看護管理 31巻5号 (2021年5月)

特集 心理的安全性 個々の強みを生かし,変化への適応力が高いチームをつくる

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COVID-19の感染拡大を受け,医療組織や教育機関では,先の見えない状況下で臨機応変な対応が求められています。

組織が変化への適応力を高めるためには,日常業務の中で気づいたことや疑問に思ったことなどについて,誰もが恐れることなく率直に発言できる「心理的に安全な環境」をチームや組織に生み出す必要があります。今後のリーダー/マネジャーの役割の1つと言えるでしょう。

本特集では,医療の質,組織の学習行動,パフォーマンスや創造性の質向上への効果が期待される「心理的安全性」について概念を整理します。また,自組織内における心理的安全性の存在を認識し,よりパフォーマンスを高められる組織づくりのために,病院や看護管理者の実践事例およびインタビューを通じて,解説・紹介します。

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筆者らは近年,研究室に所属する有志とともに,組織の学習行動,パフォーマンスに影響することが期待される「心理的安全性」がわが国の看護管理にもたらす効果や可能性に着目し,研究活動を続けてきた。本特集は,この研究活動が基盤となり実現したものである。

本稿では特集の企画趣旨を提示する。

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心理的安全性は,グループ内,特に職場での対人関係におけるリスクを取るとどうなるかについての認識を説明するものである。心理的安全性は,1960年代に組織学者によって初めて探求されたが,1990年代から現在に至るまで,再び人々の関心を集めている。組織に関する研究では,心理的安全性が,スピーキングアップ(率直な発言),チームワーク,チーム学習,組織学習を可能にする重要な要素であることが明らかにされた。多くの研究では,心理的安全性の本質を理解し,それに寄与する要因を特定し,個人,チーム,および組織に対するその意義を調べることに焦点を合わせている。本論文では,これらの研究をレビューし,将来の研究の方向性を提案する。

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筆者は経営学分野で着目されてきた心理的安全性を医療の現場で活用するために,ヘルスケア領域における心理的安全性の概念分析を行った。本稿では心理的安全性の定義と,それが医療現場にもたらすもの,そして心理的安全性に影響する要因について報告し,医療組織での活用の可能性について考察する。

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筆者は,国内のヘルスケア領域において心理的安全性の概念がどのように広がってきたかを探るため,簡易的な文献レビューを行った。本稿では,その調査結果を共有し,心理的安全性が看護管理分野にもたらしうる恩恵について考察する。

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特集テーマである「心理的安全性」によって,組織やチームとしての学習が進み,組織やチームのパフォーマンスを高めることが期待され,看護管理に活用できる可能性がある。

本稿では,特集の前半で示されている「心理的安全性」の理論や研究と,後半で示されている看護管理の現場における実践で観察される事象とをつなぐ内容を,企画監修者の緒方氏が提示する。

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市立札幌病院では「心理的安全性の高い職場づくり」を看護部目標達成のための重要成功要因(KFS)と捉え,各部署において具体的なアクションプランの立案と実行を進めている。本稿では,手術室におけるこれまでの取り組みと成果を共有し,「心理的安全性」に基づくマネジメントの実際を紹介する。特に「パートナーシップ・ナーシング・システム(PNS)マインド」の行動化が,心理的安全性の高い職場づくりの基盤になるという仮説のもと,その強化に取り組んだ実践である。

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国立国際医療研究センター病院では,より一層の経営への貢献を目指し看護部門の組織改善を進めている。その1つの方策として,看護師長が力を発揮できる環境を整えることを目的に,看護部長が積極的に看護師長との関係性構築に取り組んでいる。本稿では,看護師長の主体的学びと成長を目指した看護師長学習会と検討会での取り組みの概要と成果を共有し,心理的安全性がもたらす効果について報告する。

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入職1年目の看護師にとっての「心理的安全性」は,本人に尋ねない限り外部からは知ることができない。組織やチームがどのような特徴を持っていると,新人看護師は心理的に安全だと感じて意見や疑問,不安を伝えることができるのだろうか。本稿では,入職2年目の看護師7名を対象としたインタビューを通じて見えてきた,組織やチームにおける心理的安全性の特徴を紹介する。

