理学療法ジャーナル 59巻1号 (2025年1月発行)

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特集　隣接関節の運動の影響

EOI（essences of the issue） 59巻1号 , 2025年1月 , pp.10-11

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　人の運動を単一の関節だけで論ずることはできない．同じように単一筋の活動は起始と停止が互いに近づこうとする作用しかない．スポーツや日常生活活動の何をとっても単一関節で完結する運動はないにもかかわらず，要素主義の癖として，該当関節を構成する運動器の要素のみで考えてしまいがちである．この考え方では評価者にとっては理解しやすくても実際の運動とは似て非なるものとなる．本特集では評価者の視野を拡大すべく，隣接関節との関係性について着目して論議していただく．

関節隣接関連の運動学的拘束—主成分分析による全身の運動特徴の包括的比較評価—基本的な考え方からSPSSによる実践まで小林　吉之 59巻1号 , 2025年1月 , pp.12-17

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Point

●生物の全身運動は，複数の関節が相互に関連し合うことによって成り立っている

●主成分分析を用いることで，複数の関節の関連性を包括的に比較評価できる

●主成分分析を用いた動作解析は，SPSSで比較的容易に実施できる

中枢神経と隣接関節運動の関係性齋藤　智雄 59巻1号 , 2025年1月 , pp.18-25

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Point

●日常の動作では隣接する複数の関節運動の組み合わせと，さまざまな拘束要因から関節運動の自由度が調整され，運動の協調性がもたらされるが，中枢神経疾患により姿勢や運動の協調性が破綻すると，隣接関節運動にも影響する

●中枢神経系と隣接関節運動の関係性を理解するうえで，環境と課題の特性と身体に与える影響から，姿勢と運動の両方に対して考慮する必要がある

●理学療法士が介入する際，脳卒中対象者の特徴的な姿勢戦略に着目し，隣接関節運動やバランスにどのように波及するか，姿勢制御に関連する複数の要因から臨床推論を進めていくことが求められる

肩関節と肘関節関連障害—1．運動学的関連性宮下　浩二 59巻1号 , 2025年1月 , pp.26-31

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Point

●肩外旋・内旋可動域は前腕の肢位の影響を受ける

●前腕回内・回外可動域は肩回旋の肢位の影響を受ける

●肩挙上運動は肘関節，前腕，手関節の機能低下の影響を受ける

肩関節と肘関節関連障害—2．関連障害—Zero外旋/Zeroリリーステストによる投球肩肘障害の簡便な評価と治療アプローチ堀家　陽一 , 西中　直也 59巻1号 , 2025年1月 , pp.32-39

