LiSA 21巻5号 (2014年5月)

徹底分析シリーズ 低侵襲化する呼吸器手術とその周術期管理

巻頭言 石川 晴士
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呼吸器手術とその周術期管理について企画を立案するにあたり,真っ先に思い浮かんだキーワードが「低侵襲化」である。多くの肺切除術が胸腔鏡下に行われるのはもちろんのこと,現時点では一部の施設にとどまっているものの,呼吸器手術にロボット手術が導入されつつある。こういった手術の進化に伴い,周術期管理はどのような変化を遂げてきたのだろうか。

 現代の胸腔鏡あるいはロボットを用いる低侵襲な手術と,かつては当たり前に行われていた肋骨切除を伴う後側方開胸での手術における周術期管理を改めて比較してみると,素朴な疑問が次から次へと生まれてくる。例えば,麻酔および人工呼吸管理は両者とも同じでいいのか,鏡視下の視野を改善するためにできることはあるのか,低侵襲手術に積極的に硬膜外麻酔を行う必要はあるのか,低侵襲手術では術後合併症は減るのか。挙げ始めるときりがない。

 そこで本徹底分析はまず,呼吸器手術の進歩および最先端のロボット手術について,外科医の立場から解説していただいた。さらに上記の素朴な疑問に答えるべく,呼吸器手術の麻酔のエキスパートに執筆をお願いした。一人でも多くの読者にとって,周術期管理の知識の整理,ひいては患者のアウトカムの改善に役立てば,企画者としてこのうえない喜びである。

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近年,従来から行われていた30cmもの切開創と肋骨の切断,開胸器を用いて直視下に行う開胸手術に代わり,内視鏡カメラを使用し,モニター画像を見て行う胸腔鏡手術video-assisted thoracic surgery(VATS)が積極的に行われている。

 本稿では,日本でも開始されたロボット手術を含め,呼吸器外科領域における低侵襲手術の変遷と現状について解説する。

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開腹手術より腹腔鏡下手術を,開心術よりカテーテル治療を,というように,低侵襲の治療があらゆる領域で増加している。効果が同じならば,体への負担が小さいほうがよい。小さい切開創で行う胸腔鏡下手術も,開胸手術と比較して低侵襲である。開胸手術では,術後2週間前後の入院期間が必要であるが,胸腔鏡下手術は,術後4~5日で退院できる。胸腔鏡下手術後は早期に歩行を開始でき,日常生活に復帰するまでの期間が非常に短い。このため肺炎,肺梗塞などの呼吸器合併症の危険性も少なくなる可能性がある。胸腔鏡下手術の様式は,施設により異なる。当院では3本のポートで行う手術を施行しているので,これをもとに麻酔管理について述べる。

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胸腔鏡下手術を含む開胸手術中の呼吸管理方法は,一側肺換気がゴールドスタンダードとみなされているが,ダブルルーメンチューブの侵襲が比較的大きいことや,一側肺換気がもたらす術中および術後合併症の懸念から,一側肺換気を用いずに開胸手術の呼吸管理を行う試みが,細々とではあるものの以前から脈々と行われている。

 本稿では,まず従来から用いられているダブルルーメンチューブや一側肺換気の負の側面を紹介し,続いて代替手段としての両肺換気,高頻度ジェット換気,自発呼吸による呼吸管理について述べる。

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呼吸器手術は痛みの強い手術である。また,遷延性術後痛の発生頻度が,四肢切断術や乳房切除術とともに高い1)。呼吸器手術では,術後鎮痛を十分に行うことが術後呼吸器合併症の減少につながる。その術後鎮痛法のゴールドスタンダードは,硬膜外ブロックであった。しかし,胸部硬膜外穿刺は,腰部と比べて難易度が高く,合併症も,硬膜外血腫,神経損傷,気胸など重篤である。最近は,手術手技も低侵襲化してきた。そろそろ硬膜外ブロック頼みではない術後鎮痛法を考えてもよいのではないだろうか?

