胃と腸 34巻3号 (1999年2月)

特集 消化管の画像診断―US,CT,MRIの役割

序説

消化管の画像診断 八尾 恒良
  • 文献概要を表示

はじめに

 消化管疾患の診断におけるUS,CT,MRIの役割を考える場合,①ルーチン検査における役割,②精密検査における役割,③三次元画像診断における役割を区別して考慮することが必要と思う.

総論 ルーチン検査でわかる消化管疾患とその所見 1.腹部単純X線検査

  • 文献概要を表示

要旨 腹部単純X線写真は腹部のいろいろな症状を訴える患者では,ルーチン検査として広く撮影され,実際,診断上で大きな役割を果たしている.今回,腹部単純X線写真の意義を,①腹部単純X線写真のみで直ちに判明する消化管の疾患・病変,②腹部単純X線写真が診断上で確定診断に直結する疾患・病変,③診断上で疑診や次の検査法の選択に有用な疾患・病変,に分けて述べた.このうち,これまであまりよく知られていなかった消化管壁の石灰化による粘膜下腫瘍様の病変,“静脈硬化性大腸炎”についてより詳しく述べた.

  • 文献概要を表示

要旨 本稿では消化管腫瘍の診断における体外式超音波検査(US)の意義について述べた.スクリーニング的検査法(前処置なし)では消化管早期癌の診断は非常に困難であるが,進行癌には高い診断能を有している.また,小腸や虫垂など,内視鏡診断の比較的困難な部位における補助的診断法としても有用である.一方,精査法として前処置を併用した場合,癌の深達度診断や粘膜下腫瘍の質的診断が可能である.いずれの方法においてもただ漠然と腹部を走査するのではなく消化管の解剖を熟知したうえで系統的走査を行うことは見落としを防ぎ,正確な部位同定のために重要である.画像の解釈をするうえで,層構造を中心としたUS独自の画像分析のポイントがあり,それらを総合的に判断してUS診断を決定する必要がある.従来の診断法と比較して粘膜面の微細な変化の評価という点でUSは大きく劣っているが,貫壁性情報が得られるという利点を有している.またその非侵襲性と簡便性がその特徴であり,被検者の全身状態によっては侵襲的検査が施行できないこともあり,そのような状況では特にUS診断の意義は大きい.これら種々のmodalityを相補的に駆使することで個々の症例におけるより的確な診断治療戦略の決定が可能となる.

2)炎症,その他 湯浅 肇
  • 文献概要を表示

要旨 超音波検査で消化管疾患をチェックするには,①腸管壁の肥厚,②腸管の拡張,③腸問膜の肥厚,④リンパ節の腫大などに着目する.特に腸管壁の肥厚のある部位は必ず病巣と考えてよい点から,この壁肥厚の性状(層構造の存在と破壊,潰瘍性病変の存在)とその分布を検討することで診断を推理することができる.今回は壁肥厚を伴う潰瘍性病変について症例を呈示して解説した.

総論 ルーチン検査でわかる消化管疾患とその所見 3.X線CT検査

  • 文献概要を表示

要旨 消化管腫瘍のスクリーニング検査としてはX線および内視鏡が最も有用であり,CTがこれに代わることはまずありえない.しかし,臨床の場では他の目的でCT検査が数多く施行されており,消化管もその画像の中に必ず撮影されているので,読影時に注意深く読影することによって,偶然に腫瘍が発見されることがある.その際の所見としては,限局した腸管壁の肥厚や腫瘤形成が挙げられ,周囲のリンパ節腫大や腸管周囲脂肪織の変化などが参考になる.検査方法としては,経口造影剤の投与などの処置を行うことによってその診断能が飛躍的に向上する.

