胃と腸 34巻4号 (1999年3月)

今月の主題 胃型の分化型胃癌―病理診断とその特徴

序説

  • 文献概要を表示

 本号は胃型腺癌の特集である.突然のごとくこの耳慣れない言葉が誌上に現れ,戸惑っている読者もいると思われる.この胃型腺癌を理解するために少し,胃癌の組織型分類とその病理学的背景を述べ,そのうえでこの概念の意味するところとなぜ本誌でこのテーマを取り上げたのかについて解説する.

 従来,胃癌の組織型は中村により分化型癌と未分化型癌に大きく二分類され,その臨床病理学的相違と特徴が明らかにされてきた.また,その分類は画像および内視鏡診断にも大きな寄与をしてきた.それと同時に病理学的には,“分化型癌は腸上皮化生あるいはそれに関連した粘膜”に,“未分化型癌は胃固有粘膜から発生する”とされてきた.また同様の考え方は欧米でもなされ,Lauren分類では胃癌の組織型はintestinal type and diffuse typeに分けられてきた.そしてintestinal typeは腺管形成の良好な癌で,中村の分化型癌に対応し,その発生は腸上皮化生-dysplasia-cancerとされている.またdiffuse typeは中村の未分化型癌に対応し,腺管を形成せずびまん性に浸潤する癌とされている.しかし,以前から噴門腺領域(接合部癌を含めて)の多くは腸上皮化生のみられない粘膜に発生した分化型腺癌で,また頻度は低いが萎縮のない胃底腺粘膜にも分化型腺癌が発生することが知られていた.これら腸上皮化生との関連性が極めて薄い分化型腺癌で,それと通常の分化型腺癌との違いは明らかにされていない.

  • 文献概要を表示

要旨 CD10による刷子縁,MUC2による杯細胞,human gastric mucin(HGM)による腺窩上皮,paradoxical concanavalin A(ConA)による幽門腺への分化を評価することで胃癌の形質分類を行い,癌の形質を分類し従来の方法と比較した.対象は通常の単発分化型腺癌の52症例と超高分化型腺癌4症例(胃型2例,腸型2例)を用いた.通常の単発高分化型腺癌の形質は,胃型12例(23%),不完全腸型33例(64%),完全腸型7例(14%)に分類された.不完全腸型のHGM陰性群は従来は単に腸型と分類されていたが,今回の検討ではこの群は背景粘膜との対比から,不完全腸型のHGM陽性性群(従来の混合型)と同様であり,これら二群は不完全腸型としてひとまとめにするほうが妥当であると考えられた.そして,超高分化型腺癌(胃型)の2例ともAB陽性で従来の判定法では腸型形質の発現と判定されることになるが,新しい判定法では,AB陽性の杯細胞様に見える細胞が多数みられる腺管もMUC2陰性でHGM陽性であるので完全胃型と判定され,H・E染色の形態とも合致した.この評価法では従来の分類と比較すると,胃癌の形質判定をより簡便かつ客観的に行うことができ,また腸上皮化生の分類に対応した胃癌の形質を評価でき背景粘膜と癌の形質がより対応すると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 深達度ss以深の進行胃癌100例について,H・E染色標本を用いて,分化型癌成分の有無を調べ,更に,分化型癌成分を細胞形態から胃型,腸型,混在型に分類した.その結果,優勢像によって胃型分化型癌としたものは6例で,ss以深の進行胃癌の6%,分化型癌27例の22.2%であった.粘膜内に分化型癌成分を有する症例は65例で,そのうち胃型の形質を示すものは14例(21.5%),胃型優位の混在型は23例(35.3%)で高率(56.8%)に胃型形質を持つものがあった.粘膜内に胃型の分化型癌成分を持つものは腸型の分化型癌成分を持つものに比し平均年齢が低く,女性に多く,胃の上部に多かった.また,浸潤部では未分化型癌が多く,この傾向は特に女性に顕著であった.粘膜内の分化型癌成分の形質から,浸潤部での組織像をある程度予測できると考える.また,組織化学的染色との関係により,H・E染色の癌細胞形態から胃型か腸型かを判断することは十分可能であると考える.