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呼吸器手術後の呼吸器合併症のなかで頻度が高いものは,肺炎,気管支断端廔,肺廔,膿胸,急性肺傷害(ALI)/急性呼吸促迫症候群(ARDS),間質性肺炎の増悪,がある。一般的な術後の呼吸器合併症の発生リスクは,喫煙(1.4~4.3倍),ASA-PSⅡ以上(1.7倍),手術時間3時間以上(1.6~5.2倍),胸部・上腹部手術(10~40%),により高まる。加えて,慢性閉塞性肺疾患(COPD)(2.7~4.7倍)などの基礎疾患も挙げられる。呼吸器手術後,特に肺切除術後の呼吸器合併症の予測因子として,年齢,術前6か月間の10%以上の体重減少,COPDの存在,術前の4単位以上の輸血,アルブミン低値,片麻痺,喫煙,息切れの存在,を挙げた報告がある1)

 一般的な手術においても,呼吸器手術においても,術後呼吸器合併症のリスク因子として,喫煙とCOPDが挙げられており,術前の禁煙や呼吸器ケアの重要性は数多く報告されている。

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麻酔科医のみならず,呼吸器外科医においてでさえ,開胸手術と胸腔鏡手術video-assisted thoracic surgery(VATS)の有用性については議論が分かれる。VATSの有用性を示すエビデンスは増えつつあるが,肺癌での適応は早期癌が中心であり,肺癌診療ガイドラインでも推奨ではなく,「行ってもよい」と表現されるにとどまっている。そのような状況で,「うちもda Vinciで肺切除術をやりたい」と言われたら…。「わざわざda Vinciでやらなくても」と毛嫌いする前に,まずは相手を知ることが大切である。

 本稿では,手術支援ロボットシステムの概要を紹介し,ロボット支援下胸腔鏡手術robotic VATS(RVATS)の特徴と,それに伴う麻酔管理上の注意点について述べる。

症例検討 肺高血圧症患者の麻酔

巻頭言 稲田 英一
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肺高血圧症には,原因不明の肺動脈性肺高血圧症(過去には原発性肺高血圧症と呼ばれていた)のほか,僧帽弁狭窄症や逆流症など弁膜症に伴うもの,心室中隔欠損症や心房中隔欠損症などの先天性心疾患に伴うもの,慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患に伴うもの,血栓などに伴うものなど,多彩な原因がある。肺動脈圧の上昇により,右心負荷が増加し,右心不全が起こり,さらに両心不全も起こり得る。

 肺高血圧症患者の麻酔管理においては,肺動脈圧上昇を避けなければならない。そのため,血行動態管理に加え,輸液管理,呼吸管理も重要である。周術期に肺動脈圧が上昇したら,その原因除去を行うとともに,肺動脈を低下させるために,ニトログリセリンやホスホジエステラーゼ(PDE)Ⅲ阻害薬,一酸化窒素(NO)などの薬物療法が必要になる場合もある。肺動脈性肺高血圧症治療には,プロスタグランジン(PG)I2,プロスタグランジン誘導体や,エンドセリン受容体拮抗薬,PDE5阻害薬などが用いられている。麻酔管理には,このような術前管理の知識も必要である。

 今回の特集に当たって思い出すのは,留学中に経験した,原発性肺高血圧症診断のためにほんの30分ほどの肺生検を行った後,数日で死亡した患者のことである。ほんのわずかな手術侵襲であっても,致死的になり得るという教訓であった。

 肺高血圧症患者の治療における綿密な術前評価と麻酔管理,慎重な術後管理の重要さを理解していただきたい。

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原発性肺高血圧症〔現在の特発性肺動脈性肺高血圧症idiopathic pulmonary arterial hypertension(IPAH)〕は,長らく原因不明の予後不良な疾患であったが,病態が解明されるに従って治療薬の開発も進み,肺高血圧症患者の予後と生活の質(QOL)は,以前に比較して改善してきている。

