BRAIN and NERVE 73巻5号 (2021年5月)

増大特集 中枢神経の自己免疫性・炎症性疾患ハンドブック

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 中枢神経の自己免疫性・炎症性疾患は個々の医師の力量が大きく問われる疾患群です。決してコモンディジーズというわけではありませんが,神経学の臨床に携わる者にとって必ず遭遇する疾患群であり,適切な診断・治療の可否が患者の予後を大きく左右します。また、コモンディジーズではないがゆえに指導者層の経験や知識もまちまちです。

 臨床家として必ず最新の知識にキャッチアップしておかないといけないこの領域について,従来よりも規模の大きい1冊の増大特集にまとめました。第1章「治療法概論」では,各治療法の特色や治療のコツなどについて,第2章「疾患各論」では各疾患の概要や診断のポイント,治療法などについて,エキスパートの皆様に解説をいただくことができました。

 中枢神経の自己免疫性・炎症性疾患を扱ううえでこの上なく心強い1冊です。ぜひ手元に置いていただければ幸いです。

第1章 治療法概論

ステロイドの使い方 松下 拓也
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ステロイド治療は免疫疾患をはじめとする炎症性疾患の治療において中心的役割を果たしている。糖質コルチコステロイドは遺伝子発現調整や膜蛋白への作用により抗炎症作用をもたらすが,その作用は免疫細胞によって異なる。自己免疫性疾患におけるステロイド用量は疾患の病態によるが,原則的にプレドニゾロン換算で7.5mg/日以下の維持量での疾患コントロールを目標として,困難な場合はその他の免疫抑制薬の併用を検討する。

免疫抑制薬の使い方 松尾 秀徳
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中枢神経の自己免疫性・炎症性疾患で,ステロイドパルス療法や血漿交換療法あるいは免疫グロブリン大量静注療法にも反応しない症例において,免疫抑制薬(細胞毒性薬)が奏効する場合がある。細胞毒性薬は重篤な副作用を惹起することもあるので,慎重かつ時機を逸しないように適応を判断し,十分なインフォームドコンセントを行い,予期される日和見感染症や有害事象に対する事前の準備と経過中のモニタリングが重要である。

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中枢神経の自己免疫疾患の治療にはステロイド,血漿浄化,免疫抑制薬が用いられることが多いが,免疫グロブリン大量静注(IVIg)が用いられることもある。IVIg療法は,免疫細胞の貪食能・補体系・自己抗体・炎症性サイトカインの抑制などの薬理作用を有し,中枢神経の自己免疫疾患に対して効果が期待できる可能性がある。今後,有効性を確立するには,臨床試験によるエビデンスの蓄積が必要である。

血液浄化療法の使い方 中辻 裕司
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血液浄化療法はさまざまな領域の免疫介在性疾患における治療法の1つとして確立されてきた。その機序として,病原性を有する自己抗体や補体,サイトカインを血中から除去するとともに免疫調整作用が有効に働いていることが示唆されている。近年脳炎・脳症においても自己免疫機序の関与が多く報告されるようになったことをはじめ,血液浄化療法の適応が増加しつつある。本論では血液浄化療法と,適応となる神経疾患について概説する。

分子標的薬の使い方 田中 良哉
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分子標的薬は,分子サイズによって生物学的製剤と低分子合成化合物に分けられる。TNFやIL-6などのサイトカインや細胞表面分子を標的とした生物学的製剤,および,JAKをはじめとするサイトカインなどの細胞シグナル伝達分子を標的とした低分子合成標的薬の開発により,これまで難治性と言われた自己免疫疾患を制御し,関節リウマチでは関節の構造的損傷を抑止することが可能となってきた。中枢神経系の自己免疫性・炎症性疾患にも治療応用が期待される。

第2章 疾患各論

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多発性硬化症(MS)は主要な中枢神経系炎症性脱髄性疾患であるが,MSの診断マーカーはなく,診断にあたっては十分な他疾患の除外が求められる。再発寛解型はMSの病型として最も多く,現在の疾患修飾薬のほとんどがこの病型をターゲットにしている。一方で,早期の治療介入が予後に影響するとされ,どのように治療戦略を組み立てるかは重要な課題である。適切な時期に適切な治療薬を使用することが非常に大切な病型と言える。

