看護管理 29巻10号 (2019年10月)

特集 ケアプロセスを変革する新たな質指標 ペイシェント・エクスペリエンス

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ペイシェント・エクスペリエンス(PX)は,患者中心の医療を実現するためにイギリスで生まれた考え方です。日本語では「患者経験価値」と定義されます。PXは,「患者が医療サービスを受ける中で経験するすべての事象」と定義できます。

従来の医療では,医療技術の高度さや確実性に加え,接遇等のサービスレベルを高め,病気を根治させることで患者満足度を向上させてきました。しかし医療の目的が病気の根治から患者のQOL実現へと移行していく時代の流れに伴い,これまでの患者満足度の考え方だけでは患者のニーズの多様化に応えることができなくなっています。

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本稿では患者経験価値(PX)を考えるときの前提条件となる「患者中心性」という概念が生まれた歴史的背景を,これまでの医療モデルや諸概念の変遷から振り返る。そして半世紀以上前に生まれた「患者中心性」がなぜ今注目されているのかを,現在の医療現場の状況から考察する。

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筆者は,本特集のテーマであるペイシェント・エクスペリエンス(PX)の国内での普及を目指して研究会を立ち上げ,医療者と協働してPXの実践・教育・研究活動を推進している。

本稿ではPXを知るための導入として,PXの定義やメリット,公的保険制度と連動している海外の状況,そして患者満足度とPXの違いについて概説する。

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日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会(PX研究会)は,ペイシェント・エクスペリエンス(PX;患者経験価値)を推進する日本初の団体として2016年に発足した。本稿では,同会発足から現在に至るまでの主な活動を紹介する。

また,PX研究会では,PXを質改善活動に活かすための基盤となる測定手法「PXサーベイ」の日本版の開発に取り組んでいる。このプロセスについても併せて紹介する。

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クオリティ・マネジメント(QM)活動が推奨される中,国立病院機構九州医療センターでは2014年に患者支援を統括するメディカルコーディネートセンターが新設され,活動の一環として2015年からPX(Patient eXperience;患者経験価値)サーベイを導入,実施している。

現在,「HCAHPS」と「日本版PXサーベイ」の2つのPXサーベイを定期実施して結果を分析・共有し,施設全体での医療サービス改善活動につなげている。本稿では同センターにおけるこれまでのPX実践を振り返るとともに,患者の潜在ニーズを引き出し患者中心の医療サービスを提供することを目指したPX推進の展望を述べる。

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前橋赤十字病院におけるペイシェント・エクスペリエンス(PX)の活用について,導入の背景や,これまでに実施した3回のサーベイの結果と分析を踏まえた改善の取り組みを報告する。またその経験を通じて感じた,PXが医療現場にもたらす価値,今後の課題や展望について述べる。

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日本ホスピタルアライアンス(NHA)は,265病院が加盟する病院の共同購入組織である。NHAは病院経営の支援も活動の大きな柱としている。2014年から,患者経験価値(PX)を測定する「PXアンケート」を加盟病院に提供し,その結果の集計・分析に基づき,各病院の強みと課題のフィードバックを行っている。本稿では,NHAの「PXアンケート」導入の目的・プロセスを共有するとともに,病院が加盟する団体がPXアンケートを実施することによって得られる,多施設間比較などの意義を示す。

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ペイシェント・エクスペリエンス(PX)を,医療機関の質改善に継続的につなげていくためには,その基盤となる人材が不可欠である。日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会(PX研究会)では,認定資格「ペイシェント・エクスペリエンス・エキスパート」を立ち上げ,その養成講座を開始している。本稿ではその概略を紹介するとともに,コラムとして参加者の声を併せて紹介する。

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本号の特集では,「患者経験価値」と訳されるペイシェント・エクスペリエンス(PX)の全体像を解説してきた。まとめとなるこの座談会では,先駆的にPXの学習・実践をする日本ペイシェント・エクスペリエンス研究会のメンバーと,日本におけるPX研究の第一人者で,同研究会の世話人でもある青木拓也氏が,わが国の医療機関におけるPX導入と活用の方策について検討する。青木氏にはPXのエビデンスも共有していただいた。

