看護管理 29巻11号 (2019年11月)

特集 レジリエンス・エンジニアリング 「失敗事例」から「うまくいっていること」に着目するポジティブなこれからの医療安全

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新しい医療安全へのアプローチとして注目されている「レジリエンス・エンジニアリング」は,複雑な医療システムが変動し続ける環境において,限られたリソースの下で柔軟に対応できているメカニズムを解明し,またそのレジリエンス特性(柔軟性や適応力)を利用し,「うまくいくこと」を増やそうとするものである。

本特集では,レジリエンス・エンジニアリングの概念を紹介するとともに,多職種協働が進む医療現場での応用や,これからの医療安全のための組織づくりについて考察する。

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大阪大学医学部附属病院は2001年に,病院全体の医療の質を向上するための専門部署「クオリティマネジメント部」(当時)を設置。以来,同部は,院内およびわが国全体の患者安全への取り組みを牽引してきた。中島和江氏は,設置以来,同部副部長,2007年からは部長の役割を担い,2019年11月末に開催される第14回医療の質・安全学会学術集会で大会長を務める。

医療安全にとどまらず広く医療のあり方を変える概念として,近年,中島氏がリードしてきたのが,本特集のテーマである「レジリエンス・エンジニアリング」。特集のイントロダクションとして,その考え方についてお話を伺った。

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「安全」の概念が近年急速に拡大する中,ヘルスケア領域の安全対策の場面においても,従来の「事故が起こってからの対応」だけではカバーしきれない範囲を補完するために,より積極的で能動的な「Safety-Ⅱ」の概念が広まってきています。

本稿では,Safety-Ⅱを実現するための安全探求の方法論として提唱されているレジリエンス・エンジニアリングについて紹介します。

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レジリエンス・エンジニアリングという安全探求の方法論を臨床現場の職場改善につなげるためには,どのような調査や分析が必要でしょうか。本稿ではその具体的な手法について,ベルクの「レジリエントなヘルスケア研究における方法論的戦略:総合的レビュー」をもとに考察します。

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煩雑な日常業務の中での課題

 日頃の日常業務の中で,「なぜマニュアル通りに行っているのに間違いが起こるのだろう」「どうすればインシデント報告件数が減るのだろう」とお悩みになっている方も多いのではないでしょうか。「煩雑な業務の中で行っている確認作業は役に立っているのだろうか」「もっと効率のいい方法はないだろうか」とモヤモヤした気持ちで日々の業務を管理されている方も多いかと思います。

 筆者は医療安全管理者として急性期病院に勤務していたときに,滋慶医療科学大学院大学で医療安全管理学を学びました。

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本稿では,院内迅速対応システム(RRS)を例として,レジリエンス・エンジニアリングに基づくSafety-Ⅱの概念に沿った実践を紹介します。その上で,レジリエンス・エンジニアリングを医療現場で実践するために必要な要素を整理し,具現化するためのヒントをいくつか提案します。

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 院内迅速対応システム(Rapid Response System:RRS)とは,患者が心肺停止に至る前兆段階で専門チームが介入し心肺停止を防ぐシステムです。大阪市立総合医療センター(以下,当院)は病床数1063床,58診療科を有した急性期病院です。2018年度は,平均在院日数10.5日,病床稼働率83.4%,1日平均外来患者数1833人でした。RRSは2012年6月から試験的に運用開始,2013年に成人患者を対象に院内全体に導入しました。2017年4月からは小児患者も対象となりました。

 心停止に至る徴候を見分けるツールとしてバイタルサイン6項目に看護師の感じた「何か変」を加えた計7項目からなる「RRS起動基準」があり,どれか一項目でも該当すれば専門チームであるRRT(Rapid Response Team)にコールをすることになっています。RRSの起動には,まずは直接的な患者ケアを担う看護師が気づき,行動することが重要です。そのため,当院では病棟看護師の「気づき」の研修や,OJT(On the Job Training)を目的としたプロアクティブ(積極的)な病棟ラウンドを行ってきました。

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工学者である筆者は,病院や医療研究機関の安全や運営にさまざまな形で関わってきました。本稿では,筆者の経験にもとづき,医療安全,医療の質改善の進め方における米国と日本の違いや,米国の多職種医療安全チーム,今後の医療安全に求められる臨床工学・経営工学的な視点について紹介いたします。

巻頭 あしたのマネジメントを考えるヒント, このひとに聞く・10

川野泰周氏 川野 泰周
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いまここに集中し,心と身体を整える「マインドフルネス」について教えてください

「さまざまなストレスを抱える看護師の方々にこそ,マインドフルネスが必要です」。そう話すのは,精神科医であり禅宗の僧侶でもある川野泰周氏。仏教の瞑想法を起源とする「マインドフルネス」は,心身への多様な効果があることが科学的にも実証されており,グーグルやマイクロソフトなど,多くの企業で積極的に取り入れられています。川野氏にマインドフルネスについて,そして忙しい現場でも取り入れやすいマインドフルネス瞑想の実践方法について伺いました。