  • 文献概要を表示

要旨 炎症性腸疾患のルーチン検査としてCT検査が日常頻繁に行われている.CTは腸管の変化,壁肥厚の状態および管腔外の変化として腹水,腸間膜脂肪濃度の変化,膿瘍,瘻孔形成を客観的に描出でき,経過観察に役立つ.個々の疾患とその合併症のCT所見について述べる.また,CTは急性腹症の診断に欠くことのできない手段であり,腸病変に起因する虫垂炎,憩室炎,絞扼性腸閉塞や上腸間膜動脈閉塞症などの急性腹症についても述べる.

各論 US,CT,MRIを使った診断(精密検査)と治療効果の判定 1.食道

  • 文献概要を表示

要旨 食道癌の深達度診断,リンパ節診断におけるCT(dynamic CT),MRI(magnetic resonance imaging)の有用性について検討した.両者とも他臓器浸潤(A3)の診断に有用であり,大動脈浸潤は腫瘍との接触角を,気管・気管支浸潤は,その変形像を基準に良好に診断しえた.リンパ節の部位別描出率は両者とも食道壁周囲が不良で,気管周囲が良好であった.特にMRIは,任意の撮像面の設定により所属リンパ節の同定が容易であった.また,gadolinium(Gd)-DTPAを用いた造影MRIによる転移診断では,92%の正診率を得た.深達度,リンパ節診断においては,CT,MRI,USのそれぞれの特性を生かして効率よく,より正確な判定を行うことが肝要と考える.

  • 文献概要を表示

要旨 超音波,CT,MRIは粘膜下腫瘍の質的,局在診断に有用であるが,腫瘍の拾い上げにはX線造影や内視鏡検査が適している.これらはともに食道壁の断層形態を画像として表すが,現在のCT,MRIにより臨床上有用な情報が得られるのは比較的大きな病変に限られる.日常診療でよく遭遇する2~3cmまでの粘膜下腫瘍には内視鏡超音波検査が適している.細径プローブを用いてのソフトバルーン法は,短時間で手軽に施行でき,詳細な画像を得ることができる.腫瘍により画像に特徴はあるが,良悪性を鑑別する決定的な所見はない.潰瘍形成などの表面形態の変化や大きさなども勘案して診断しているのが現状である.

  • 文献概要を表示

要旨 USは門脈系や腹腔内の血管や食道・胃壁の状態を観察できることから,門脈圧充進症の診断にも広く用いられている.超音波ドップラー法は門脈血流の計測や,カラー画像による血流方向の同定が可能である.造影CTは,側副血行路の観察に優れ,高速らせんCTは側副血行路の立体的描出を可能にした.一方,MR angiographyは,造影剤を用いることなく三次元的に静脈瘤やその供血路および流出路の描出が可能であり,食道・胃静脈瘤治療前後の血行動態変化の評価に用いられている.

各論 US,CT,MRIを使った診断(精密検査)と治療効果の判定 2.胃・十二指腸球部 1)悪性腫瘍

  • 文献概要を表示

要旨 近年の画像診断の進歩には,目覚ましいものがあり,消化管の悪性腫瘍の局所進展度診断においてもUS,特にEUS,CT,MRIが治療法の選択に重要な情報をもたらしている.一般的には,EUSはm,sm,mp,ss,seなどの鑑別に優れ,CT,MRIはse以下と,多臓器への浸潤(sei)を鑑別するのに優れていると思われる.しかしながら,EUSにおいても線維化と癌浸潤の鑑別,ss,se,seiの鑑別にはパターンによる判定が必要である.また,画像診断の進歩は三次元表示を可能とし,精度の向上をもたらすものと思われる.更に,三次元表示は臨床において体積の測定をも可能とし,化学療法の評価などに今後応用されるものと思われる.

  • 文献概要を表示

要旨 US,CT,MRIにおける転移診断においては,肝転移の正診率は高い.しかし,リンパ節転移や腹膜転移の診断は肝転移に比べ困難であり,特異度は高いものの,感度は低い.USは最も簡便な検査法であり,転移診断として最初に行われるべき検査と考える.CTはUSとほぼ同等の診断能であるが,USよりも客観性が高い利点を有し,治療効果判定にも有用である.MRIは転移診断の精査として行われているが,リンパ節転移の診断能は不十分であり,今後MRI用造影剤の開発が待たれる.

