理学療法ジャーナル 54巻8号 (2020年8月)

特集 パフォーマンス向上のための筋力トレーニング

EOI(essences of the issue)
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 理学療法の目的は,QOLの向上に資する身体動作能力の改善・機能向上を図ることにある.筋力トレーニングはその大きな柱ではあるが,単に個別の筋力強化を図ることでは目的を達成できない.動作・活動に焦点を当て,筋の働きを考えて効率的なプログラムを立案し実践していくことが大切である.本特集では,身体動作能力のパフォーマンスの向上を図るために行う筋力トレーニングについて,基礎的な知識を整理し,さまざまな疾患・障害への実践例を通して具体的なプログラム作成と応用に結びつく考え方を示していただいた.

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Point

●筋パフォーマンスの一つの要素として筋力を捉える

●筋力低下の源と原因を知り,それに対して臨床判断を行う

●器官としての筋のトレーニングの基本的理論を理解する

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Point

●筋力には筋骨格系因子や神経系因子,代謝・内分泌系因子だけでなく,感覚機能や年齢,性別,身体活動量などが複雑に絡み合い相互に影響を与えている

●加齢による筋力低下の程度は筋によって異なるが,一般には下肢筋で著しい

●下肢筋力がある閾値を下回るとADL障害を来す危険性が高まることが報告されている

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Point

●筋力は,筋自体が発揮する張力と関節運動を伴う関節モーメントなどいくつかの捉え方がある

●筋力測定によって得られた値を量的・質的に捉え,対象者のニーズに沿った評価が必要である

●パフォーマンス向上には,筋系,神経系,骨関節系など多角的に筋力を捉えることが重要である

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Point

●脳血管障害による上位運動ニューロン症候群について理解する

●上位運動ニューロン症候群の陰性徴候である弱化(weakness)を理解する

●弱化(weakness)に対するアプローチを考える

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Point

●神経変性疾患は,疾患の症候や進行速度を理解したうえで,個々の患者の病期や症候に応じたリハビリテーション介入が必要である

●神経変性疾患における筋力トレーニングの優位性に関するエビデンスはなく,他のトレーニングを併用した複合的な介入が効果的である

●定期的な評価による効果判定を行い,適切な負荷量を検討したうえで実施する

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Point

●変形性膝関節症における筋力低下は大腿四頭筋だけでなく,ハムストリングスにも認められる

●ハムストリングスの筋力と歩行速度には関連がある

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Point

●呼吸循環障害患者のパフォーマンス低下は骨格筋異常が原因となる

●慢性心不全(CHF)と慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対しては筋力トレーニングが中心となる

●加齢の要素も考慮して目的をもった筋力トレーニングを行う

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Point

●適切に筋力トレーニングを行えば,高齢者であっても筋力増強やパフォーマンスの向上が望める

●複合トレーニングは高齢者のパフォーマンスを高める有効な方法である

●運動イメージトレーニングの併用により,効果的なパフォーマンスの向上が期待できる

Close-up 理学療法士は再生医療に向き合えているか

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はじめに

 中枢神経系疾患の多くは,運動麻痺や感覚障害,高次神経機能障害などを有し,それらの障害が要介護状態となる要因の第1位であることから,社会保障費の観点からも有効な治療法の開発が望まれている.人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)の発見によって報道やインターネットを通して再生医療が一般の人々にも認知され,多くの患者とその家族から再生医療への期待が高まっている1).新規治療として期待される再生医療は,条件及び期限付き承認制度が創設されるなど,臨床応用が加速している.

 われわれは,再生医療,リハビリテーション医学,ロボット工学,脳科学に関する科学の進展と知識の普及を図ることを目的とし「日本再生医療とリハビリテーション学会(http://saiseireha.com/)」を起ち上げ,研究者と臨床家の橋渡しをしつつ,国内外の関連領域と連携しながらシステム化を進めている.その学会運営を通じて,各種幹細胞移植および再生医療のリハビリテーションに関する実施例から多くの臨床的知見やノウハウが蓄積されてきている.

