INTENSIVIST 13巻4号 (2021年10月発行)

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特集　麻酔

はじめに—周術期管理の真のスペシャリストになるために〜麻酔を知る〜飯塚　悠祐 13巻4号 , 2021年10月 , pp.623-624

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日本ICU患者データベースJapanese Intensive Care Patient Database（JIPAD）によれば，本邦におけるICU入室患者の7割は手術室から入室しており1），集中治療医は「周術期管理のスペシャリスト」として細やかな管理が求められる。

　本誌「INTENSIVIST」では集中治療医に必要なさまざまな分野のトピックを取り上げてきた。今回は「麻酔」をメインテーマとしている。なぜ「麻酔」を取り上げたのか。これは一重に，真に「周術期管理のスペシャリスト」になるためには「麻酔」の知識も必要であると考えるからである。

Part 1　麻酔総論（生理学）麻酔科医による術中管理の目的と実際

1．麻酔薬総論—全身麻酔薬の発展と作用機序萩平　哲 13巻4号 , 2021年10月 , pp.625-632

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麻酔薬の厳密な定義はないが，全身麻酔薬は無意識および無記憶が得られ，かつ投与を終了すれば程なくもとの状態に回復することは必須である。麻酔薬はほかの薬物と異なり多くのチャンネルや受容体に作用する。現在のところ意識の本態は解明されていないが，脳の特定の部位に存在するのではなく，大脳皮質間の連携のうえに存在するというTononiの説が有力である。麻酔薬はこの大脳皮質間の連携を分断する作用がある。麻酔薬は無意識となるよりも低い濃度で記憶を抑制するが，潜在性記憶はさらに高い濃度でも残り得る。麻酔薬には抗侵害受容作用はなく，臨床では麻酔薬と鎮痛薬を組み合わせたバランス麻酔が行われている。

2．鎮痛薬総論—薬理作用，使用方法，使用上の注意点佐倉　考信 13巻4号 , 2021年10月 , pp.633-642

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全身麻酔の3要素は古くから「鎮痛・鎮静・筋弛緩」といわれている。現在の麻酔方法はバランス麻酔といわれており，それぞれの目的に合わせて薬物を選択して使用する。基本的には手術終了後に手術室で全身麻酔から覚醒させ一般病棟に戻るので，鎮静と筋弛緩については主に手術中での作用を意識した薬物の使い方になり，多くの場合1種類の薬物で完結する。短時間作用性の薬物が使いやすく，また場合によっては拮抗薬も使用する。しかし，鎮痛に関しては，術後の効果も意識して鎮痛薬を使用しなくてはならない。術後鎮痛のためには短時間作用性の薬物では不十分のため，複数の薬物を併用して術中，術後の鎮痛を行う。本稿では麻酔科医が使用する鎮痛薬について，術後の疼痛管理を適切に行うために必要な知識として，薬理作用，使用方法，使用上の注意点を解説する。

3．筋弛緩薬総論—薬理作用と特徴，拮抗薬，作用遷延，モニタリング方法道宗　明 13巻4号 , 2021年10月 , pp.643-650

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近年，筋弛緩をめぐる環境は大きく変わってきている。ロクロニウムの発売により筋弛緩効果の迅速な発現が可能となり，かつ，スガマデクス発売により深い筋弛緩からの確実な回復が容易になった。筋弛緩からの回復の指標も，現在では加速度式筋弛緩モニタではTOF比（train-of-four ratio）1.0とされ，スガマデクス過小投与による残存筋弛緩が問題となるようになった。長年親しまれてきたTOFウォッチＲは発売中止となり，筋電図式筋弛緩モニタや圧感知型筋弛緩モニタが注目を集めている。本稿では，現在本邦で発売されている筋弛緩薬，拮抗薬について解説するとともに，現在臨床で頻用されるモニタリング方法について解説する。

