総合診療 27巻6号 (2017年6月)

特集 「地域を診る医者」最強の養成法!

山中 克郎
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 地方の病院でも若手医師を魅了する教育力があれば、モチベーションの高い多くの若者が全国から集まる。本特集では、「教育力」がどのように構築されるのかを紹介したい。身近な症例をベースにした講義と、すぐ下の学年者を教える屋根瓦式教育こそ「最強」である。教えることは自らが学ぶことでもある。指導医が少なければ、院外の勉強会を利用する方法もある。若手医師がたくさん集まれば、ベテラン医師にとっても大変良い刺激となる。

 また地域では、急性期から慢性期におけるシームレスな医療が必要となる。診療所や往診をベースに地域医療を行う家庭医と、診断困難症例や入院患者のケアを得意とする病院総合医の協力が大切である。急性疾患は中核病院の救急室で受け入れ、入院治療を行う。症状が落ち着けば、地域包括ケア病棟やリハビリ病棟で亜急性期の療養を行う。退院後は地域の診療所、または外来で慢性期医療を行う。患者の希望に合わせて、在宅や緩和ケア病棟での看取りも行う。さらに本特集の後半では、社会ニーズの高い「地域を診る医者」をどのように育てていけばよいかを皆で考えたい。

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本問題集は、今月の特集のご執筆者に、執筆テーマに関連して「総合診療専門医なら知っておいてほしい!」「自分ならこんな試験問題をつくりたい!」という内容を自由に作成していただいたものです。力試し問題に、チャレンジしてみてください。

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 2013年4月、厚生労働省の専門医のあり方に関する検討会は1年半に及ぶ議論の最終報告書を発表し、その1つの章を割いて「総合診療専門医」についての提言を行い、表11)の定義を示した。そこでは、「地域によって異なるニーズに的確に対応出来る」ことをもって、「地域を診る視点」と説明している。

 では、なぜ「地域を診る」ことが求められるのだろうか?

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当院「症例カンファレンス」の概要です!

 諏訪中央病院では月曜から金曜まで、毎日11時45分〜13時までの約75分程度で、お昼ご飯を食べながら「症例カンファレンス」を行っています。司会者が1人、症例発表者が1人、あとは昼ご飯を食べながら質問したりアドバイスをする参加者で構成されます。もちろん業務が優先なので、全員が時間通りに集まって時間通りに解散するということはないですし、雰囲気としても格調高い学会形式のようなものではありません。途中参加も途中退場もありです。参加できないこともあります。大切なことは、ふらっと誰もが気軽に参加でき、人数が少なくても毎日ワイワイ楽しそうにやっている場をいつも用意するということです。

 見学の学生さんや外科・産婦人科の先生、各科部長、はたまた院長クラスの先生まで、メンバーは多彩です。そこで聞かれる意見も、的を射た鋭いものから、誰もが静まり返る程にくだらないダジャレ、それを何とか拾おうとするツッコミまで、「何でもあり」です。さながらその雰囲気は、仕事帰りに飲み屋の暖簾をくぐり、「お!やってる?」とワイワイと飲んでいる仲間のところに入っていく姿にも似ています。

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もうひとつの教育回診 〜To teach is to learn twice〜

 筆者の所属する諏訪中央病院では、院外講師を招聘しての教育回診を年4回ほど行っている。教育回診が行われる数日の間、研修医・専攻医といった若手医師は、院外からの講師に症例を提示してフィードバックをいただき、講義からも多くのことを学ばせてもらう。特に自分の担当患者さんを院外講師に診察していただく時の緊張感は計り知れない。必ずしもすべてが揃うわけではない地方の市中病院として、自分たちの診療を採点してもらい、外からの新たな知識を吸収するというのが、当院のスタイルとして根付いている。

 一方で、ここ数年、当院の初期・後期研修を終えてスタッフとして活躍されている上級医や、院外から赴任された専門医の先生方が増えてきた。何より研修医・専攻医の元気な世代が集まっている。今度は「われわれ若手医師がこれまで学んできたことを伝える番!」として、学生向けのセミナーを企画することとなった。「教えることは2度学ぶこと」とはよく言われるが、学生に教えることで、私たちが学ばせてもらう「もうひとつの教育回診」として生まれた企画が、諏訪中央病院発のセミナー『すわ塾〜研修医とチームで学ぶ2日間』だった(2016年8月に長野県・諏訪湖畔のホテルを会場として開催)。このようなセミナーは当院としては初の試みで、「果たして人が集まるのか」という不安とは裏腹に、全国から30名の医学生が集まってくださり“満員御礼”となった。

