特別記事
米国における患者エクスペリエンス向上に向けた取り組み—看護師主導の改善努力を中心に
近本 洋介
1
1Caring Accent
pp.936-940
発行日 2019年10月10日
Published Date 2019/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201411
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はじめに
患者の主観的評価に関する米国の動向
米国では,病院や医師が請求した額に対して保険から支払われる率が,患者による主観的評価によって左右されるようになってきている。このような動きは,高齢者を対象にした連邦政府管掌医療保険であるメディケアで先頭を切って導入され1),民間の保険会社も追従を検討している。
この動きは外来診療にも取り入れられることが決まっているが,始発点はHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)2)を指標とした入院時のケアに対する評価であった。したがって,患者の主観的評価を向上させるための努力の中には,入院中のケアの質向上に日々献身している看護師が主導して行われているものが多い。
患者の主観的評価は,英語ではペイシェント・エクスペリエンス(Patient Experience;PX)という言葉でまとめられている。これを日本語で単純に「患者経験」と訳してしまうと,患者としての経験があるかないかといった単純な一義的なものとして捉えられ,欧米でその言葉が本来意味するもっと包括的な意味合いが失われてしまうのではないかというおそれから,筆者は,PXの定義に関する白書の翻訳3)や,PX関連の講演(2015年のHealth 2.0 Japan,2019年の日本交流分析学会など)4,5)で,あえて「患者エクスペリエンス」という表現で日本に紹介している註)。
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