4．区域麻酔 ①硬膜外麻酔—術後早期に合併症なく良好な鎮痛を得るために原　かおる , 佐倉　伸一 13巻4号 , 2021年10月 , pp.651-661

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ICUでは，術後鎮痛や肋骨骨折などの外傷の疼痛管理に硬膜外鎮痛が用いられている。本邦では術中の硬膜外麻酔が術後硬膜外鎮痛として利用されている患者が多いと考え，硬膜外麻酔について概説する。硬膜外麻酔は，さまざまな手術で良好な鎮痛効果を示すが，鎮痛効果や運動麻痺以外にも血行動態や呼吸機能などにも影響を与える。これら以外にも患者にとって有益と考えられる影響の報告もあり，術後合併症を減らすとされていた。近年，手術の低侵襲化や重篤な合併症への懸念から手術時の硬膜外麻酔の使用は減少してきた。しかし，侵襲が大きい手術や呼吸器系の合併症がある患者などでは有用であり，硬膜外麻酔の適応や合併症，生じ得る生理学的変化，術後鎮痛に使用する場合の具体的な方法や注意点などの知識は，集中治療医にも必要である。

5．区域麻酔 ②末梢神経ブロック—適切な周術期鎮痛を提供する田中　暢洋 13巻4号 , 2021年10月 , pp.663-673

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周術期の主な鎮痛方法は，周術期抗血栓療法や手術の低侵襲化，オピオイドの副作用により硬膜外麻酔主体からオピオイド主体，そして区域麻酔を含んだ「多角的疼痛管理multimodal analgesia」へ変遷を遂げている。超音波ガイド下末梢神経ブロックでは，「より末梢（選択的）」または「コンパートメントブロック（またはinterfascial plane block）」がトレンドであり，日進月歩の飛躍を遂げている。

　（超音波）解剖学，局所麻酔薬の特性，合併症についての知識が必要であるが，その知識をもとに術式，患者の状態も考慮して，適切な周術期鎮痛を提供できるようにすることが大切である。

【コラム】“Standing on the Shoulders of Giants”—全身麻酔による意識消失作用機序解明の歴史川上　定俊 13巻4号 , 2021年10月 , pp.674-681

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William T.G. Mortonが世界で初めて全身麻酔を実演し“Ether Day”と呼ばれる日から175年以上が経過した。しかしながら，全身麻酔薬による意識消失のメカニズムはいまだに謎に包まれている。全身麻酔によって失われる「意識」自体も複雑であり，意識消失の作用機序を解明することは困難である。意識があるか否かを確認するのも難しい。このため手術室やICUでは意識はあっても動けない患者がいるかもしれない。臨床現場では患者の意識状態を客観的に評価できるバイオマーカーの発見・発明が期待されている。先人たちの試行錯誤により，全身麻酔の基本的なメカニズムへの我々の理解は培われてきた。さらに，近年の科学技術の進歩によって，麻酔薬が意識消失を引き起こす作用機序の理解は，完全ではないにしても飛躍的に進んでいる。将来的には，全身麻酔薬による意識消失のメカニズムを解明することで，人間の「意識」がどこにあるのかを知ることができると期待されている。本稿では，全身麻酔薬による意識消失のメカニズムが解き明かされてきた歴史やその理論，仮説，最新の知見について概説する。

【コラム】小児期における麻酔薬と脳神経の発達—麻酔薬の神経毒性と神経保護効果の今森田　知孝 13巻4号 , 2021年10月 , pp.682-685

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新生児期や小児期における麻酔薬の神経毒性および神経保護効果については，これまで数多くの動物実験が行われてきたが，臨床の現場との乖離はいまだ埋められていない。また，ここ数年に発表された大規模な臨床研究では，3歳までに受けた単回かつ短時間の麻酔薬曝露は神経発達の予後に影響はしないと報告されたが，複数回あるいは長時間の曝露については未解決のままである。こうした現状から，我々麻酔科医は近年承認された短時間作用性の麻酔薬の特徴を生かすと同時に，今後の麻酔薬の神経保護効果に関する報告が増えることを期待しながら，長期的な展望に立って小児麻酔に携わり，小児の将来を守る責務を負っている。

