の決定を行う上で重要となる.上咽頭癌では臨床的に無症候性あるいは軽微な脳神経症状のみを示す場合でも,MRIにて神経周囲進展の所見を有する頻度は高く,その場合には放射線治療の照射範囲に含むべきとされている.

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上顎洞癌,篩骨洞癌および鼻腔癌において眼窩骨壁の進展はT3の分類となり,さらに眼窩内(眼窩前部)への進展が認められるとT4aとなる.手術加療の際,眼窩骨膜下までの進展である場合は眼窩内容の温存が可能であるが,眼窩内進展があると合併切除が必要になる.また,選択的動注治療の場合,眼窩内進展は腫瘍への内頸動脈系からの(眼動脈)供血の可能性が高まるため,注意が必要である.

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上顎洞癌,篩骨洞癌,鼻腔癌いずれも眼窩尖部への進展はT4bであり,最も高いT-stageに分類される.手術適応外あるいは手術加療をするにしても非常に広範な拡大手術が必要となり,最低でも眼窩内容および眼球摘出を含んだ頭蓋底手術が必要となる.また,後療法を予定した上で,初めて手術加療が行われる場合もある.眼窩尖部へ進展した場合は,視神経管や上眼窩裂を介した頭蓋内へのさらなる進展が生じうるため,注意が必要である.

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篩骨洞天蓋(篩様板)への進展は上顎洞癌ではT4a,篩骨洞癌および鼻腔癌ではT3に分類される.硬膜およびそれより中枢側に進展すると,いずれもT4bとなる.頭蓋底から硬膜面で腫瘍がとどまっていれば,頭蓋底再建を含めた手術加療の適応となる場合もあるが,海綿静脈洞および内頸動脈浸潤,脳実質浸潤が認められた場合,基本的に手術適応から外れる場合が多い.また,海綿静脈洞や脳実質側の浸潤は内頸動脈系からの供血を受ける場合が多く,選択的動注療法でもアプローチが難しくなる場合がある.

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上顎洞癌において翼口蓋窩への進展はT3である(篩骨洞癌,鼻腔癌は翼口蓋窩がT分類に含まれていない).翼口蓋窩は上顎から頭蓋内,眼窩内などの離れた部分との連絡経路として働くため,いわゆるT4a〜T4bといったadvanced stageの前段階でみられる進展範囲として非常に重要な領域である.また,同領域における三叉神経第二枝を起点として複数の神経が同部を通過しており,神経周囲進展が生じる頻度の最も高い領域である.神経周囲進展は鼻副鼻腔癌の主体をなす扁平上皮癌でもみられるが,腺様嚢胞癌で特によく認められる.翼口蓋窩の病変の進展が認められた際は,孔構造を介したその先を常に確認する必要がある.

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上顎洞癌において翼状突起進展はT4aに相当する.手術加療が行われる場合,翼状突起部を含めた拡大上顎切除術が行われるが,局在が深部に位置しているため,この領域は術野がとりづらく,また,翼突筋周囲の豊富な血流によって出血も多くなりがちである.化学放射線療法後の再発病巣における救済手術の際にも,前述と同様な理由にて,この部分の残存は厄介である.また,上顎歯肉癌も(領域的には鼻副鼻腔癌ではなく口腔癌だが)進行例ではこの領域にしばしば進展する.口腔癌としては翼状突起の進展はT4bに分類される.

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わが国における口腔癌の半数を舌癌が占め,舌縁部粘膜に最も高頻度で発生する.内舌筋に沿った進展の理解は,腫瘍の進展範囲を同定し,病期分類の基準である深達度(depth of invasion;DOI)の正確な計測に必要不可欠である.DOIは2017年の“American Joint Com­mi­ttee on Cancer(AJCC) Staging Manual, 8th edition”に追加された基準で,舌粘膜面(病理学的には舌粘膜基底膜)から腫瘍最深部までの垂直的な距離を意味する.2018年2月の改訂版ではT4aの基準にもなった.同年,Union for Inter­national Cancer Control(5月)や,わが国の頭頸部癌取扱い規約(12月)でも,AJCCに準じたアップデートがなされた.規約の更新による混乱を防ぐため,報告書には,使用した規約と版を明示しておくことが望ましい.

