総合診療 28巻12号 (2018年12月)

特集 こんなときこそ漢方を!

岡部 竜吾
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総合診療の場には多彩な訴えや、一人で多くの訴えを持つ患者が訪れる。診断がつき標準的な現代治療を行っても、患者の愁訴の改善に繋がらないこともある。そんなときに漢方薬を使用すると、問題解決に繋がることがある。

前回(本誌26巻3号特集)は漢方薬の使い方の基本や副反応を示したうえで、いくつかの特徴を目安に使用でき、漢方初学者でも効果を実感できる、エキスパートお薦めの2〜3の処方を、その典型的治療例と共に紹介した。本特集でも前回と同様の趣旨と構成で、日常診療のお役に立てる「こんなときこそ、この漢方」を紹介していきたい。具体的には、虚証と実証の漢方治療の実際とお薦め処方を、また、風邪の初期とこじれた場合の処方を、そのほか婦人科・小児科・緩和医療・疼痛・高齢者のマルチモビィディティーの処方などを紹介する。

今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題
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本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

【総論:漢方診療の達人は語る】

医師のあるべき姿を古典に学ぶ 佐藤 弘
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はじめに

 本誌26巻3号(2016年3月号)の漢方特集の「総論」(pp.198-201)に、松田邦夫先生(松田医院)が「古典にみる良医の姿」を執筆されている。先生は良医たちに共通することとして、「病人の診察治療に際し、ただひたすら良心を尽くす姿である。それは医師の務めであり、医術上達の秘訣である」と結んでおられる。

 本稿では、松田先生とは少し観点を変えて、医師のあるべき姿を考えてみたい。

【私のイチオシ処方】

実証の漢方診療 新井 信
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「実証」とは

 虚実の基本的な概念として、「虚」とは中がうつろなこと(空虚)、「実」とは中に何かが充満していること(充実)である。「証」とは、病人がその時点で示している漢方医学的病態であるから、「実証」とは病気にかかったとき、身体や精神に闘病反応が強く現れている病態だと解釈できる。たとえば、月経痛が非常に強い、関節が腫れて熱感と疼痛が強い、腹診で圧痛が強い、イライラして発狂しそうだ、などの症候を示す病態は、「実証」と見なすことができる。

虚証の漢方診療 盛岡 頼子
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 「虚証」とは、体質が虚弱、すなわち、体力・気力・抵抗力などが低下している状態である。

 虚証患者のほとんどは疲労感を訴える。胃腸機能が低下している者が多く、食欲不振、胃もたれ、腹痛、下痢などの消化器症状を伴い、さらに冷え、ふらつき、風邪をひきやすいなどの症状を訴える者も少なくない。虚証の原因としては、もともとの体質的なもの、大病後や疾病によるもの、過労によるもの、加齢によるものなどが挙げられる。虚証患者に対して、漢方薬により低下した体力や抵抗力などを補い、胃腸の働きを整え、冷えを改善するなどの治療を行っていく。このような「補う」治療は、西洋薬にはみられない、漢方薬のすぐれた特徴の1つである。

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漢方における風邪治療とは?

 風邪治療に関する医療の現場状況は、以下に二大別される。患者側からの「風邪をひきましたので、何か薬を下さい」、医療者側からの「それ、風邪の症状ではないですか?」である。

 西洋医学的治療では、患者兆候のなかから、発熱、鼻水、頭痛、咽頭痛、咳嗽などの風邪に関係するキーワードを拾い出し、それに対する対症療法を行う。

こじれた風邪の漢方処方 水嶋 丈雄
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 「ウイルス性の風邪の治療の際に抗菌薬の乱用をしないでください」との厚労省の指導がある。では、何を用いればよいのか?