6．輸液管理—適切な輸液管理と輸液製剤で最適化を目指す滑川　元希 , 野村　岳志 13巻4号 , 2021年10月 , pp.687-699

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麻酔中の輸液管理であろうとICUの輸液管理であろうと，その原則は「適切なタイミング」で「適切な量」の「適切な輸液製剤」を投与することである。しかしながら，手術時間2時間の短時間の術中管理でさえ最善の輸液方法は定まっていない。手術室入室2時間前まで水分を経口摂取していた患者と大腸穿孔でショック状態の患者では，まったく異なる戦略となる。ICUの輸液管理においても患者の病態により戦略は大きく異なる。本稿では輸液戦略，輸液反応性の評価，術中のミクロ循環，そして輸液製剤についての研究を紹介する。

7．心血管作動薬・血圧管理—周術期低血圧への対応平田　直之 13巻4号 , 2021年10月 , pp.701-709

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麻酔管理中には，麻酔薬，手術操作，患者因子などさまざまな要因により，血圧低下が生じる。血圧低下が生じた場合には，その原因を把握したうえで血管作動薬や輸液管理により，適正血圧へと回復させる必要がある。近年，周術期血圧低下が術後臓器傷害発生率や死亡率と関連することを示す研究が数多く報告され，周術期血圧管理の重要性が改めて脚光を浴びている。本稿では，周術期低血圧が予後に及ぼす影響に関する最近の知見を紹介し，適正血圧を維持するために使用される心血管作動薬に焦点を当て，エビデンスに基づく実践的使用方法について述べる。

8．人工呼吸—個々の患者に最適な呼吸器設定をするためのストラテジー岩崎　夢大 13巻4号 , 2021年10月 , pp.711-718

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全身麻酔中の人工呼吸器管理では，術後肺合併症を防ぐためにさまざまな介入が必要である。多くの人工呼吸関連の研究が行われていくなかで，呼気終末陽圧（PEEP）設定を患者ごとに適切に行うこと，低い駆動圧設定を行うことが術後肺合併症を抑制するというエビデンスが集積されつつある。全身麻酔中の人工呼吸は，体格での画一的な呼吸器設定ではなく，個々人への適切な設定を行う必要がある。

　また，近年では腹腔鏡手術，呼吸器外科手術関連の分離肺換気，人工心肺使用の心臓手術においても，さまざまな人工呼吸関連の研究が行われている。いずれの全身麻酔においても，駆動圧を下げるために適切なPEEPを設定し，高二酸化炭素許容人工換気法permissive hypercapniaが生理学的に許容される場合には肺保護換気を継続することで術後肺合併症を防ぐことを，我々麻酔科医，集中治療医は常に意識する必要がある。

9．ICUへの申し送り—「情報」「責任」「環境」の3つの要素を調和させる小林　直也 13巻4号 , 2021年10月 , pp.719-725

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麻酔科医から集中治療医への術後申し送りは「情報」「責任」「環境」の3つの要素が，労力に見合う形で調和することで良質なものとなる。具体的には，チェックリストやテンプレートを用いて「情報」を標準化することが最も重要であり，次いで医療従事者間のコミュニケーションとタスクを調整することで「責任」の質と量を確保する。さらに，標準化された方法を電子化したり，申し送りに対する医療従事者の意識改革を実施したりすることで「環境」を整えることも有効である。各施設における「環境」は大きく異なるため，計画-実行-評価-改善plan-do-study-act（PDSA）サイクルにより申し送りを最適化することも重要である。

Part 2　術後早期合併症

10．呼吸不全—高リスク患者の早期同定と積極的な危険因子の修正でケアを最適化する下薗　崇宏 13巻4号 , 2021年10月 , pp.727-738

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全身麻酔は，呼吸応答の抑制や機能的残気量の低下など，呼吸器系にさまざまな変化をきたす。これらの変化によって生じる無気肺や呼吸不全などの術後肺合併症は，発症率が非常に高く，予後に大きな影響を与える重大な合併症である。そのため術後肺合併症について理解しておくことは，よりよい周術期管理を行ううえで不可欠なことである。本稿では，術後肺合併症の予防や治療方法を中心に，文献的考察を交えて論じる。