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プライマリ・ケア医を目指して 〜苦手な領域への挑戦〜

 諏訪中央病院での後期研修(家庭医療プログラム)を終え、私はスタッフとしてここに残ることを決めた。その場合に与えられる半年間の院外研修の場として、「整形外科」の分野を学ぶべく、西伊豆健育会病院の門を叩いた。

 患者さんから膝・肩・腰の痛みを相談されて、“とりあえずX線”で評価するものの、診断がつかなければ整形外科を勧めてしまい、高齢患者さんで溢れかえる整形外科外来を横目に、何もできない無力さを日々感じていた。あえて自分の苦手な分野で、しかし高齢化社会のなかで確実に必要とされている整形外科領域を学び、内科医の立場で整形外科疾患を診ていく力をつけることが、プライマリ・ケア医を目指す私には必要であり、仲田和正先生(西伊豆健育会病院院長)のもとで学ぶことが最適だと考えた。

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Case

患者:81歳、男性。

既往歴:心房細動、脊柱管狭窄症、高血圧、脂質異常症、狭心症。

現病歴:1カ月前に転倒し、それを機に体に力が入りづらくなった。2週間前に整形外科外来を受診して右片麻痺を認め、「脊柱管狭窄症」と診断され、入院した。しかし右片麻痺が増悪し、発熱と軽度の意識レベル低下を認めたため、総合内科にコンサルトとなった。

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Case

診断時「癌末期」で、在宅での最期を希望したケース

患者:Nさん。89歳、女性。

プロファイル:娘夫婦と同居の自立した女性。

現病歴:食思不振にて入院のうえ精査したところ、「消化器癌の末期」と診断された。説明を受けたご本人より、「退院、自宅復帰」の希望が出た。自宅での最期を望んでいる。娘も不安ながら同意しているという。主治医は専攻医1年目(医師3年目)のOである。上級医に相談したところ、在宅ケア部門の指導医Tに支援を依頼するようアドバイスされた。

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Case

コントロール不良ながん性疼痛、せん妄を伴いながら、在宅を希望する患者さん

患者:70歳、女性。

家族歴:週3回透析をしている夫と、2人暮らし。子どもはいない。

現病歴:1年前に「直腸がん」と診断された。初診時にすでに広範な転移を認め、腫瘍内科医の指導の下に総合診療医が抗がん治療を行ってきた。半年ほど前に重症感染症を併発し、以後、抗がん治療は中止。夫の透析の時間帯は1人きりになるが、「PS(performance status)3」の状態の本人がセルフケアを行いつつ、在宅療養をしてきた。

 今回、両側水腎症による腎前性腎不全で緊急入院。腎盂ステント留置術により腎機能は改善したものの、「PS4」と大きく低下し、せん妄も合併。今まで自分で内服してきたオピオイドも使用できなくなった。悪性腸腰筋症候群のため、下肢に触れるだけで大きな声を出し、疼痛コントロールは十分ではない。本人の「家に帰りたい」と繰り返す言葉を聞き、夫は「すぐに自宅に連れて帰りたい」と焦っている。状況から、在宅はとても現実的ではないと考えた総合診療医は、緩和ケアチームに相談した。

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 当院は、無床診療所である。近隣の諏訪中央病院との役割分担、連携を行っている。

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Case

(人口3,000人ほどの自然が残る離島で、総合診療医のみで対応している小さな病院にて)

患者:90歳、男性。ADL自立。

現病歴:来院当日ゲートボール中に、急に胸苦しさ、呼吸困難感があり、救急要請した。

 発症から30分経過して病院に到着。冷汗を流し、胸苦しさは続いていた。

身体所見:血圧150/90mmHg、脈拍数110回/分・整、呼吸数20回/分、体温36.2℃、SpO2 96%(室内気)。

 頸静脈怒張なし。心音;Ⅲ音なし、Ⅳ音を聴取、雑音なし。呼吸音;清。浮腫なし。

検査所見:心電図;V1-5でSTが1mm上昇している部分と、0.5mm程度上昇の部分が混在。胸部X線検査;肺野に異常なし。採血;心筋逸脱酵素の上昇は認めず。心エコー;前壁に軽度の壁運動異常を認めた。

Q:もしあなたがこの患者の主治医なら、診断と対応はどうしますか? 島外搬送しますか?