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2017年の“American Joint Committee on Cancer(AJCC) Staging Manual, 8th edition”の改訂で,外舌筋そのものへの浸潤はT4aの基準からは削除された.しかしながら,正確な進展範囲の評価や舌外進展の経路を理解する上では依然として重要な概念である.舌縁部に発生した舌癌では,直下に舌骨舌筋の停止部が存在し,この筋の走行に沿った下方進展の経路を示すことが非常に多く,病変の進展範囲を評価する際には特に注意を要する.

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神経周囲進展(perineural spread)は,神経内膜や神経鞘に沿った神経周囲腔への病変の播種を意味し,治療方針や治療範囲に大きく影響する所見である.しばしば神経周囲浸潤(perineural in­vasion)と混同されるが,こちらは病理組織学的な神経組織周囲への浸潤を意味し,用語選択には注意を要する.口腔領域では三叉神経系(CN V)によくみられ,上顎の病変では上顎神経(V2),下顎の病変では下顎神経(V3)に沿った進展を示すことが多い.このほかにも,舌下神経(CN XII)や舌咽神経(CN IX)に沿った神経周囲進展がみられる.

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神経血管束(neurovascular bundle)は,従来より,血管や神経が集約する領域への腫瘍進展が,リンパ節転移などに関与し,予後推定因子になるとして議論されている.今日においても,リンパ流の観点からリンパ節転移を予測する因子として,あるいは神経周囲進展の可能性を考慮するという観点からも重要と考えられている.しかしながら,上記2つの観点に加え,病理的な脈管浸潤や神経周囲浸潤とも同時に議論されてしまうことがあり, 事態を複雑にする場合がある.したがって,この所見に対しては,議論の相手が何に焦点を当てているのかを把握し,必要に応じて違う表現を用いるなどして,柔軟に対応する必要がある.本項では,主にリンパ節転移の予測因子としてフォーカスしている.なお,神経周囲進展に関しては前項で触れたので,参照されたい.

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下顎骨浸潤の有無と程度は,病期分類や術式決定(特に切除範囲)への影響が大きく,正確な進展範囲の評価が画像診断医に要求される.モダリティに関しては様々な見解があるが,皮質骨浸潤の評価には空間分解能の高いCTが観察しやすく,骨髄浸潤の評価は組織分解能の優れるMRIが観察しやすいとされる.ただし,口腔領域はメタルアーチファクトやモーションアーチファクトの影響を受けやすいため,両モダリティを用いた相補的な診断が最も望ましい.

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咽頭収縮筋から翼突下顎縫線への浸潤を示した際,頭側では翼状突起(HPV陰性中咽頭癌でT4b),上顎結節,外側前方では臼後三角部などへの進展を来しうる.粘膜下を主体とするこれらの進展様式は臨床的には評価が困難であり,治療前における進展範囲の評価として画像診断の意義は大きい.また,前口蓋弓癌,扁桃癌では,翼突下顎縫線に沿った深部進展を画像でのみ検出しうる場合もあり,臨床上,重要である.

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HPV(human papilloma virus)陰性中咽頭癌において上咽頭進展はT4bとして定義され,その中でも最も頻度が高い因子とされている.上咽頭進展を示す中咽頭癌は予後不良とされ,一般的には手術療法より化学放射線療法が選択される.これらの腫瘍浸潤は粘膜下進展を主体とし,上咽頭粘膜面に変化がなく,しばしば内視鏡において評価困難であることから,画像診断の意義は大きい.

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中咽頭癌のT1〜T3病変は大きさにより区分され,一般に傍咽頭間隙(parapharyngeal space)への浸潤のみではT4病変に含まれないが,茎突咽頭筋に沿った後側方進展を示すと,頸動脈浸潤,頭蓋底浸潤(HPV陰性病変ではT4b,HPV陽性病変ではT4)を来し,レベルIIリンパ節転移やRouviereリンパ節病変と一塊となった腫瘤を形成する場合がある.同進展自体はT因子には関与しないが,頸部リンパ節病変の発現や局所頸部5年制御率に影響を与えるとされる.

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舌根部癌は前方で早期より局所浸潤性が高く,しばしば喉頭鏡や内視鏡所見によって推定されるより高度な進展を生じ,舌扁桃が著明な症例では内視鏡的な評価が困難であり,進展範囲評価での画像診断の意義は大きい.舌根は原発不明癌の原発病変の局在としても重要であり,深部浸潤性変化の指摘が早期病変診断に有用となる場合がある.舌根部癌は粘膜近傍に位置する内舌筋,外舌筋を含む舌可動部に深部浸潤を来す.外舌筋浸潤はHPV陽性の中咽頭癌ではT4病変,HPV陰性の中咽頭癌ではT4aとして定義されるため,病期診断・進展範囲評価に重要となる.