  • 文献概要を表示

要旨 消化管疾患におけるUS,CT,MRIの役割は基本的には補助診断である.これらの検査で壁の広範な肥厚を呈する疾患には進行胃癌,急性胃炎,悪性リンパ腫,胃潰瘍,粘膜下腫瘍などがある.また,限局性の壁の突出を呈する疾患には粘膜下腫瘍,1型胃癌,ポリープなどがあるが,これらの疾患の鑑別診断は現状では困難である.しかし,悪性リンパ腫では胃癌より内部エコーがより低エコーであることや,脂肪腫のようにCT値により診断が可能なものもみられる.三次元CTでは内視鏡像に類似した画像が得られることや,MR内視鏡では局所のより詳細な所見が得られる可能性があり,US,CT,MRIとともに今後の展開が期待される.

各論 US,CT,MRIを使った診断(精密検査)と治療効果の判定 2.胃・十二指腸球部 2)粘膜下腫瘍(胃外性圧排を含む)

  • 文献概要を表示

要旨 当院で外科的手術を施行され組織学的に確定診断のなされた胃,十二指腸粘膜下腫瘍22例のうち胃平滑筋腫および平滑筋肉腫19例を対象にUS,CT,MRIの有用性を検討した.原発巣の描出率はUSでは50%(8/16)と低かったが,超音波内視鏡(EUS)では93%(13/14)で胃壁の層構造と腫瘍の連続性が明らかになり,粘膜下腫瘍の診断には必須の検査と考えられた.CTでは94%(16/17)で原発巣の描出が可能であり,遠隔転移の有無以外に腫瘍の正確な大きさ,拡がりを知るのに優れていた.平滑筋腫瘍に関してはEUS,CTの両者あるいはいずれかの検査で内部構造がheterogenousと診断された場合は全例が平滑筋肉腫であった.

  • 文献概要を表示

要旨 十二指腸腫瘍における消化管X線,内視鏡後に,あるいは同時期に行われるUS,CTなどの横断画像診断法の診断的意義について検討した.乳頭部癌では横断画像検査と内視鏡検査の診断的位置付けはほぼ確立された感がある.すなわちスクリーニング法として内視鏡検査,体外式US,helical CTが,進展度診断などの精密検査法として内視鏡超音波(EUS),管腔内超音波検査検査(IDUS)が位置付けられよう.特にEUSとIDUSを効率よく組み合わせることで従来は診断が困難であった十二指腸浸潤や膵浸潤の診断が可能となった.また,そのほかの十二指腸腫瘍においても粘膜下腫瘍の形態をとるものではEUS,IDUSにより,また血流の豊富な腫瘍や進行癌ではhelical CTにより診断早期の段階に質的診断が可能で進展度診断もある程度可能なものと思われた.

