--------------------
書評「注腸検査法マニュアル」
多田 正大
1
1京都がん協会消化器科
pp.316
発行日 1999年2月26日
Published Date 1999/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102980
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
大腸疾患が増加しており,診療を希望する患者が病院で列をなしているが,担当医不足が嘆かれている.特に内視鏡医不足は深刻であり,専門医のいる病院では検査予約が1~2か月先といった状態である.なぜなら大腸内視鏡は手技が難しく,しかも偶発症を起こす危険性が高いため,医師の育成がニーズに追い付かない状況にあるからである,その点,注腸検査の場合は基本的な撮影マニュアルに従うと,比較的画一的な手法で撮影できるし,フイルムを熟練医と一緒に読影すれば誤診,見逃しもカバーできる.なによりもX線被曝を除いて,重篤な偶発症が発生しないことがメリットである.大腸癌検診が軌道に乗り,精密検査件数が増加するにつけて,内視鏡医不足を注腸検査でカバーしようとする傾向は当然のことであろう.法律上のことはともかく,現実には医師に代わって腕の良い放射線技師が検査を担当する施設も増えていると聞いている.
南九州の消化器診断学を常にリードする西俣寛人,嘉人両先生―桜島のような熱いエネルギーとお人柄にはいつも敬服しているのであるが―が編集して,南風病院の放射線科スタッフである伊原孝志技師ら3名による共同執筆「注腸検査法マニュアル」を早速読ませていただいた.まえがきに西俣先生が“注腸検査法の診断能が内視鏡検査に遜色なく,またそのテクニックもそれほ難しいものではないという理解が広まることを期待して……”と記述しているが,まさに本書の出版目的がこの一文に込められており,全体のバックボーンとなっている.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.