 またわれわれは,本年度から広島大学大学院医系科学研究科脳神経外科学教室と共同で,世界初の自家頭蓋骨由来間葉系幹細胞を用いた中等症以上の脳梗塞に対する再生医療臨床研究を実施する2,3)(厚生局認証番号NA8150006).本稿では,中枢神経疾患に対する再生医療を中心に,細胞移植によって期待される作用機序および細胞投与後の理学療法に期待される役割について概説する.

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はじめに

 従来,脊髄を完全に損傷すると麻痺領域の神経機能の回復は困難とされてきた.しかし「中枢神経は再生しない」という従来の常識は,今や明確な科学的エビデンスをもって覆されつつある.現在では分子・細胞レベル,実験動物での神経再生に関する研究成果の蓄積を経て,ヒト臨床症例を対象とした治験が複数の手法で進められ,2019年には骨髄間葉系幹細胞に由来する製剤「ステミラック注」が薬価収載に至ったことに反映されるように,再生治療が現実的な選択肢となる可能性が高まりつつあると言える.従来の機能回復の限界を打ち破る可能性を秘める再生医療は,リハビリテーションのあり方,そこにかかわる理学療法士の立場と役割にも変化をもたらすことが予想される.再生医療の実現を念頭に置いたときに,どのような認識と役割をもってリハビリテーションの臨床を進めていくのかを現実味をもって考える時期に入ってきたと言えるであろう.

 筆者が所属する国立障害者リハビリテーションセンターでは,2016年に再生医療リハビリテーション室を開設し,大阪大学医学部附属病院が実施する自家嗅粘膜移植,札幌医科大学が実施する骨髄間葉系幹細胞投与を施された慢性期脊髄損傷症例を受け入れ,術前術後/投与前後のリハビリテーション効果の検証に関する臨床研究を行っている.本稿では自家嗅粘膜組織移植に関する取り組みとこれまで得ている結果を紹介し,その経緯で思い至った再生医療に対する理学療法士の課題について,筆者の考えを述べたい.

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関節軟骨損傷の治療および軟骨再生医療

 関節軟骨は,無血管組織で細胞数も少ないため,自己修復能力に乏しい.損傷を放置すると,高率に変形性関節症へ進行する.従来,軟骨損傷に対し骨髄刺激法が行われてきたが,線維軟骨での修復のため長期成績が不十分であった.近年,軟骨欠損に対する新しい治療として,さまざまな再生医療的アプローチが試みられている.自家軟骨細胞を培養して軟骨欠損部に移植する自家培養軟骨細胞移植術(autologous chondrocyte implantation:ACI)は,有効性が示されている一方で,従来の治療成績と有意な差がないとの報告もあり1),さらなる検討が望まれる.近年,骨髄,脂肪,滑膜などさまざまな組織から分離,培養可能な間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)による軟骨再生が注目されている.特に,滑膜組織から樹立されるMSCは,高い軟骨分化能を有するとされる2).さらに,新たな細胞源としてES細胞やiPS細胞に代表される多能性幹細胞を用いた軟骨再生研究も進められている.

連載 とびら

先の見えない時代に 元木 純
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 この原稿が掲載される頃,本来であれば日本中が東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に熱狂しているはずであった.筆者もボランティアスタッフの一員として参加するはずだったこの一大イベントであるが,ご存知のとおり史上初の延期開催が決定し,残念な思いとともに,それどころではない社会状況に致し方のなさとが交錯し,やり場のない日々を過ごしている.その後も未知のウイルスによる感染は全国に拡大し,ついに政府による緊急事態宣言にまで至っている.今後がどうなるのかまったく先が見えない状況である.

 しかし,それ以前からここ10年ほどの日本は各地で大規模な自然災害に見舞われ,隣国との関係性も変化するなど,われわれ自身ではコントロールできない要素による出来事が次々に起こっている.想定外,前例がない,未曾有の,記録的な,という言葉が伝えられるたびに,これまで積み重ねてきたデータや経験値がまったく通用しなくなる「先の見えない時代」に生きているのだということをひしひしと感じている.

連載 目で見てわかる 今日から生かせる感染対策・1【新連載】

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Question 1. WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Careで紹介されている「アルコール製剤による手指衛生法」の手順を確認しましょう.