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Point

●「身体の開きが早い」ことと「肘下がり」が，投球肩肘障害を引き起こす主な不良投球フォームである

●投球中にゼロポジションを保つことで，肩関節ではhyper-angulationを防ぎ，肘関節では外反ストレスを軽減できる

●「Zero外旋テスト」と「Zeroリリーステスト」を用いることで，不良な投球フォームの原因となる身体機能不全を簡便かつ適切に評価することができる

腰椎と股関節関連障害—1．運動学的関連性対馬　栄輝 59巻1号 , 2025年1月 , pp.40-46

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Point

●骨盤は腰椎と連結しているため，股関節運動には骨盤を介した腰椎，ひいては脊椎の運動も伴う

●股関節の運動には必ず腰椎の動きも伴う．股関節に機能障害があれば腰椎の代償運動が起こり，またその逆もあり得る

●腰椎・股関節が望ましいアライメントを保持し円滑な運動を起こすために，運動に関与する複数の筋による共同作用が必要である

腰椎と股関節関連障害—2．関連障害永井　聡 59巻1号 , 2025年1月 , pp.47-54

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Point

●寛骨臼形成不全の代償として骨盤前傾に伴う腰椎過前彎は臨床で最も多い関連障害である

●変形性股関節症に合併した変性側彎症は，脆弱性骨折などにより進行することが多い

●腰椎と股関節との関連障害は姿勢評価で明確となり，その理学療法は姿勢不均衡に起因したメカニカルストレスの改善が目的となる

股関節と膝関節関連障害—1．運動学的関連性加藤　浩 59巻1号 , 2025年1月 , pp.55-61

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Point

●荷重位における下行性運動連鎖（骨盤からの影響）と上行性運動連鎖（距骨下関節からの影響）では，それぞれ膝関節に異なる運動パターンが生じる

●二関節筋（大腿直筋，ハムストリング）は，関節肢位の影響を受けると同時に，相互に共同し筋力を発揮する

●生体力学的には，股・膝関節間において関節モーメントのトレードオフやエネルギーフローにより姿勢制御や動作の効率が保たれている

股関節と膝関節関連障害—2．関連障害廣濱　賢太 59巻1号 , 2025年1月 , pp.62-68

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Point

●膝関節障害では，股関節を外転位にすることで，股関節に生じる関節モーメントを減少させる

●股関節障害では，膝関節を屈曲位にすることで，膝関節に生じる関節モーメントを減少させる

●股関節，膝関節は相互補完の関係にあり，その関節障害はそれぞれの関節障害の進行を助長する可能性がある

膝関節と足部・足関節関連障害—1．運動学的関連性大川　孝浩 59巻1号 , 2025年1月 , pp.69-74

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Point

●歩行時は足底に摩擦が生じているにもかかわらず下肢は絶えず回旋運動しているため，下肢には捻じれストレスが生じる

●捻じれストレスは下肢関節への負荷となるだけでなく骨の形態とも関連し，骨の形態は歩容にも影響を及ぼすため，その評価が重要である

●足底摩擦によって生じるfree momentは，膝関節および足部・足関節の捻じれストレスの指標になり得る

膝関節と足部・足関節関連障害—2．関連障害岩永　竜也 59巻1号 , 2025年1月 , pp.75-79

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Point

●足部はヒトの顔ほど個々で違いがあり，その形状は歩行などの動作に特徴的に現れ，下肢障害に影響している

●メカニカルストレスを減じることは，疼痛部を早期に改善でき，特に難治や再発を繰り返す症例には必要な考え方である

●静的評価での介入は，容易にメカニカルストレスを減じることができるが，動作のスムースさを欠くので動作でも判断できるようになるとよい

Close-up　ワークエンゲイジメントを高める労務管理

職場マネジメントで押さえておかなければならない労務管理のポイント水沼　直樹 59巻1号 , 2025年1月 , pp.82-86

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問題の所在

　本邦の医療の質は，医療従事者の自己犠牲の上に担保されていると言っても過言ではない．国民の医療サービスへの期待が高まる反面，公的医療保険制度のもと医療機関の収益には限界があり，マンパワーの増強も期待し難い．他方で医療の質向上や医療安全上の理由により必須タスクが増えており，医療従事者の過重労働は日常的である．そのためか，給与水準が他業種より必ずしも低いわけではないのに，医療従事者の離職率は決して低くない．まして，リハビリテーション専門職は，労働時間の長さ，転倒事故などの医療リスクの高さ，患者さんと接する時間の長さなど，業務内容が過密でありながらも，必ずしも給与水準が十分といえない現状があり，離職対策が重要である．ワークライフバランスが求められる昨今，医療従事者の労働環境の改善・構築のために労務管理が重要となっている．

職場教育と自己研鑽の狭間における労務管理石井　健史 59巻1号 , 2025年1月 , pp.87-90

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職場教育と自己研鑽の重要性

　医療現場において，職場教育と自己研鑽は，個々の医療従事者のスキルを向上させ，患者に提供する治療の質を高めるために不可欠な要素である．特にリハビリテーション科においては，専門的な知識や技術の習得が患者の回復に直結するため，教育と自己研鑽の重要性はきわめて高いと言える．しかし，日々の診療業務に加えて教育を進めるには，時間的・精神的な負担が伴いがちであり，これが原因で自己研鑽が二の次になるケースも少なくない．

　さらに，時間外での勉強会や技術トレーニングを強制することは，労働環境におけるハラスメントのリスクを伴う．そのため，労務管理の観点からも，職場教育と自己研鑽を効果的に進めるためのバランスを保つことが求められている．本稿では，苑田会ニューロリハビリテーション病院（以下，当院）でのquality control（QC）活動を中心に，職場教育と自己研鑽を両立させるための具体的な取り組みと，その効果について述べる．