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舌根癌を含む中咽頭癌では,喉頭(特に声門上喉頭での喉頭蓋前間隙)への下方進展は,病期診断(HPV陰性病変ではT4a,HPV陽性病変ではT41),手術例での喉頭合併切除の要否の判断,舌部分切除の適応を外れる点,リンパ網に富む同間隙への浸潤により頸部リンパ節転移の危険性が高まるなどにおいて,重要な要素となる.これらの組織間隙への腫瘍浸潤は粘膜下進展を主体とし, しばしば喉頭鏡において評価困難であり,画像診断の意義は大きい.

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●傍声帯間隙進展はT3に分類される.●傍声帯間隙へ進展した腫瘍は,頭側は喉頭蓋前間隙,尾側は声門下ならびに輪状甲状膜を介した喉頭外頸部軟部組織へ進展する.●広範な傍声帯間隙への進展の場合,喉頭全摘出術を施行する.●頸部リンパ節転移の頻度が高い.●経声門進展を示す腫瘍は,声門癌と比べ治療成績が悪く,喉頭機能温存術の適応から外れることが多い.

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●喉頭蓋前間隙進展はT3に分類される.●喉頭蓋前間隙進展の場合,放射線治療への反応が不良とされる.●喉頭蓋前間隙内を占拠する高容積病変は,喉頭全摘出術を含む広範な切除が必要となる.●頸部リンパ節転移の頻度が高い.声門上癌もしくは声門癌が喉頭蓋前間隙に進展すると,靱帯や骨・軟骨に囲まれた血管床が乏しい解剖学的理由から,放射線治療への反応が不良とされる.また,喉頭機能温存術を行う場合でも,喉頭蓋前間隙と喉頭蓋を含めた声門上水平切除術が必要となり,術後の嚥下機能の低下が問題となる.喉頭蓋前間隙内を占拠する高容積病変は,甲状軟骨浸潤や甲状舌骨膜を介した喉頭外頸部軟部組織への進展,舌骨を越えた舌根部への進展を来しやすく,喉頭全摘出術を含む広範な切除が必要である.

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●声門癌に多い進展形式で,声帯靱帯および甲状披裂筋に沿った後方進展により生じる.●輪状披裂関節進展による声帯固定はT3に分類される.声帯機能の温存は難しいことが多い.●後方は下咽頭,尾側はcricoid areaから声門下へ進展する.声門癌は声帯前1/3に生じることが多く,声帯靱帯および甲状披裂筋に沿った後方進展を示す.声帯に限局した腫瘍の場合,内視鏡/経口的切除術や(化学)放射線療法が施行され,発声機能の温存が可能である.しかしながら,輪状披裂関節への進展(図1)は,T3に相当する声帯固定の原因のひとつとなり,声帯機能の温存は難しく,喉頭全摘出術が選択されることが多い.

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●声門下進展の有無・範囲によって喉頭機能温存術の可否が決定されることが多い.●声門下は,喉頭外頸部軟部組織進展や輪状軟骨浸潤の経路となる.●喉頭前リンパ節への転移のリスクとなる.声門上部および声門部腫瘍の声門下への進展は,声帯による妨げや傍声帯間隙を介した粘膜下進展が多いことから,喉頭鏡だけでの評価では過小評価になることがあり,画像での指摘が重要である.喉頭機能温存術の適応は,声門下進展が前方で10mm,後方で5mm以下となる.しかしながら,傍声帯間隙や粘膜に沿った声門下進展の場合,輪状甲状膜を介した喉頭外頸部軟部組織への進展や,輪状軟骨浸潤を来しやすく,喉頭全摘出術が選択されることが少なくない.