 実は漢方薬は、ウイルス性の感冒症候群にも効果がある。こじれた感冒には微熱に小柴胡湯を、胃腸障害を伴う場合に柴胡桂枝湯を、咳が残るときには柴朴湯を第一選択とする。

慢性疼痛と漢方 長坂 和彦
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 痛みを主訴に来院する患者の多くは、「風呂に入ると痛みが楽になる」とか、「天気が悪くなると痛む」という。お風呂に入ると楽になるのだから、漢方薬でお風呂に入ったのと同じ状態にすれば、痛みはなくなるということである。

 お風呂の効用に、①温まる、②血液の流れが良くなる、③汗をかく、④筋肉が揉みほぐされる、がある。つまりこの4つの状態を、漢方薬で演出するのだ。

緩和医療と漢方 星野 惠津夫
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緩和医療における漢方治療の有用性

 緩和医療は、古今東西のさまざまな医療技術によって、患者の苦痛を和らげる医療である。多彩な治療法のオプションを必要とするため、症状緩和に優れた漢方を治療に利用できる意義は大きい。がんの緩和医療では、がんと診断された後、積極的治療の時期から経過観察期、さらに終末期に至るまで、各病期に応じてシームレスな症状緩和を行うために、漢方はきわめて有用である。

 がんおよび治療の影響で、気力と体力が低下したがん患者の状態を、筆者は「癌証」と呼んでいるが、「癌証」に対しては漢方薬の「補剤」が特効薬となる。補剤とは、弱った患者を元気にする漢方薬群である。補中益気湯・十全大補湯・人参養栄湯は三大補剤と呼ばれ、これらを適切に用いると、がん患者の症状の多くは緩和される。補剤として十全大補湯が頻用されるが、補中益気湯は消化器あるいは精神症状のある患者に、また人参養栄湯は呼吸器症状のある患者に、それぞれ有効な場合が多い。個別症状緩和のためには、以下のような漢方薬を試みる。

小児の漢方治療と注意点 藤井 泰志
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総論—注意点と投与量の目安

 小児の体は、成人とは生理学的特徴が異なる点があり、これに伴い漢方治療でも頻用処方が異なってくる。また、成人と比べて小児は漢方的な体質の個人差(“証”の違い)が比較的少ないため、漢方の頻用処方も限られてくる。個人差を意識せず、症候を目標に処方選択しても、大きく外れることは比較的少ない。

 小児に限らないが、食事アレルギーがある患児への処方には注意が必要である。漢方薬の原材料には食材[小麦、ゴマ(胡麻)、シナモン(桂皮・桂枝)]や、大豆関連植物[マメ科植物由来の黄耆や甘草]が使用されていることがあり、アレルギーの種類や程度によって、投薬を避ける必要が出てくる。またエキス製剤では賦形剤として、乳糖やトウモロコシデンプンが使用されていることが多く、注意が必要である。また、葛根湯・麻黄湯・小青竜湯などに含まれる麻黄はエフェドリンを含有しており、覚醒して寝つけなくなったり、夜泣きのきっかけになったりすることがある。その際には処方変更や減量、服用時間の変更などの対処を検討する。

妊産婦の漢方治療と注意点 後山 尚久
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感冒のとき

❶処方

 参蘇飲。

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高齢者のマルチモビィディティーと漢方治療

 「マルチモビィディティー」とは、いくつかの慢性疾患各々が、病態生理的に関連する・しないにかかわらず併存している状態であり、診療の中心となる疾患を設定しがたい状態である。そのため、ケアが科別に分断されることが多く、容易にポリファーマシーに陥りやすい。

 プライマリ・ケア、総合診療で漢方薬を上手に活用することで、高齢者のマルチモビィディティーへの介入の一助になりうると考える。

【スキルアップ! 漢方Tips】

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 漢方治療では、四診と呼ばれる診察法があります。四診は、「望」「聞」「問」「切」診の4種類であり、問診以外は、漢方独特な表現です。望診は視診、聞診は聴診、切診は触診を意味し、望診では舌診、切診では脈診と腹診が、漢方治療の特徴となっています。これらの四診を総合して、患者の漢方医学的病名、すなわち証を診断します。証を診断するに当たっては、漢方医学特有の概念である八綱(陰陽、虚実、寒熱、表裏)、六病位、気血水、五臓、などの理論を活用します。特に、陰陽や虚実、気血水は、病態を把握するうえで重要です。