  • 文献概要を表示

要旨 空・回腸腫瘍103例の臨床的特徴を調べ,このうちの悪性腫瘍32例において,X線所見とCT所見の相互比較を行い,かつ7例のMRI所見を検討した.悪性リンパ腫の69%は求心性壁肥厚を認め,更にX線の形態にかかわらず,どの型もすべて腫瘍内密度均一であった.平滑筋肉腫で最も多くみられた管外発育型はすべて偏心性壁肥厚で,1例を除くすべてが腫瘍内密度不均一であった.管外発育型では結節状発育が83%と極めて高率であった.小腸癌は全例に求心性発育を示し,腫瘍内密度は不均一なものが多く,全例に腸問膜浸潤を認めた.CTやMRIは病変の内部構造や壁外情報を得ることが可能であり,有用な情報を付加しうる手段と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 小腸疾患症例における体外式腹部超音波(US)所見とコンピュータ断層(CT)所見を提示した.腸重積では同心円状に描出される重積腸管が特徴的であるが,成人症例では先進部の腫瘍性病変をX線・内視鏡検査で確認する必要があると思われた.一方,広範な小腸の浮腫像を呈するSchönlein-Henoch紫斑病,全身性エリテマトーデスの虚血性腸炎型腸病変,好酸球性胃腸炎,小腸アニサキス症ではKerckring皺襞の腫大を伴う小腸壁の肥厚や腹水がUSとCTで描出された.しかし,USとCT所見のみではこれらの疾患を厳密に鑑別することは困難と思われ,臨床像とX線・内視鏡所見を加味した慎重な検討が必要と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 回盲部は盲腸・終末部回腸・虫垂から成り,解剖学的差異により診断学的アプローチは若干異なる.盲腸腫瘍に対しては注腸X線検査・大腸内視鏡検査で十分質的診断が可能である.終末部回腸は,時に応じてまた腫瘍の種類により,注腸X線検査時に回腸の所見を得る方法以外に,経口小腸造影法・ゾンデ法・経肛門的回腸造影法・(大腸内視鏡下)選択的逆行性回腸造影法などを行う.虫垂腫瘍は,注腸X線所見・内視鏡所見のみでは診断困難なこともあり,US,CT,MRIも含め総合診断することになる.悪性腫瘍の術後または化学療法の効果判定も含めた経過観察にはUS,CT,MRIの寄与する機会は増してくる.

  • 文献概要を表示

要旨 回盲部炎症の診断におけるUS,CT,MRIの有用性について,症例を呈示しながら検討した.急性炎症が激しく内視鏡検査や注腸X線検査を施行できない症例や,粘膜に顔を出さない腸管壁内外の病変が良い適応となる.回盲部に炎症があると,腸管壁は肥厚する.膿瘍はUSでは腸管外に境界不鮮明な低エコー像,CTでは低濃度域,MRIでは通常はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号になる.急性虫垂炎では,USによる長軸像ではソーセージ様に弓状に腫大し,短軸像では高エコーの虫垂間膜を認める。虫垂粘液瘤は,境界鮮明な薄い壁に包まれた粘液を充満した囊胞性病変として描出される.患者への侵襲が少なく,経過観察するのに適している.

各論 US,CT,MRIを使った診断(精密検査)と治療効果の判定 6.大腸 1)腫瘍

  • 文献概要を表示

要旨 大腸癌におけるUS,CT,MRIの果たす役割は周辺臓器への浸潤,リンパ節転移,他臓器への遠隔転移の有無などの情報からその病期診断と手術後の経過観察(再発の診断)にある.現状では壁深達度診断は困難であるが,周辺臓器への浸潤,明らかなリンパ節転移,肝や肺への転移の診断には欠かせない検査法であり,特に直腸癌手術後の経過観察のための定期的なMRI検査は重要である.また,USは簡便かつ非侵襲的な検査で,術後の肝転移の早期発見のためにも定期的な検査が望まれることを強調した.更に,小腸腫瘍に対するCT検査の意義についても述べた.

  • 文献概要を表示

要旨 大腸腫瘍診断におけるUS,CT,MRIの役割について,特にその鑑別診断に関して述べた。従来の診断法と比較してこれらはすべていわゆる断層法的診断法であり,消化管の貫壁性情報が得られる点が特徴である.一方,粘膜面に生ずる微細病変の描出は現時点では内視鏡やX線造影に匹敵する能力は有しておらず,その限界を理解して検査の適応を決定し画像を解釈する必要がある.非上皮性腫瘍の鑑別においては腫瘍成分が明らかに他の消化管と異なる特徴を有するもの以外は消化管壁の層構造との関連を評価することが重要であり,その点ではUSが優れていると言える.また分解能においても現時点ではUSがやや勝っており,一般臨床で比較的容易に応用可能である.一方,画像の客観性,共有性ではCT,MRIの両者が言うまでもなく優れており,よりoperator-dependencyの少ない検査法である.その正確な診断能や臨床的有用性に関しては今後の更なる検討が必要であるが,近年の機器の基本性能の向上や画像構成技術の進歩には目覚ましいものがあり,これらの検査法は消化管診断学において重要な地位を占めるようになる可能性は否定できない.

