看護管理 20巻5号 (2010年5月)

特集 キャリアビジョンを描ける組織づくり

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 「キャリアミスト」の言葉に表わされるように,組織内のミドルキャリア,特にミドルマネジャーが将来の展望を描けなくなることがある。

 一般企業でも,プレイングマネジャーが増加し,業務・心理的な負担感を増しているケースが少なくない。看護現場でも医療の高度化,業務の煩雑化に伴い,負担は増加する一方。十分なモチベーションをもてないまま,看護師長・主任になった人も少なくないかもしれない。

 各施設の看護を支える中間管理職,中堅看護師が,キャリアビジョンを描き続けられる組織となるために,どのような取り組みがいま,求められているのか。看護部の現任教育や企業内人材育成にかかわる各専門家の立場から,提言をいただいた。

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 2009年,組織内公募による選挙を経て,北里大学病院の看護部長に就任した別府千恵氏。同院は早くからクリニカルラダーシステムを導入,活発な看護研究も院内文化として根付くなど,質の高い人材育成,継続教育を行なう組織として評価が高い。

 そのような同院で,別府氏は臨床当時からリーダーシップ,マネジメントや人材育成に一貫して関心をもち,キャリアを重ねてきた。同氏に,能力を開発し,個々のスタッフがキャリアビジョンを描ける組織のありかたについて話を伺った。

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 慢性的な人員不足と過密業務に追われる看護職。なかでも一般にミドルキャリアといわれる中堅看護師は施設での主戦力として,臨床での日常業務のみならず新人教育など数々の中堅としての役割を果たしていかなければいけない。

 しかしながらそうした激務をこなし,ライフイベントにも直面していくなかで,ふとキャリアミストに陥るときが生じる。「私はこれからどこへ向かえばよいのか」と迷う中堅看護師は多い。

 そこで今回は実際にキャリアミストを体験し,大学での教育・研究キャリアをスタートさせた奥裕美氏をインタビュアに迎え,組織改革や人材育成コンサルタントであり,ベストセラー『不機嫌な職場』(講談社)の著者である高橋克徳氏にお話を聞いた。成長し続ける生産性の高い職場はあたたかい感情であふれているという。トップダウン型の研修の前に病棟でもできる感情マネジメントとは?

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 いつの時代も人手不足が課題に挙げられる看護現場。しかし,日本看護協会の調査(2008年 病院における看護職員需給状況等調査)によれば,こうした状況を改善しようとする意図もあってか,近年,「短時間正職員制度」を導入している病院施設が17.7%,導入を検討している施設が18.9%に達するなど,職員の労働に対する価値観・ニーズの多様化を踏まえた人事施策を構築・運用する病院組織が増えつつある。フレックスタイム制の導入や中途採用者の積極的な採用もその一例だろう。

 一般企業でも,M&Aによるグループ企業の増加,事業展開のグローバル化などを背景に,文化的背景の多様な者同士が同じ組織の中で働くといった現象は決して特殊なことではなくなった。わが国の労働力の構造に目を転ずれば,非正規労働者の数が2009年10~12月で1760万人を数え(総務省「労働力調査」),雇用者(役員を除く)の約34%を占めるなど,働き方に対する多様なニーズをもった従業員が増加している。

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 看護職員が,キャリアビジョンを描ける組織であるために,どのような支援が必要か。国内外66施設,約1万人の看護職員が就労する徳洲会グループの看護部トップ,遊佐千鶴氏に,スタッフ,マネジメントクラス双方への教育支援システムを中心に話を伺った。

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 日本有数の「藤の街」として知られる埼玉県春日部市。最近では漫画『クレヨンしんちゃん』の故郷として知られ,名誉市民として登録もされている。人口は約24万人。これまで東京都のベッドタウンとして順調な人口増にも対応し,市民の安心のよりどころとなっていた春日部市立病院だが,全国的な課題となっている医師不足の影響を受け,産科・小児科の一時休止を余儀なくされた。しかし2006(平成18)年に地方公営企業法における全部適用を行ない,小谷昭夫病院事業管理者のもと院内改革を行なうと,産科・小児科の復活に成功。石川市長の強力なバックアップもあり,病院の再整備計画とともにV字回復へ踏み出した。

