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好評のベストセラー「胃X線診断の考え方と進め方」の10年ぶりの改訂版である.内容とともに写真の多くが差し替えられ見やすくなった.胃X線診断と言うと,まず,X線透視と撮影が行われ,次にフィルムの読影の段階を経て,最後に鑑別診断へと進むのがお定まりのコースであり,多くの成書はこれに準じている.本書の特徴はこれまでにみられない型破りの構成にある.すなわち,序論に相当する第1章の「胃X線診断の成り立ち」に引き続き,意表をついて胃X線鑑別診断の章から始められる.しかも,この項は説得力があり興味あふれる内容となっている.ドラマに例えれば,まず核心となる事件が紹介され,読者を一気に物語に誘い込み,やがて登場人物の紹介,次いで物語の背景と展開という一連の手法に似ている.いずれにしろ本書がまず鑑別診断という実践的で具体的な診断法を先行させ,内容も単刀直入に核心に入っていくのでとけ込みやすい.更に,この章の胃疾患各論では,随所に佐野の分類を中心にした鑑別診断の方法論が展開されている.この分類は肉眼所見を重視したものであり,今日でもなおX線および内視鏡診断の基本になっていることが少なくない.例えば,Ⅱa+Ⅱc型早期胃癌については,この分類を基本に早期胃癌の肉眼的所見と,これを反映するX線像がわかりやすく示されている.また,Ⅱc型早期胃癌の鑑別のポイントについても形,大きさ,深さをはじめ,蚕食像などの辺縁の変化,アレアの変化と顆粒不揃い度などの内面の変化,converging foldの読みなど,X線診断の基礎的な事項について明快な解説がほどこされている.X線ばかりか内視鏡診断の基礎にもなりうるものである.初心者には新しい知識として,消化器を専攻するものにとってもこれまでの知識を整理するうえでも大変参考になるであろう.
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