理学療法ジャーナル 54巻7号 (2020年7月)

特集 脊椎・脊髄疾患の多彩な症状と理学療法

EOI(essences of the issue)
  • 文献概要を表示

 脊椎・脊髄疾患は,罹患高位や呈する症状の範囲も広く,多彩な症状を呈し,日常生活機能障害の程度や重症度も幅広い.外傷などによる急性病態や,変形・脊柱管狭窄・靱帯骨化などに伴う慢性症状,進行性神経症状などさまざまである.原疾患を理解し症状に合わせ,患者個々の活動性や生活歴,ニーズも留意した理学療法プログラムを組み立てる必要がある.本特集では,特定の病態に限定せず,脊椎・脊髄疾患に共通して頻発し得る問題や対応を整理し概観した.

  • 文献概要を表示

はじめに

 本邦理学療法草創期の代表的脊髄疾患は,脊髄損傷であった.車椅子生活に向けて医療・看護・理学療法・作業療法・自助具・装具・車椅子・福祉用具・セルフケアと環境整備・障害者スポーツまで,さまざまな分野と技術をつないだ取り組みが当時から行われ,チームアプローチ・学際的リハビリテーションの先駆的領域であった1).しかし近年,病院機能分化の結果,当時のような脊髄損傷者のリハビリテーションを急性期から生活期まで一貫して経験できる機会や,参画できる臨床現場は減っている.

 そのようななか,車椅子ユーザーとしての脊髄損傷者に加え,脊髄症や脊柱管狭窄症などの慢性疾患患者が増加し,加齢変化や変性などを背景にもつ脊椎・脊髄疾患症例の割合が増加し,理学療法の対象となっている2,3).これらの多くは,日常生活活動に介助や代償手段を要しながらも,歩行や日常生活活動が可能な状態で社会に戻るケースも多い.

 脊椎・脊髄疾患は,神経症状や運動器症状が複雑に組み合わさった複雑な病態を呈し,機能的予後も異なる.したがって理学療法士は,疾患の病態・病期や環境に合わせ,提供する内容を工夫しなければならない.そのためには,多面的に評価し,機能の連鎖を考えながら日常生活活動・歩行練習を考慮し,入浴など日常生活活動を含む生活をデザインし,ニーズや不便との付き合い方とのアドバイスまで指導内容に含む工夫ことが求められる.高齢者や重複疾患など,典型的病態に一致しない症例や,一人暮らしの高齢者が急性期病院から自宅退院することも増え,入院期間短縮や病期別病院機能分化などがその背景にある4)

 もちろん医学的治療・理学療法プログラム・生活やニーズを考慮した指導や内容までアレンジすることは,リハビリテーションである以上,すべての疾患に共通し必要なことであることは言うまでもない.

  • 文献概要を表示

Point

●超高齢社会に突入し,脊椎外科手術は増加し,低侵襲化が進んでいる

●薬物療法では,病態に基づいた治療(mechanism based treatment:MBT)が重要である

●運動療法では,患者と目標を共有し,患者の意欲を高め,自主性を促す

  • 文献概要を表示

Point

●脊柱柔軟性の低下は,人工股関節全置換術後の脱臼リスクを高める

●脊柱柔軟性の低下は,大腿骨寛骨臼インピンジメントをより助長する可能性がある

●脊柱柔軟性は,変形性股・膝関節症に伴う姿勢変化の代償に重要であり,柔軟性の低下は変形性股関節症の進行を助長する可能性がある

  • 文献概要を表示

Point

●脊椎・脊髄疾患患者では,サルコペアの有病率が高い

●体幹筋量や背筋力の低下は,腰痛や身体機能,脊椎アライメント,ADL,QOLと深く関係している

●サルコペニアを有していても適切な運動療法を行うことで,良好な治療効果が得られる

  • 文献概要を表示

Point

●残存機能を正しく評価し,目標設定をすることが重要である

●歩行能力を最大限に向上させるためには,Task specificity(課題特異性),Dose-dependent(運動量依存),Corticospinal modulation(皮質脊髄路による運動調節),Feasibility(実現可能性)の4項目を意識する