(註:離島の医療環境:心臓カテーテル検査を含めた心臓の精査はできない。隣接する島にはドクターヘリを呼ぶとすぐに迎えに来てもらえる)。

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「不識庵」の教育手法!

 数年前まで、新潟県の西端にある上越・糸魚川地域は、研修医育成の“空白地帯”と言えました。研修医の募集も、その教育法も、“ゼロ”から勉強する状態でした。

 たとえば糸魚川総合病院では、知り合いの医学生に声をかけて、大学の講義のようなレクチャーを1時間行い、その後、釣り宿で宴会。翌朝小雨のなか、船釣りに出かけましたが、魚は1匹も釣れず、そして結局研修医も来ず、僕が船酔いで吐いて終わる、という惨憺たる結果でした。そんな笑い話のような経験の反省から、2009年、地域の5病院(糸魚川総合病院・柏崎総合医療センター・上越総合病院・新潟県立中央病院・新潟労災病院)が集まって「共に研修医教育をしよう!」ということになりました。上越・糸魚川地域のグループ「不識庵」の発足です(上杉謙信の雅号で、もともと達磨大師の言葉から来たものですが、「不識」の意味は、単に「物事を知らない」ということではないようです)。

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 当沖縄県立宮古病院は、沖縄本島より南西に約300km離れた、美しい海とサンゴ礁に囲まれた宮古島の基幹型中核病院である。当院では初期研修医4名と、短期研修で年間20名ほどの研修医の受け入れを行っている。基幹型研修病院としての初期研修医の受け入れはまだ2年で歴史は浅いが、新臨床研修制度が開始された2004年より、1〜3カ月ほどの短期の初期研修医の受け入れは、13年間で130人を超えた。最近では“リピーター”が増え、地域や救急の研修後に内科研修を追加する者も多く出てきているのは喜ばしいことである。

 また、3年前より家庭医療後期専攻医プログラム「うぷらうさぎ」を旗揚げした。家庭医療専門医を目指す専攻医が4名在籍し、当院の担う教育の重要性が大きくなり、離島/地域で幅広く診療でき、適切な対処ができる医師の育成を行っている。島では島民の生活の中での医療の役割、また患者の疾患や病いとの葛藤、介護者の苦悩や看取りを含めた死生観等が学べ、人と人とのかかわりが身近である分、その物語性が強く感じられる。

【コラム】 全国の勉強会を紹介!

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 FACE(Fukushima Advanced Course by Experts)は、2008年IDATEN(Infectious Diseases Association for Teaching and Education in Nippon:日本感染症教育研究会)のセミナーに参加した福島県内の別々の病院の3人の医師が、「いまのままでは福島の感染症診療はダメだ!」という話で意気投合し、「福島感染症勉強会」を立ち上げたのがきっかけです。そこに福島県立医科大学医療人育成・支援センターからお話があり、感染症だけでなく、卒前・卒後教育の勉強の場として、現在のFACEの原型ができあがりました。2011年の「東日本大震災+原発事故」の時も中止することなく、年4回開催しています。

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◦概要

●開催頻度:毎日。

●対象:学生・コメディカルを含め、医療関係者ならどなたでも参加可能です。

●申し込み方法:私までFacebookの友達申請と「野獣クラブ参加希望」と書いたメッセージをお願いします(註:すでに「野獣クラブ」に入会している方は、「参加希望」の友達がいたら入会させてあげてください。私の許可を得る必要はありません)。

