BRAIN and NERVE 73巻4号 (2021年4月)

特集 片頭痛・群発頭痛治療の新たな夜明け

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片頭痛・群発頭痛に対して,ゲパントや抗CGRP抗体などのCGRP関連薬剤,ニューロモデュレーション治療などが臨床応用され,まさに新たな夜明けを迎えている。しかし急性期治療と予防療法の使い分けなど,専門医に対してもこれらの治療についての情報が十分に届いていない状況である。これらの治療法を理解するための基本的知識,臨床試験のエビデンス,ならびに使用方法や本邦における見通しについて学ぶ機会としたい。脳神経内科医をはじめとして総合診療医,小児科医,脳神経外科医,ペインクリニシャンなど頭痛診療に関わる多くの医師にも読んでいただきたい。

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片頭痛の発症メカニズムはいまだ不明である。予兆は一連の片頭痛発作の中で最初に認められる症状であり,その研究は片頭痛発生源解明につながるとして近年あらためて関心が高まっている。特に予兆症状と視床下部との関連が示唆されている。また,片頭痛メカニズムにおけるカルシトニン遺伝子関連ペプチドの役割について,血管拡張,神経性炎症,末梢感作といった末梢作用のみならず,光過敏,中枢感作,皮質拡延性抑制などと関連する中枢作用についても多くの知見が集まりつつある。

ゲパントとディタン 古和 久典
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近年,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が片頭痛発作の症状に主たる役割を果たしており,発作予防や治療を考えるうえでCGRPシグナル伝達の遮断が有効であることが示唆されるようになった。2つの新たなクラスの治療薬,ゲパントとディタンは,ともにCGRP放出抑制効果を有している一方で,従来のトリプタン系薬が有する血管収縮作用は持っていない。心血管の危険因子を持つ患者やトリプタンに反応しない患者に対して投与可能な薬剤として,わが国においても臨床現場での登場がまたれている。

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片頭痛は有病率が高く,個々の患者のQOLが大きく障害されることから,社会全体に与える経済的悪影響は甚大である。片頭痛は視床下部,大脳皮質,三叉神経系などの機能異常に基づく神経疾患である。従来の片頭痛発作予防治療薬は疾患特異的に開発されたものではなく,十分な効果が得られないことも多い。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が片頭痛病態に深く関与することが明らかとなり,CGRP関連抗体による治療法が脚光を浴びている。

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片頭痛・群発頭痛の薬物治療は不十分な治療効果や有害事象によるアドヒアランス低下が問題となっている。一方,非侵襲的ニューロモデュレーションは手術不要で比較的安価であり重篤な有害事象がないため,近年注目を集めつつある。経皮的三叉神経刺激装置,および経頭蓋磁気刺激装置が片頭痛の急性期治療および予防療法に,非侵襲的迷走神経刺激装置が片頭痛・群発頭痛の急性期治療および予防療法に有効である。

群発頭痛の新しい治療 今井 昇
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抗カルシトニン遺伝子関連ペプチドモノクローナル抗体薬であるガルカネズマブは,プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験(RCT)で有効性と安全性が認められ,米国食品医薬品局で反復性群発頭痛の予防薬として承認されている。また,翼口蓋神経節刺激療法は,慢性群発頭痛の急性期治療としてRCTで有効性と安全性が確認されている。本論では,これらの治療法の作用機序,臨床試験での結果,臨床での使用方法,本邦における見通しについて概説する。

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双極性障害ではゲノム要因の関与などは明らかであるが,その病態についてはいまだ不明な点が多い。われわれは2000年にミトコンドリア機能障害仮説を提案し,その検証を進めてきた。その結果,ミトコンドリアDNA(mtDNA)多型がミトコンドリア内Ca2+濃度に影響すること,mtDNA変異が脳に蓄積するマウス(変異Polgトランスジェニックマウス)ではミトコンドリアのCa2+取込みおよび細胞内Ca2+シグナリングが変化し,自発性の反復性抑うつエピソードを呈することなどを見出した。このマウスにおいて,変異mtDNAが蓄積している部位を探索した結果,視床室傍核に最も多く蓄積していることを見出した。視床室傍核の神経回路操作により,同様の反復性の低活動状態が出現することから,視床室傍核が双極性障害の原因に関わっている可能性が考えられた。

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神経性食思不振症はボディーイメージの歪みから極端な体重減少をきたす重篤な精神疾患で,薬剤加療や心理療法などでは改善が得られない場合も少なくない。本邦では現在,精神疾患に対する脳神経外科的治療はまったく行われていないが,諸外国では難治性精神疾患に対してさまざまな機能的脳神経外科治療が行われ,有効性が報告されてきた。神経性食思不振症に対して行われた脳神経機能への介入治療の中で代表的なものを紹介する。

