特集 おなかの病気を診る〜機能性消化器疾患への誘い—つらいおなかの痛み、張り、下痢、便秘への処方箋
【機能性疾患のtips and pearls〜画像では明らかな異常がないが日常生活に支障をきたす疾患】
❶機能性ディスペプシア・過敏性腸症候群
田中 由佳里
1
1仙台厚生病院 消化器内科
キーワード:
過敏性腸症候群
,
機能性ディスペプシア
,
Rome Ⅳ
,
婦人科臓器
Keyword:
過敏性腸症候群
,
機能性ディスペプシア
,
Rome Ⅳ
,
婦人科臓器
pp.766-768
発行日 2025年7月15日
Published Date 2025/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350070766
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CASE
患者:30代、女性。
現病歴:10代後半から腹痛と硬便を時々認めていたが、ここ数カ月は腹痛の頻度が週に5回と増加し、食後の胃もたれ感も出現した。営業職で多忙な生活を送っており、心理的ストレスも強く、月経周期が不規則となっていた。近医で酸化マグネシウムと刺激性下剤が処方されたが効果は乏しく、上部消化管内視鏡検査で異常所見はなく、下部消化管内視鏡検査はS状結腸で疼痛が強く挿入困難となり、鎮静下での全大腸内視鏡検査(total colonoscopy:TCS)を目的に総合病院(当院)へ紹介された。一般採血・採尿検査に異常はなく、妊娠検査も陰性。他に通院歴なし。定期健康診断は直近3年受診している。
当院での診察:患者は血便や発熱を伴わず、腹痛がない際には軟便や普通便もあると述べた。鎮静下TCSではS状結腸の屈曲が強く、挿入時に腸管外弾性硬による圧排を疑う内視鏡走行であり、やや内視鏡操作に苦慮したが、終末回腸まで挿入できた。観察範囲内にポリープや炎症、憩室は認められなかった。自覚症状のほか、TCS時に骨盤内腸管外臓器に違和感があったことから腹部骨盤造影CTを施行したところ、多発性子宮筋腫および子宮頸部の腫大と濃染域を認めたため、婦人科へ紹介した。婦人科にて子宮頸がんと多発子宮筋腫と診断され、手術方針となった。

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