ワークライフバランスに向けた労務管理への取り組み平岩　和美 , 岩田　隆士 59巻1号 , 2025年1月 , pp.91-94

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ワークライフバランス

　ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」とされ，就労による経済的な自立，健康で豊かな生活のための時間が確保できること，多様な働き方や生き方が選択できることである．そのためには育児，介護，地域活動，職業能力の形成などを支える社会的基盤が整備されていること，就業形態にかかわらず，公正な処遇や能力開発機会が確保されることが条件となる．

連載　とびら

恩師を偲んで—未来に恋する言霊をつなぐ佐藤　美加 59巻1号 , 2025年1月 , pp.7

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　2024年の春，桜が咲く少し前に恩師が旅立った．恩師というのは，私の母校である国立仙台病院（現・仙台医療センター）附属リハビリテーション学院（以下，リハ学院）時代の担任である．

　十数年ほど病気療養中であったが，年賀状などの交流は続いており，今年は寒中見舞いの手紙が届いていた．手紙は，能登半島地震のことから始まり私への気遣いと「さようなら」という言葉で終わっていた．文章も筆圧もしっかりしており，これからもまだまだ交流が続くと感じ，さようならとは書いていたが，またねの気持ちで読み終えていた．

連載　視覚ベースの動作分析・評価・第9回

膝関節—股関節優位の動作パターン獲得により右膝疼痛の改善を図った症例東谷　年記 59巻1号 , 2025年1月 , pp.1-4

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症例紹介

　30歳台，男性．

病名　右膝関節内側半月板損傷，両膝蓋大腿関節傷害．

＊本論文中，動画マークのある箇所につきましては，関連する動画を見ることができます（公開期間：2028年1月31日）．

連載　薬剤と理学療法・第1回【新連載】

鎮痛薬（オピオイド）／硬膜外麻酔薬田中　祐乃介 , 船木　麻美 59巻1号 , 2025年1月 , pp.97-101

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　術後の早期離床は，呼吸器合併症や深部静脈血栓症，精神障害などの術後合併症を予防し，入院期間の短縮や医療費削減にも貢献するとされている．術直後から疼痛コントロールを図ることは苦痛の緩和のみならず，早期離床，術後リハビリテーションにも影響を及ぼす^1）．そのため，鎮痛薬による術後疼痛コントロールは重要である．しかし，鎮痛薬の副作用により，かえって早期離床を遅らせることがある．以下に鎮痛薬の副作用により離床・術後リハビリテーションに影響を及ぼした症例を挙げる．また表1に代表的な鎮痛薬の名称と副作用をまとめる．

連載　理学療法士のキャリアデザイン—多様な可能性と挑戦・第1回【新連載】

理学療法士×介護福祉士養成教育—本当の意味での自立支援をめざして古川　和稔 59巻1号 , 2025年1月 , pp.102

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　私は現在，東洋大学福祉社会デザイン学部社会福祉学科の教員として勤務しています．大学教員としてのキャリアは17年になります．理学療法士，介護福祉士，社会福祉士，介護支援専門員の資格を持っています．私は介護職員として高齢者福祉施設に勤務した後，38歳のときに理学療法士になりました．

　介護職員として勤務していた当時は，車椅子から立ち上がろうとする利用者に対して先輩職員が「立たないでください」と言う場面や，自力でトイレに行けそうな利用者にもオムツ交換をしている職員の姿を見て，違和感を覚えながらも，その違和感を解消する術がありませんでした．

連載　文献収集と管理・第1回【新連載】

文献の種類とエビデンスレベル森山　英樹 59巻1号 , 2025年1月 , pp.103-106

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文献の種類

　文献は，すでに公表された研究などの記録である．これまでに何が行われ，何が考えられてきたか，さらにある問題についてどこまで解決され，残されている問題は何なのかを知ることができる．

