看護管理 20巻4号 (2010年4月)

特集 よりよい現任教育システムの構築をめざして

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 法改正により,2010年度から新人看護職員に対する臨床研修制度が努力義務化された。各地域の病院が自施設の医療機能に応じて,しっかりとした実践能力をもつ新人看護職員の育成を系統立てて行なう必要がある。

 外部の教育リソースなども活用しながら,各地域の病院が連携し,今後の日本を支える新人看護職員たちの育成をめざすことで,看護の質が向上し,学習者・指導者の教育・評価の方法論や実践知が共有,ブラッシュアップされるであろう。

 本号では,新人医療者教育に携わる専門家,施設から提言をいただいた。

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坂本 2009(平成21)年7月,「保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が可決・成立し,2010(平成22)年度から新たに業務に従事する看護職員に対する臨床研修が努力義務化されます。病院などの開設者には研修の実施および研修受講機会を確保することが求められました。

 この努力義務化の背景には,医療提供体制の枠組みが急速に変化し,特に医療の高度専門化が進む急性期病院においては,卒後すぐに即戦力として現場に送りこまれた新人看護職員が基礎教育で身につけた技術と現場で求められる技術のギャップに,リアリティショックを感じ,バーンアウト。入職初年度の看護師の離職率が全国平均で9.2%に達するという現象がありました。

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新しい看護師の成長へ

 知識創造型社会はすでに到来しています。ケータイをはじめとする情報環境,グローバル化,高齢化,就労観や価値観も多様化しています。社会も患者もその健康観もこれまでとは違います。医療体制や看護師に求められるものも変化を余儀なくされます。当然,現任教育のあり方も新しい考え方が求められます。どうこれからの現任教育,キャリア設計を考えたらいいでしょうか。ここにクオリティ・オブ・キャリア(以下,QOC)という考え方とその実践を提唱したいと思います。

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こころとからだを高度・総合的に診療する

 小児の専門病院として機能してきた清瀬小児病院,八王子小児病院,小児精神の専門病院として機能してきた梅ヶ丘病院の東京都立の3病院が,小児総合医療センターとして再編され,2010(平成22)年3月1日に561床の新病院として,府中市武蔵台の多摩メディカルキャンパス内にオープンした。同キャンパス内には,多摩地域の総合的な医療機関,都立府中病院が隣接地から全面的に改築され,多摩総合医療センターとして同日オープンした。

 両センターが連携し,周産期医療を充実させるほか,小児総合医療センターには小児専用のERを開設。数少ない小児救急専門医を配置し,小児3次救急にも対応するほか,「こころ」と「からだ」を高度専門的かつ総合的に診療する体制を整えた。

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■当院の概要

 当院は,1909(明治42)年に東京帝国大学第二医院跡に,同大学協力のもと開設された診療科25科,482床(ICU7床,CICU6床,HCU21床)の施設です。昨年秋には入院棟が改築完成しました。今秋には新外来棟がオープンします。創立の経緯から,中規模病院ながら循環器,がん治療などにおいて高度な医療を提供しています。初期臨床研修指定病院であり,また看護部でも高度な医療提供を支える認定看護師,呼吸療法士や糖尿病療養指導士の認定をもつ看護師が活動しており,日々学びを重ねられる環境が整っていると思います。

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 保健師助産師看護師法などの一部改正により努力義務化された新人看護職員研修。先ごろ発表された厚生労働省による新人看護職員研修ガイドラインでは,研修評価の項目に新人の成長記録や他者へ経験を伝えるツールとして「研修手帳(研修ファイル)の活用」が明記され,そのなかには「ポートフォリオやパーソナルファイルと呼ばれる研修手帳の利用が効果的」という一文が記されている。

 そこで2007(平成19)年より新人看護職員研修にポートフォリオを導入し,成果を挙げている三井記念病院(東京都千代田区)の年度末研修を取材した。入職してほぼ1年が経過した新人看護職員たちはどのような表情をみせてくれたのか。その一端をレポートする。

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 2004(平成16)年3月に厚生労働省が発表した「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会報告書」から5年。医療機関の機能や規模にかかわらず新人看護職員を迎えるすべての医療機関で新人看護職員研修を実施できるよう,具体的な運用が加筆された『新人看護職員研修ガイドライン』(2009 厚労省)が発表されました。

 しかし,教育担当者やプリセプター対象の研修会場で耳にするのは,「知らない」「できない」「関係ない」の3拍子なのです。彼らは無責任に発言しているのでは決してなく,「報告書の存在自体を知らない」「教育が大切であることは理解している。しかし,ただでさえ多忙な現状で,新人看護職員臨床研修をどのようにすればよいのかわからない」といった施設内教育に関する課題を感じながら,それを現場で解決できないもどかしさを感じています。このような現状の中,新人看護職員臨床研修という新たな課題はどのような影響を現場に及ぼすのでしょうか。

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技術モデルから離れて

 研修とは技術を身に付けることではない。技術は学ぶべきことの一要素に過ぎない。その技術を適正に適用するアプローチ法も,同様に重要である。さらには,そもそも何が適正なのかを判断できるような基盤が必要である。その3つがかみ合って,初めてプロの仕事が可能となる。