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●前方・側方の喉頭外頸部軟部組織へ進展する腫瘍はT4aに分類される.●cricoid areaに進展した腫瘍は輪状甲状膜を介した喉頭外進展を来しやすく,治療後再発のリスクとなる.●喉頭前リンパ節への転移のリスクとなる.輪状甲状膜は弾性線維でできた組織であり,声門下腫瘍や声門下進展を示す腫瘍に対して,輪状甲状膜を貫通する神経血管束を介した喉頭外頸部軟部組織への進展経路となりやすい.喉頭外頸部軟部組織進展を認めた場合,T4aに分類され,舌骨下筋または皮下を含んだ喉頭全摘出術が第一選択となる.また,近接する甲状腺への直接浸潤やリンパ路を介した進展経路となることより,甲状腺片葉摘出または甲状腺全摘出術が必要となる場合がある.この進展に関連する神経血管束は,cricoid area内を走行する上甲状腺動脈の輪状甲状枝と,輪状甲状靱帯を貫通する同枝の上行枝である.したがって,cricoid areaに進展した声門下進展は,治療後の間質再発に注意する必要がある.輪状甲状靱帯や輪状甲状膜のリンパ路を介した進展は,喉頭前リンパ節や気管傍リンパ節転移を来す経路としても重要である.

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●甲状軟骨内側骨皮質への浸潤はT3に分類される.●甲状軟骨外側骨皮質・輪状軟骨浸潤はT4a.●広範な喉頭軟骨浸潤は喉頭全摘出術を施行.甲状軟骨と輪状軟骨が喉頭癌のT因子に寄与する.甲状軟骨内側骨皮質への浸潤はT3に相当し,甲状軟骨外側骨皮質および輪状軟骨への浸潤はT4aに分類される.喉頭癌の限局的な喉頭軟骨浸潤を認めた場合,喉頭機能温存術や(化学)放射線療法が適応となることもあるが,広範な喉頭軟骨浸潤は原則として喉頭全摘出術が第一選択となる.軟骨浸潤を伴う場合,前頸部軟部組織への進展範囲に応じて喉頭全摘出術の切除範囲が異なるため,層を意識した術前画像診断が必要となる.甲状軟骨外側面から舌骨下筋への限局性浸潤は,舌骨下筋を含んだ喉頭全摘出術が選択されるが,舌骨下筋より表層の広頸筋近傍への進展の際は切除範囲に皮下が含まれ,広頸筋を越え皮膚所見を認める場合は,皮膚の合併切除を伴う拡大切除が必要となる.

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甲状披裂間隙(thyroarytenoid gap)は,甲状軟骨側板と披裂軟骨との間にある間隙のことで,梨状陥凹前壁は甲状披裂間隙を介して傍声帯間隙と接している.下咽頭梨状陥凹癌の甲状披裂間隙を介した傍声帯間隙への進展は,代表的な粘膜下進展様式であり,内視鏡的には確認困難な場合があるので,画像評価が重要である.また,傍声帯間隙は甲状軟骨側板に沿って声門上下への進展の経路となる点や,豊富なリンパ網によるリンパ節転移を来しうる点にも注意が必要である.近年では,内視鏡的切除術や経口的切除術などの喉頭機能温存手術が早期癌に対して適応される機会が多くなってきており,治療方針の決定のためにも正確な進展範囲の評価が特に重要である.

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甲状舌骨膜は舌骨と甲状軟骨との間に張り,喉頭軟骨を吊り上げる線維性膜のことである.喉頭上部を栄養する上喉頭動脈と,知覚を担当する上喉頭神経内枝(内喉頭神経)から形成される上喉頭神経血管束は,甲状舌骨膜の後外側部を貫通して喉頭内へと分布する.傍声帯間隙に進展した下咽頭癌が,この上喉頭神経血管束の走行に沿って喉頭外軟部組織に直接進展(T4a)することがあり,内視鏡での観察は困難なため,画像診断の意義は大きい.また,神経血管束にはリンパ路も含まれ,レベルIIIリンパ節転移を来す場合もある(図4参照).

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梨状陥凹外側壁の癌が外側に発育すると,甲状軟骨後縁を包み込むような進展(wrap around spread)を示す.この進展様式では声帯固定(T3病期)より先に甲状軟骨浸潤(T4a病期)を生じることがあるが,声帯固定のない症例では喉頭機能温存手術が適応となる場合がある.さらに外側進展が進むと,下咽頭収縮筋の甲状軟骨付着部(図1のOL)に達し,収縮筋に沿って咽頭後壁に進展,あるいは収縮筋を越えて喉頭外軟部組織に進展する.

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輪状後部進展は梨状陥凹癌からが多く,対側下咽頭や下方の頸部食道に浸潤する経路となる.また,輪状後部の前方には喉頭が位置すること,外側深部で甲状腺との間に反回神経が走行することから,これらへの浸潤により声帯固定を起こしうる.輪状後部に及ぶ病変では,原則的に喉頭機能温存術の適応から外れる.輪状後部進展は粘膜下浸潤の傾向にあるため,内視鏡では観察しづらく,画像診断の意義がある.