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心理的安全性は,学習やイノベーションという成果をもたらすと考えられている。ここでは,所属組織の異なるトップマネジャーたちが,組織を超えて学習者としてつながり,学習者コミュニティを創り,どのような成果を収めたのか,また,心理的安全性がその活動の基盤としてどのように育まれたのかを,3名のメンバーへのインタビューを基に紐解く。

巻頭シリーズ 【石垣靖子氏 対話シリーズ】看護と倫理 尊厳を護るケアの担い手として・15

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前回まで約1年間にわたり,臨床倫理プロジェクトでご一緒させていただいた日本全国の看護管理者や研究者の皆さまとの対話を重ねました。

今回からはセカンドシリーズとして,主にがん看護/緩和ケアの臨床で看護管理者,あるいは実践家・教育者として,質の高い倫理的な看護・ケアを牽引されてきた皆さまにその哲学を伺っていきます。

初回は,鹿児島市の乳がん専門病院で副院長・総看護部長などを務め,院内や地域でアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の支援や普及を推進している江口恵子さんにお話を伺います。(石垣靖子)

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2020年6月,東京都看護協会のコーディネートのもと,永寿総合病院の4名の看護職員が,新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生したA病院の支援に入った。前例のない案件でさまざまな調整を要した。

また,他施設の看護職員による介入支援を契機に,派遣先のマネジメント上の課題が明らかになり,有事対応の基盤になるのは平時からの看護管理力であることも見えてきた。

ここでは,支援の全容とマネジメント上の課題を共有する。

連載 潜在能力を最大限に発揮する「学習する組織」 個人・チーム・組織が変わる戦略と実践・1【新連載】

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はじめに

 ご縁をいただき,「学習する組織」の連載を担当することになりました。私は,社会課題解決,戦略開発,組織開発,人財開発などの領域で,集団の協働や学習のプロセスを設計し,実施を支援することを仕事としています。

 主に,企業のCSR部門や社会・環境問題に関わるNPO,国際協力などの領域で実践を重ね,以前医薬品メーカーに勤めていた際には,多くの志ある看護師や医師の皆さんと一緒に仕事をさせていただきました。

 どうすれば,個々人のやりがいや成長を支えながら,チームや組織が社会のニーズに応え発展し続ける好循環を創り出せるのか? さまざまな状況,そして常に変化し続ける環境下において,1つの決まった答えはありませんが,組織で働く人たちが一緒に協働し,学習するプロセスを通じて,よりよい未来を創造していくことは可能です。

 この連載では,学習する組織の考え方,ツール,スキル,実践での慣行などをお伝えします。読者の皆さまが働く組織の相互発展を考えるヒントとなり,また,職場の慣行の改善や変容につなげていただけたら幸いです。

連載 ラーニング・エイド 大学院ドタバタ留学記 in NY・20

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 2020年に,アフリカ系アメリカ人を中心に,黒人に対する人種差別撤廃を訴える大規模なブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)運動が起こり,2021年はストップ・アジアン・ヘイト(Stop Asian Hate)も拡大した。アメリカでは新型コロナウイルス感染症を機にアジア系アメリカ人へのヘイトクライム(増悪犯罪)が深刻化している。3月18日に起こった,アジア系を含む8人が亡くなったアトランタの銃撃事件はアメリカ中を震撼させた。在ニューヨーク日本国総領事館からは毎日のように注意喚起のメールが届き,日本人が地下鉄で受けた嫌がらせや犯罪などを目にする度に心が痛み,人種差別問題が人ごとではないと感じる。

 人種差別問題は社会全体の問題として捉えられる傾向にあるが,実は「悪気のない無意識の差別」も存在する。今期履修している「グループダイナミクス」という授業で,日常にごくありふれた無意識下の差別的な行為を意味する「マイクロアグレッション(microaggression)」について習った。直訳すると「小さな攻撃」であり,あまりにも日常に溶け込みすぎて小さくて見えないという意味合いだ。

連載 新人看護師とプリセプターの視点から考えるよりよい新人看護師教育 誰もが働きやすい職場を目指すために・4

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新人看護師Eさんの事例

 今回は,新人看護師Eさん,プリセプターFさんの事例を取り上げます。Eさんは,入職時,救急部門(以下,救急)に配属になり,そのときのプリセプターがFさんです。しかしEさんは,1年目の2月に部署異動になりました。インタビューは,異動後に行いました。

