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CASE
患者:78歳、男性。ADL自立。
現病歴:2カ月前:待合室で坐位時に失神。心電図・胸部単純X線写真に異常なし、帰宅。1カ月前:同様の失神。血圧134/76mmHg、脈拍数62回/分、心電図正常。6日前:再度失神。顔面蒼白・脈拍微弱。血圧139/72 mmHg、脈拍数48回/分、SpO2 98%。点滴後回復し、帰宅。
失神の特徴:
・毎回待合室で坐位時に発症。
・自宅では失神なし。
・発作前に右下腹部痛(ぎゅーっとした痛み)があり、数分後に意識消失。
・数分以内に意識回復し、休息後帰宅。
随伴症状:頭痛、動悸、冷や汗、眼前暗黒感、悪心、黒色便、しびれ、嚥下障害、構音障害、失禁、舌咬傷、いずれもなし。
既往歴:高血圧症、慢性腎臓病、関節リウマチ。
内服薬:アムロジピン、アジルサルタン、メトトレキサート、タクロリムス、プレガバリンなど。
初診時(3回目発作時)所見:バイタルサイン・身体所見・静脈血ガス・血液一般検査・心電図・胸部単純X線写真・心エコーに特記すべき異常なし。
経過❶ —4回目(初診から3日後)の発作
発作時:夕食後に発作が始まる。右下腹部の痛み後、意識消失。
家族の目撃情報:うなり声を上げ、両下肢を伸ばし、両上肢を震わせる→白目をむき、口唇が紫色に変化→5分後に自然止痙。
来院時:JCS 1、異常所見なし。
検査:血液一般検査・心電図正常。頭部MRI検査で微小梗塞を確認(無関係な病変と判断)。
脳波:異常なし。
経過❷ —5回目の発作(経過観察入院中)
発作時:坐位時に意識消失、口をもごもご動かす。
診察時:右へのわずかな共同偏視、瞳孔正常、血圧100/76 mmHg、脈拍数86回/分。
動脈血ガス:pH 7.34、HCO3- 14.6 mEq/L、Lac 5.7 mmol/L。
心電図:図1参照。
最終診断:腹部てんかん(abdominal epilepsy)
経過❸
カルバマゼピンの投与により発作は消失したが、薬剤熱が発生したため中止した。その後、発作が再燃したためバルプロ酸に変更したところ、完全寛解が得られた。

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