11．ショック—術後患者の特殊性と管理の実際森松　博史 13巻4号 , 2021年10月 , pp.739-745

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術後患者において低血圧やショックはよくみられる病態である。出血や血管内脱水，鎮痛薬など，多くの要因によってショックは起こり得る。術後ショックに対するアプローチは，まずは原因を特定することを目指しながら，比較的安全な方法で治療を進めていくことである。術後は患者の鎮痛を優先する必要があるが，ほとんどの鎮痛薬・治療法は低血圧を起こし得る。特に心臓血管外科術後では血管麻痺症候群vasoplegic syndromeという概念が確立してきており，少なくとも術後集中治療にかかわる者は，その可能性を念頭において治療にあたる必要がある。術後患者の特殊性をよく理解したうえで，輸液負荷とノルアドレナリン，バソプレシンを中心に術後早期のショックに対応していく必要がある。

12．疼痛管理—痛みの悪化にはオピオイドのタイトレーション井上　莊一郎 13巻4号 , 2021年10月 , pp.747-754

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現代の術後鎮痛ではマルチモーダル鎮痛が推奨され，最近は，オピオイドを最少量にとどめようとする流れもある。しかし，ICUで管理される侵襲の大きな手術後の鎮痛では，オピオイドは重要な役割を果たしている。本稿では，ICUで遭遇することのある症例として，創部周辺のみの浸潤麻酔と不十分なオピオイド投与によって手術直後に強い痛みを生じた症例と，マルチモーダル鎮痛に用いた区域麻酔の効果が消失し，強い痛みが生じた症例を提示した。予防策には，前者では麻酔中から術後鎮痛への移行として，腹膜にも局所麻酔薬を投与する創部浸潤麻酔や薬物動態を念頭においたオピオイド投与，後者では，局所麻酔薬の持続投与がある。両者の治療法としては，オピオイドのタイトレーションが有用である。

13．術後悪心・嘔吐（PONV）—最新の指針にもとづく発症予測・予防・治療関根　智宏 , 杉野　繁一 13巻4号 , 2021年10月 , pp.755-763

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術後悪心・嘔吐（PONV）は頻度の高い術後の合併症の1つである。発症予防を行わない場合の発症率は30％，PONV高リスク患者では80％にものぼる。PONVは患者にとって術後痛よりも耐え難い場合があり，たとえ手術が成功しても患者の周術期ケアへの満足度を著しく低下させる。これまでいくつかのガイドラインが，PONVの危険因子，予防，治療などについてエビデンスを提示してきた。そして2020年に最新のPONVのガイドラインが発表された。本稿では，この最新のガイドラインを主軸に，PONVの最新の知見について概説する。

14．低体温症・シバリング—術後患者の管理のための機序と予防・治療方法近藤　悠生 , 飯塚　悠祐 13巻4号 , 2021年10月 , pp.765-775

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周術期低体温は頻繁にみられる合併症である。低体温により，麻酔薬の効果の残存，出血傾向，創部感染症，心血管系合併症など，さまざまな有害事象をきたし得る。このため，術後患者をICUで管理するうえで，周術期低体温について十分な理解が求められる。本稿では，周術期低体温をきたす機序と，予防・治療方法，それぞれの合併症についての各論を述べた。特に，低体温と関連するシバリングについては，発生機序と有害事象を詳述した。また，予防・治療方法に関しては，主にメペリジン，トラマドール，デクスメデトミジン・クロニジン，ケタミン，マグネシウム，オンダンセトロンの薬理学的機序について，現在のエビデンスを要約した。