  • 文献概要を表示

要旨 本研究の目的は,分化型胃癌の新たな細胞形質分類基準を作成し,それに基づいて胃型形質分化型癌の病理学特徴を明らかにすることにある.分化型胃癌351例中,胃型形質癌は61例(17.4%)で,そのうち腺窩上皮型が27例(7.7%),幽門粘膜型が34例(9.7%)を占めた.胃型分化型癌は腸型分化型癌に比べて未分化型化率(混合型癌の割合)が有意に高率であった(32.3%vs7.9%,p<0.01).また,胃型分化型癌は腸型分化型癌に比べ変異E-cadherin発現率が有意に高率であった(19.4%vs2.7%,p<0.01).変異E-cadherin発現陽性の粘膜内癌10例中8例において,分化型癌腺管の増殖帯から未分化型癌部分へかけて陽性細胞の連続分布が認められた.分化型微小癌の検討では,胃型形質癌21例全例で癌組織中心部の構造は胃固有腺のみから構成されていた.低異型度胃型癌の40.0%(2/5),低異型度複合型癌の30.0%(6/20),低異型度不完全腸型癌の9.7%(3/31)にそれぞれHelicobacter pylori(H.pylori)の癌腺管への直接付着が認められた.高異型度癌では細胞形質を問わずH.pyloriの癌腺管への直接付着は認められなかった.

  • 文献概要を表示

要旨 高分化型sm胃癌を対象に粘液形質や刷子縁構造などに着目して胃型・腸型に分類し,脈管侵襲,リンパ節転移などとの関連を検討した.sm癌において胃型,腸型,混合型,無形質型は各々19.4%,43.3%,31.3%,6.0%で,胃型の形質を発現している癌も少なからず認められる.胃型高分化型癌では,有意に脈管侵襲率やリンパ節転移の頻度が高い.高分化乳頭腺癌では胃型が40.7%を占め,純粋な高分化管状腺癌と比較して胃型が多く,同じ高分化型でも乳頭腺癌と管状腺癌では明らかな差違を認めた.胃型の乳頭腺癌は生物学的悪性度の高い癌の可能性があり,安易に内視鏡的切除の対象とすべきではない.

  • 文献概要を表示

要旨 外科的切除された早期胃癌351例について,組織型をpureな分化型,pureな未分化型,混在型と分類し,更に粘液形質の検討から胃型形質を示す腺癌(胃型腺癌)と腸型形質を示す腺癌(腸型腺癌)の肉眼的特徴を明らかにした.胃型分化型腺癌は腸型分化型腺癌に比し,分化型に未分化な組織型を含む混在型が多く,肉眼型は陥凹型,色調は正色調,その肉眼境界は不明瞭であった.組織学的に不明瞭な腫瘍境界部では,胃型粘液形質を有する腺窩上皮に類似した低異型度分化型腺癌が粘膜の表層から中層にかけて側方進展し,明らかな段差を形成しない傾向がみられた.一方,腸型腺癌は純粋な分化型腺癌で,肉眼型が隆起型,色調が発赤調,肉眼境界が明瞭で側方進展を伴わない傾向がみられた.以上の結果から,内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection; EMR)を行う際,胃型分化型腺癌はその浸潤範囲の正確な診断が必要で,かつ生検組織診断にあたっては胃型分化型腺癌の存在を常に念頭に置く必要がある.

  • 文献概要を表示

要旨 胃分化型腺癌はintestinal-type carcinomaと称されてきた.しかし胃過形成性ポリープに発生する病変の多くが胃型の形質をよく保持していることから,gastric-type dysplasia/adenomaやgastric-type adenocarcinomaの概念を提唱したが,これが広く認知されるようになった.その後,通常型の粘膜内分化型腺癌の多くが胃型形質を発現しており,純粋な腸型病変はむしろ少ないものであることが明らかになってきた.胃癌の組織発生とprogressionを考慮して,染色体5q21上のAPC遺伝子やミクロサテライト,またp53遺伝子などの検討から,胃型病変と腸型病変の異同について考察した.

