連載 私のターニングポイント・第10回
なぜできないのかを考えることも大事ですが,なぜできるのかについて考えることも同じくらい大切です
玉地 雅浩
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1藍野大学医療保健学部理学療法学科
pp.828
発行日 2020年7月15日
Published Date 2020/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201976
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- 文献概要
当時,理学療法士になって4年目の私は,患者さんやその家族にとって待ち焦がれる存在だと思っていました.ところが,ある日,認知症の方の病室にうかがったとき,家族の方は私に挨拶も返してくださらず,顔も見ないまま,「何もしないでください.歩かれたら困るのです.私しか世話する人がいないのです.ベッドでじっと寝てくれているほうが楽なんです」と,言葉遣いは丁寧ですが,怒りながら私に訴えてこられました.それまでは人の役にたっていると疑いもしませんでしたが,それは間違いだということに気づいた瞬間でした.
患者さんや家族の方は,苦しんでいることや悩んでいること,自身の希望を口に出せる人ばかりではありません.だからこそ患者さんや家族の方がどんな想いで過ごしておられるのかについて真剣に考えることは,医学的な評価と同じくらい大切だと思います.
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