15．硬膜外麻酔のトラブルシューティング—効きすぎ，鎮痛効果不良を見逃さない松永　渉 13巻4号 , 2021年10月 , pp.777-784

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硬膜外麻酔による鎮痛の恩恵は計り知れないものであるが，その合併症は重篤な転帰を辿るものが多く，いったん発症するとその後の機能予後を著しく悪化させる。実際に麻酔を行う麻酔科医だけでなく，術後管理を行っていく外科医や集中治療医も，起こり得る合併症・初期対応を熟知する必要がある。あらかじめセーフティーネットを張ることで早期発見・早期対処が可能となり，仮にトラブルが生じた際にも良好な神経学的予後が期待できるであろう。ここでは，おのおのの合併症に関して論じていく。

16．覚醒遅延・覚醒時譫妄—原因特定のためのアプローチとマネジメント山口　直城 , 則末　泰博 13巻4号 , 2021年10月 , pp.785-797

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覚醒遅延とは，全身麻酔後という特殊な条件下における意識障害であり，その鑑別は通常とは異なる特徴をもつ。麻酔薬の遷延が原因となることが最も多いが，体温異常や代謝異常も原因となり得る。ごくまれに神経疾患が覚醒遅延の原因となる場合があり，診断が遅れると機能予後に影響する場合もあるため，原因が特定できない場合は，画像検査や脳波検査などを遅滞なく施行することが重要となる。

　覚醒時譫妄は覚醒時の意識障害の範疇に含まれるため，原因検索や対応は覚醒遅延とオーバーラップする部分が多い。しかし，過活動型譫妄または覚醒時興奮では，特に疼痛をはじめとした患者にとって不愉快な要因を取り除くことが最優先される，ということを意識しておく必要がある。

Part 3　処置時の鎮静・鎮痛（procedural sedation and analgesia）

17．処置時の鎮静・鎮痛（PSA）—施行前の評価と薬物の選択深野　賢太朗 13巻4号 , 2021年10月 , pp.799-809

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PSAと聞いて，前立腺の採血値の話ではなく，麻酔に関連する話題を想起する読者はどの程度いるであろうか。わざわざINTENSIVIST誌「麻酔」特集を手に取っている読者には馴染みのある話題かもしれないが，麻酔をバックグラウンドにもつ集中治療医よりも救急をバックグラウンドにもつ集中治療医のほうが，馴染みがあるかもしれない。本稿で話題としているPSAとは，処置時の鎮静・鎮痛procedural sedation and analgesia（PSA）である。本稿では，PSAの概念を概説し，シナリオに沿ってその注意事項・薬物に関して解説する。

18．MRIの麻酔—最低限の鎮静，最大限の安全性を目指す有野　聡 , 下里　アキヒカリ 13巻4号 , 2021年10月 , pp.811-820

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小児ではMRI検査を完遂するために鎮静をしばしば必要とするが，成人でも閉所恐怖症や不穏のため鎮静を必要とすることがある。閉所，騒音性，検査時間が長いことが患者にとって苦痛な検査特性である。近年はMRI装置の改良により検査特性が改善されている。また，苦痛を緩和するための非薬物的な介入として，アイマスク，腹臥位，耳栓などの工夫が考えられる。鎮静薬の投与が必要な場合のモニタリングはMRI対応機器の有無により方法が異なるが，機器が不足していれば身体所見でモニタリングする工夫が必要になる。成人のMRI検査時の鎮静薬選択にはエビデンスが乏しく，具体的な薬物の選択は個々の症例や経験に応じて判断する必要がある。

【コラム】術中危機的偶発症と日本麻酔科学会麻酔関連偶発症例調査—その変遷と今後の課題澤　智博 13巻4号 , 2021年10月 , pp.822-825

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日本麻酔科学会では，1992年の予備調査にはじまり，約30年にわたる麻酔関連偶発症例調査を実施している。ここでは，術中の危機的偶発症，特に心停止，高度低血圧，高度低酸素血症，高度不整脈について麻酔関連偶発症例調査から得られた知見を紹介しながら，30年にわたる変遷や国際的な位置づけについて解説する。