連載 脳画像から読み取る障害像と理学療法・20

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Question

この脳画像から障害像が読み取れますか?

連載 内科疾患患者における理学療法介入に必要なアセスメント・Part 2

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循環器疾患の概要

 本邦における心疾患(高血圧性のものを除く)の患者総数は,およそ173万人と悪性新生物<腫瘍>に次いで多い1).疾患別では,急性心筋梗塞は男性では60〜69歳の準高齢者の世代が最多である一方,女性は80〜89歳であった.また,生存率は治療技術の進歩により飛躍的に増加し,Killip分類class Ⅳであっても52.5%の生存率を示している2)

 次に,心不全では2020年に推定新規発症者数が年間35万人となり3),罹患者数は2030年には130万人に達すると推計されている4).年齢構成は,男女とも80〜90歳の高齢者世代が最多であり,New York Heart Association(NYHA)class Ⅳ群でも82.1%の患者は生存し退院できている2).さらに,現在は左室収縮(left ventricular ejection fraction:LVEF)が保たれ拡張障害を呈する心不全(heart failure with preserved ejection fraction;HFpEF)が増加してきている5).HFpEFを罹患する患者はより高齢で女性が多く,高血圧,心肥大,貧血,心房細動などを有していることが明らかになってきた6)

連載 新しい臨床実習・第8回

実習中のタスク 酒井 吉仁
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はじめに

 タスクとは目標達成のために課せられた仕事や職務である.現在までの臨床実習については,その実施方法や評定方法などが学校養成施設や臨床実習施設によってさまざまであることが指摘され,臨床実習時間外の課題など,臨床実習のあり方を見直すことが求められている1).これに伴い理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドライン2)では,臨床実習の方法について,実習生が診療チームの一員として加わり,臨床実習指導者の指導・監督の下で行う診療参加型臨床実習が望ましいとの記述がなされた.よって本稿では,新しい「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」(以下,新・指定規則)に基づいて行われる診療参加型臨床実習でのタスクについて述べる.

連載 理学療法士が知っておきたいヘルスケア産業・8

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 「人生100年時代」,医療や介護の進歩により,多くの方が長寿を全うできる時代となった.最近では,自立した生活をできるだけ長く過ごせる健康寿命の重要性が指摘され,超高齢社会では社会保障費の増大を抑制することを目的とした「予防」の取り組みが非常に重要と考えられる.なかでも近年,フレイル予防が注目されている.一般社団法人日本健康寿命延伸協会(以下,当協会)では,疾病予防,医療費増大の抑制,さらには健康寿命といった観点からフレイル予防民間サービスを展開し,その普及や発展・推進に取り組んでいる.

 当協会は,東京都健康長寿医療センターが2011年から高齢者の「健康寿命の延伸」や「フレイル予防」を目的として取り組んできた高齢者健康増進センターの運営業務を受託し,地域在住高齢者を対象に ① フレイル評価,② 運動,③ 遠赤外線低温サウナ(運動困難なフレイル高齢者を対象)の3つのプログラムを提供している1,2).これらは,フレイル評価による「フレイル状態の可視化および早期発見」,運動や遠赤外線低温サウナプログラムによる「心身機能の維持・向上」および「フレイルの進行防止・改善」といったフレイル予防を主な目的として行われ,プログラムが有効である機序に関するエビデンスの構築も進めている1〜3).さらには,フレイル評価により適正プログラムの推奨や運動時の適切な運動強度の自動算出を医療センターと共同開発し,より安全に効果的なサービス提供が可能となった.

連載 国試から読み解く・第8巻

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次の文により11,12の問いに答えよ.

 頸髄損傷者の起き上がり動作を図に示す.

連載 臨床実習サブノート 運動器疾患の術後評価のポイント—これだけは押さえておこう!・5

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はじめに

 変形性膝関節症(osteoarthritis of the knee:膝OA)患者の主訴は疼痛です1,2).保存療法で奏効しない場合は手術療法が適応となります.一般的な手術療法は,高位脛骨骨切り術(high tibial osteotomy:HTO)や単顆型人工関節置換術(unicompartmental knee arthroplasty:UKA),人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)が挙げられます.