巻頭グラフ

「第23回日本看護管理学会学術集会」開催
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2019年8月23〜24日,第23回日本看護管理学会学術集会が,前田樹海・学術集会長(東京有明医療大学教授)のもと,新潟市の朱鷺メッセで開催されました。大会テーマは「看護管理の流儀—最適解への道程—」。日本の看護管理学における新たな理論確立を目指し,約4000名の参加者が看護管理の流儀を共有しました。学術集会の様子を写真で紹介します。

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はじめに

患者の主観的評価に関する米国の動向

 米国では,病院や医師が請求した額に対して保険から支払われる率が,患者による主観的評価によって左右されるようになってきている。このような動きは,高齢者を対象にした連邦政府管掌医療保険であるメディケアで先頭を切って導入され1),民間の保険会社も追従を検討している。

 この動きは外来診療にも取り入れられることが決まっているが,始発点はHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)2)を指標とした入院時のケアに対する評価であった。したがって,患者の主観的評価を向上させるための努力の中には,入院中のケアの質向上に日々献身している看護師が主導して行われているものが多い。

 患者の主観的評価は,英語ではペイシェント・エクスペリエンス(Patient Experience;PX)という言葉でまとめられている。これを日本語で単純に「患者経験」と訳してしまうと,患者としての経験があるかないかといった単純な一義的なものとして捉えられ,欧米でその言葉が本来意味するもっと包括的な意味合いが失われてしまうのではないかというおそれから,筆者は,PXの定義に関する白書の翻訳3)や,PX関連の講演(2015年のHealth 2.0 Japan,2019年の日本交流分析学会など)4,5)で,あえて「患者エクスペリエンス」という表現で日本に紹介している註)

連載 ラーニング・エイド 大学院ドタバタ留学記 in NY・1【新連載】

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 2019年9月,私の人生の第二章が始まる。恥ずかしながら25歳で初めて実家を出る。ニューヨークのマンハッタンで初めての一人暮らし。寮の窓から見える景色が日本と違うことに,ついハッとしてしまう。留学を志すことを決めてからこの1年半,仕事の傍らがむしゃらにこの目標だけを追い求めてきた自分にとってようやくたどり着いたスタート地点でもある。

 大学卒業後,日本の病院で看護師として3年4か月勤務した。学生から看護師を経て,またこの秋学生に戻る。アメリカ・ニューヨークのコロンビア大学教育大学院 (Teachers College, Columbia University)の修士課程に進学する。専攻はAdult Learning & Leadershipという,成人教育学に加えて組織学やリーダーシップ論を専門に学ぶ学科だ。

連載 看護の可視化 量と質の両面から適切な評価を考える・21

クリニカルラダー・2 秋山 智弥
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前回は,クリニカルラダー開発の前提となる「組織が求める人材」像の明確化について解説し,プロフェショナルとしての看護の3つの責任について紹介しました。今回は,それら3つの責任を果たすために求められる3つの能力について解説していきます。

連載 人生の終わりの日々のケアを訪ねて・21

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人生終わりの日々が,生後数日間,数か月,あるいはお腹の中で,になることもあります。

 年間で,妊娠満12週以降の死産は1万9608人(うち自然死産が約9247人,人口死産が約1万361人),22週〜生後7日の周産期死亡は3046人でした。約92万人の年間出生数の2.4%になります(2018年人口動態調査・概数)。

連載 看護×経済学 経済学で読み解く看護サービスと医療政策・10【最終回】

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本連載は経済学の視点から,看護サービスの特性や取引の規模,看護師の生産性や雇用環境,診療報酬や介護報酬が及ぼす影響などさまざまなデータを活用しながら解説します。

看護管理者はどうすれば,自施設の生産性を高め経営を成り立たせながら,同時に,消費者それぞれに寄り添ったサービスを提供することができるのか。第10回では,これまでの連載内容を振り返り,みんながよりよく生活できることを目指す経済学の視点から,看護管理者の役割について考察します。