連載

え？　知らないの？体外設置型補助人工心臓を管理するうえで，知っておくべきポイント柏　公一 , 森實　雅司 13巻4号 , 2021年10月 , pp.828-832

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補助人工心臓ventricular assist device（VAD）には，大きく分けて体外設置型VADと植込型補助人工心臓implantable ventricular assist device（iVAD）の2種類がある。いずれも基本的には左室心尖部から脱血し，上行大動脈に送血する循環補助用のデバイスである。体外設置型VADとは血液ポンプを体外に設置するタイプのVADのことを言い，送脱血カニューレは季肋部から体外に導出され，血液ポンプと接続される。iVAD装着患者は在宅療養を行うことが基本であるが，体外設置型VADを装着した患者は，それぞれの目的を達成するまで入院生活を送らざるを得ない。体外設置型VADは，それほど多く用いられるデバイスではないが，補助循環を管理する立場にあるのであれば，これらのシステムに関する知識も身につけておいたほうがよい。本稿では，それぞれの体外設置型VADを管理するうえで，最低限，知っておかなければならないポイントについて述べる。

集中治療に関する最新厳選20論文田邊　翔太 , 吉田　英樹 13巻4号 , 2021年10月 , pp.846-852

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連載　最新エビデンスを読む【新連載】

第1回：ERC/ESICM蘇生後ケアに関する集中治療ガイドライン2021 櫻井　千浪 , 片岡　惇 13巻4号 , 2021年10月 , pp.834-837

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「最新エビデンスを読む」では，JSEPTIC多施設ジャーナルクラブで扱った論文のなかから，注目すべきテーマを毎号1つ取り上げて解説します。JSEPTICホームページ上にアップしているスライドとともに，読者の皆様に実臨床に活用していただければ幸いです。

連載　特別寄稿

2021 PICU Awareness Week in Japan 2021年5月10日〜14日—ウェブ企画・運営の経験德平　夏子 13巻4号 , 2021年10月 , pp.838-839

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みなさん，World PICU Dayってご存知ですか？ World Federation of Pediatric Intensive and Critical Care Societies（WFPICCS）が企画した，PICU （pediatric intensive care unit）をPICU外の方に知ってもらうために，世界各国のPICUが情報を発信する1日です。実は今年が第1回目で，5月14日がWorld PICU Day，5月8日〜14日がAwareness Weekでした。

　WFPICCS理事長中川聡先生のお膝元である日本でも，PICU Awareness Weekの趣旨に共感してくださったPICUに携わる有志が手弁当で企画を始め，期間中は日本全国から多数の参加をいただきました。そこで今回のウェブ企画“PICU Awareness Week in Japan”（開催：2021年5月10日〜14日）での経験をご報告させていただきます。

連載　Lefor's Corner

第42回：Vascular Access and Hemodynamic Monitoring Part XXIII：Pediatric Vascular Access—Placement：Difficulty and Site Selection Honjo　Sarah , Hosomi　Risa , Lefor　Alan Kawarai 13巻4号 , 2021年10月 , pp.841-844

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This ongoing series provides the readership of Intensivist with the opportunity to read concise reviews of current topics in Critical Care Medicine, in English. It is hoped that these reviews will stimulate the pursuit of other literature written in English.

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目次 13巻4号 , 2021年10月

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倫理規定 13巻4号 , 2021年10月 , pp.854

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次号予告 13巻4号 , 2021年10月 , pp.855

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基本情報

INTENSIVIST
13巻4号
(2021年10月発行)

電子版ISSN：2186-7852 印刷版ISSN：1883-4833 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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INTENSIVIST 13巻4号 (2021年10月発行)

特集 麻酔

Part 1 麻酔総論（生理学）麻酔科医による術中管理の目的と実際

Part 2 術後早期合併症

Part 3 処置時の鎮静・鎮痛（procedural sedation and analgesia）

連載

連載 最新エビデンスを読む【新連載】

連載 特別寄稿

連載 Lefor's Corner