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ワクワクするアイデアを思いついたり,ずっとやってみたいことがあったとしても,実現に向けた行動に踏み出せないでいる人は少なくない。アイデアを実行することの大切さが分かっていても,行き詰まった時に話し相手となってくれる人や,自分の弱みや足りないところを支援してくれる仲間がいなければ,行動に移すことをためらってしまう。

アイデアや企画を発表し,共に活動する人を募ることができるような場があれば,すぐに動き出せるかもしれない。こうした中,注目されている場づくりの手法の1つが,オープン・スペース・テクノロジー(OST)である。書籍『OST実践ガイド』(英治出版)の著者,大川恒氏にOSTのエッセンスをご紹介いただく。

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はじめに

 滋賀医科大学医学部附属病院(以下,当院)は,612床の特定機能病院であり,県内唯一の大学病院です。また,滋賀医科大学は国立大学として初めて,特定行為に係る看護師の研修制度(以下,特定行為研修)の指定研修機関として2016年度から特定行為研修を開講し,2019年度で4期目となりました。

 地域の中核病院として,看護部は「あたたかい心で患者さんに満足していただける看護を提供します」を理念に,多様化する社会のニーズに対応できるリソースナースを多く育成しています。専門看護師は4分野7名,認定看護管理者は7名,認定看護師は12分野30名が院内外で活躍し,特定行為研修修了者も急性期や創傷,感染症といった領域で5名が活躍しています。また,2019年度は当院から6名の看護師が,特定行為研修を受講しています。

 筆者は,血液浄化部の看護師長として部署の管理を行いながら,感染管理認定看護師(Certified Nurse Infection Control:CNIC)の資格を持った特定行為研修修了者として,「療養上の世話」を主眼に置いた「診療の補助」である特定行為を上手く融合させながら看護ケアを提供するとともに,特定行為研修修了者が院内で有機的に活動できる基盤の構築を行っています。

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はじめに

臨床で看護研究を行う意義

 日本看護協会の倫理綱領に,「看護者は,より質の高い看護を行うために,看護実践,看護管理,看護教育,看護研究の望ましい基準を設定し,実施する」とあるように,看護研究はクリニカルラダーの1つとして,看護師育成に必要な知識と経験と位置づけている病院は増えています。しかしながら,院内看護研究を支援する看護管理者の苦悩が大きいことも事実です。

 近年,大学教員に看護研究の講師を依頼する病院も増えてきており,病院で行う看護研究の質も高まってきています。筆者らもこれまで外部講師として病院での看護研究を支援してきました。そこで本稿では院内看護研究の活性化に向け,外部講師が考える看護研究の位置付けや,研究活動を担当するスタッフ(以下,研究担当者)を支える看護管理者に期待する役割について考えていきたいと思います。

連載 「看護」の意味を見つめる 訪問看護の実践から・7

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変わり果てた幸一さんとの再会

 幸一さん(仮名,男性)とは8年前,妻の訪問看護をきっかけに出会った。幸一さんは当時70代。精神を患いながら,寝たきりになった妻の介護を1人で担っていた。訪問時は,妻が片時も夫のそばを離れなかったので,介護に伴う幸一さんの悩みを話題にすることはできなかった。そのため,妻と口論になったりして疲れがたまると,当時,幸一さんの家のすぐそばにあった私たちの事務所を訪ねてきた。看護師たちと少し話した後,いつも決まって「さあ,がんばるよ」と笑って帰る後ろ姿を見送った。

 5年後に妻が亡くなり,幸一さんは1人暮らしになった。しばらく元気がなかったが,少しずつ立ち直り,「さあ,これからは自由に自分の時間を楽しむぞ」と言って,外出するたびにお土産を買っては事務所に立ち寄り,元気な姿を見せてくれた。その後,事務所の移転があり,幸一さんと会うことはなくなった。

連載 ラーニング・エイド 大学院ドタバタ留学記 in NY・2

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 秋風とともに私の留学生活は幕を開けた。8月末に入寮し,9月の頭から連日のオリエンテーション,そして瞬く間に大学院の授業が始まった。新学期のキャンパスは学生で活気にあふれ,歩くだけで学びへのエネルギーを身体で感じることができる。アメリカは教員も学生も事務のスタッフも本当にエネルギッシュだ。図書館は深夜まで開いているし,ウエルカムパーティーは連日キャンパス内で開催されているし,金曜夜は勉強後に市内のフードフェスティバルへ直行という流れが定番。一体全体みんなのあふれんばかりのエネルギーはどこからやってくるのだろうと不思議に思う。