 TKAは,末期膝OAや関節リウマチに代表される関節病変に対する外科的治療法の1つとして確立されています3).本邦におけるTKAの件数は年間約10万件を超え,世界中で急速に増加傾向にあります4).TKAの主な目的は,除痛や内外反変形の矯正,支持性の獲得,関節可動域の改善です5).長期成績は15年以上が90%以上と安定していますが6),術後疼痛や可動域制限に悩まされる例も少なくないのが現状です7)

 本稿では,膝OAに対するTKAの術式とTKA後の評価項目について述べます.

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高年齢労働者を取り巻く環境

 人生100年時代を迎え,年齢にかかわりなく働く社会へ向かいつつある.こうしたなか,高年齢労働者の労働災害の発生率は高く,休業も長期化しやすい現状があり,高年齢労働者が安心・安全に働ける環境づくりや,労働災害を予防する仕組みづくりは,これまで以上に重要な社会的課題となっている.

 このような状況を踏まえ,厚生労働省は有識者会議を開催し,「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン,以下「ガイドライン」)を作成した.

連載 甃のうへ・第75回

優しく 強く 髙田 ゆみ子
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 理学療法士になって,そして青森に来て13年目に入った.入職した当時はまさか自分が生まれ育った滋賀を離れ,遠い北国で十数年働いているとは想像もしていなかった.こうしてどうにかこうにかやってこられているのも多くのひととの出会いがあり,私にさまざまな刺激を与えてくださったおかげだと思っている.特に患者や一緒に働かせていただいてきた職場の上司,先輩から受けた影響は私にとって非常に大きなものとなっている.

 大学病院は「臨床・教育・研究」の3つの目的を併せ持つ医療機関とよく言われるが,そのなかでも入職当時より「臨床」を何よりも大切にし,患者のことを一番に考え,より負担なくうまく,早く,よくするためにはどうすればよいか,自分たちにできることは何か議論を交わし苦心を重ねてこられた先輩方の姿が印象的であり,その背中を追ってきたように思う.

連載 Relay Message・第8回

「価値」を見出す 大古場 良太
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 私の理学療法との出会いは,中学1年生の時に野球で肘を痛めたときでした.どんなことをされるのか恐々とするなか,最初に衝撃を受けたのは「この先生はなぜ少し触っただけで,投げるときいつ痛みが走るのかがわかるのだろう」ということでした.今考えると,画像所見や主治医の診察結果などの事前情報を収集したうえでの理学療法評価だったのでしょうけれど,当時の私にとっては大きなインパクトで,理学療法士という職業に憧れを抱くには十分な出会いでした.

 大学へ進学してからは,ともに理学療法士をめざす同志や諸先生方との出会いによって,理学療法を学ぶだけでなく,理学療法士としてどう自分の人生を構築していくか,その未来図をよく考えた大学生活だったことを思い返します.そのなかで,現職である大学教員への思いも芽生えていきました.

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要旨 【目的】本研究の目的は,歩行未自立の急性期脳卒中患者に対する長下肢装具(knee ankle foot orthosis:KAFO)を用いた歩行練習の有無が,急性期病院退院時の下肢の運動麻痺と回復期病院退院時の移動能力に及ぼす影響を調査することである.【方法】脳卒中患者47名を対象に,急性期病院退院時の下肢Brunnstrom Recovery Stage(BRS),回復期病院退院時の歩行項目と階段項目の機能的自立度評価法(Functional Independence Measure:FIM)点数,在院日数を後方視的に調査し,分析した.【結果】下肢BRSは,KAFO不使用群に対してKAFO使用群で,より運動麻痺の改善を認めた.また,歩行項目および階段項目のFIM点数において2群間に有意差を認めたが,在院日数に有意差は認められなかった.急性期病院退院時下肢BRSと回復期病院退院時の歩行項目および階段項目のFIM点数における相関関係は,KAFO使用群で有意な正の相関を認め,KAFO不使用群では歩行項目のFIM点数のみ正の相関を認めた.【結論】急性期脳卒中患者に対する歩行練習は,運動麻痺の回復や歩行,階段動作の獲得における長期予後に影響しており,歩行未自立者に対してKAFOを用いて可及的早期より歩行練習を行うことの有効性が高いことが示唆された.