各論 US,CT,MRIを使った診断(精密検査)と治療効果の判定 6.大腸 2)炎症

  • 文献概要を表示

要旨 大腸壊死性疾患(上腸間膜動脈血栓症,壊死性虚血性大腸炎),大腸穿孔(憩室穿孔,憩室炎穿孔,宿便性穿孔・特発性穿孔)について症例を中心に臨床像,腹部単純撮影,US,CTによりどこまで鑑別診断ができるかについて述べた.大腸壊死性疾患や大腸穿孔では腹部が膨隆し,急激に全身状態が悪化するため,全身状態の管理と診断・治療に緊急性が要求される.壊死性虚血性大腸炎の場合,大腸は拡張し,広範囲に発赤,腫脹を認め,腹水が多く,血性になることがある。上腸間膜動脈血栓症では壊死が強いと,大腸壁のair像や門脈内air像を認めることがある.憩室炎穿孔は憩室炎の前駆症状があり,US,CTで局所大腸の浮腫と周囲膿瘍を形成,憩室穿孔では排便時の息みなどを契機として,突然の腹痛で始まる.US,CTで憩室の証明,周囲膿瘍が特徴である.また宿便性穿孔も息みなどで,突然発症し,US,CTで宿便の証明と周囲膿瘍を証明する.高齢化が進む中,大腸の急性疾患,特に緊急手術を必要とする疾患―大腸壊死性疾患,大腸穿孔について,どこまで鑑別診断が可能か

を検討した.

  • 文献概要を表示

要旨 炎症性腸疾患のUS診断は腸管拡張,壁肥厚の程度,層構造,潰瘍を示唆する多重エコー,腹水の評価が主体である.Crohn病ではUS上の壁肥厚の程度や腸壁各層の描出状態はX線検査による隆起病変の程度と関連がみられた.3D-CTでは内視鏡で観察不能な部位の腸管内面の画像を作成することは比較的容易であるが,診断に寄与する画像情報を得るためには,画像構成の修練が不可欠であり,画像の解像度も十分ではない.MRIで消化管病変が検出できるのは病変が十分に大きい場合や壁の肥厚が顕著な場合に限られ,炎症性腸疾患の診断に空間分解能の低いMRIが主役を演じることはない.現在のところ微細な病変に対するUS,CT,MRI検査の診断能は満足できる水準にない.ただし,X線や内視鏡で表現できない変化を描出できることもあり,これらの検査の特性を知り,X線および内視鏡検査との組み合わせにより,疾患の認識が深まり,治療の向上に寄与できるものと思われる.

各論 US,CT,MRIを使った診断(精密検査)と治療効果の判定 7.直腸・肛門

  • 文献概要を表示

要旨 helical CTの普及により,注腸・大腸内視鏡の補助的役割としてCT内視鏡による大腸癌検診が始まろうとしている.CT・MRIによる直腸癌の壁深達度の診断はまだ超音波内視鏡に及ぶものではないが,三次元データの活用,特にMPR画像と経直腸コイルによる高分解能MRIには期待が持てる.リンパ節転移の診断は大きさのみによる評価では限界があり新しい造影剤の開発が必要である.直腸癌術後の経過観察・再発診断にbaseline CTは有用であるが,精査を要する場合にはMRIやポジトロンCTを積極的に用いることが重要である.複雑な痔瘻の診断ではMRI・CTを用いその形態を三次元的に把握することが治療方針の決定に役立つ.