 技術のみを学んだものがどんな恐ろしいことをするのか,1つの例を見てみよう。ナチスの収容所で働く産婦人科医は,技術的には当時の最高の技術で,収容されたユダヤ人妊婦から子どもを安全にとりあげた。しかし,その妊婦と新生児は,そのあとガス室へ送られて殺されてしまうのである。

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はじめに

 より多くの看護師を配置する,「7対1入院基本料」が新設されて4年。2010(平成22)年度の診療報酬改定を迎え,専門看護師や認定看護師といった専門的な知識や技術,経験などをもつ看護師の配置をどこまで診療報酬点数上に評価できるか,期待されるところである。

 しかしその前に,2006(平成18)年度の7対1入院基本料の導入後に表面化した,「看護師不足」を通じて,看護師の雇用条件はどのように変化し,看護師の働きはどう評価されるようになったのか,検証する必要があるだろう。

 本稿は,2006年度の診療報酬改定以後まで具体的な数値を観察できる「給与」に焦点を当て,看護師の働きは給与の面から評価されるようになったのか,分析するものである。

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 これまで,医療安全推進のためにさまざまな施策が実施されてきたが,なかでも医療安全管理者配置の義務化や診療報酬上の医療安全加算などにより,専従,専任・兼任の別はあるが,広く医療機関に医療安全管理者の配置が推進されたといっても過言ではない。2007(平成19)年には,無床診療所などにおいても医療安全管理体制の整備が義務化され,医療安全推進に向けて新たな取り組みが期待される時期に来ている。

 医療機関によっては,初代の医療安全管理者が数年前から現在も活躍中という状況や,すでに何人目かの医療安全管理者である状況もあるだろうし,最近になって初代の医療安全管理者を配置してこれから積極的に取り組む医療機関など,さまざまな状況があると思われる。

 本稿では,今後,医療安全を推進するために必須と思われる医療安全管理者の重要な役割を改めて振り返り,近未来を見据えた医療安全管理者の“戦略的育成”について述べたい。

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「“いのちの根”の集い」とは

 2006(平成18)年7月,新生会第一病院看護部長である岡山ミサ子氏を発起人として「“いのちの根”の集い」が発足しました。

 その目的は,さまざまな分野で活動している方々と学び合い,語り合い,刺激し合い,人間がよりよく生きる,心身ともに健やかになるなど,ともに考えることです。そして一人ひとりが“いのちの根”を太く・深く耕すための行動をし,仲間たちの輪をつなげていく集いにしたいという思いで,継続されています。この集いのテーマは毎回違いますが,内容のもととなる柱は,基本的に次の3つのことです。

(1)人間がよりよく生きること

(2)心身共に健やかになること

(3)人が大切にしていることを大切にすること

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 大阪市のベッドタウンであり,日本屈指のモノづくりのまちである大阪府八尾市。人口は約27万2000人。全国には自治体病院は現在1000弱あるが不況による自治体の財政悪化や民間病院との競合の激化によって,経営難,医師不足にあえぎ,統廃合や民間譲渡が進む。そうした厳しい環境にあるのは八尾市立病院も例外ではない。しかし,2004(平成16)年よりわが国で初めて,民間のノウハウを活かした運営型のPFI事業を導入したのをはじめ,2009(平成21)年には地方公営企業法の全部適用へと移行し,病院独自の組織イノベーションを進めている。いまでは八尾市長の後押しもあって,市民にとってなくてはならない病院としての地歩を固めつつある。

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 2009(平成21)年の新型インフルエンザ対応の教訓から,日本の感染管理体制全体のボトムアップ,そして感染管理に限らず組織内で専門性をもつスタッフが能力を発揮し,協力を得るためには具体的にどのように行動すればよいのか,その方法などが続けて議論されてきた。最終回では改めてICNやICDを含めた感染管理専門スタッフに焦点が当てられ,近い未来での果たすべき役割がテーマとなった。

 所属している病院組織の中だけではなく,地域へ,外へ。大きな視点をもって感染管理を行なっていくこと。そういった働き方に専門性をもつスタッフだからこその可能性が見つけられるという。加えて日本のICNは世界でも稀な充実した教育プログラムをもち,きわめて優秀とされている。しかし,そのリソースを十分に活かしているとは言い難いのが現状だという。

 果たして所属組織のみならず地域へ出て専門性を存分に発揮するためには感染に関する知識,スキル以外にどのような能力が必要なのだろうか。

連載 サービス・イノベーションの経営学・4

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 前回は市場原理に大きく依存する米国医療の姿を描写しました。それは太平洋の向こうの姿であって日本の医療サービスには無縁なのでしょうか。いいえ。日米医療政策分析の視点に立てば,無縁どころか米国医療にまたがる産官の勢力のせめぎ合いが,日本の医療サービスに一定の影響力を及ぼしてきたことが分かります。私はこれを米国医療サービス産官学生態系と呼んでいます。