●歩行練習は,目的と目標を明確にして,患者と意思共有を図ることが大切である

  • 文献概要を表示

Point

●疾病の特徴と病態の出現する過程について理解する

●症状の原因部位と主となる機能障害を精査する

●一方的な指導ではなく,患者自身の要望を汲み取りつつ,きれいに歩きたいという要望に対する実現方法を模索する

  • 文献概要を表示

Point

●腰椎疾患の能力障害と心理的要因の関係が報告されている

●心理的要因の改善には日記介入などの認知行動療法が実施されている

●腰椎後方固定術後患者に対する短期間での日記介入で,心理的要因,能力障害の改善に効果を認めた

  • 文献概要を表示

Point

●術部への負担を軽減するための評価や指導が大切である

●患者の役割などの個人因子や自宅などの環境因子を考慮する必要がある

●退院後の生活や活動量を見据えたかかわりが大切である

緊急座談会 新型コロナウイルス—各現場から,withコロナ時代の理学療法を展望する

  • 文献概要を表示

高橋 本日は,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の患者に直接対応されている最前線の先生方にお集まりいただきました.最初に自己紹介を兼ね,それぞれの現場で何が起こっているのか,これまでの経緯をお話しください.

岩田 当院ではCOVID-19患者を受け入れて以降,受け入れ初期,緊迫期,安定期という3段階で進んできました.緊迫期は院内感染と並行して健康観察に伴う職員の離脱が増え,病院全体が不安に覆われていました.それから日々情報がアップデートされ,目の前の変わりゆく変化に常に対応していかなければいけない時期でもありました.この時期は災害と同じだったと技師長とよく話しています.その後,COVID-19の実態がある程度見えてきて,現在は安定に向かいつつあります.

  • 文献概要を表示

金谷 本邦における新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の感染拡大は社会全体に大きな影響を及ぼしましたが,理学療法提供においてもあらためて考えさせられる機会となりました.本日は,それほど切迫した状況ではないものの,体制づくりや予防策に追われた地域の先生方にご出席いただきました.まず,ご自身の施設の概要とこれまでの経緯をお話しください.

永冨 当院は回復期リハビリテーション病棟を有する647床の急性期総合病院です.高齢症例が多いのが特徴です.岡山県は感染者数が非常に少なく抑えられていますが,通常とは異なる臨床をどのように組み立てるか,また緊急事態宣言が解除された現在はこれらの対応をどうやって緩めていくか,さまざま思案しながら業務を行っています.

  • 文献概要を表示

内山 本日は理学療法教育をめぐる現状を共有し,今後の展望について意見交換したいと思います.

 まず,教育関係者の共通認識として主要な行政文書を確認しておきます.2月28日付の文部科学省・厚生労働省の事務連絡として「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う医療関係職種等の各学校,養成所及び養成施設等の対応について」が出され,在学中の学生に不利益が生じないよう,迅速かつ弾力的な対応が示されています.

  • 文献概要を表示

 そのとき,新型コロナウイルス感染症と対峙する現場では何が行われていたのか.第2波に備えるために,これからできることとは?

 COVID-19管理やリハビリテーションの実際,そしてwithコロナ時代における地域連携の在り方について,神戸市立医療センター中央市民病院より寄稿いただいた.

連載 とびら

  • 文献概要を表示

 雑誌の記事は,執筆から掲載までタイムラグがある.そして,執筆時と掲載時では,社会状況が大きく異なることだってある.執筆者がおもしろおかしく書けたと思った原稿も,社会が落ち込んでいるときに読者に届けられれば,「不謹慎」と受け止められるかもしれない.そして,この原稿と向き合っている2020年3月はまさにその先の状況が読めない,新型コロナウイルスで世界全体が不安に包まれているときにある.

 学校が休校になり,イベントが中止され,外出は自粛,マスクは店頭から消えている.院内感染もあちこちで報告されている.患者さんと密に接する理学療法場面は感染発生リスクの高い状況でもある.そこで,「もしも密接場面をつくらず理学療法を行うとしたら」という想定のもと,「人に触れない理学療法」が可能かを考えてみたい.

連載 脳画像から読み取る障害像と理学療法・19

  • 文献概要を表示

Question

この脳画像から障害像が読み取れますか?

連載 内科疾患患者における理学療法介入に必要なアセスメント・Part 1【新連載】

  • 文献概要を表示

在宅理学療法対象者の疾病(障害)像の変遷

 「令和元年版高齢社会白書」によると,要介護者の介護が必要になった主な原因は「認知症」が最も多く,次いで「脳血管疾患(脳卒中)」,「高齢による衰弱」と続いている1).近年は,この主な原因に加え,内科系疾患の併存罹患,フレイルやサルコペニアの合併などを有する要介護者が増加しており,複雑な臨床像を呈することも少なくない.