連載 スタッフの倫理的感受性を高める ナースマネジャーがともに考える臨床倫理――臨床看護師が直面する倫理的ジレンマを紐解く・5

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意思決定能力のない患者とは

 医療者は,侵襲を伴う医療を行なうにあたって,原則として患者の承諾を得なければならない。この承諾は,患者自身の自己決定である。患者に意思決定能力があれば,患者の自律を尊重するという倫理原則に則って,治療の方針を決定すればよいが,患者が幼い子どもである場合や精神疾患患者,意識不明の患者のように,本人が意思決定することが難しい場合には,決定を他者に依存しなければならない1)。そして,特にその決定が患者の生死にかかわる重大なものである場合,医療者と代理意思決定者が適切なプロセスを経て,慎重に決断を下す必要がある。以下の厚生労働省の終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインを参照されたい2)

 患者の意思確認ができない場合には,次のような手順により,医療・ケアチームの中で慎重な判断を行なう必要がある。

連載 サービス・イノベーションの経営学・5

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 大和言葉には「サービス」に含意される意味を適切に紡ぎだして表出する妥当な言葉がないので,だれもが「サービス」という言葉を日常用語として使っています。しかしながら医療がサービスとして公式に位置づけられるようになってからまだ20年もたっていません。影響力のある公の文書で医療がサービスとして記述されたのは平成7(1995)年版厚生白書です。このなかでは「医療は,人が生まれるときから死ぬときまで,国民一人ひとりに密接に関連するサービス」であると記述され,「重要なサービスである医療」と記されています。

 「日本では医療をサービスだというと,けげんな顔をする人が多い。とくに医療側のひとだと滅相もないと不満顔になる場合の方が多いであろう」註1)という中川の言辞を引いて,井部は,「医療者が,医療はサービス業であるという認識が遅れた理由は,『サービス』の意味づけや内容に対する誤解が背景要因にある」註2)としています。本論は,井部の問題認識を共有したうえで誤解や誤認を正したうえでサービス・イノベーションを論じ,もってその方向性を拡張することとします。

連載 ヒトを育てる秘訣・1【新連載】

「リセットする」 渋谷 美香
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4月から新採用者を迎えて指導をされている指導者のみなさん!

お疲れ様でございます。ヒトを指導する・育てる仕事はいかがですか?

「一人前にしなきゃ」と張り切って指導しても,思うように進まないこともありますよね。

指導者になると最初は「指導者としてちゃんと仕事をする」という役割を果たそうと肩に力が入りがちですが,5月の風を感じたら,そろそろ「自分らしい看護と指導」「こうしたら新採用者は理解できるかも」という,自分だからできる指導にリセットしませんか?

連載 王様の耳はパンの耳――この国の看護のゆくえ・12

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 看護の教育年限を3年から4年へと延長して基礎教育の大学化をはかることは,日本看護協会が近年で最も力を入れている政策的課題といってもよいでしょう。2009(平成21)年は,看護師国家試験の受験資格に看護系大学の卒業が明記されるという保助看法の一部改正が行なわれた年でしたから,なおさら次の目標として,年限延長は重要になります。その背景には,看護教育内容の多様化・高度化に相まって,十分な実習時間を確保できないという事情もあります。結果的に,安全・安心な質の高い看護の提供ができなくなるという不安につながり,大きな負担となっています。そのうえ,この不安は離職率を下げられない大きな原因のひとつにもなっています。

 つまり,基礎教育年限延長の議論は,看護師にとっても,患者にとっても,ひいては医療界全体にも大きなメリットがあるのです。少なくとも,薬剤師の教育年限は延長され,医師の臨床研修も必修化されている現状で看護だけが教育年限の延長を見送られる理由はないはずです。では,なぜ教育年限の延長が,簡単に実現しないのでしょうか。

連載 スクラブナース5年生・60

いいかげんな社会 鈴木 美穂
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 日本で紹介されているニューヨークからは,世界の先を行く洗練された街,あるいは大きな拳銃をぶらさげた警察官が街中に立っている治安の悪い街として,どちらにしろ“厳しい”イメージが伝わってくる。しかし,実際は全くルーズな社会である。