 「陰陽」では、暑がりで冬でも冷たい飲み物を好む人は「陽」、寒がりで夏でも靴下を離せないという人は「陰」と考えます。

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 元来、漢方薬は複数の生薬(植物・動物・鉱物など)を煎じたり、粉末状にして服用されてきた。現在の医療用漢方エキス製剤は、患者のアドヒアランスを向上させるため、煎じ薬を乾燥させエキスを抽出し、乳糖などの賦形剤を加え粉末にしたものである。コーヒーに例えると、豆から挽いたドリップコーヒーが煎じ薬に、インスタントコーヒー粉末がエキス製剤に相当する。インスタントコーヒーは湯に溶いて飲むが、漢方薬も同様に考えるとよい。漢方薬には香りや味により効果を発揮するものがあり、エキス剤を100〜200mLの湯に溶いて飲むと香りや吸収が高まり、薬の効果も高まることがある。また、身体を温め発汗などさせたいときは熱湯に溶いて服用し、身体を冷やしたい場合は冷服させる。

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◦始め方、やめ方

 漢方薬のなかには、甘くて飲みやすいものがいくつかある。飴が入っている小建中湯や黄耆建中湯、構成生薬がすべて食材由来(小麦、なつめ、お菓子の甘味料にも使われる甘草の3種)の甘麦大棗湯、そのほか人参湯や麦門冬湯などは比較的飲みやすい。処方選択に迷ったときは、飲みやすい処方から先に使用すると、長続きすることが多い。

 また、体に合っている物は比較的おいしいと感じ、合わない物はまずく感じる傾向がある。おいしく飲んでくれている場合や、初めは辛かったけど次第に慣れてきたという場合は、そのまましばらく継続でよい。しかし、どんなに頑張っても飲むのが苦痛になるようであれば、そもそも見立て違いで、体に合っていない漢方薬を選択した可能性がある。そのような際には、早々に別の処方への変更を検討したほうがよい。また、しばらく問題なく飲めていた薬がいつの間にか飲めなくなってしまった場合は、体質が変わって今の薬が合わなくなった、あるいは治療不要となった可能性がある。症状が消失していれば治療終了を、何らかの症状が残っていれば他剤への変更を、検討する頃合いと考える。

【コラム 漢方の挑戦】

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 全身性エリテマトーデス(SLE)は、膠原病・自己免疫疾患の代表とされているが、症状が多彩で全身に及ぶため、ステロイド・免疫抑制剤で病勢を抑えることができても、経過中に再燃したり、内服中断できず、一生を共にするような疾患である。

 漢方薬を併用することで疾患コントロールをつけることができた症例を2例、提示する。

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◦複雑系を解明し、利用するには?

 世の中は、個々の要素が絡み合った複雑系に満ち溢れています。たとえば1社1社の株価を個々の要素とすると、金融市場は複雑系です(図1)。全世界に張り巡らされている複雑系である金融市場の振る舞いに、経済活動のみならず、人類の営みが支配されています。1台1台の車と道路状況、1匹1匹の魚とサンゴ礁の生態系、さらには、1人1人の患者とその集積医療情報も、個々の要素と複雑系の関係にあります。一見すると途方もない複雑系ですが、この複雑系を解明し、利用するには、どうすればよいのでしょうか?

 それには、さまざまな方法があると思います。たとえば、AI(人工知能)。本稿では割愛しますが、すでに、自治医科大学で開始された最新のAI診療支援「ホワイト・ジャック」が挙げられます(よろしければネットで検索してみてください)。

Editorial

みんなの力で 岡部 竜吾
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 筆者は30年前に、当時“スーパー・ローテート”と呼ばれた多科をローテートする初期研修で医師の人生をスタートした。当時、スーパー・ローテートはメジャーでなく、受け入れ側にも迷惑をかけながらの研修であった。内科を回ると、「外科の医師は患者管理がずさんだ」と言われ、外科を回ると、「内科の医師は決断が遅い」などと言われていた。「どちらにも良いところがあるのにな」と思った。

 その後、外科系の総合医として地域医療に携わったが、ここでも「専門医は、限られた自分の領域しか診ない」とか、「総合医は、得意な専門性がなく曖昧な存在だ」などと互いの批判がなされた。

GM Group Dynamics・5

神奈川EBM実践研究会
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EBM研究会ではなく、EBM実践研究会である。すでに第90回を数える。2003年に、安田隆先生(吉祥寺あさひ病院)・大生定義先生(新生病院)・名郷直樹先生(武蔵野国分寺公園クリニック)・須藤博先生(大船中央病院)を幹事にスタートした。「EBM(evidence-based medicine)」という言葉が日本でも聞かれるようになったのが1990年代の半ば、立ち上げ当時にはすでに臨床現場でも“新常識”となっていた。しかし、「実践」となると話は別だ。EBMは、単にRCT(ランダム化比較試験)等の信頼性の高そうな文献を探し出し、その示唆するところをそのまま診療に当てはめることではない。