 本稿では,肺循環の生理,肺高血圧症の病態,およびその治療薬について概説する。

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症例

33歳の女性。身長160cm,体重49kg。子宮筋腫に対して子宮筋腫核出術が予定された。2年ほど前から,労作時呼吸困難,動悸などがあり,肺動脈性肺高血圧症pulmonary artery hypertension(PAH)と診断された。安静時の肺動脈圧は45/22mmHgであった。不正性器出血があり受診した。現在のヘモグロビン値は10.5g/dLである。ベラプロストとシルデナフィルを服用している。

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症例

33歳の女性。身長160cm,体重49kg。小児期から心室中隔欠損ventricular septal defect(VSD)を指摘されていたが心内修復術は行われず,定期的なフォローも自己判断で中止されていた。3年ほど前から労作時呼吸困難,動悸などがあり,肺動脈性肺高血圧症と診断された。また,1年前にEisenmenger症候群と診断された。心エコー図検査で両方向性短絡を認め,収縮期肺動脈圧は110mmHgであった。不正性器出血があり受診した。子宮頸癌の診断で,開腹単純子宮全摘術が施行されることとなった。現在のヘモグロビン値(Hb)は16.5g/dLである。ベラプロストとシルデナフィルを服用している。

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症例

58歳の女性。身長152cm,体重47kg。二十数年前から心雑音を指摘されていた。半年前から労作時の息切れが起きるようになった。血圧は110/70mmHg,脈拍は不整で80~110bpm。心電図で心房細動を認め,胸部X線写真では心胸郭比59%,心エコー図検査で僧帽弁狭窄兼逆流症と三尖弁逆流症を認めた。僧帽弁口面積は0.9cm2,左室駆出率(LVEF)は55%,推定右室圧は60mmHgであった。ヘモグロビン(Hb)値は10.5g/dL,血小板数は18万/mm3であった。現在,ワルファリン,ジゴキシン,ベラパミルを服用している。僧帽弁置換術と三尖弁形成術が予定された。

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症例

58歳の女性。身長152cm,体重47kg。二十数年前から心雑音を指摘されていた。半年前から労作時の息切れが起きるようになった。血圧は110/70mmHg,脈拍は不整で80~110bpm。心電図では心房細動を認め,胸部X線写真では心胸郭比59%,心エコー図検査で僧帽弁狭窄兼逆流症と三尖弁逆流症を認めた。僧帽弁口面積(MVA)は0.9cm2,左室駆出率(LVEF)は55%,推定右室圧は60mmHgであった。ヘモグロビン(Hb)値は10.5g/dL,血小板数は18万/mm3であった。現在,ワルファリン,ジゴキシン,ベラパミルを服用している。僧帽弁置換術と三尖弁形成術,メイズ手術が予定された。

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症例

75歳の男性。身長162cm,体重52kg。直腸癌に対して低位前方切除術が予定された。1日30本,50年間の喫煙歴があるが,この半年間は1日10本程度に減らし,1か月前から禁煙している。起床時の喀痰も多く,2階まで階段を上ると息切れがする。努力性肺活量は2400mL,1秒率は49%であった。20年来の高血圧があり,アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を服用している。心電図上,右心負荷と心房性期外収縮が認められる。胸部X線写真では,横隔膜の平坦化,肺血管影の減少,滴状心を認める。心エコー図検査では,左室肥大,右房と右室の拡大が認められ,推定肺動脈圧は50mmHgであった。

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連載

Editorial拝見
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Anesthesiology

Editorial:

Asai T, Isono S. Residual neuromuscular blockade after anesthesia:a possible cause of postoperative aspiration-induced pneumonia. Anesthesiology 2014;120:260-2.