 私もニューヨークという新天地のすさまじいスピード感についていくために,毎日ドタバタ走り回っている。お味噌汁と白米を食べてほっと一息つく瞬間がたまらなく好きだ。

連載 看護の可視化 量と質の両面から適切な評価を考える・22

クリニカルラダー・3 秋山 智弥
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前回は,プロフェショナルとしての看護の3つの責任を果たすために求められる3つの能力について解説するとともに,段階に応じた3つの評価票を紹介しました。今回は,ラダーごとの看護師の発達段階やチーム内での役割,学ぶべき事柄などを解説しながら,クリニカルラダーの認定と申請のルールについて紹介していきます。

連載 マグネットジャーニー 聖路加国際病院のチャレンジ・10

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本連載では,聖路加国際病院看護部が「マグネットホスピタル認証」を取得するまでの道のりをマグネット・ジャーニー(マグネット認証への旅)として紹介していきます。「CNSと管理の会」伴走のもと走り続けるこの過程はチャレンジに満ちています。

第10回では,機関誌の作成や「Nursing Award」の開催など,聖路加国際病院のスタッフによるマグネット認証の推進活動について紹介する。

連載 進化するチーム医療への旅 今求められるレジリエンスとは?・19

セルフ・コンパッション 清水 広久
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この連載では,これからの医療現場に必要な「進化するチーム医療」「理想のチーム・組織」のありようについて,主にシステム思考や対話・ダイアローグを軸にしながら,読者の皆さんとともに追い求めていきます。

今回は,個人や組織が成長・進化していく上で,近年注目されている「セルフ・コンパッション」について考えていきます。

連載 特定行為研修を修了した看護師としての実践・10

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神経難病患者がその人らしい生活を送るための支援

 公益財団法人脳血管研究所附属美原記念病院(以下,当院)は脳・神経疾患を専門とする189床のケアミックス型の病院です。筆者は現在,障害者施設等一般病棟(以下,当病棟)に勤務し,看護師長そして難病看護師(日本難病看護学会認定)として日々の業務に当たっています。

 当病棟は,神経難病の患者が8割以上を占め,在宅支援を目的としたレスパイトケア入院を積極的に行っています。当病棟の看護師に求められる役割は,神経難病患者が住み慣れた家で安心して過ごすための支援を行うことです。そのためには,神経難病に関する十分な知識と技術を持ち,その人らしい生活の営みができるように提供することが必要です。神経難病患者は病状の進行が個人により異なりますが,看護師がそれにいち早く気づき,その人に合った適切なケア,つまり予測のケアの提供ができるか否かで,神経難病患者の人生に大きな影響を与えると思っています。

連載 看護師長のための介護保険の基礎知識・10

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 要介護高齢者は在宅や介護施設で生活する中で入退院を繰り返すケースも少なくありません。今回はそうした患者の退院支援についてケーススタディをもとに解説します。

連載 人生の終わりの日々のケアを訪ねて・22

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幼い子どもの闘病中や万一亡くなった後には,医療者も家族も,子どもの兄弟姉妹にまでは目が届かなくなる場面があります。では幼い子どもたち自身は,どんな思いで,どう過ごしているのでしょうか?

連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・160

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 自然界に生きる動物や鳥などの生態を長期にわたって観察し,映像で記録したテレビ番組が放送されると,つい見てしまう。そういう番組はたいてい午前1時とか3時と言った時間帯に放送されるのだが,とくに感動するのは,小動物や小鳥たちが生まれたばかりのわが子を,獰猛な外敵から守るための工夫のこらし方だ。たとえば,北米大陸では,ある小鳥はなぜか大きなハクトウワシが高木の上から睨みをきかす間近な空間のなかの枝に巣を作り,ひなを育てるのだ。ハクトウワシに襲われるのではないかと思うが,そうではない。

 専門の研究者が調査したところ,その小鳥はあまりに小さいので,ハクトウワシの餌にはならない。つまり襲われないのだ。ハクトウワシが餌にするのは,大きな鳥やリス,イタチなどの小動物だ。高木のてっぺんからそういう生き物たちをねらっているので,生き物たちは近づかない。小さな小鳥にとっては,安全な空間になるのだ。

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専門看護師を活用したいと思っている看護管理者に

CNSとの出会い

 20年程前のことになりますが,当時所属していた組織で初めての専門看護師(以下,CNS)が誕生した時には,特に深い感慨を覚えました。

 私は病棟看護師長として,そのCNSと仕事を共にしました。複雑で介入が困難な患者を前に,現場の看護師の持てる力を十分に発揮させるとともに,医師や多職種も上手に巻き込み,「心地よいチーム活動と患者ケア」を実現したことに,大きな感銘を受けたものです。患者や家族が抱える問題を,疾患とその背後にある精神的苦痛,不安や葛藤をさまざまな角度から捉えて判断する力と広い視野を持ち,自らの実践と適切な介入をしていたことは言うまでもありません。

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今月の新刊紹介

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 石塚 小齋

基本情報

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看護管理
29巻11号 (2019年11月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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