 実際,要介護者の内科系疾患罹患率調査では呼吸器や循環器,悪性新生物などの疾患を重複罹患している者が多い2).さらに,後期高齢者の64%が2種類以上の慢性疾患の治療を受けており,併存頻度が高い疾患は高血圧や脂質異常症などの内科系疾患である3).また,英国における高齢者の多発病有病率シミュレーションでは,2015年から2035年の間に4つ以上の疾患併存罹患者の割合が9.8%から17.0%に増加する4)と報告されており,本邦においても同様のことが予測される.特に内科系疾患を有する症例は,疾患の特性などから症状の増悪や急変,再発などを来すことが多く5,6),理学療法士は安全なサービス提供にあたって全身状態や病状の把握に努めるとともに,急変予測や急変対応などに関する知識・技術の向上が必要となる.

連載 新しい臨床実習・第7回

  • 文献概要を表示

はじめに—臨床実習前・後の評価の位置づけ

 「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則の一部を改正する省令」が2018年10月5日に定められ,2020年度入学生より適用された.この改正において,臨床実習に「臨床実習前の評価及び臨床実習後の評価を含む」ことが明記された1).また,「理学療法士作業療法士学校養成施設指導ガイドラインに関するQ & A」2)では,「臨床実習前後の評価は,(中略)その評価方法及び単位数(評価時間)等については,養成校の定めるところによる」としたうえで,「臨床実習前後の評価は,特に総合臨床実習に関する教育結果を判定することを目的として新たに加えられたことから,実習生の技能等に関して,実習前に実技試験等による評価を行い,直接患者に接するに当たり,総合的知識及び基本的技能・態度を備えていることを確認し,その評価を踏まえた教育を臨床実習施設で行い,その判定を臨床実習後の評価等で行うことが望ましい」とされている.

 臨床実習前後の評価の方法についての明確な規定は示されていないが,学生の基本的技能・態度を評価するには,やはり客観的臨床能力試験(objective structured clinical examination:OSCE)を導入することが必要であろう.OSCEとは,Hardenら3)によって提唱された臨床能力評価方法で,客観的に臨床能力を評価するために提案された.臨床実習前・後における評価方法を選択するうえで,認知領域・情意領域・精神運動領域のタキソノミー(教育目標分類)に対応した教育方法・評価方法(表1)を用いることが提案されている4).精神運動領域のスキル(技能)評価には,直接観察法やOSCEのような技能試験を実施することが推奨されている.またOSCEでは,精神運動領域だけでなく,症例シナリオに基づいて実際に実技を行うなかで医療者として求められる態度(情意領域)についても,評価が可能である.

連載 理学療法士が知っておきたいヘルスケア産業・7

  • 文献概要を表示

 「患者さんのモチベーションを向上させられるような,何か魅力的なシステムはないでしょうか?」大学病院の先生からこのようなお題をいただいたことをきっかけに,運動支援システム「ヘルサポ」の開発は始まりました.当初は心臓リハビリテーションの外来患者様のモチベーション向上を目的に開発していましたが,現在は,リハビリテーション対象者や介護施設利用者,高齢者やフレイルの方を主なターゲットとしています.ヘルサポは,その名のとおり健康をサポートし,リハビリテーションや介護予防など何らかの運動を実施する場面において,運動や運動機能計測を支援するシステムです.最近では,さまざまな企業や団体と連携し,スポーツジムやサロンなどにおける展開も進めています.

 センサーの前に立つ(座る)対象者の骨格を認識し,画面にその骨格を映し出します.体の動きがそのまま画面上の骨格の動きとして反映されるため,画面に入り込んでいるような感覚で楽しく運動を行うことができ,対象者のやる気を引き出します.

連載 国試から読み解く・第7巻

  • 文献概要を表示

20歳の男性.肩関節の疼痛を訴えている.図に示した状態から手背を腰部から離すように指示したところ,離すことができなかった.筋力低下が疑われるのはどれか.

連載 臨床実習サブノート 運動器疾患の術後評価のポイント—これだけは押さえておこう!・4

  • 文献概要を表示

はじめに

 現代の超高齢社会において,大腿骨頸部骨折は遭遇する機会が非常に多い疾患です.治療方法の選択は,年齢や骨折形態,受傷前の活動性,認知機能などを考慮して行われ,そのなかで人工骨頭置換術は,転位が大きい場合(Garden分類のstage Ⅲ,Ⅳ)や転位が小さくとも免荷が困難な場合,あるいは長期の免荷によって全身状態の悪化や活動性の低下が大きくなる可能性が高い場合に選択されます.人工骨頭置換術後は早期の荷重が可能であるため,可及的早期に離床し,合併症の予防や活動性の向上を図ることが重要です.そこで,本稿ではこれらの事項を中心に評価のポイントを述べていきます.