　文献には，一次資料（一次情報）と二次資料（二次情報）がある．前者は学術雑誌に掲載された論文，学会予稿集や会議録，特許情報などオリジナリティをもつ情報であり，後者には一次資料をまとめた総説，書籍，診療ガイドライン，一次資料へのアクセス手段のために編集された抄録誌や索引誌などがある．効率よく情報収集するためには，大量の一次資料を検索する前に，関連する二次資料にあたり，おおよその知識をつかむほうがよい．

連載　理学療法とAI—活用実践例と近未来の展望・第1回【新連載】

AIと理学療法概論柳　尚弥 59巻1号 , 2025年1月 , pp.108-109

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AIとは

　人工知能（artificial intelligence：AI）とは，人間の知能を模した技術の総称を指す．医療業界においても，画像診断や手術支援などに導入されてきており，活躍の場を広げている．個人単位で考えても，2022年にChat Generative Pre-trained Transformer（ChatGPT）がリリースされて以来，AIが生活に浸透したと感じる機会が増えたと感じる方も多いのではないだろうか．

　ChatGPTのようなAIを生成AIといい，大量の学習データをもとに新たなコンテンツを生成する技術を指す．AIのなかでも生成AIはわれわれの身近にあり，インターネット環境があれば誰でも利用ができる．第1回はそんな生成AIに焦点を当て，理学療法との可能性や利用する際の注意点などを述べていきたい．

連載　臨床実習サブノート　「どれくらい運動させていいかわからない」をどう克服するか・第10回

—呼吸器疾患—慢性閉塞性肺疾患（COPD）に対する呼吸練習沖　侑大郎 59巻1号 , 2025年1月 , pp.111-116

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　慢性閉塞性肺疾患（chronic obstructive pulmonary disease：COPD）では，労作時の呼吸困難により，日常生活活動（ADL）能力が制限され，健康関連QOLが低下します．COPDの主症状である呼吸困難に対して，呼吸練習が行われます．

　COPDの呼吸困難は，ADLや健康関連QOLだけでなく，身体活動量にも大きな影響を与えます．さらには，安静時でも過剰な呼吸努力を行っていることが多く，健常者の数倍以上の酸素消費量となり，運動療法の効率が低下しています．運動療法を効率よく実施できる状態にするための準備として，呼吸練習を行っていきます．

＊本論文中，動画マークのある箇所につきましては，関連する動画を見ることができます（公開期間：2028年1月31日）．

連載　My Current Favorite・33

フラダンスは身体に良いってホント？笹野　弘美 59巻1号 , 2025年1月 , pp.96

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現在の関心事は？

　私の関心事は，健康なまま歳を重ねるにはどうしたらよいか，です．日本は超高齢社会と言われていて，2023（令和5）年の平均寿命は女性87.14歳，男性81.09歳^1），同年の日本の高齢化率は29.1%^2）でした．また，「健康日本21（第二次）」の健康増進に関する基本的な方針^3）の一つとして「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が掲げられ，2024（令和6）年4月から始まった「健康日本21（第三次）」では「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」は継続しながら，新たな視点として「誰一人取り残さない健康づくりの展開」と「より実効性をもつ取組の推進」が取り入れられました^4）．

連載　私のターニングポイント・第60回

人とのつながり今泉　朋実 59巻1号 , 2025年1月 , pp.131

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　ターニングポイントについて考えてみると，分岐点に立っている際は「ここがターニングポイントだ」と感じることは経験上，多くはなかったと記憶しています．あれこれと考えてなかなか答えが出せずに選択をした結果，前進することが多くありました．思い返すと「あれがターニングポイントだったのではないか」と感じることが多かったように思います．

　理学療法士人生におけるターニングポイントを振り返ってみると，おそらく私のターニングポイントは現在の職場に入職したことです．そして幸運なことに職場の人間関係に恵まれたことだと思っています．

報告

スマートフォンアプリを用いた患者教育が人工膝関節置換術術前の手術期待に与える影響和田　治 , 仲野　槙志 , 飛山　義憲 59巻1号 , 2025年1月 , pp.117-124