●費用:無料。

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◦概要

●開催頻度:毎月1回、土日開催、年10回。年に2回、特別セミナー(2017年は京都・沖縄)。

▶土曜日15:00〜17:00は、若手医師・塾生がともに学びあう「合水塾」。

▶土曜日17:00〜19:00、日曜日9:00〜17:00が、「21世紀 適々斎塾」です。

●対象:すべての医師・医学生。

●申し込み方法、受講料:定員に空きがあれば、毎年12月に塾生を新規に募集いたします。

▶年間受講料(10回/年):一般医師;400,000円、後期研修医;300,000円、初期研修医;200,000円(消費税込み)。単回参加は欠席者が出れば募集いたします(研修医・学生のみオブザーバー席の設定あり)。

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 こんにちは、総合診療勉強会「大阪どまんなか」です。大阪どまんなか発足の目的は、「総合診療に触れてもらおう!」です。

 本勉強会は、今までおよそ2年半で(番外編の1回を含め)、10回開催されています。ここでは総合診療をはじめ、さまざまな分野の著名な講師の方から、「総合診療」をテーマとした講演やワークショップを受講することができます。近々2017年6月24日(土)には、「第10回大阪どまんなか」の開催が予定されています。

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 「コロッケ会」は1999年より「鹿児島で総合診療的な考え方を拡めていこう!」という考えのもと始まった勉強会です。持ち寄った症例を病歴で鑑別し、その後、身体所見を加えてまた鑑別するという、今となっては普通の症例検討会です。特に“病歴”に重きを置いているため、ここでのディスカッションが長い傾向にあります。これまた今となっては「Take Home Message」として当たり前ですが、18年前は「おみやげ」と言って、勉強すべきポイントを渡していました。

 名称の由来は、開催場所の今村病院分院の近所に総菜屋が多く、コロッケを食べながら勉強会をしたことがきっかけです。途中創設メンバーの1人が亡くなったことをきっかけに、命日に近い日を「総会」として、講師をお呼びして講演会を開催するようになりました。

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◦多職種研修の開始

 諏訪中央病院は、長野県茅野市にあり、360床のケアミックスの病院と、訪問看護ステーションや2つの介護施設を併設し、予防から在宅支援にかかわり、「見放さない」「放り出さない」医療を目指しています。

 2010年、「人材を作ることが良い病院を作る!」という方針のもと、人材育成センター(現・臨床研修研究センター)を開設しました。多様化する医療福祉ニーズに応じるために、病院や併設施設で働くすべての職種を対象に、「多職種研修プログラム」を開始しました。

❷訪問看護 小林 美恵子
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 せっかくの機会なので、本稿では、訪問看護をしていて私が経験した一番大変だった1日を紹介してみようと思う。

❸リハビリテーション 濵 一広
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◦あたたかな急性期病院

 諏訪中央病院は「あたたかな急性期病院」として、八ヶ岳西麓の地域医療を支えている。そのなかでリハビリテーション(以下、リハビリ)は、急性期から回復期・慢性期まであらゆる患者を対象とし、訪問や併設する介護施設でのサービス体制も整えている。これは当院の医療が疾患の治療だけで終わらない「証」である。これを実現するのは、理学療法士37人、作業療法士19人、言語聴覚士7名と、医師を中心とした医療スタッフとの連携である。

ゲストライブ〜Improvisation〜・4

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 先進国のなかでも、日本は高齢者と子どもの貧困率が非常に高い国です。そして、大都市への人口集中と地域の衰退が続いています。いま、地域を支える病院が若手医師をどう養成し、その地域で住民のために本当に役立つ医療をどう展開していくかは、非常に大事なテーマです。

 そこで本ゲストライブでは、長年「健康づくり運動」を実践してきた「地域医療」のカリスマ病院であり、全国から数多くの研修医が訪れる諏訪中央病院より、3人のドクターにお集まりいただきました。

 専門分化した医療の先にある患者と医師の幸せについて、患者のエンパワメントや行動変容について、「おらほの勉強会」「鎌田塾」の活動について、また若手医師の「地域に出る」ことへの不安、さらには「総合診療」や「地域医療」の魅力について、大いに語り合っていただきました。

What's your diagnosis?[174]

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病歴

患者:さまざまな既往を持ちながらも、認知症なくIADL(手段的日常生活動作)も自立の、92歳、独居男性。

主訴:全身浮腫。

現病歴:来院約1カ月前から前腕や下腿の浮腫と労作時の呼吸困難が出現し、来院までの1カ月の間に顔面浮腫もきたして体重増加傾向にあった。来院3日前より食欲が低下したため、かかりつけ医に相談の結果、当院へ紹介された。悪寒・発熱・寝汗はない。気道症状、腹部症状、便の性状変化、泌尿器症状、脱力・しびれも自覚していない。