 最近,私の堪忍袋の緒が切れる出来事が相次いでいる。まずは実習先の病院で実習前の健康診断を受けに行ったときのこと。そもそも民間病院なら提出済みの健康診断書で充分で,病院ごとの健診の必要はないのだが,公営病院では外部の施設からの健康診断書をそのまま採用せず,病院内の保健室(または特定の委託機関)の医師が診察して許可を出さなければ就業(実習)できないことになっている。そのため改めてその病院の保健室で健診を受けなければならなかったのだ。

連載 看護と医療政策を考えるヒント・14

診療報酬改定の総括 松村 啓史
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 2010(平成22)年度の診療報酬は全体で0.19%アップ,本体で1.55%アップと10年ぶりのプラス改定となりました。振り返るとプラス改定にいたるまでの中医協での道のりは険しく,紛糾の場面も多々ありました。

 この改定の議論は民主党政権後に中医協委員が大幅に入れ替わったことからスタートしました。この背後にあるのは,医療崩壊防止という考えです。

連載 やじうま宮子の看護管理な日々・50

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「息子の死に方は知りたくない!」と父は叫んだ

 熱戦がくり広げられたバンクーバー五輪。ウィンタースポーツにあまり関心がない私も,ついついテレビに釘付けになりました。さまざまな場面が思い浮かぶ17日間。私の記憶に最も残ったのは,リュージュ男子1人乗りの公式練習でグルジアの男性選手が亡くなった開会前日の事故でした。

 その死の報に接した父親は,テレビの取材に対して,大きな掌で顔を覆い,嘆き悲しみながら,こう言ったのです。「事故の場面など見たくない。息子の死に方なんて知りたくない。息子は死んだ。それだけで十分だ!」。彼は息子の死の瞬間を写した映像を決して見ることはない,とも断言しています。

連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・55

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 バオバブという木を知っていますか?などと聞いたら,逆に,いまさら何を言ってるのと,けげんな顔をされるかもしれない。

 最近,バオバブをテーマにした映画が上映されたり,著名な写真家によるバオバブの写真集が注目されたりして,若い人たちの間では,バオバブが人気を集めるようになってきたからだ。

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 「新人看護職員研修ガイドライン」にポートフォリオの活用が盛り込まれましたが,ポートフォリオは新人に対してだけではなく,ミドルキャリアに対してなど,あらゆる対象者がさらに能力を伸展させるために活用することが可能です。ポートフォリオをコミュニケーションツールに,双方向性の面接,目標管理を行なうことで,スタッフのキャリアの質を高め,組織のさらなる活性化をめざしましょう。中堅看護職員や看護管理者に対するポートフォリオ研修を実施されている鈴木敏恵先生に,本号から3回にわたり,「クオリティ・オブ・キャリアを高めるポートフォリオ」と題し,ご提言をいただきます。

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臨床現場で起きている暴力

出口 近年,臨床現場での暴力――患者-医療者間だけでなく医療者同士でも――がスタッフへの大きなストレスとなっていることが明らかにされてきています。しかしながら臨床現場で起きている暴力の実態はいまだ正確に把握できておらず,これといった対処策もないのが現状です。いま現場では何が起きているのでしょうか。

 本日は,暴力に関する研究の第一人者である三木明子先生と臨床現場でさまざまな暴力に接し,対応してきた川谷弘子さんと有山ちあきさんに参加していただきました。わが国の臨床現場における暴力の問題に関して,最新の知見と現場の実態を交えつつ,これからの暴力対策の課題について話していきたいと思います。

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 あなたの病院で死亡事故が起きたとき,原因を究め,再発を防止するにはどうしたらいいか。昨年暮れ,劇「院内医療事故調査委員会」注1)が東京で上演された。医師と弁護士らが一緒に脚本を練り,舞台に立つ画期的な試みである。実際に病院で働く医師,安全管理者,医療訴訟に詳しい弁護士らの迫真の演技が好評を博した。医療安全への取り組みは医療者の責務である。劇のあらすじを追いながら社会が期待する院内医療事故調査委員会のあり方を描いてみた。