 EBMには、“プロセス”がある。本年6月13日、第86回の同研究会「EBM治療編—製薬会社の説明会のききかた」において、講師の南郷栄秀先生(東京北医療センター)は、❶疑問の定式化、❷疑問についての情報収集、❸得られた情報の批判的吟味、❹情報の患者への適用、❺1〜4の評価という、EBM実践の5つのステップを提示した。なかでも❹が肝である。臨床決断は、「エビデンス」のみならず、「患者の病状と周囲を取り巻く環境」「患者の意向と行動」、そして「医療者の臨床経験」という4つの要素を鑑みて検討するものだ。EBMが“常識”になった今こそ、改めてその臨床実践を問うべき時が来ている。

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病歴

患者:63歳、男性。

主訴:発熱、腹痛。

現病歴:約5週間前の夜中に、右肘と両側大腿に10cm大の紅色丘疹が出現。熱感と痛みがあり、歩行しづらくなった。その1週間後、37.5℃の発熱と倦怠感を自覚し、近医を受診した。診断は不明で、リンデロン0.5mg2錠/日が処方された。その2週間後にも右肘に紅斑が出現し、結節性紅斑が疑われるため、当院皮膚科に紹介受診となった。右肘の紅斑は有痛性であったため、結節性紅斑と考えられ、ロキソプロフェンが処方された。しかし紅斑は改善しないため、翌日には右蜂窩織炎としてセフォチアムが追加処方された。以後2週間、微熱、倦怠感、水様下痢〜軟便が持続した。さらにその1週間後、38℃の発熱、悪寒、下腹部痛が出現したため、当院皮膚科から総合内科に紹介となった。総合内科受診時点では、水様下痢と紅斑は改善していた。自覚症状に、咳、痰、咽頭痛、鼻汁、血便、排尿時痛、排尿困難、残尿感、尿意切迫感はなかった。

職業:会社役員。

生活習慣:特記すべきことなし。

嗜好品:喫煙;20歳〜15本/日×約40年、飲酒;缶ビール2本/日。

旅行歴:海外・温泉ともになし。

家族歴:特記すべきことなし(4人暮らしだが、同じ症状の人はいない)。

既往歴:高血圧あり。痛風(30歳)、多発脳梗塞(43歳、無症候性)、肺炎(50歳)。高脂血症・糖尿病はなし。

内服薬:カンデサルタン、アムロジピン、アスピリン、メコバラミン、ファモチジン。

追加された薬剤:ロキソプロフェン、セフォチアム。

アレルギー:なし。

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今月の処方箋

•マドパー®配合錠(レボドパ・ベンセラジド)

 1回1錠1日5回毎食後・15時・就寝前

•バイアスピリン®(アスピリン腸溶錠)100mg

 1回1錠1日1回朝食後

•タケプロン®OD錠(ランソプラゾール)15mg

 1回1錠1日1回朝食後

•ユリーフ®(シロドシン)4mg

 1回1錠1日1回朝食後

•アリセプト®D(ドネペジル)5mg

 1回1錠1日1回朝食後

•マグミット®(酸化マグネシウム)250mg

 1回1錠1日3回毎食後

•ムコダイン®DS(カルボシステインドライシロップ)50%

 1回1g1日3回毎食後

オール沖縄!カンファレンス|レジデントの対応と指導医の考えVer.2.0・24

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CASE

患者:33歳、男性

主訴:歩行困難。

現病歴:来院当日の朝起床時より両下肢の脱力があり、歩行困難のため救急車を要請した。来院前日までは普段通り歩行可能だった。来院1カ月前にも下肢の脱力を認めたが、30分ほどで自然軽快した。来院2日前にビール・泡盛を10杯ほど飲んだ。下痢はなく、食事は普段通り摂取していた。外傷のイベントや先行感染はなかった。