既往歴:虫垂摘出(20代)、肺結核(20歳)、狭心症(70歳)、前立腺肥大症(75歳)、大腸癌手術(80歳)、糖尿病(83歳)、右総頸内頸動脈狭窄(84歳)、慢性腎臓病。半年前に胃前庭・十二指腸びらんと癒着性イレウスで入院。薬物・食物アレルギーはない。

薬剤歴:ニフェジピン除放剤、カルベジロール、アスピリン、ロスバスタチン、タムスロシン、オメプラゾール、酸化マグネシウム、ピコスルファート。

生活歴:偏食なし。飲酒せず。喫煙は成人後82歳まで20本/日。

Editorial

“New Era”を妄想する 山中 克郎
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 日本年金機構から「ねんきん定期便」という葉書が届いた。これによると、私は65歳になると毎年200万円の年金が支給されるらしい。「こんなに貰えるんだ!」と嬉しくなった。隣の妻は怪訝な顔をしている。「月に16万円、どうやって2人で暮らすの?」。

 その日から、妻がとても優しくなった。「死ぬまで働かせるしかない」と思ったに違いない。

オール沖縄!カンファレンス・6

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CASE

患者:33歳、男性。石垣島在住だが、仕事の関係でA離島に3カ月前から滞在していた。

主訴:全身痛。

既往歴:痔瘻(32歳頃から、2015年9月痔瘻根治術施行)、右手蜂窩織炎(30歳時)。

家族歴:特記事項なし。

生活歴:建築業。飲酒は泡盛1〜2合/日。喫煙なし。

現病歴:来院前日に両側腓腹筋の痛みを自覚するも、ロキソプロフェンナトリウムを1錠内服し改善した。来院当日16時頃から再び両側腓腹筋に痛みが発症し、次第に下肢全体の痛みとなり、その後は腰部、背部へと筋痛が広がったため、17時30分にA離島診療所を受診した。悪寒あり、悪寒戦慄なし、悪心あり、嘔吐なし、下痢なし。数日前より痔瘻から排膿があった(A離島診療所を受診時、つかまり歩きは可能な状態)。

バイタルサイン:意識清明、血圧160/100mmHg、体温37.1℃、脈拍数110回/分、呼吸数24回/分、酸素飽和度99%(室内気)。全身状態不良、発汗著明で、背部を中心とした疼痛を苦悶様に訴えた。輸液にて経過観察するも、痛みは全身へ広がり、四肢の自動困難となったため、精査加療目的で当院へ緊急ヘリ搬送となった。

sick contact:海や河川への接触なし、先行感染なし、周囲に同様の症状の人はいない。

西伊豆発!画像読影道場|これくらい読めてもいいんでナイカイ?・6

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 冒頭の単純X線写真の診断は、「肩回旋筋腱板断裂」です。後述しますが、実は、これを見ただけで、回旋筋腱板(rotator cuff)が断裂している、と一発診断できるのです。回旋筋腱板断裂は、手や肘をついて転倒したりして起こることもありますが、関節リウマチで起こることもあり、肩X線の読み方をマスターしておくことは重要です。

 また、今やエコー(超音波検査)は、肩関節の診断に不可欠なものとなりました。内科の先生方は、エコーの扱いに慣れています。エコーを肩に当てるだけで、多くの情報を得ることができるでしょう。最近は、リウマチ性多発筋痛症の診断クライテリアに肩エコーも入っています。

 今回は、肩X線&肩エコーの秘術を伝授します。これだけの知識があれば、肩関節の画像診断には、ほとんど困らないはずです。“怒涛の反復”をしてください!