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下咽頭収縮筋と椎前筋膜を腫瘍進展の障壁という観点からみると,前者よりも後者が強く,咽頭後間隙進展の頻度に比べ椎前間隙進展の頻度は非常に低い.椎前間隙進展は高度浸潤癌(T4b)で,治療は化学放射線療法が主となる.咽頭後間隙の外側には頸動脈間隙があり,咽頭後間隙進展から頸動脈浸潤に発展すると高度浸潤癌(T4b)となる.

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下咽頭癌の喉頭軟骨浸潤において,甲状軟骨と輪状軟骨,披裂軟骨への浸潤が臨床的に問題となり,治療法選択に影響し,予後に関連する.軟骨浸潤例は一般的に機能温存手術や根治的放射線治療の適応を外れる.下咽頭癌で病期に関連するのは甲状軟骨と輪状軟骨で,浸潤はいずれもT4a期となり,喉頭癌による軟骨浸潤の病期分類とは異なる.

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耳下腺は内側で傍咽頭間隙と頸動脈間隙に接している.耳下腺深部と傍咽頭間隙の間には明瞭な筋膜が存在しないため,耳下腺深葉由来の病変は茎突下顎トンネルを通って傍咽頭間隙に容易に進展する.このため,茎突下顎トンネルを開大するダンベル状腫瘤をみた場合には,耳下腺深葉腫瘤であることがほとんどである.この際,傍咽頭間隙の脂肪組織は内側前方に偏位する.傍咽頭間隙から発生する腫瘍はほとんどないが,周囲間隙から発生した病変による圧排や浸潤を受けやすく,脂肪組織の偏位から病変の由来間隙を推定することが可能である.

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神経周囲進展(perineural spread)は,原発病変が神経内膜や神経周膜に沿って進展する進展様式を指す.約半数で無症候性であり,進行期になってから神経症状が明らかになることが多いため,診断に至るまでに時間を要する.神経周囲進展は局所再発・遠隔転移のリスクファクターであることから,画像診断による早期診断が重要である.また,正確な進展範囲の評価は,原発巣切除の可否,放射線治療の適応や照射設定など,治療方針決定において重要な要素である.神経周囲進展は,神経走行に沿って中枢側,末梢側のいずれにも進展しうる.必ずしも連続性に認められるわけではなく,神経走行に沿って非連続性にskip lesionを形成する場合もある.画像上は神経の腫大や腫瘤形成,異常造影効果,神経走行路の脂肪組織の消失,神経孔の拡大などで判断する.

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耳下腺の前方には咀嚼筋間隙,内側には傍咽頭間隙と頸動脈間隙,後方には乳様突起,外側には皮膚,上方には外耳道を認め,耳下腺癌ではこれらの組織に進展しうる.『頭頸部癌取扱い規約,第6版』では,皮膚,下顎骨,外耳道,または明らかな顔面神経浸潤を認めるものはT4a,頭蓋底浸潤や頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍はT4bと規定され,重要な予後不良因子である.特に頭蓋底浸潤や頭蓋内進展は手術適応外となることが多い.実質外進展を伴う耳下腺癌において,頭蓋底浸潤の有無を含めた進展範囲の診断は,病期診断と手術療法の可否,放射線治療の適応判断,照射範囲の設定に重要である.頭蓋底浸潤の画像診断は,CTによる骨破壊もしくは硬化性変化,MRIのT1強調像で高信号を示す脂肪髄の消失や,造影後脂肪抑制T1強調像での造影効果,拡散強調像での高信号を用いて診断する.

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甲状腺癌の気管や食道への浸潤は,TNM分類[American Joint Committee on Cancer/Union for International Cancer Control(AJCC/UICC),第8版]でT4aに区分される.被膜外進展した甲状腺進行癌262例の検討で,反回神経は47%,気管は37%,食道は21%に浸潤を認めたとの報告がある1).甲状腺癌の被膜外進展は予後における危険因子で,気管や食道への浸潤は予後だけでなく,術後のQOLにも大きな影響を与える.