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コーチングとは,「対話によって相手の自己実現や目標達成を手助けする」ことで,身に付ければ看護管理者も,さまざまな場面で活用できます。

本連載では,組織やマネジメント,倫理,キャリアなど看護管理者の悩みを取り上げ,アドラー心理学のエッセンスを取り入れながら,現場で活きるコーチングの実践をリアルに伝えていきます。

最終回となる第17回は,看護師長さんたちに自由(裁量)を与えたいと思っているにもかかわらず,提案や相談をうまくマネジメントできなかったという副看護部長の相談から,課題を分離して見守る勇気を持つこと,部下の考えを引き出すためのコーチングについて考えていきます。

連載 読んでおきたいビジネス書・2

『「経験学習」入門』 間杉 俊彦
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同じ経験をしても,そこから学ぶ人とそうではない人がいる

 本書は,特に部下育成に責任を持つ管理職の方にとっては必読ではないかと思います。

 成人における学びの70%は自分の仕事経験によってもたらされます。これは,優れたマネジャーの経験を長年調査してきた米国の研究所による知見です1)。ちなみに残る30%は,他者の観察・アドバイス(20%),読書・研修(10%)となります。圧倒的に「人は経験から学んで成長する」ということです。

連載 グローバル時代の医療英会話Lesson 外来や病棟で出会う外国人をサポートするために・4

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痛みの科学と文化

 生理学者のメルザックとウォールは,「痛みは個人個人で異なり,育った社会の文化的伝統によっても相違する」1)としています。痛みの実験的研究によっても,人間としての感覚閾値に民族的な差は認められないが,知覚閾値には民族差があり,痛みの許容閾値は民族差が顕著であるとしています。痛みを感じている人がその「痛み」にどのような意味付けをするのか,そしてそれをどのように他者に伝えるのか,ということは社会的文化的な影響が大きいとしています。

 日本では,転んで泣いている子どもに「男の子なんだから泣いちゃダメ」と言い聞かせたり,陣痛は母親になるための試練だとして痛みに耐えることを強いたりする文化があるように思います。男の子も女の子も転んだ時の痛みは同じはずです。米国では無痛分娩が主流ですし,韓国では選択的帝王切開が認められています。私たち日本人の「痛みを耐える」という文化から,異文化の人達の「痛み」に対する配慮が欠如していないかを意識する必要があります。

連載 ワークブック形式で学ぶ! ファシリテーションのための企画とプログラムデザイン・4

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異なる価値観を知る

 前回は,あなたが企画者として参加型の場に込めた「思い」の「背景」を明らかにしました。

 さまざまな背景が積み重なって,私たちには大事にしたいことやこだわりが生まれてきます。それを価値観と呼びましょう。1人ひとり経験は違いますから,当然価値観も1人ひとり異なります。もちろん,同じ看護の仕事を目指した人同士の価値観は似ている可能性が高いですが,全て一致することはありません。複数のメンバーで企画を進める際は,この価値観の違いが衝突の原因になることがあります。こだわりは他者には思い込みに見える場合もあるので,まずは自分がどんな価値観を持っているのかを確認しておくことはとても大事です。

連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・177

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 毎日世の中で起きていることを,ありのままに描いたり記述したりしても,みんながテレビや新聞で知っていることなのだから,人々は,「そんなことは先刻承知の事柄であって,興味を持たないだろう」と言うだろう。

 しかし,はたしてそうだろうか。

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自分を取り戻し明日へ向かうために読んでほしい1冊

 ダイバーシティの時代と言われて久しい。東京医療保健大学看護学科にも多様な教員が所属しているが,中でもちょっと変わったアプローチをされているなと思ったのが,精神看護学領域の秋山美紀先生だった。

 精神看護は,こころの健康問題や病を持った人がその人らしさを取り戻せるよう支援する,今の時代にはなくてはならない看護の形の1つであろう。その実,病や貧困,直近では新型コロナウイルス感染症の影響でうつ状態にある人々に向き合うのは並大抵のことではなく,重苦しいものを受け止めるタフな精神力が必要とされる,ように思っていた。

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次号予告・編集後記 小齋 石塚

基本情報

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看護管理
31巻5号 (2021年5月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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