みるトレ Special・6

アカリを照らせ! 忽那 賢志
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CASE 6

患者:40歳台、女性。生来健康、特記すべき既往歴なし。

主訴:発熱、皮疹。

現病歴:来院5日前から発熱と頭痛、関節痛があり、遷延するため、来院3日前に近医を受診し、インフルエンザ迅速検査を行ったが陰性であった。来院前日から顔面・体幹に皮疹が出現してきたため再度近医を受診し、精査・加療目的で当院に紹介となった。

性交渉歴:過去1年間なし。

森林曝露歴:発熱が出現する12日前に、福島県楢葉町の郭公山で登山をした。

review of systems:(+)発熱、頭痛、皮疹、関節痛。

(-)咳嗽、咽頭痛、痰、下痢、嘔気、筋肉痛、排尿障害。

身体所見:体温38.7℃、血圧102/76mmHg、脈拍数87回/分、呼吸数20回/分、SpO2 98%(室内気)。

眼球結膜充血なし。口腔内にKoplik斑なし、咽頭発赤なし。顔面全体に紅斑が散在(図1)。

呼吸音清、心雑音なし。腹部は平坦・軟で圧痛なし、肝臓・脾臓を触れない。左下腹部に中心が一部黒色化し周囲の発赤を伴う硬結を認める(図2)。体幹にも淡い紅斑を認めるが、四肢には皮疹を認めない。

I LOVE Urinalysis|シンプルだけどディープな尿検査の世界・3

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Case

患者:49歳、男性。

現病歴:脊柱管狭窄症の術前検査にて血清Crが1.2mg/dLであり、総合診療科コンサルトとなった。

TP 6.6g/dL、Alb 4.7g/dL、Hb 14.6g/dLであり、グロブリン成分が少ないことが予測され、追加測定したグロブリン分画はIgG 506mg/dL、IgM 20mg/dL、IgA 49mg/dLといずれも低かった。

        尿定性

比重      1.015

pH       7.5

蛋白      ±

糖       -

ケトン体    -

潜血      -

ウロビリノゲン 正常

ビリルビン   -

白血球     -

亜硝酸塩    -

総合診療専門医(仮)セルフトレーニング問題・3

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セッティング

あなたは300床の総合病院(郊外)の総合診療医。各科専門医が常勤で少人数ずついるが、総合診療科が内科系入院を幅広く担当している。

Case

山川さん(仮名)というアルツハイマー型認知症で施設入所中の79歳女性が、来院前日からの悪寒・食欲低下・37℃台の微熱のため施設職員に連れられ外来受診し、「尿路感染症」の診断で入院治療を開始された。入院4日目の朝、あなたが回診に行くと、山川さんが左下腿の痛みを訴えている。バイタルサインは血圧152/86mmHg、脈拍数84回/分・整、呼吸数16回/分、体温37.2℃、SpO2 96%(室内気)。頸静脈怒張なし、呼吸音・心音に特に異常を認めない。 左下腿に腫脹と把握痛を認め、あなたは「DVT(下肢静脈血栓症)」を疑った。

既往歴:関節リウマチ、アルツハイマー型認知症、骨粗鬆症。

手術歴:特になし。

常用薬:プレドニゾロン10mg分2、セレコキシブ200mg分2、オメプラゾール10mg分1、アルファカルシドール0.25μg分1

社会歴:元飲食店経営。夫は肝癌で逝去。施設近隣に長女家族が在住。喫煙歴・飲酒歴なし。

入院前ADL:室内は歩行器使用で歩行可能。更衣・食事摂取・排泄は自立。

国試にたずねよ・6

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 「虚血性心疾患」の診断は、時に非常に難しいことがある。見逃すと致死的な結果となることがあるので、ピットフォールを見極めることが臨床医には要求される。次の医師国家試験問題をみてみよう。

診察で使える!|急性期Point-of-Care超音波ベーシックス・3

急性虫垂炎を疑った時 亀田 徹
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はじめに

急性虫垂炎の超音波診断は確立されている?

 急性虫垂炎の超音波診断は以前から実施されていますが、現在もさまざまな観点で臨床研究が行われています。小児では画像診断の第一選択としてコンセンサスが得られていると思われますが、成人では超音波の位置づけは施設によって異なるようです。急性虫垂炎は頻度の高い疾患で、多くは典型的な所見を呈しますが、なかには診断が難しい場合も少なくありません。見逃しが許されない急性虫垂炎を、検者依存性の高い超音波ではなく、客観的なCTで確認したいという思いは、臨床医として自然なことでしょう。しかし、特に小児や女性では放射線被ばくを考慮し、超音波を優先すべきと考えられます1)。痩せた成人でも虫垂の描出はそれほど難しくなく、積極的な利用が望まれます1)