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二次性進行型多発性硬化症は,再発寛解型多発性硬化症を経た一部の症例が再発非依存性の障害進行を呈する状態である。末梢と隔絶したCD8 T細胞やB細胞の中枢神経系内局在化,グリア細胞の機能不全や細胞老化などが病態に関与するとされる。明確な診断基準がなく,総合障害度に現れない症状も多いため,診断は時に困難である。有効な治療に乏しく,免疫修飾,神経保護,再髄鞘化など多様な標的に対する治療法構築が期待される。

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一次性進行型多発性硬化症(PPMS)は,発症時より寛解期を認めず持続的な進行を呈する中枢神経系脱髄疾患である。PPMSの主な病態として炎症,軸索変性,ミクログリア活性化や酸化副産物,ミトコンドリア障害,グルタミン酸興奮毒性がある。本邦でPPMSに保険適用のある疾患修飾薬はまだないが,海外では抗CD20抗体のocrelizumabが承認されている。また,複数の疾患修飾薬が臨床試験でPPMSに有効性を示しており,臨床応用がまたれる。

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急性散在性脳脊髄炎は,多巣性の神経症候が急性ないしは亜急性に出現する中枢神経の炎症性脱髄疾患である。感染やワクチン接種などの先行事象を認めることが多く,免疫介在性疾患と考えられている。主に小児に発症し,通常は単相性であるが,稀に再発し多相性のことがある。急性期治療の第一選択はステロイドパルス治療であり,長期予後はおおむね良好である。

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視神経脊髄炎関連疾患(NMOSD)は,主に視神経炎,脊髄炎や最後野症候群をきたす中枢性自己免疫疾患である。抗アクアポリン4(AQP4)抗体が関与して補体介在性にアストロサイト傷害をきたす特徴は従来の多発性硬化症(MS)とは病態が異なる。治療においてもMSの疾患修飾薬は無効ないし増悪することが知られ,従来NMOSDでは低用量ステロイドや免疫抑制剤が使用され,近年は補体やB細胞系を抑える生物学的製剤が相次いで登場している。

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抗MOG抗体関連疾患は,抗MOG抗体が陽性となり,中枢神経系に炎症性脱髄病変を生じる,近年確立された新しい疾患単位である。病型として視神経炎,脊髄炎,視神経脊髄炎関連疾患,脳幹脳炎,脳炎などを呈する。診断にはCBA法を用いた抗MOG抗体の同定に加えて,脳MRI,髄液検査などによる炎症性脱髄の証明が必要である。急性期治療に加えて,症例ごとに再発予防のための免疫治療を検討することが重要である。

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脳アミロイドアンギオパチー関連炎症・血管炎は,脳の皮質・髄膜血管に沈着したアミロイドβ蛋白に対する免疫反応によって炎症が生じたもので,わが国の推定患者数は170人である。急性または亜急性に認知機能障害などを呈し,頭部MRIで出血を伴う白質脳症が見られる。病理では血管周囲へのリンパ球浸潤や多核巨細胞を伴う肉芽腫性血管炎を認める。免疫療法で改善が見込めるため,すみやかな診断および治療開始が推奨される。

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巨細胞性動脈炎は大型血管炎に含まれる肉芽腫性血管炎である。以前は側頭動脈炎として認識されていたが,側頭動脈だけでなく,頭蓋外領域の中型〜大型血管も障害する。診断にはまず本疾患を疑うことが重要であり,血液検査,画像,組織などいくつかの検査所見を組み合わせて診断する。転帰に大きく影響する失明や片麻痺などの神経症候,大動脈瘤などを引き起こすため早急な診断と治療介入が不可欠である。

多発血管炎性肉芽腫症(GPA) 山﨑 亮
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多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は血管炎症候群のうちANCA関連血管炎に分類される厚生労働省指定難病である。上気道症状(E),肺症状(L),腎症状(K)および全身血管炎症状を呈し,しばしば神経系も障害される。血液検査でC(PR3)-ANCAが陽性となり,診断の一助となる。複数の免疫抑制薬の併用で寛解導入可能だが,再燃や感染症に注意が必要である。