既往歴:3年前に腰椎ヘルニアの手術歴あり。1年前の腰椎MRIで異常なし。

内服薬:なし。市販薬、漢方、サプリメントもなし。

家族歴:特記事項なし。

生活歴:普段はほとんど飲まないが、来院2日前は忘年会のため飲酒。現在喫煙20本/日。

身体所見:血圧155/80mmHg、脈拍数97回/分、呼吸数25回/分、SpO299%(室内気)、体温37.0℃。

●頭頸部 明らかな異常所見なし。

●胸部 心音整、心雑音なし。呼吸音清。

●腹部 腸蠕動音正常、圧痛なし。

●四肢 下腿浮腫なし。徒手筋力テスト(MMT);両上肢挙上可能だが、MMT4と低下あり。

腸腰筋2/2、大腿四頭筋1/1、大腿屈筋1/1、前脛骨筋5/5、腓腹筋5/5、長母趾伸筋5/5、長母趾屈筋5/5(MMTに左右差はなし)。深部腱反射・膝蓋腱反射+/+・アキレス腱反射+/+、Babinski反射-/-、足クローヌス-/-。感覚障害なし。脳神経学所見に異常なし。

みるトレ Special・24

幽霊が来たッ!!(泣) 忽那 賢志
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患者:70歳代、男性。中国人。

現病歴:普段は中国の上海に住んでいる。3カ月前から咳嗽が続いていたが、あまりひどくなかったので様子をみていたという。1週間前から日本に観光に来ており、爆買いを楽しんでいた。昨日から咳嗽が強くなってきたため、それほどつらくはないものの、ついでに日本で診てもらおうと思い当院を受診した。

既往歴:高血圧、糖尿病(詳細不明)。

職業歴:銀行に勤めていたが、今は引退している。いわゆる富裕層である。

ROS(review of systems):(+)咳嗽、微熱、体重減少(3カ月前から5kg減っている)。

身体所見:体温37.4℃、血圧168/108mmHg、脈拍数97回/分、呼吸数18回/分、SpO2 99%(室内気)。

検査所見:肺炎が疑われ、胸部X線撮影を行ったところ、右肺野に浸潤影が認められた(図1)。喀痰グラム染色では、図2のような所見が得られた。

I LOVE Urinalysis|シンプルだけどディープな尿検査の世界・21

経管栄養するなら試験紙を! 上田 剛士
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Case

患者:73歳、男性。

現病歴:脳梗塞による症候性てんかんの既往がある73歳男性が、てんかん重積状態で人工呼吸管理・ICU入室となった。抗てんかん薬静注にて発作は頓座したが、意識障害は遷延しており、今後の投薬のため経鼻胃管を挿入した。心窩部で気泡音を確認したが、単純X線写真では気管内に留置されていることが判明した。

国試にたずねよ・24【最終回】

眠れぬ夜に、さようなら 山中 克郎
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 鎌田實先生(諏訪中央病院 名誉院長)は、明るく大きな声で患者に話しかけ勇気づけること(エンパワーメント)や、今までの人生を振り返ってもらうこと(ライフレビュー)を、緩和ケア病棟の回診で実践されている。

 先日の回診では、進行胃がんの99歳・女性(Yさん)が「おはぎを2個食べた。おいしかった」と、目を閉じながら何度も鎌田先生にお話しされていた。付き添いの息子さんが、「外交官の家でお手伝いをしていた時の話です。楽しかった思い出のようです。お嬢さんをお世話していました。1つはお嬢さんの分だったようですが、食糧難の時代、あまりにもおいしくて母が2つ食べちゃったようです」と、笑いながら説明された。

ジェネラリスト漢方Basics|東西2つの視点でアプローチ・12【最終回】

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 前回は風邪のひきはじめの漢方治療を紹介した。今回は風邪を少しこじらせた場合の漢方治療を紹介する。陽病のファーストステップである太陽病から、セカンドステップの少陽病へ進行した場合の治療法である。

 そういえば、本連載3回目の「機能性ディスペプシアの漢方治療」の稿で(本誌28巻3号、p424)、「四逆散の使える状況は後ほど紹介する」としたままだったが、最終回の今回、ようやく紹介できる。読者の皆さま、12回にわたる漢方の連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。

こんなときオスラー|超訳『平静の心』・24【最終回】

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 55歳のオスラー先生はジョンズ・ホプキンス大学を辞し、英国オックスフォード大学に欽定教授として異動することになった。1905年、英国に旅立つ前に、オスラー先生は北アメリカの医師と医学生に向けて、「学究生活」と題する講演を行った。