 上記は専門家が行う超音波の話ですが、近年Point-of-Care超音波においても、急性虫垂炎が注目されるようになってきました。年齢を問わず頻度が高く、見逃しが許されない疾患であり、身体所見をガイドにして超音波の観察範囲を右下腹部に絞り込むことができるからでしょう。小児領域では、トレーニングを積んだ(小児)救急医によるPoint-of-Care超音波の有用性が近年報告されています2)。成人でもケースによっては、Point-of-Care超音波で診療の質向上が期待できます3)

*本論文中、[▶動画]マークにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年5月31日まで)。

55歳からの家庭医療|明日から地域で働く技術とエビデンス・6

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 古くから使われているファミリー・ジェノグラム(家族図)については、近年、新しい標準シンボルが提示されています。これは、たとえばグローバル化も含めて、現代社会のなかで、オーソドックスな家族像ではない、多様な家族の形態が急速に顕在化していることを反映しているためです。今回は、そうした近年のファミリー・ジェノグラム研究の進歩のうち、日本の家庭医が知っておくと役に立つだろうシンボルを、最初に紹介します(図1)。

 ちなみに、ジェノグラム(genogram)はGen-o-Gramからきた造語であり、Genは「generation(世代)」と「gene(遺伝子)」の双方を意味し、Gramは「diagram(図解)」からきているとされています1)。遺伝歴だけではなく、「世代間相互作用」といった心理・社会的な内容も含むものです。

こんなときオスラー|超訳『平静の心』・6

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 ウィリアム・オスラーは、ジョンズ・ホプキンズ大学内科教授を14年間務めた1903年に、母校トロント大学に招かれて講演した。その医学生へのメッセージが特別講演「医学の座右銘」である。規律ある生活習慣を身につけ、目標をもちながら時間を適切に配分し、集中力を養うことが重要であると説いている〔私がロールモデルとして尊敬している宮城征四郎先生(臨床研修病院群プロジェクト群星沖縄名誉センター長)も、「皆、1日24時間しかないんです。勉強ができる、できないの分かれ目は、その時間の使い方と集中力の問題なのです」と仰っている(本誌27巻2号、p157)〕。

苦手克服|野獣のリアル勉強法・6

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 私は、卒後15年目の内科医です。直近の6年間は、大学病院の総合診療内科で、主に入院患者さんの診療を行っています。大病院には、検査機器がそろっているという背景から、特殊な検査を要する“稀な病気”の患者さんが集まります。検査を実施できるか否かは医療機関の能力ですが、“稀な病気”を見出す力や“診断エラー”を回避する力は、医師自身が身につけることができる能力です。

 大学病院に勤務する前は、自治医科大学卒業後の医師3年目から6年間を、指導医不在の地域の医療機関で勤務していました。当時から、「いつでも、日本(あるいは世界)のどの医療機関にいても変わらず必要とされる技術・能力は、『医療面接』『身体診察』、そして『考えること』である」と思いながら診療し、どのようにして自ら診断力を身につけ、向上できるかを考え続けて今に至ります。

 本稿では、医師自身が醸成できる能力を向上させるために、私が心がけている方法をご紹介します。

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 2015年、1991年に創刊した弊誌は、下記の「編集方針」を掲げて、『JIM』より『総合診療』に誌名を変更いたしました。以来、この2年間のうちにも高齢化はさらに進み、社会構造や価値観、さらなる科学技術の進歩など、日本の医療を取り巻く状況は刻々と変化し続けています。地域医療の真価が問われ、ジェネラルに診ることがいっそう求められる時代となり、ますます「総合診療」への期待が高まってきました。これまで以上に多岐にわたる知識・技術、そして思想・価値観の共有が必要とされます。そこで弊誌は、さらなる誌面の充実を図るべく、リニューアルいたしました。本誌は、今後も既存の価値にとらわれることなく、また診療現場からの要請に応え、読者ならびに執筆者のみなさまとともに、日本の総合診療の新たな未来を切り拓いていく所存です。

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総合診療
27巻6号 (2017年6月)
電子版ISSN:2188-806X 印刷版ISSN:2188-8051 医学書院

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