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 近年,医療安全を取り巻く状況は国内外で変化し,医療安全推進,および医療の質向上の重要性は増している。日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業第17回報告書(平成21年6月24日)をみても,多種多様の報告がなされており,特に患者取り違えに関連した医療事故の発生件数は,平成16年以降,年々増加傾向にあることも報告されている1)。今後,さらに医療安全を推進するためには,自施設における医療安全管理体制の現状を評価し,進むべき方向性を明確にすることがトップマネジメントに求められている。

 WHOは医療安全推進という観点から,2007(平成19)年5月,“Nine Patient Safety Solutions”(以下,NPSS)2)として医療安全推進における9つの課題と安全対策を提唱した(図1)。ここには,国際的な流れに沿って,有害事象の発生を減少するために,課題と必要な安全対策,リスク低減の介入結果や実施における障壁,および実施後の展望などに関して簡潔かつ具体的に記載されている。そこで,今回改めて,インシデント・アクシデント事例の再発防止と未然防止の観点から,公表後約2年を経過し,世界中で実施可能とされているWHOが提唱する9つの医療安全対策を振り返り,今後,取り組むべき医療安全推進対策への活用に関して述べる。

短期連載 ナースのストレスマネジメント・1【新連載】

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●看護職のストレスと離職の現状

 看護師は,医療職の中でも職務ストレス度が高い職種の代表選手です。それは,患者・家族だけでなく,医療チーム内の幅広い人間関係への対応が求められるからです。看護師は看護としてのコミュニケーション技術は学びますが,職場におけるコミュニケーション技術までは学んではいないのですから,それは大変な仕事といえます。

 また,看護師は他の職種に比べて離職率の高い職種です。日本看護協会調査による2005~2009年度の離職率をみても,全国平均で約12%という現状があります。さらに,新人看護師の離職率も全国平均で依然約9%と,新卒者の約1割が1年未満の早期離職に至っています。

書評

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 著者である秋山正子さんと私との出会いは,かれこれ16年以上前まで遡る。京都府看護協会の訪問看護養成研修で,彼女は在宅ホスピスの講義を担当し,一方の私は訪問看護師を始めて3年目頃で,研修生として参加していた。その後,私は秋山さんをはじめ,すでに活躍していた宮崎和加子さん,山崎摩耶さんたちを目標に,京都での訪問看護に看護師人生をかけようと決意し,日々訪問看護を重ねていた。そうしているうちに,地域で利用者をただ待つのではなく,病院から在宅へ移行させる医療・看護をマネジメントすることの重要性に気がついた。

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目標設定に悩める管理者に最適の一冊

 本書を手にとって目に飛び込んできたタイトル「成果のみえる病棟目標の立て方」。欲していたものが,ここに書かれてあるかもしれない,そんな期待感を抱かせてくれた。管理に関する基礎的知識にはじまり,目標設定に必要な考え方などがQ&Aで,わかりやすく解説されている。年度初めに頭を悩ませていた目標設定で足りなかったのは詳細な現状分析だと気づかされた。

 現状分析に用いられるツールにSWOT分析がある。強み・弱み・機会・脅威の4視点から考える方法である。難しく感じていたSWOT分析であったのに,本書を読み進めていくうちに,できるかもしれないという思いになった。挿絵やフローチャート式に示されている具体例を見ると,難しい言葉は使わず,まず思いつくまま書いてみようという気になる。目標設定に悩んでいる管理職には,ありがたい教本だ。

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 人工呼吸器にまつわる医療事故は,患者の死に直結し,たとえ死に至らなくても重大な傷害を引き起こす。人工呼吸器に関連した医療現場の状況は複雑で,人工呼吸器の種類の多様さ,それゆえの取り扱い方法の相違,換気モードや設定項目の名称の違いなどで混乱を来している。人工呼吸器を取り扱う中心となるのは看護師であるが,使用頻度の低い病棟の看護師は取り扱いの複雑さや不慣れから,特に敬遠しがちになる。頻繁に使用するICUの看護師でも混乱したり,間違ったケア方法がそのまま継続されたりとさまざまな問題を抱えているのが現状である。看護師教育の必要性も認識はされており,さまざまな文献もあるが,自施設で使用している人工呼吸器と違うモデルで書かれていると理解しづらくなったり,実際に使用するときに役に立たなかったりする。

基本情報

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看護管理
20巻5号 (2010年5月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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