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要旨　【目的】人工膝関節置換術（knee arthroplasty：KA）患者は手術に対して過度な期待を抱いており，術前の患者教育が手術前の期待値の適正化に有効であるとされている．本研究ではスマートフォンアプリケーション（以下，アプリ）を用いた患者教育がKA術前の手術期待に与える影響を明らかにすることとした．【方法】KA施行患者をアプリ使用希望の有無によりinformation technology（IT）教育群と通常教育群に分け，IT教育群では通常の患者教育に加え，アプリでの患者教育を追加した．手術期待の評価は手術1か月前と手術前日に行い，2011 Knee Society Scoreの手術期待の項目を用いた．【結果】多変量回帰モデルを用いた差分の差分の解析の結果，IT教育の効果を示すグループと時期の交互作用項（グループ×時期）は有意な値を示し，IT教育群は通常教育群と比較して手術期待値の合計点は2.03点低かった（95％信頼区間0.97〜3.09，p＜0.01）．【結論】アプリを用いたKA患者を対象とした術前教育は手術期待の適正化に有効である可能性が示された．

症例報告

内側半月板後根損傷に伴う半月板逸脱の改善に半膜様筋の柔軟性が関与する—超音波画像診断装置を用いた半膜様筋の評価および理学療法が有効であった一例源　裕介 , 中嶋　康之 , 千葉　諭 59巻1号 , 2025年1月 , pp.125-130

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要旨　内側半月板の後根部損傷は内側半月板逸脱に関与し，変形性膝関節症の発症に関連する．この改善には半膜様筋の柔軟性改善が要点となる．今回，変形性膝関節症に内側半月板後根損傷を合併し歩行時の疼痛を訴えていた症例の理学療法を経験した．超音波画像診断装置を用いて内側半月板逸脱を評価し，過度な逸脱を確認した．半膜様筋の筋硬度を，エラストグラフィー機能を用いて評価した結果，健側より硬かった．理学療法は半膜様筋の柔軟性改善を目的に圧変動操作を中心に実施し，半月板逸脱および症状の改善が得られた．今回の病態評価に超音波画像診断装置を用いたことにより，より詳細な評価が可能となり，効果的な理学療法の実施につながった．

学会印象記

—第22回日本神経理学療法学会学術大会—新しい世界Society 5.0と神経理学療法学の融合へ田邉　淳平 59巻1号 , 2025年1月 , pp.107

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　第22回日本神経理学療法学会学術大会が福岡国際会議場にて開催されました．今大会も例年の盛況どおり2,000名以上の参加者が来場しました．今回の学会テーマは「創始—次代への超克」で行われました．私は学会テーマから，「新たな世界Society 5.0と神経理学療法の融合，それをこれからつくり上げていくため困難に立ち向かい，打ち勝っていく」このように感じました．それに伴い，神経理学療法にかかわる者としてこれからさらなるエビデンスの構築を行わなければならないと強く感じました．

—第29回日本基礎理学療法学会学術大会—高次の理学療法に向かって—近未来の理学療法を見据え，われわれはどう向き合い，何を考え，どう準備していくのか福本　悠樹 59巻1号 , 2025年1月 , pp.110

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　第29回日本基礎理学療法学会学術大会が東京都立大学の南大沢キャンパスで開催されました．私は，日本基礎理学療法学会の学術大会調整部で副部長を務めており，学術大会の進捗を評価・アドバイスする，いわゆる，外部アドバイザー的な立場としてかかわりましたが，準備委員が大会準備にかけた熱意は相当なものでした．

書評

—工藤慎太郎（編）—「運動器疾患の「なぜ？」がわかる臨床解剖学　第2版—徒手療法がわかるWeb動画付」林　典雄 59巻1号 , 2025年1月 , pp.81

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　このたび，工藤慎太郎先生の編集による『運動器疾患の「なぜ？」がわかる臨床解剖学　第2版』が出版されました．今回の改訂では，図や写真がフルカラーとなることで，読者の理解を高めると同時に，工藤先生グループによる基礎ならびに臨床研究を踏まえた新しい知見が盛り込まれ，さらに充実した内容へと進化しています．また，具体的な治療技術について，Web動画を通して解説されており，適切な運動器診療を志す理学療法士，作業療法士，トレーナー等にとっては，格好の指南書となる書籍へと生まれ変わりました．