 今回はサービス・イノベーションが異なる国を超えて政策を通して創発されることがあるということを日米の医療保険サービスなどに焦点をあてて考えてみましょう。

連載 スタッフの倫理的感受性を高める ナースマネジャーがともに考える臨床倫理――臨床看護師が直面する倫理的ジレンマを紐解く・4

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配分の3つのレベル

 限られた医療資源をどのように配分するかという問題は,今日の医療倫理の大きな課題のひとつである1)。医療資源には,国家が使用できる医療のための資金や医療保険から,施設(ICUや入院ベッドなど)や医療機器,医療スタッフの数や個々の医療スタッフの時間や労働レベル,そして臓器などが含まれる2)。それらの資源は有限であり,人々の多種多様なニードすべてを満たすことはできないため,どう配分するかが問題になる。

 医療資源の配分を検討する際,以下の3つのレベルの配分に分類される1)

連載 王様の耳はパンの耳――この国の看護のゆくえ・11

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 わが国における医療事故に関連した訴訟件数は,2004(平成16)年に1000件を超え,現在も横ばい状態を維持しています。訴訟に至っていない紛争に関しては,この何倍ものケースが存在していることは容易に想像がつくでしょう。

 医療現場の紛争を処理する合理的方法について,今,国の制度にかかわる大きな検討が始まっています。新たな紛争処理の方法の導入は,医療現場の第一線で活動する看護職にとって,患者や家族とのかかわりにも直接影響することにもなります。したがって,極めて重要な意味をもつことになるのです。

連載 看護と医療政策を考えるヒント・13

療養病棟の活性化策 松村 啓史
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 今回の診療報酬改定では慢性期の医療区分とADL区分が表のように細分化されました。

 つまり慢性期における看護体制が大きく評価され20対1の看護体制に加点が促されました。しかし看護師の確保は依然大変な状況です。新人看護師は急性期指向ですからなかなか来てくれません。急性期と慢性期では医療が全く違います。急性期は主にCureであり,どちらかと言えば主役は医師です。慢性期は主にCareであり,医師の数は少なく主役は看護師です。療養病棟ではまさに今,現場の看護師が院長と相談して診療報酬改定を見据えて病院の成長戦略を考える時期にきています。まさに「ナースマネジャー」が活躍するステージが出来つつあります。「ナースマネジャー」の大きな仕事は現場で働く看護師のモチベーションアップ,つまり活性化策です。スタッフ満足をあげることが患者満足につながります。活性化策のポイントは次の通りです。

連載 スクラブナース5年生・59

日米「胃がん」事情 鈴木 美穂
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 先日,ナースを対象にした化学療法の勉強会に参加した。あるプレゼンターが聴講者に向けて「胃がんを致死率の高いがんだと思う人はどれくらいいますか」と問いかけたとき,200人以上が参加していた会場のほとんどが手を挙げた。プレゼンターが「そうですね。みなさんがケアされている胃がん患者さんはみなターミナルだと思います」と継いだので,聴衆はみなうなずいていた。うなずかなかったのは私と一緒に参加していた日本人のナースの2人だけだっただろう。隣で彼女が「胃がんは治せるがんだよね」と同意を求めたので,私はそれにうなずいた。

 しかし,あまりにアメリカのナースたちの胃がんに対する認識が私たちのものと違うので,気になり,家に帰ってきて調べ直したところ,私たちの認識が全く正しかったわけでもないことがわかった。たしかに,胃がんの5年相対生存率を比べると1,2),アメリカでは約25%であるのに対し,日本では約62%と数段によい。さらに,臨床進行度別5年相対生存率をみると,限局性の場合,日本では約95%であり,私たちの認識が裏付けられた。アメリカでは胃がんは限局性であってもわずか60%の5年生存率である。

連載 やじうま宮子の看護管理な日々・49

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また母に新たな病気が発覚

 いよいよ研究計画書の追い込みにかかった1月後半,母が発熱と呼吸不全で入院しました。もともと母にはANKA関連血管炎という膠原病があり,肺気腫のため在宅酸素で生活しています。さらには5年前に大腸がんも切っていて,まるで病気の総合商社状態。それをしのいで78歳まで生き,著述や講演も行なっているのですから,そのパワーに脱帽であります。

 今回も,一時は原因不明の気道閉塞で集中治療室に入ったものの劇的に回復。とにかく一命を取り留め,日に日に元気になっています。さらには経過中,慢性骨髄性白血病が見つかり,一時白血球は18万にまで上昇。いったいどうなるんだろうと思ったら,分子標的薬のグリベックが効いてくれました。一時退院をはさんで,今は薬剤調整中です。

連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・54

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 朝起きて,まず居間のカーテンをサッと開ける。庭の椎の木などの葉がキラキラと光っている。

《春だ!》

 思わずつぶやく。光は四季の変化を正直に映し出す。

 気がつけば,近くの家の梅が咲いている。間もなく咲く木蓮は桜より先に,街に彩りを添える。

基本情報

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看護管理
20巻4号 (2010年4月)
電子版ISSN:1345-8590 印刷版ISSN:0917-1355 医学書院

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