原発性中枢神経血管炎 竹下 幸男
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原発性中枢神経血管炎は,脳や脊髄に限局する原因不明の血管炎である。原発性中枢神経血管炎の診断には,脳組織所見や脳血管造影所見に加えて,感染症や全身性疾患による二次性血管炎の除外を目的とした全身検索が必要とされる。かつては治療抵抗性で予後不良と考えられていたが,ステロイドやシクロホスファミドによる急性期治療や寛解維持療法を適切に選択することで,良好な転帰が得られることがわかってきた。

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全身性エリテマトーデス(SLE)に併発した中枢神経障害,末梢神経障害は神経精神SLE(NPSLE)と称される。本総説では特に脳症候を呈するSLE脳症について概説した。SLE脳症を含むNPSLEの分類としてはdiffuseとfocalに分け,さらに19病型に細分化したものがある。診断に際しては臨床所見,画像検査,脳脊髄液検査,神経生理学的検査に基づいた疾患活動性の評価を行い,治療(病因治療・対症療法)を行う。病因治療導入に際しては症例において炎症性病態,血管性病態を見極めつつ適した治療を行うことが望ましい。NPSLE診療においては膠原病内科医,脳神経内科医,精神科医の連帯が重要である。

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抗リン脂質抗体症候群は抗リン脂質抗体(aPL)が関連して発症する自己免疫疾患である。臨床症状の主体は脳梗塞を含む血栓症および妊娠合併症だが,時に多様な神経症状を示すことがある。aPL関連神経症状には,脳梗塞に加えて,認知機能障害,舞踏病や横断性脊髄炎が含まれる。抗血栓療法や免疫抑制薬で治療するが,血栓症を除いた神経症状は病態生理や治療法が確立されておらず,基礎研究・臨床研究のさらなる進展が必要な領域である。

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関節リウマチの中枢神経合併症であるリウマチ性髄膜炎は,罹病率は低いものの無治療では非常に予後不良な疾患である。頭部MRIでの片側の天幕上の髄膜の造影効果と軟膜のFLAIR画像での高信号が非常に特徴的であり,リウマチ性髄膜炎を疑うきっかけになる。ステロイドが有効であり,早期に診断し治療介入することで良好な転帰を得ることができる。リウマチ性髄膜炎を疑うことができるかどうかが重要であり,その特徴について解説した。

橋本脳症 松永 晶子 , 米田 誠
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橋本脳症は慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う自己免疫性脳症である。その臨床スペクトラムは広い。急性・亜急性に意識障害や痙攣,幻覚などを呈する急性脳症,小脳性運動失調,慢性の精神病・認知症,極めて稀だがクロイツフェルト・ヤコブ病様など多様で,鑑別が必要な疾患も多岐にわたる。診断への道程として,まず本症を疑うことから始まり,臨床症状,脳波,脳画像検査の特徴を鑑み,血清の抗甲状腺抗体や抗NAE抗体を測定する。

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シェーグレン症候群は慢性唾液腺炎と乾燥性角結膜炎を主徴とする自己免疫疾患である。唾液腺,涙腺などの乾燥症状が中核であるが,多彩な腺外症状の1つとして神経合併症を呈することが知られている。神経合併症の頻度は1.8〜60%と報告により差があり,また中枢,末梢神経,筋など多様な病型を呈する。神経症状がシェーグレン症候群の診断に先行することもしばしば見られ,原因不明の神経筋障害を認めた際には,シェーグレン症候群の検索が必要となる。

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神経ベーチェット病は,ベーチェット病全体の10〜20%を占め,中枢神経実質の炎症に起因する神経症状を呈する。臨床症状と治療反応性から,急性型と慢性進行型の2型に分けられている。本論では,厚生労働省ベーチェット病に関する調査研究班による「神経ベーチェット病の診療のガイドライン」および「ベーチェット病診療ガイドライン2020」を踏まえて,急性型神経ベーチェット病を概説する。

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慢性進行型神経ベーチェット病では,認知症様の精神神経症状や小脳性運動失調が徐々に進行し,寝たきりになる。脳脊髄液インターロイキン6(IL-6)が持続的に異常高値を示すとともにMRIで脳幹部の萎縮を認める。診断上は,不全型以上のベーチェット病の診断基準を満たすことが必須である。治療ではステロイドやアザチオプリン/シクロホスファミドは無効で,まずメトトレキサートによる治療を行い,効果不十分な場合はインフリキシマブを追加併用する。