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無症候性Ap/T-MCAの側副血行路起始部(A1)に発生した未破裂A1動脈瘤を経験した。当初動脈硬化性病変と捉えていたが,詳細な画像検査と術中所見からAp/T-MCAと診断した。動脈瘤破裂による出血例が多い破格であり,二次的に動脈硬化が合併している可能性にも留意すべきである。小型でも破裂しやすく,未破裂動脈瘤には積極的なバイパス併用根治術もオプションの1つとなり得るが,さらなる知見の集積が必要である。

連載 臨床神経学プロムナード—60余年を顧みて・2

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 腱反射検査法(診察法)は足底皮膚反射と並んでBabinski(1912)1)の大きな業績の一つである。彼の業績集(1934)の冒頭に相次いで収録されている。しかし腱反射の検討は彼以前に既に始まっていたようで(一説には1875年頃と言われる),実際にCharcotの「火曜講義」(1892)2)の中の挿絵の隅にハンマーが描かれているものがある。また,Charcotの「金曜講義」に再録されているJoffroyとの筋萎縮性側索硬化症(ALS)の最初の報告例(1869)3)の臨床記述の中に「前腕背面に軽い打撃を加えると指(複数)や手全体に著明な伸展運動を来たす」という記述がある。まさに指伸筋群の腱反射亢進を示している。

 Babinskiが本格的に腱反射の臨床的研究に取り組んだ背景には当時Charcotが取り組んでいたいわゆるヒステリー性麻痺と器質的運動麻痺との鑑別にあったようであるが,Charcotの没後に,もっと広く腱反射そのものの研究に取り組んだ。その徹底振りは原著を見れば一目瞭然である。腱反射の歴史から始まり,動物実験による生理学的所見に触れた後で,腱反射の診察法を説き,健常な場合からいろいろな病態における解説を行っている。彼はこれを1912年10月から11月にかけ,4回に分けてPitié病院で講義した1)(上記の業績集で49頁を占めている)。その全訳が雑誌「内科」(1960)1)に収載されているので容易に知ることが出来よう。

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 本書の第3版が出たときも書評を書かせていただいたが(2015年),力を込めすぎついつい長文になってしまった(https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/84707#tab4)。今回は「800〜1,400字で」,と編集部から注文がついている。宴席でスピーチが長すぎるおじさんがあらかじめくぎを刺されている様相だが,その「宴席」もいずれ死語になるやもしれぬ今日この頃だ。

 というわけで,今回は短く書かせていただく。

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 むさぼるように読んでしまった。一言で言うと,本気で悔しい。書籍を読んで悔しいと感じることはそうそうないが,今回ばかりは,今までの医師人生で苦労して,本気で悩んだことや,嬉しいこと悲しいこと,研修医や医学生が急激に成長して部分的に自分を超えた瞬間のアノ複雑な心境までも,これまで時間をかけてようやく感得してきた経験値(誰にも言わずにこっそり隠し持っていたもの)を完全に勝手に暴露された気がした。

 メンターが行うべき実践手法や考え方,そのいちいちすべてが,自分が優れたメンターを観察して苦労して学んだこと,数多くのメンティー達と接したときに生じた悩みや,研修医や医学生が抱えていることが多い相談内容にぴったりとフィットしているのだ。何を隠そう,大学教員である自分は一時期やる気がない(ように見える?)医学生や研修医に対してすごく悩んだ。若さゆえの過ちというやつか,誰にでも公平にできるだけ丁寧なよい教育を‼ と鼻息荒く取り組んでいた。結果的に,うまくいかず苦しかった。しかしある日,原著者のDr. Chopra & Dr. Saintが発表した「メンターが心得るべき6つの事」という論文を読んで自分の考えは完全に間違っていたと悟った。その答えは本書の中にあるので,ぜひ手に取って読んでほしい。

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第32回日本末梢神経学会学術集会

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あとがき 虫明 元
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 今月の特集の「片頭痛・群発頭痛治療の新たな夜明け」は,治療に焦点を絞りつつ,その原因となる神経機構に関しても理解が進んでいることを実感した。具体的には脳血管の拡張・収縮に関わる多様な神経ペプチドの理解,画像解析などからの大脳皮質〜脳幹の片頭痛の各ステージでの詳細な解析,神経モデュレーション法の効果が及ぶ神経基盤の理解など,治療法を紹介しながらも新しい病態理解の道が示されている。

 一方で,システム生理学的な立場として,このような複雑な病態の起こるメカニズムはどのようになっているのかが知りたいと思った。生理学ではホメオスタシスというメカニズムがあり,身体内外の環境からの外乱・ストレスに対して,内部環境を保持する機構が知られている。脳の場合は,神経活動,代謝,血流が絶妙に調整され,必要な部位に必要なものが届けられ,一定環境を守るように調節されている。一方でホメオスタシスを構成するどこかの感受性が,繰り返されるストレスに対して,次第に変化をして動的に適応することも知られている。しかし,その適応の仕方には個人個人の感受性の違いがあり,レジリエンスより脆弱性が表に出るとき,適応は望ましくない方向に振れる場合があることが知られている。

基本情報

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BRAIN and NERVE
73巻4号 (2021年4月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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