Article:

Cedborg AI, Sundman E, Bodén K, et al. Pharyngeal function and breathing pattern during partial neuromuscular block in the elderly:effects on airway protection. Anesthesiology 2014;120:312-25.

■誤嚥性肺炎は高齢者の重大な死因である

手術自体は順調に終了しても,術後に誤嚥性肺炎を含む肺合併症を起こして死亡する高齢者は多い。高齢者では,咽頭機能が障害されており,それが誤嚥を起こす一つの要因となっている。さらに周術期は手術前後の絶飲食,気管挿管や胃管などの異物の存在,麻薬などを含む鎮痛薬などによる咽頭反射の抑制など,多くの要因により誤嚥を起こしやすくなる。最近はロクロニウムのような中短時間作用性の筋弛緩薬が使用されることがほとんどであるが,術後早期に筋弛緩作用の残存がしばしば認められ,それが特に高齢者(>60歳)では肺合併症の頻度を上昇させることが報告されている。また,高齢者では,ロクロニウムの作用が延長することも知られている。以前は四連反応(TOF)比が0.7以上あれば筋力は十分保たれるとされていたが,近年は0.9以上であることが推奨されている。

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皆様,こんばんは。深夜怪説の時間です。新年度が始まり,新たな気持ちでご活躍中の皆様のことはおかまいなしに,相変わらずどうでもいい話題を送り続けている「は へ ほのはなし」。今夜は,第8話「『八』に関する微視的巨視的諸考察」(2013年4月号)について怪説します。

 筆者「発砲微塵」氏は,「冬のロシアに攻め込むナポレオン軍勢の足音」のような編集部からの原稿請求に脅威をおぼえつつ,原稿執筆の苦しみを,当時ロシアに落下した隕石のような「降って湧いた災難」に例えながら第8話を執筆していたようです。

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今回は,日本麻酔科学会第61回学術集会が開かれる横浜です。横浜市立大学医学部麻酔科/生理学の宮崎智之先生に,知る人ぞ知る横浜の名店の数々をご紹介いただきます。麻酔科学会には是非LiSAをお供に!

連載 ドクトル・タカサキの遊々自適なワークライフ 糧になる余暇の使い方教えます:第17回

花見の山行 高崎 眞弓
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春はアケボノ

いよいよ春山シーズン到来。この時期は,九州の山に東京から山ガールがやってくる。東京周辺の山には,まだ雪が残るため,初心者の山ガールには手にあまる。それで,九州へ遠征してくるのだ。空港でレンタカーを調達して,山と温泉巡りのようだ。

 九州の山は,高山でも2000m程度である。ゴールデンウィークは春の先駆けで,花々が咲き始める。そんななかで,呼び物は「深山の女王」と称されるアケボノツツジ(写真1)である。落葉した枝先にピンクの大きな花をつける。それは,見事なものだ。葉が落ちて坊主になっていた山が,パッと明るくなる。

連載 Tomochen風独記

⑤医師免許 山本 知裕
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今回はドイツで臨床留学をするために必要な医師免許について紹介します。ただし,前回紹介したように,ドイツは連邦国家であり,州や地域ごとに法律が違い,おそらくは必要書類なども地域によって差があると思います。ですから今回の内容は,「私が現在,麻酔科医として勤務しているノルトライン・ヴェストファーレン州のケルン地域は」という限定付きです。

連載 昼下がりの薬膳 食・薬・医

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変わりゆく食事

「いったい何を食べればいいのでしょうか?」

患者さんからよく聞かれる質問です。この質問に,ある特定の食材を多く食べなさいとか,これを食べてはいけない,と答えると喜ばれるのはわかっているのですが,残念ながらそんなわかりやすい答えはなく,きまって「バランスのよい食事」という,ぼやけた答えとなります。それでは,「バランスのよい食事」とはどんな食事なのでしょうか。