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サルコイドーシスの中でも中枢神経サルコイドーシスは非常に稀である。しかし,脳腫瘍や髄膜(脳)炎,脊髄症などで鑑別診断の1つに挙げられる機会は多く,日常診療での重要度は高い。難治例が多く,永続的な後遺症をきたしやすいが,本症に対するインフリキシマブの高い治療効果が近年多く報告され,予後改善が期待される。

IgG4関連疾患 中島 章博 , 河内 泉
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IgG4関連疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)は,血清IgG4高値および全身諸臓器にIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする疾患である。脳神経内科領域においては,肥厚性硬膜炎,軟膜炎,脳実質疾患,眼疾患,下垂体炎,末梢神経疾患を呈する。本疾患には類似疾患が多いこと,脳神経内科領域は病理組織診断が困難な場合が多いことから,実際の臨床現場では診断に苦慮することがある。国際分類基準「The 2019 ACR/EULAR Classification Criteria for IgG4-RD」と本邦診断基準「2020年改訂IgG4-RD包括診断基準」を紹介し,IgG4-RDに伴う神経疾患の診断・治療のアップデートを解説する。

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抗NMDA受容体脳炎は,NR1 subunitの細胞外立体構造に対するIgG型の自己抗体を有する脳炎である。現在ではさまざまな抗神経表面抗体が,単純ヘルペス脳炎後脳炎,脳炎脱髄重複症候群,てんかん発作,精神病性障害,運動障害疾患,認知症,stiff-person症候群,小脳失調症,あるいは睡眠行動異常症の一部に関与していることが示されている。本稿では,抗NMDA受容体脳炎に焦点を絞り,NORSEを含め述べる。

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抗VGKC抗体は,現在,その構成蛋白のLGI1,CASPR2それぞれを特異的に認識する抗体で検出される。LGI1抗体陽性例の頻度が高く,FBDSと辺縁系脳炎の臨床像を呈する。60代に発症し,男性にやや多い。CASPR2抗体はニューロミオトニアとの関連が知られるが,両抗体の併存例が多く,臨床像も重複する。免疫療法が奏効するものの,認知・記憶障害が残存し,再発が多い。認知症との鑑別が重要である。

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自己免疫性小脳性運動失調症は,グルテン失調症,感染後小脳炎,傍腫瘍性小脳変性症,抗GAD抗体関連小脳性運動失調症などいくつかの病型から成り,従来考えられていたよりその頻度が高い。また,これらの既知の病型に合致しない一群もあり,これらは原発性自己免疫性小脳失調症として分類されている。診断は自己免疫的な機序で小脳性運動失調が惹起されていることを証明することで確定される。傍腫瘍性小脳変性症は細胞性免疫による機序が考えられている一方,抗GAD抗体関連小脳性運動失調症では自己抗体によるGABA放出の障害が原因とされている。このような多様な病態を反映して,免疫療法による効果も病型によってさまざまである。小脳予備能が維持されている早期に治療介入を行うことが必要である。

傍腫瘍性中枢神経疾患 木村 暁夫
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傍腫瘍性神経症候群は,悪性腫瘍に対する免疫応答が神経組織を障害することにより生じる神経疾患である。近年新たな抗神経抗体の発見に伴い,患者数の増加が報告されている。また免疫チェックポイント阻害薬は,傍腫瘍性神経症候群を合併しやすい腫瘍に対しても使用される機会が増えており,今後さらなる患者の増加につながる可能性も予想される。本論では,傍腫瘍性中枢神経疾患の病態,診断,治療,予後について概説する。

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自己抗体関連脳炎・脳症では,多彩な神経症候が出現する。抗mGluR1抗体陽性脳炎は,主に小脳性運動失調症を呈し,異常行動や不随意運動症を伴う場合がある。抗IgLON5抗体関連疾患は,特徴的な睡眠障害を呈するが,神経変性疾患との鑑別を要する場合がある。自己免疫性GFAPアストロサイトパチーは,原因不明の髄膜脳脊髄炎に認められる。これらは治療可能な疾患であることから,早期の適切な診断が不可欠である。