投稿 GM Clinical Pictures

真夏日に来院する皮疹 八島 広典
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CASE

患者:61歳、男性。

主訴:全身倦怠感、前胸部皮疹。

病歴:糖尿病、慢性腎臓病で通院(普段はCr1.0mg/dL程度)。外気34.0℃、湿度80%の真夏日に、冷房器具のない室内で体動困難となっているところを発見され、救急要請された。

既往症:糖尿病、慢性心不全。

家族歴:特記事項なし。

身体所見:前胸部に透明で緊満感のある小水疱が無数に多発している。

検査所見:Cr1.86mg/dL、Na124mEq/L、CK12,080IU/L、CK-MB7.1ng/mL、ミオグロビン10,790pg/mL、Glu186mg/dL、HbA1c5.8%。

発熱+皮疹 寺澤 佳洋
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CASE

患者:3歳、男児。

現病歴:6日前に発熱(38.5℃)や咽頭痛を認め、5日前にかかりつけ小児科を受診した。「かぜであろう」ということで、アセトアミノフェン内服のみで様子をみていた。2日前から体幹皮膚の発赤を認め、今朝から食事摂取量が減り、薬がなくなったため3連休の初日に休日診療所を訪れた。保育施設にて感冒が流行している。定期予防接種は、すべて行っている。

身体所見:おもちゃで遊んでいるが、どことなく元気がない。呼吸数28回/分、体温37.8℃、脈拍数130回/分。爪毛細血管再充満時間<2秒。全身に膨隆を伴わない淡い紅斑が散在し、図1のように一部発赤が強かった。両側眼球結膜に充血を認めた。咽頭は、拒否があり観察できなかった。頸部リンパ筋腫脹を認める。心音・呼吸音に目立った異常を認めない。腹部触診では腫瘤を触れず、痛がる様子はない。指趾に異常を認めない。

#総合診療

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 タラスコンといえば、南仏プロヴァンスの町。紀元前に退治されたという怪物「タラスク」に思いを馳せる盛大なお祭りが、落ち着いた街中で盛大に行われるという。でも救急の世界では、タラスコンは“怪物”にも似たものすごく膨大な情報を詰め込んだ本書を意味する。コンピューターや電子書籍が発達した昨今、膨大な量の情報を持ち歩けるようになったとはいうものの、検索のすばやさ、目の通しやすさにおいては、やはり目の前にある書籍に勝るものはない。

 救急の良書は、最近たくさん世に出ている。診断力を鍛える本は多いものの、診断がついたあとの治療まで手を伸ばすのはなかなか難しい。そんな膨大な情報を包括できる本など持ち歩けるはずもない。ところが、パッパラパッパパァ〜ララ〜!(ドラえもんが秘密の道具を出す時のジングルで)このタラスコンは、まさしく知識の宝庫、実臨床で使う情報が細かく書いてある。

#今月の特集関連本

#医学書院の新刊

#編集部に届いた執筆者関連本

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 最後の静脈ライン確保も腰椎穿刺も20年ほど前になる評者に、現場のマニュアルを俯瞰し書評を書く資格は本来ない。責任編集者の森信好先生から書評を依頼された時の躊躇は健全だったと思う。しかし、「エッセンスのみ抽出された症例」を白板上で検討する“形而上学的”な生活を繰り返す評者を、現場のリアリティに引き戻す機会と捉えてお引き受けした(それにしても、全ページを読了するのに約6週間。現場から遠く、そして遅れた者による書評であることを、あらかじめお断りしておく)。

 本書は、「Ⓐ当直で呼ばれたら」「Ⓑ内科緊急入院で呼ばれたら」「Ⓒ入院患者の管理で困ったら」の3モジュールで構成されており、それぞれ、およそ病棟/救急当直/入院症例の管理……といった状況を想定していると思われる。しかし各論の項目は、「腹痛」「胸痛」など救急室でも病棟でも遭遇する事態であり、あまり厳密な区分は意味がないだろう。

#参加者募集

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『総合診療』編集方針
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 1991年に創刊した弊誌は、2015年に『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。その後も高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされています。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、2017年にリニューアルをいたしました。本誌は、今後も下記の「編集方針」のもと、既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。

2018年1月  『総合診療』編集委員会

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基本情報

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総合診療
28巻12号 (2018年12月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

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