  • 文献概要を表示

「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施」における保健事業へのかかわりが広がる

 人生100年時代には心身の健康が基本である.後期高齢者は複数の慢性疾患など多様な課題があり,いわゆるフレイル状態になりやすく,きめ細やかな保健事業と介護予防事業が重要である.しかし本邦の医療保険制度では,75歳以上では健康診査のみが多く,広域連合の保健事業と市町村の介護予防事業が一体的に実施できていない課題があった.

 厚生労働省は有識者会議を開催し,市町村が中心に一体的な実施を推進するための体制を盛り込んだ「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律(改正法)」を2019(令和元)年5月22日に公布した.その後の2019年10月25日厚生労働省保険局高齢者医療課の事務連絡発出時には,地域を担当する医療専門職に理学療法士の記載はなかった.しかし市町村および広域連合などからの要望を踏まえ,2020年3月27日に都道府県および広域連合宛てに「令和2年度の後期高齢者医療制度の特別調整交付金の交付基準」が発出され,地域を担当する医療専門職に理学療法士などが明記された.

  • 文献概要を表示

 当時,理学療法士になって4年目の私は,患者さんやその家族にとって待ち焦がれる存在だと思っていました.ところが,ある日,認知症の方の病室にうかがったとき,家族の方は私に挨拶も返してくださらず,顔も見ないまま,「何もしないでください.歩かれたら困るのです.私しか世話する人がいないのです.ベッドでじっと寝てくれているほうが楽なんです」と,言葉遣いは丁寧ですが,怒りながら私に訴えてこられました.それまでは人の役にたっていると疑いもしませんでしたが,それは間違いだということに気づいた瞬間でした.

 患者さんや家族の方は,苦しんでいることや悩んでいること,自身の希望を口に出せる人ばかりではありません.だからこそ患者さんや家族の方がどんな想いで過ごしておられるのかについて真剣に考えることは,医学的な評価と同じくらい大切だと思います.

連載 Relay Message・第7回

縁は宝 田中 克宜
  • 文献概要を表示

 筆者からのメッセージは“縁は宝”です.短いながらも,筆者のこれまでの理学療法士人生を振り返ると,この言葉が思い浮かび,今後も自分自身で大切にしていきたいと思っています.

 就職活動時,特に「この分野を人生かけて追求したい」いうものがなく,まずはさまざまな症例をしっかりと経験していきたいという思いで,高知大学医学部附属病院に入職しました.“縁は宝”という言葉は,この高知大学病院に勤務していた際に,尊敬するリハビリテーション医の先生が仰っていた言葉です.大学病院では心臓リハビリテーションチームにも配属され,心臓リハビリテーション指導士の資格を取得しました.2011年には東日本大震災の医療支援チームの派遣に立候補して支援活動に参加し,そこでしかできない経験をすることができました.また,整形外科とリハビリテーション部の懇親会をきっかけに大学院修士課程に進学し,整形外科教室でご指導いただきました.大学院への進学をきっかけに,痛みに関する研究を本格的に始めました.

  • 文献概要を表示

要旨 【目的】人工膝関節置換術(knee joint replacement:KJR)後患者の身体活動量(physical activity:PA)を把握し,適切にコントロールすることが必要である.今回,データを自動的にサーバーにアップロードできる身体活動量計(fitbit®)を用いて,KJR後患者に対するPA遠隔モニタリングを導入し,その実施可能性を検証した.【方法】KJRを施行し退院した患者22名にfitbit®を12週間装着させた.理学療法士は,アップロードされた対象者のPAの情報を遠隔環境で閲覧し,PAに関するメールを送信した.【結果】21名がプログラムを完遂した.fitbit®装着遵守率は99.5%,モニタリング成功率は92.5%であった.1回のモニタリングとメール送信に要した時間は26(標準偏差7)秒であった.満足度は全例が満足,または,やや満足と回答した.測定期間中の平均歩数は8,263(標準偏差4,350)歩/日であった.【結論】KJR後患者に対するPA遠隔モニタリングは,失敗が少なく実施可能であることが明らかになった.

  • 文献概要を表示

 臨床で初めてがん患者の緩和ケアに関与したとき,死を意識しながら生きる人の「こころ」にいかにして寄り添えるのか? 支援できるのか? と考えたと同時に,寄り添いたい,支援したいとも感じた.簡単に「こころ」と表現しても,「こころ」の要素にはさまざまなものがある.身体的・精神的・社会的・霊的などのさまざまな痛みや苦悩を抱える対象者に対して,身体機能やADL能力だけを評価して介入しても「その人らしさ」を尊重しているとは言えないと感じている.これは緩和ケアの対象者だけではなく,全対象者についても同じであろう.

