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はじめに
本邦理学療法草創期の代表的脊髄疾患は,脊髄損傷であった.車椅子生活に向けて医療・看護・理学療法・作業療法・自助具・装具・車椅子・福祉用具・セルフケアと環境整備・障害者スポーツまで,さまざまな分野と技術をつないだ取り組みが当時から行われ,チームアプローチ・学際的リハビリテーションの先駆的領域であった1).しかし近年,病院機能分化の結果,当時のような脊髄損傷者のリハビリテーションを急性期から生活期まで一貫して経験できる機会や,参画できる臨床現場は減っている.
そのようななか,車椅子ユーザーとしての脊髄損傷者に加え,脊髄症や脊柱管狭窄症などの慢性疾患患者が増加し,加齢変化や変性などを背景にもつ脊椎・脊髄疾患症例の割合が増加し,理学療法の対象となっている2,3).これらの多くは,日常生活活動に介助や代償手段を要しながらも,歩行や日常生活活動が可能な状態で社会に戻るケースも多い.
脊椎・脊髄疾患は,神経症状や運動器症状が複雑に組み合わさった複雑な病態を呈し,機能的予後も異なる.したがって理学療法士は,疾患の病態・病期や環境に合わせ,提供する内容を工夫しなければならない.そのためには,多面的に評価し,機能の連鎖を考えながら日常生活活動・歩行練習を考慮し,入浴など日常生活活動を含む生活をデザインし,ニーズや不便との付き合い方とのアドバイスまで指導内容に含む工夫ことが求められる.高齢者や重複疾患など,典型的病態に一致しない症例や,一人暮らしの高齢者が急性期病院から自宅退院することも増え,入院期間短縮や病期別病院機能分化などがその背景にある4).
もちろん医学的治療・理学療法プログラム・生活やニーズを考慮した指導や内容までアレンジすることは,リハビリテーションである以上,すべての疾患に共通し必要なことであることは言うまでもない.
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