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甲状腺癌の反回神経への浸潤は,TNM分類(AJCC/UICC,第8版)でT4aに区分される.反回神経はT4aの中で最も頻度の高い浸潤部位である.甲状腺癌における反回神経麻痺の原因のほとんどは腫瘍による直接の反回神経浸潤(図2参照)で,他にリンパ節転移による浸潤がある.反回神経浸潤単独例では,Ex 0(腺外浸潤なし)またはEx 1(腺外浸潤が胸骨甲状筋あるいは脂肪組織にとどまる)例と比較して再発率が有意に高いとの報告がある1).また,腫瘍浸潤のため反回神経を合併切除した甲状腺乳頭癌を対象とした検討で,反回神経を含む複数の臓器浸潤(気管や食道,頸部血管)が最も予後不良な因子であると報告されている.

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甲状腺癌の縦隔進展には,①原発巣が縦隔へ直接進展するものと,②縦隔リンパ節転移による進展の2パターンがある.TNM分類(AJCC/UICC第8版)では,縦隔内の血管に浸潤する腫瘍はT4bに分類され,血管浸潤を伴う縦隔進展は一般的に根治切除不能と認識されている.血管や周囲臓器への浸潤がない原発巣の縦隔への下方進展例はT3に分類される.上縦隔リンパ節転移は,TNM分類(AJCC/UICC第8版)で,これまでのN1bからN1aに区分が変更された.甲状腺分化癌T4の治療は,甲状腺全摘と郭清術,術後アブレーションが推奨されているが,根治切除不能例では放射線治療(外照射またはアブレーション)が行われる.分子標的薬については,切除不能な甲状腺未分化癌や転移再発甲状腺癌に対してソラフェニブやレンバチニブが,切除不能な転移再発甲状腺髄様癌に対してバンデタニブが選択される.

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深頸筋膜深葉は,深頸リンパ節が存在する脂肪層深部の傍脊椎筋を取り囲む.深頸筋膜深葉への浸潤は臨床上,リンパ節の癒着・固着としてみられる.手術の際に深部の筋を切除する必要があるが,一般的にマージンを含めた治癒切除は難しくなる.前斜角筋は後方に腕神経叢・鎖骨下動脈が走行し,解剖学的メルクマールとなる.

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総頸動脈や内頸動脈への浸潤は通常,手術不適応となる.また,頸動脈浸潤は予後不良因子である.外頸動脈は結紮可能であるものの,内・外頸動脈分岐部への浸潤がある場合,結紮が難しく,切除が困難となる.下咽頭癌などでは原発巣は切除可能であっても,リンパ節節外進展による頸動脈浸潤により,しばしば手術適応外となる.頸動脈鞘(舌咽神経)や頸動脈洞への浸潤は反射性失神の原因となる.上甲状腺動脈への浸潤の有無は再建術の際の吻合血管として重要である.

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下位脳神経(迷走神経,副神経,舌下神経)の腫瘍浸潤や治療後の障害はQOLに関わる.迷走神経・反回神経の障害は構音障害や嗄声, 副神経の障害は挙上困難・肩関節炎,舌下神経障害は舌運動障害の原因となる.腕神経叢への浸潤がある場合,治癒切除は難しくなる.

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リンパ節節外進展による筋浸潤,皮膚浸潤が存在する場合,合併切除が必要となる.広頸筋は通常,剥離挙上するが,浸潤がある場合には広頸筋上で剥離し,合併切除する.胸鎖乳突筋への浸潤は,同筋を温存するかどうかの術前判断の目安となる.皮膚浸潤が広い場合,皮弁による再建が必要となる.

すとらびすむす

枝変わり 藤井 進也
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バラ(薔薇)の花というと,皆さんはどんな花を思い浮かべるだろうか.多くの先生方は赤いバラを思い浮かべるのではないだろうか.バラには3万種類以上があるといわれており,様々な色や形,そして香りのするバラがある.このような多様性の背景には,交配を重ねて新品種を作り出した育種家の並々ならぬ努力が存在するのであるが,枝変わりというのも新品種が見出される重要な現象である.枝変わりとは,植物のある枝に別の性質を持つ花などが生じる現象である.