各論 US,CT,MRIを使った診断(精密検査)と治療効果の判定 8.腸間膜・腹膜病変

  • 文献概要を表示

要旨 腸間膜・腹膜病変の評価にはこれらの構造の観察とともに隣接臓器の観察も重要である.腹腔内全体を観察する必要があるために検査の主体は造影CTとなる.本稿では腹部CTを中心に各検査法の役割と,代表的な腸問膜・腹膜病変の画像所見と診断ポイントを述べる.

各論 US,CT,MRIを使った診断(精密検査)と治療効果の判定 9.消化管出血(食道・胃静脈瘤は除く)

  • 文献概要を表示

要旨 消化管出血の診断に関し,超音波検査ではカラードップラーが血管性病変を検出するのに期待され,MRIでは新しい造影剤を用いた出血点検索法が実験的に成功している.CTではdynamic helical CTが血管造影法よりも出血点同定に有効であり,臨床的にも広く施行されるようになろう.対象としては内視鏡診断が不可能な消化管領域病変,近接臓器疾患,特に肝胆膵領域疾患,門脈系うっ滞を来す疾患,血管性病変である.

  • 文献概要を表示

要旨 ヘリカルCTによる臓器の三次元表示法を応用し,通常内視鏡と同様の視点を持つ仮想内視鏡像(virtual colonoscopy)や通常注腸二重造影像に近似する仮想注腸二重造影像,管腔内管腔外の情報を併せて表現できるmultiplanner reconstruction(MPR)画像表示と3D画像を併せて表示する3D-MPR画像などの各種三次元表示が可能である.これらにより,病変の位置や立体構造を理解することが容易になる,また,5mm以上の隆起性病変や表面型病変は描出可能で,スクリーニング検査としての可能性も考えられる.

2.立体計測 安田 健治朗 , 中島 正継
  • 文献概要を表示

要旨 消化管病変の立体計測の可能性を検証した.消化管病変を三次元像として抜き出すためには,消化管壁の詳細な描出に優れる内視鏡的超音波断層法(EUS)を用いることが望ましい.EUSでは組織とよく一致した層構造を基準に,壁内に存在する病変を抜き出すことが可能である.連続走査を可能とした超音波プローブによって病変部をスライスし,断面を厚さで乗じたものを積分すると体積を出すことができる.正確な測定にはスライス数を増やせば誤差は少なくなる.立体計測値を何に用いて,何を解析するかは今後の課題であるが,消化管病変も平面診断から立体診断となり吏に数量化できるようになる意義は決して小さいものではない.

  • 文献概要を表示

 本書は長廻紘,藤盛孝博,星原芳雄,田淵正文の4氏により編集され,更に6氏を加えた10人により執筆された消化管内視鏡アトラスである.書名にもあるように,高解像ビデオエンドスコープによる内視鏡像がA4判154頁いっぱいに盛り込まれた大著である.

 はじめにその内容から簡単に紹介しよう.全体は5つのパートに分かれている.

  • 文献概要を表示

 好評のベストセラー「胃X線診断の考え方と進め方」の10年ぶりの改訂版である.内容とともに写真の多くが差し替えられ見やすくなった.胃X線診断と言うと,まず,X線透視と撮影が行われ,次にフィルムの読影の段階を経て,最後に鑑別診断へと進むのがお定まりのコースであり,多くの成書はこれに準じている.本書の特徴はこれまでにみられない型破りの構成にある.すなわち,序論に相当する第1章の「胃X線診断の成り立ち」に引き続き,意表をついて胃X線鑑別診断の章から始められる.しかも,この項は説得力があり興味あふれる内容となっている.ドラマに例えれば,まず核心となる事件が紹介され,読者を一気に物語に誘い込み,やがて登場人物の紹介,次いで物語の背景と展開という一連の手法に似ている.いずれにしろ本書がまず鑑別診断という実践的で具体的な診断法を先行させ,内容も単刀直入に核心に入っていくのでとけ込みやすい.更に,この章の胃疾患各論では,随所に佐野の分類を中心にした鑑別診断の方法論が展開されている.この分類は肉眼所見を重視したものであり,今日でもなおX線および内視鏡診断の基本になっていることが少なくない.例えば,Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌については,この分類を基本に早期胃癌の肉眼的所見と,これを反映するX線像がわかりやすく示されている.また,Ⅱc型早期胃癌の鑑別のポイントについても形,大きさ,深さをはじめ,蚕食像などの辺縁の変化,アレアの変化と顆粒不揃い度などの内面の変化,converging foldの読みなど,X線診断の基礎的な事項について明快な解説がほどこされている.X線ばかりか内視鏡診断の基礎にもなりうるものである.初心者には新しい知識として,消化器を専攻するものにとってもこれまでの知識を整理するうえでも大変参考になるであろう.