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スティッフパーソン症候群は体幹を主部位として,間歇的に筋硬直や筋痙攣が発生し,さらには全身へと症状が進行する自己免疫疾患である。病因として抗GAD抗体,抗アンフィフィシン抗体,グリシン受容体α1サブユニットに対する抗体が重要視されている。免疫療法に反応するが,突然死をすることもあり,診断と治療アルゴリズムの確立が必要である。

 

*本論文中に掲載されている二次元コード部分をクリックすると,関連する動画を視聴することができます(公開期間:2024年4月末まで)。

連載 臨床神経学プロムナード—60余年を顧みて・3

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 冲中重雄教授(東京大学第3内科)から学位研究テーマとして与えられたのがALSで,入局2年後の1957年であった。研究についての具体的御指示はなかった。本症はCharcotとJoffroyの最初の剖検報告(1869)1)から既に一世紀近い歳月を経て,この間に夥しい数の研究報告が広く世界で発表されており,何を研究すべきか皆目見当がつかなかった。当時の内外の神経学書(教科書)から何ら示唆を得られなかった。

 先ずは本症をよく識ることと考えて,Charcotが詳細に講義したSalpêtrière病院での講義録(1880)2)を読むことにした。2章(第12〜13章。訳文では課)に亘り極めて詳しく記述されていて,第12章では脊髄の発生から説き,本症の脊髄病変(側索硬化)に注目し,これが脳病変による二次的なものでなく,原発性であることを論じ,それが延髄の高さへと続く事を述べている。次いで脊髄白質,灰白質から神経根の病変を記し,前根および脊髄神経の病変が前角病変の続発性であることを説いている。最後は萎縮筋の病変の状態,色の変化にまで言及している。

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 医学書院から別冊『呼吸器ジャーナル』として『COVID-19の病態・診断・治療—現場の知恵とこれからの羅針盤』という本が出版された。多くの臨床医の興味を引きつけるテーマである。私自身,『呼吸器ジャーナル』の編集,および執筆に携わったことがあるものの,これまでの企画とは異なるスタイルの本であると感じた。

 まず,Ⅰ章ではCOVID-19に関する総論を,Ⅱ章ではCOVID-19を理解するために必要な基礎知識を示している。Ⅲ章では,各論として疫学・診断・治療を示している。これらの章からCOVID-19に関する基礎知識を学ぶことができる。なかなか見ることができない病理像まで紹介されている点に感心した。また臨床医の関心の高いワクチンの開発状況も参考になった。

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目次

欧文目次

バックナンバーのご案内

次号予告

あとがき 酒井 邦嘉
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 先日,「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展」を訪れた。中でも目を惹いたのは,エジプトの繁栄期にあたるアマルナ時代(前1351〜前1334年頃)の作品群である。特に《ネフェルティティ王妃あるいは王女の頭部》は,それまで二千年も続いたエジプト美術の伝統とは一線を画し,気品のある顔立ちを生き写しのように再現していた。今回は日本にこなかったが,見事な彩色が施された《ネフェルティティ王妃の胸像》や,黄碧玉を磨き上げて麗しい唇を表現した《王妃頭部断片》(メトロポリタン美術館蔵)もまた,アマルナ時代の傑作として名高い。

 そうしたリアリズムの追求を特徴とするアマルナ芸術は,アクナーテン王の時代に生まれたのだが,それは彼の高潔な思想と美意識を反映していたようだ。アクナーテン王は遷都と宗教改革を断行したことで知られており,その背景には神官たちの目に余る横暴があった。そのあたりの事情は,アガサ・クリスティの『Akhnaton』という作品(1937年に書かれ1973年に出版)で活写されている。この戯曲には,アクナーテンとネフェルティティはもちろん,のちに王位を継承するツタンカーメン,アイ(神官),そしてホルエムヘブ(軍人)も登場する。「古代エジプト展」では,アクナーテン王の横顔をレリーフで見ることができて,当人たちの舞台にタイムスリップしたかのようなリアリティを感じることができた。ちなみにツタンカーメンはアクナーテンの実子だったことが,ミイラのDNA鑑定で判明している。

基本情報

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BRAIN and NERVE
73巻5号 (2021年5月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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