 一般的に「バランスのよい食事」とは,主食,主菜,副菜がそろった食事のことです。ただし,われわれの食事は時代とともに変化しています。そこで,いつの時代の食事がよいのか調べた報告1)があります。各年代の食内容とPFCバランス(タンパク質,脂質,炭水化物の熱量構成比)を比較し(図1),各年代の食事を再現して,マウスに摂取させたところ,1975年の食事が最も内臓脂肪を蓄積しにくく,糖尿病のリスクが低いという結果でした。

連載 はへほのはなし:第21話

勝手に最終回? 痔 沿道
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まもなく新年度だというのに心踊ることすらなく,十年一日の如くこんな生活を続けていてよいのだろうかという疑問が,開花間近の桜の蕾のように膨らむ日々である。

連載 知識をいかに体系化するか

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前号の概説で「すでに英語の大波が日本にやってきているが,やがて英語の津波に襲われる」と書きました。その英語の津波の前兆の例をいろいろ挙げてみます。現在,日本語の使用法は十分に確立していて,不足していることや,危惧すべき問題は特別にないように見えます。でも心配な点を指摘してみます。

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from LiSA
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◆ウン十年も生きてくれば当然でしょうが,かつての記憶が曖昧すぎるように感じます。そして,「日記」を付ける習慣があったらよかったな,とも思います。

 もちろん,過去に付けていたこともあります。小学生の頃に書いていた日記を,少し大きくなってから読み返して,それなりな意義を感じ取っていましたから。何かのきっかけで記すようになり,ふとした理由から沙汰止みになり,日記帳は引き出しの奥に追いやられ,数年後に発掘されるということを,数回は繰り返しました。

 でも,現在まで続くことはなく,私には身につかない習慣である,との結論になりました。

◆先日あるテレビ番組で,「逆境力をつけるためのセミナー」なるものが紹介されていました。そこでは参加者に,過去の自分を振り返って,よかった時代と悪かった時代をグラフにせよ,という課題が与えられました。過去の逆境にどう向き合ったかが,逆境力をつけるヒントであるというのです。そして皆,それなりにグラフを描いて,その理由なども語るのです。

 はたして私は,あのグラフを描けるのか。大学入学や○○社に入社など,履歴書に記すような出来事はもちろん記憶していますが,「あの時,こんな状況に置かれて,その時,私は…」と語ることが何も出てこない自分に,「日記があれば…」と思ったのです。

◆優れた忘却力があるのだから,逆境力など不要かもしれません。でも,今の自分が,かつての経験や周辺環境によって作られたことは確かです。

 社会人1年目を過ごした某社では,新人には毎日,その日の仕事を通して考えたことなどを,「わたしの記録」(通称ワタキロ)と称する文書に記すことが課されました。上司に提出すると,時には叱られ,時には励まされるコメントを付されて,数日後に手元に戻ってきます。

 それらをまとめた“ワタキロファイル”は,今でも仕事で悶々としたときに読み返し,そこに記されている,未熟者だけど精一杯なかつての自分を確認します。自分を客観視する貴重な機会です。

◆最近巷で大注目な記録といえば,あるリケジョの「実験ノート」ですね。学生時代,理系の研究室に所属していた私に,非理系の者から問われます。「君は,あんな実験ノートをつけていたの?」

 正直にお答えしましょう。実験ノートはありましたが,単なる白地の大学ノートで,通し番号を付けて抜き挿しできないようにとか,他者からのチェックとサインなどというシステムは存在しませんでした。当然,ノートの書き方や管理方法といった講義を受けた覚えはありません。そして,研究室を後にするとき,実験を引き継いでくれる人にすべて渡したので,何冊になっていたかは覚えていません。もし私の実験が何か大発見の一端を担っていたとしたら…。間違いなく,ノート記載の不備を叱られていたことでしょう。

 でも,あそこには,私の確かな毎日が綴られていたはずで,どこかにあるのならば,読み返したいと思う今日このごろです。

基本情報

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LiSA
21巻5号 (2014年5月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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