  • 文献概要を表示

 大腸疾患が増加しており,診療を希望する患者が病院で列をなしているが,担当医不足が嘆かれている.特に内視鏡医不足は深刻であり,専門医のいる病院では検査予約が1~2か月先といった状態である.なぜなら大腸内視鏡は手技が難しく,しかも偶発症を起こす危険性が高いため,医師の育成がニーズに追い付かない状況にあるからである,その点,注腸検査の場合は基本的な撮影マニュアルに従うと,比較的画一的な手法で撮影できるし,フイルムを熟練医と一緒に読影すれば誤診,見逃しもカバーできる.なによりもX線被曝を除いて,重篤な偶発症が発生しないことがメリットである.大腸癌検診が軌道に乗り,精密検査件数が増加するにつけて,内視鏡医不足を注腸検査でカバーしようとする傾向は当然のことであろう.法律上のことはともかく,現実には医師に代わって腕の良い放射線技師が検査を担当する施設も増えていると聞いている.

 南九州の消化器診断学を常にリードする西俣寛人,嘉人両先生―桜島のような熱いエネルギーとお人柄にはいつも敬服しているのであるが―が編集して,南風病院の放射線科スタッフである伊原孝志技師ら3名による共同執筆「注腸検査法マニュアル」を早速読ませていただいた.まえがきに西俣先生が“注腸検査法の診断能が内視鏡検査に遜色なく,またそのテクニックもそれほ難しいものではないという理解が広まることを期待して……”と記述しているが,まさに本書の出版目的がこの一文に込められており,全体のバックボーンとなっている.

編集後記 西元寺 克禮
  • 文献概要を表示

 消化器疾患の画像診断の進歩は目覚ましく,今日では病変の存在・性状診断のみならず癌の浸潤範囲,転移についても術前あるいは剖検前に正確に知ることが可能となっている.消化器疾患と言っても消化管と肝・胆・膵では手技の重みづけが異なるのは当然であり,消化管では消化管造影,内視鏡が今日でも中心である.したがってUS,CT,MRIは消化管疾患では,管外性の変化が主な診断対象であり,「胃と腸」ではこれを中心に取り上げることはほとんどなかった.「消化管の画像診断―US,CT,MRIの役割」と題する本増刊号は,これまでややもすると等閑視されてきた,これら検査法の意義を集大成したものとなっている.腫瘍,特に癌の壁内浸潤範囲診断,深達度診断など,体外式USやCT,MRIが不得手とするものもあるが,転移など腫瘍の診療にはこれらの検査が不可欠のものとなっており,これらが体系的に述べられている.このようにこれら3種の検査の適応は主として腫瘍であるが,本号では炎症の診断について,Crohn病などの慢性炎症性疾患のみならず,憩室炎,虫垂炎,エルシニア腸炎なども取り上げられている.また,腸間膜脂肪織炎など,今日注目されている疾患の検討や,三次元画像診断,virtual endoscopyなどのトピックスも網羅されており,本増刊号が今後診療のうえで必携の書になるものと確信する.

基本情報

05362180.34.3.jpg
胃と腸
34巻3号 (1999年2月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月9日~9月15日
)