　書籍は改訂されて本物といわれます．初版を世に問うた後も，さらに探究し，真実を求め，研究知見を積み重ねた者にしか，改訂への強い思いは生まれてきません．そして，その作業を成し遂げた工藤先生ならびにご執筆の先生方に敬意を表します．

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目次 59巻1号 , 2025年1月 , pp.8-9

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動画配信のお知らせ 59巻1号 , 2025年1月 , pp.4

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第36回「理学療法ジャーナル賞」発表 59巻1号 , 2025年1月 , pp.68

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「作業療法ジャーナル」のお知らせ 59巻1号 , 2025年1月 , pp.86

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バックナンバー・次号予告 59巻1号 , 2025年1月 , pp.134-135

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編集後記村永　信吾 59巻1号 , 2025年1月 , pp.136

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　あけましておめでとうございます．第59巻第1号をお届けいたします．本号の特集は「隣接関節の運動の影響」です．隣接する関節間の運動学的関連性とそれに伴う関連障害について，各専門の先生方よりご解説いただきました．小林氏は主成分分析を活用し，複数関節の相互関係を包括的な分析で捉えることを紹介しています．齋藤氏は脳卒中患者の姿勢戦略を隣接関節運動やバランスなどの複数の要因からの推論することを紹介しています．宮下氏は前腕の回内外と肩の外旋運動の関係を，堀家氏は投球フォームと肘の外反ストレスとの関係について紹介しています．対馬氏は股関節障害による腰椎代償運動への影響を，永井氏は股関節の機能障害による腰椎前彎の増加や腰椎すべり症発症リスクとの関連について紹介しています．加藤氏は股関節と膝関節の二関節筋における関節モーメント間のトレードオフについて，廣濱氏は膝や股関節障害による隣接関節への影響とその臨床アプローチについて紹介しています．大川氏は歩行時の下肢ストレスについて，岩永氏は足部形状が歩行に与える影響について紹介しています．いずれの論文にも身体動作をみる理学療法士にとって大いに役立つポイントが満載です．

　Close-upでは，弁護士の水沼氏によって医療現場で押さえておきたい労務管理とその法的根拠がわかりやすく解説されています．石井氏は職場教育と自己研鑽の両立について，平岩氏はワークライフバランスを考慮した労務管理について解説しています．そのほかにも，「薬剤と理学療法」，「文献収集と管理」，「理学療法士のキャリアデザイン」，「AIと理学療法」の新連載がスタートしました．本年も読者の皆様と一緒に魅力ある雑誌となるよう取り組んでまいります．どうぞご期待ください．

読者の声募集 59巻1号 , 2025年1月

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基本情報

理学療法ジャーナル
59巻1号
(2025年1月発行)

電子版ISSN：1882-1359 印刷版ISSN：0915-0552 医学書院

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理学療法ジャーナル 59巻1号 (2025年1月発行)

特集 隣接関節の運動の影響

Close-up ワークエンゲイジメントを高める労務管理

連載 とびら

連載 視覚ベースの動作分析・評価・第9回

連載 薬剤と理学療法・第1回【新連載】

連載 理学療法士のキャリアデザイン—多様な可能性と挑戦・第1回【新連載】

連載 文献収集と管理・第1回【新連載】

連載 理学療法とAI—活用実践例と近未来の展望・第1回【新連載】

連載 臨床実習サブノート 「どれくらい運動させていいかわからない」をどう克服するか・第10回

連載 My Current Favorite・33

連載 私のターニングポイント・第60回

報告

症例報告

学会印象記

書評

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基本情報

前身誌

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Close-up　ワークエンゲイジメントを高める労務管理

連載　とびら

連載　視覚ベースの動作分析・評価・第9回

連載　薬剤と理学療法・第1回【新連載】

連載　理学療法士のキャリアデザイン—多様な可能性と挑戦・第1回【新連載】

連載　文献収集と管理・第1回【新連載】

連載　理学療法とAI—活用実践例と近未来の展望・第1回【新連載】

連載　臨床実習サブノート　「どれくらい運動させていいかわからない」をどう克服するか・第10回

連載　My Current Favorite・33

連載　私のターニングポイント・第60回

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