連載 サービス・イノベーションの経営学・5
医療サービスの構造機能モデルで俯瞰する
松下 博宣
1
1東京農工大学大学院技術経営研究科
pp.424-429
発行日 2010年5月10日
Published Date 2010/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101740
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大和言葉には「サービス」に含意される意味を適切に紡ぎだして表出する妥当な言葉がないので,だれもが「サービス」という言葉を日常用語として使っています。しかしながら医療がサービスとして公式に位置づけられるようになってからまだ20年もたっていません。影響力のある公の文書で医療がサービスとして記述されたのは平成7(1995)年版厚生白書です。このなかでは「医療は,人が生まれるときから死ぬときまで,国民一人ひとりに密接に関連するサービス」であると記述され,「重要なサービスである医療」と記されています。
「日本では医療をサービスだというと,けげんな顔をする人が多い。とくに医療側のひとだと滅相もないと不満顔になる場合の方が多いであろう」註1)という中川の言辞を引いて,井部は,「医療者が,医療はサービス業であるという認識が遅れた理由は,『サービス』の意味づけや内容に対する誤解が背景要因にある」註2)としています。本論は,井部の問題認識を共有したうえで誤解や誤認を正したうえでサービス・イノベーションを論じ,もってその方向性を拡張することとします。
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