 私は理学療法士を志したときから,「対象者を心身ともに元気にできる理学療法士になりたい」との目標があり,対象者とかかわる際には以下の点に心がけてきた.まず,第一に対象者は人生の大先輩であることが多いことから,敬意を抱いて接することである.たとえ,対象者が自分より若い方であっても,双方の立場に上下関係はなく対等である.

  • 文献概要を表示

 昨今では,リハビリテーションの対象領域が急速に拡大してきているが,特に著しく対象が増えているのは間違いなく内部障害であろう.社会のニーズに応えるべく,理学療法士・作業療法士は内部障害について学ばなければならないが,内部障害はその言葉からもわかるように人体の表面からは直接観察できないものが多く,さまざまな検査データを集め,適切な知識と照らし合わせながら評価・判断をしていかなければならない.学習内容は多岐にわたり,私も教育者の1人として日々内部障害の学習支援の難しさに頭を悩ましている.

 本書は,題名からもわかるとおり,イラストを多用した内部障害のテキストである.構成は,内部障害総論から始まり,呼吸器疾患,循環器疾患,代謝疾患・糖尿病と続き,最後は症例紹介となっている.疾患別の各項目では,解剖・生理学から始まり,疾患の基礎知識,検査データ,治療について詳しく解説され,具体的な障害評価と理学・作業療法プログラムが具体的に解説されている.

  • 文献概要を表示

リハマネージャーが行き詰まったときに読みたい実践書

 マネジャー業務の1つに職場改善の取り組みがある.マネジャーはリハビリテーション分野で働くスタッフの勤務負担を軽減し,やりがいのある職場にしたい.一方,患者からは質の高い医療を提供してほしいと期待され,経営者からはコストの適正化と経営の質を高める組織目的の実現を求められる.リハスタッフ,患者,経営者の三者にとってwin-win-winの関係をバランスよく高める職場環境にするには,「何を」「どこまで」考え,スタッフの協力をどのように得て運営するのか,課題が複雑で悩みが多い.マネジメントに関係する書籍はビジネス系の一般書が多く,リハ部門運営の舵取りに直接的に当てはまらないと感じていた.

 そこに本書は,リハ施設で比較的多い職員の“あるある”問題を「こんな場面に経営学」の項にトップバッターとして登場させ,読者の共感に訴え,本書の魅力をアピールしている.馴染みの薄い経営学理論を,職場にある「問題解決」のプロセスに落とし込み,解決するための実践方法のヒントが満載されている.

--------------------

目次

バックナンバー・次号予告のお知らせ

編集後記 永冨 史子
  • 文献概要を表示

 宇宙に浮かんだ地球に住む私たち人類は,意識することなく天体の規則に守られ長い時間生きてきました.今年も春分の日は正確に訪れ,桜が咲き,散り,爽やかな季節から雨の季節へいつもと同じ順番で季節が進んでいます.しかしそれとは別の次元で今年は異例ずくめの年となりました.COVID-19は世界を混乱に陥れ,国境を閉ざし経済を止め人々の生活のありようにまで影響しています.ヒトが創り計画したことの多くが混乱に巻き込まれ,力の及ばない現象に翻弄されています.そんななか,理学療法士としてどう対応し,これからをどう考えるか,臨床と教育の両面をテーマに緊急座談会を組みました.予言ともとれる「とびら」のメッセージとともに,座談会が臨場感をもって読者の方々それぞれの職域や活動を振り返るヒントとなればと思います.

 特集は,脊椎・脊髄疾患を取り上げました.症状が多彩であるがゆえに内容も多彩となりました.症状に対応した理学療法を提供し,生活や個人的ニーズにまで対応する応用力の高い理学療法とは? 他の疾患にも共通するテーマでもある7本の特集論文それぞれから,感じ,考えていただければ幸いです.連載「新しい臨床実習」ではOSCEがテーマです.未経験のことやこれまでと異なる変化に遭遇したとき,ヒトはストレスを感じるのだそうです.しかし前向きな変革や,ストレスの後に変えてよかったと思えることもあるでしょう.理学療法も常に変化しており,医学や医療や法規の変化に遅れることなく,常に変わり続けています.連載をよい情報源にしていただければと思います.

読者の声募集

基本情報

09150552.54.7.jpg
理学療法ジャーナル
54巻7号 (2020年7月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

文献閲覧数ランキング(
7月27日~8月2日
)