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要旨 長期にわたるアルコールの多飲により,ペラグラ脳症を発症した症例を経験した.症例は,高次脳機能障害とペラグラ脳症由来の神経症状として,固縮,運動失調,運動麻痺,感覚障害等を認め,歩行とADLに介助を要した.歩行獲得とADLの自立には,失行による誤動作を修正したなかで立位,歩行練習を中心に運動療法を進めることが有効と考えた.失行の改善後,経過のなかで神経症状は改善し,16週目に病棟内の移動は独歩自立,屋外歩行は見守りにて可能となった.また,ADLは高次脳機能障害が残存しているが24週目には自立し当院を退院した.ペラグラ脳症は稀な疾患だが,医師の治療後も残存する機能障害に対しては,運動療法が有効であることを経験した.

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 本書は「イラストでわかる」シリーズの1冊である.イラストが多用され,近年の理学療法学教科書のトレンドにもなっているわかりやすさを追求した体裁となっている.説明文も親しみやすい文体で読みやすい.しかし,理解してほしい内容がやさしいわけではない.それは,理学療法士が専門職であり,理学療法学が専門的学問分野であることを考えれば当然のことである.

 本書は,総論,評価・介入方法で分類した各論,介入対象で分類した各論と「臨床実習」という章から構成されている.総論の部分は,「理学療法とは」という概論のなかの概論といった章から始まる.この章では,古代から現代までの理学療法の歩みが丁寧に整理されて語られる.私が現役理学療法士として経験してきた時代の理念の変化も含めて,あらためて理学療法の歴史を振り返ることができ,理学療法士であることの誇りを感じさせられる内容になっている.

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 本書は重度の障害を持ちながらも地域で暮らす人々の,自立に至るまでのプロセスを事細かに記した貴重な記録である.謎のベールに包まれている彼らの「自立生活」を膨大なインタビューと資料で立体化している.

 マンションや一軒家を借りて,介護に通ってくる介助者と暮らす「自立生活」という暮らしのかたちは,障害当事者が年月をかけて,国や自治体に掛け合って作り上げてきたものだ.とはいえ,「自立生活」と呼ばれるからには,利用者の主体性が重要で,ヘルパーに任せて黙っていればいいというものではない.介護者探しも自分でやるが苦労の連続.「見守り」,「移動」など,最初のうちは勝手のわからないサービスもある.

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目次

文献抄録

バックナンバー・次号予告のお知らせ

編集後記 横田 一彦
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 季節は夏へと移っていきますが,今年は梅も桜もしっかり愛でることなく,気がつけばいつの間にか梅雨の長雨のただ中にいたような気がします.「とびら」に元木先生が記した「先の見えない時代に」ということを実感し,今このときが社会,医療,そして理学療法士にとっても,大きな転換点にあるのではないかと感じておられる方も多いのではないでしょうか.

 本号の特集は「パフォーマンス向上のための筋力トレーニング」です.理学療法士が診療を行うとき,筋力は欠かすことのできない評価項目であり,また介入すべきポイントになります.QOLの向上に資する身体動作能力の改善・機能向上を図るために,筋力,筋機能に対してどのようにアプローチすべきかを考えることは,理学療法士にとって永遠のテーマの1つであると思います.今回はパフォーマンスをキーワードとして,筋力トレーニングの基礎から応用までを諸先生方に論じていただきました.木藤論文では筋パフォーマンスなどの基礎的な知識の整理を,池添論文では成長・加齢と筋力との関係を,髙鳥論文では筋力評価の方法を整理していただきました.そして,具体的な疾病や障害を取り上げ,渡邊論文では脳血管障害,松田論文では神経変性疾患,山田論文では変形性膝関節症,田屋論文では呼吸循環障害,村田論文では高齢者を対象として,豊富な臨床経験をもとに具体的な筋力トレーニングの考え方や実践を示していただきました.いずれの論文も,明日から役立つ事柄が満載であると思います.

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基本情報

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理学療法ジャーナル
54巻8号 (2020年8月)
電子版ISSN:1882-1359 印刷版ISSN:0915-0552 医学書院

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