連載 王様の耳はパンの耳――この国の看護のゆくえ・12
看護教育制度の改革―教育年限の延長・一元化を阻むものは何か
大串 正樹
1
,
北浦 暁子
2
1西武文理大学 看護政策研究所
2NKN
pp.436-437
発行日 2010年5月10日
Published Date 2010/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101743
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- 文献概要
看護の教育年限を3年から4年へと延長して基礎教育の大学化をはかることは,日本看護協会が近年で最も力を入れている政策的課題といってもよいでしょう。2009(平成21)年は,看護師国家試験の受験資格に看護系大学の卒業が明記されるという保助看法の一部改正が行なわれた年でしたから,なおさら次の目標として,年限延長は重要になります。その背景には,看護教育内容の多様化・高度化に相まって,十分な実習時間を確保できないという事情もあります。結果的に,安全・安心な質の高い看護の提供ができなくなるという不安につながり,大きな負担となっています。そのうえ,この不安は離職率を下げられない大きな原因のひとつにもなっています。
つまり,基礎教育年限延長の議論は,看護師にとっても,患者にとっても,ひいては医療界全体にも大きなメリットがあるのです。少なくとも,薬剤師の教育年限は延長され,医師の臨床研修も必修化されている現状で看護だけが教育年限の延長を見送られる理由はないはずです。では,なぜ教育年限の延長が,簡単に実現しないのでしょうか。
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