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 以前から続く,ケアマネジャーの「医療のことは分かりません」問題。今回は,いま在宅ケアの現場で何が起きているかをご紹介したい。

 高齢者の最終段階は何を大切にしている誰に出会うかで決まるのではないかとさえ感じることがある。私自身も不幸な出会いにならぬよう,自分の価値観や倫理観,知識を磨く努力をしているが,万能ではなく得意不得意があることを痛感する。病院,在宅と見渡してみるとどの職種においても同じように高齢者にとって残念な出会いというものがある。どちらを選んでも負け戦のような経験をした記憶が新しく,今回はケアマネジャーについて焦点を当ててみたい。

連載 個人の進化と組織の活性化をもたらす ナラティヴプラクティス・6【最終回】

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 いよいよ連載は今回で幕を閉じます。本連載について,振り返ります。

 これまでの連載をご覧の通り,プログラムに参加した現職看護師の方々と,ナラティヴ看護実践グループ(紙野,福田,髙橋)が楽しそうです。看護師の世界がこんな風に活き活きと伝わってくることはそうざらにありません。看護場面で,患者さんと出会う局面は複雑で多様ですね。ナラティヴプラクティスで,看護の体験を語ることを通じて「私らしい看護」を発見する。これはどのようなプロセスなのでしょうか。森岡が振り返ります。

連載 マグネットジャーニー 聖路加国際病院のチャレンジ・9

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本連載では,聖路加国際病院看護部が「マグネットホスピタル認証」を取得するまでの道のりをマグネット・ジャーニー(マグネット認証への旅)として紹介していきます。「CNSと管理の会」伴走のもと走り続けるこの過程はチャレンジに満ちています。

第9回では,事例記述担当の副看護部長(当時)が参加した,世界中のナースが集まるマグネットカンファレンスでの学びや経験を紹介します。

連載 進化するチーム医療への旅 今求められるレジリエンスとは?・18

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この連載では,これからの医療現場に必要な「進化するチーム医療」「理想のチーム・組織」のありようについて,主にシステム思考や対話・ダイアローグを軸にしながら,読者の皆さんとともに追い求めていきます。

今回は,共感的コミュニケーションの3回目。「他者への要求の伝え方」について皆さんと一緒に考えていきたいと思います

連載 特定行為研修を修了した看護師としての実践・9

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特定行為を含む医療をより安全に提供するために

 川崎幸病院(以下,当院)は神奈川県川崎市南部および横浜市北部の急性期医療を担う地域の中核病院として365日24時間「断らない救急」を実践しています。病床数は326床(一般277床,ICU24床,HCU25床)。手術室は10室あり,年間手術件数は5366件(2018年度)に上ります。手術件数の増加とともに,麻酔科医の負担増加も問題となっており,タスクシフト・タスクシェアを織り交ぜた働き方が求められています。

 このような現状を踏まえ,私は「診療看護師(NP)としての麻酔科における補佐業務遂行の必要性」を重視し,術前診察から術中の麻酔管理・術後のケアに至るまで麻酔科医と協働することで,大学院NP養成課程を修了したNPならではのアドバンスドな看護を実践しています。

連載 看護師長のための介護保険の基礎知識・9

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 退院支援・在宅生活支援においては,退院後の在宅医療・介護サービスにどのようにつなぐかということだけでなく,住居などの物理的な環境に関する視点も重要です。今回はケーススタディをもとに解説します。

連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・159

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 私はかねてから,各地の知事室や市町村長室の前の廊下に,素晴らしい絵本200〜300冊を表紙が見えるように並べた本棚を置いて,職員や役員・社員が自由に借りて帰れるようにしたら,ギスギスしたこの国の状況が,ずいぶん変わるのではないかと呼びかけてきた。

 あるいは,自治体の長や企業のトップが,毎月広報誌紙や社内報に,「私がすすめる今月の絵本,この1冊」というコラムを載せるだけでもよかろう。

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目次

今月の新刊紹介

INFORMATION

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 小齋 石塚

基本情報

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看護管理
29巻10号 (2019年10月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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