画像診断と病理

血管芽腫 油野 裕之 , 蒲田 敏文
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症例は50歳台,男性.ふらつきを主訴として来院.頭部MRIでは,小脳虫部に長径4cm大,やや分葉状の形態,境界明瞭な腫瘤影を認めた.腫瘤周囲の両側小脳半球には,T2強調像およびFLAIR像で高信号域が広がり,浮腫性変化と考えられた.腫瘤は脳幹を左側に圧排,また前方の第四脳室圧排に伴う水頭症が確認された.内部は,T1強調像では低信号,T2強調像およびFLAIR像では高信号,拡散強調像では低信号を呈した.T2強調像では腫瘤周囲にflow voidが多数認められた(図1-A;→).造影後のT1強調像では腫瘤の辺縁部に明瞭な造影効果を認めたが,腫瘤内部の嚢胞状部分には造影効果を認めなかった(図1-B).プロトンMRスペクトロスコピー[1H-MRS(TE 35ms,ROIは図1-B;□印)]では1.3ppmに1峰性の著明なピークを認め,lipidと考えられた(図2;→)[long TE 1H-MRSは未施行のため,lactate,macromoleculesと鑑別が問題となるが,解析ソフト(LCModel)での結果もlipidがメインであった].これらの画像所見から小脳の血管芽腫と術前診断され,その後,腫瘍摘出術が施行された.

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Q1血管壁の造影効果を評価する際,造影後3DスピンエコーのT1強調像ではサブトラクションを併用しても,血管内腔の辺縁に造影効果が残存し,壁の造影効果の評価が難しい場合があるのですが,どのような撮像および読影の工夫が必要なのでしょうか?Q2グラフト血管は感染がなくてもFDGの集積を認めることがあるそうですが,感染した場合と集積の程度は異なるのでしょうか?

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●小児胸部画像診断において単純X線撮影は,今なお重要な検査である.●小児胸部単純X線写真の読影時にチェックすべきポイントを知ろう.●積極的に小児胸部単純X線写真を読影することで,苦手意識を払拭しよう.

Picked-up Knowledge from Foreign Journals

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僧帽弁閉鎖不全症における僧帽弁逸脱の有無による心筋線維化

重症大動脈弁狭窄症における心筋線維化の再検証:133名の患者に対する侵襲・非侵襲的検討

トライアスロン選手における造影CMR上の心筋線維化は運動誘発性高血圧および選手歴と相関する

CASE OF THE MONTH

Case of July 佐藤 嘉尚 , 高瀬 圭
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30歳台,女性.主訴:労作時息切れ.現病歴:特発性肺動脈性肺高血圧に対して生体両肺移植術後.呼吸機能検査:FVC 2.63l, FEV1 1.54l, FEV1% 59%胸部単純CT(吸気,呼気)を示す.考えられる疾患は何か?

解答応募用紙は,https://gakken-mesh.jp/html/pc/pdf/case-web.pdf からダウンロードできます.

The Key to Case of May 浦瀬 靖代
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50歳台,男性.主訴:動悸,ふらつき.現病歴:胃癌で術前補助化学療法を3コース施行(1サイクル21日間).3コース目day 21の血液検査で肝機能障害を認めた.既往歴:20歳台,痛風.40歳台,肺動脈血栓塞栓症,左上腕血栓性静脈炎.血液生化学検査(3コース目day21):AST 582U/l,ALT 339U/l,γ-GTP 40U/l,ALP 294U/l,総ビリルビン3.1mg/dl,直接ビリルビン0.5mg/dl,間接ビリルビン2.6mg/dl.

General Radiology

木をみて森もみる 井上 明星
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突然の右胸痛と呼吸苦のために受診.血液検査所見では脂質代謝異常を認めるが,その他は正常範囲内.既往歴に32歳時に右気胸.1か月前に左血気胸に対して胸腔ドレーンを留置され,左肺尖部の責任血管を焼灼止血し,嚢胞を切除したエピソードがある.喫煙歴なし.

他科のエキスパートにお尋ねします

腎臓編 伊藤 敬一 , 新本 弘
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腎癌の術式(腎全摘あるいは腎部分切除)を決める際に,術前の画像診断で重要なことを教えてください.

腎癌の静脈内進展に関して,手術する際に最も気にすることは何ですか?

腎癌の手術に際して,血管破格(anomaly)に関して注意すべき点は何ですか?

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特発性肺線維症(IPF)の新たな国際診断ガイドラインが2018年に発表された.これまで3つのグループだったCTパターンが,今回からusual in­ter­stitial pneumonia(UIP),probable UIP,indeterminate for UIP,alternative diagnosisの4グループとなった.本稿では各グループの画像を示し解説する.

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39巻8号 (2019年6月)
電子版ISSN:2432-1281 印刷版ISSN:0285-0524 学研メディカル秀潤社

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