  • 文献概要を表示

要旨 胃分化型腺癌を細胞形質で,①極めてよく胃腺窩上皮型の細胞形質を有する群,②極めてよく完全型腸上皮化生型の細胞形質を有する群,そして③通常型の分化型腺癌群,に分類し,各群におけるp53,APC,K-ras遺伝子変異およびmicrosatellite instabihty(MSI)の頻度を検索した.p53遺伝子変異率は①群で5%(1/22),②群で31%(4/13),③群で18%(3/17)であった.APC遺伝子変異は①群で9%(2/22),③群で6%(1/17)認められた.K-ras遺伝子変異は3群のいずれにも検出されなかった.一方,MSIは①群で45%(10/22),②群で0%,③群で24%(4/17)と,①群と②群とでは極めて対照的な結果であった(p<0.01).以上の結果から,胃分化型腺癌の遺伝子的発生経路はその細胞形質によって大きく異なっており,腺窩上皮型分化型腺癌ではMSIの関与が大きく(mutator pathway),完全型腸上皮化生型分化型腺癌ではp53遺伝子の関与が大きいこと(suppressor pathway)が示唆された.これらの結果は胃分化型腺癌の組織発生の多様性を反映しているものと思われた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は45歳,女性.4年半前から胃ポリープを指摘,今回胃型腺腫の診断で内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)を施行.病変は3×2.5cm大,軽度の分葉状構造を示す隆起性腫瘤.組織学的には幽門腺に類似した立方状細胞から成る腺管の増生がみられ,腺腔は延長,屈曲が著しく嚢胞状に拡張した部分を多々伴っていた.部分的には明瞭な核小体を伴う腫大した核を認め,配列にも軽度の乱れを認めた.MIB-1抗体陽性細胞は表層でごくわずか認めただけであった.以前に施行された生検組織の再検討では今回の所見とほぼ同様であり,幽門腺型胃型腺腫と診断された.これまでの胃腺腫の組織診断基準は腸型を主体としており,分化型腺癌との鑑別が重要であった.しかしながら胃型腺腫は異型の弱いその特異な組織像により,過形成性病変から分化型胃型腺癌までの幅広い鑑別が必要であると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は75歳,女性.胃角部前壁から小彎にかけて4cm大のⅡa病変を有しており,生検で胃型の高分化型腺癌が証明された.本症例は,範囲がやや不明瞭なことと大きさを考慮して外科手術を勧めたが,拒絶されたため内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)を施行した.断端陽性のため再EMRを施行し,肉眼的には切除しえたと考えたが経過観察内視鏡でEMR後の綴痕部から印環細胞癌が証明され,最終的に外科切除となった.切除標本の組織学的検討で,14cm大の胃型の極めて高分化型Ⅱb病変の拡がりと一部に印環細胞癌の成分の存在が確認された。胃型胃癌はしばしば粘膜表層を進展し,範囲が非常にわかりづらい場合があること,未分化型癌の混在が特徴とされており,近年広く施行されるようになったEMRに際しては組織型をも考慮し,慎重に行うべきと考えさせられる症例であった.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は69歳,女性.胃体中部小彎に15mm大の同色から淡発赤調の分葉状の扁平隆起性病変を認めた.X線検査を遡及的に検討し,4年6か月前は12mm大の小顆粒状隆起が集簇した病変であった.初回生検診断では再生上皮と診断されていたが,詳細に見直すと一部に乳頭状から絨毛状の組織異型を認め,高分化型腺癌を示唆する所見であった.切除標本の組織学的所見でも,腺窩上皮に類似した異型の弱い組織の一部に強い細胞異型を伴う乳頭状から絨毛状の構造異型を持つ部分がみられ,胃型の高分化型腺癌に特徴的な組織像であった.粘液染色では,腫瘍は胃型の形質のみから成っていた.これらの臨床的病理学的特徴に習熟し注意深く検索することが,一般に難しいと言われている胃型の高分化型腺癌の診断に必要と考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨 患者は60歳の女性.検診で胃ポリープを指摘され精査目的に受診した.上部消化管内視鏡検査では,胃体上部後壁に約15mmの山田Ⅲ型の隆起性病変を認めた.境界は比較的明瞭で,表面は小顆粒状粘膜を呈していた.生検による良悪性の判別が困難であり,内視鏡的粘膜切除術を施行した.病理組織学的所見は高分化型腺癌,粘膜内癌と診断された.粘液染色では,HID-AB染色,ConA染色陰性でありGOS染色に陽性を示した.以上から,胃型の粘液形質を有する分化型腺癌と診断した.まれに認められる胃型の分化型腺癌であり,その臨床病理学的特徴について,文献的考察を加えて報告する.

  • 文献概要を表示

要旨 粘膜下腫瘍様の形態を呈した胃型の分化型胃癌(進行癌1型+Ⅱa型)の1例を経験した.患者は71歳の男性.3年前の胃X線検査で胃体上部後壁に大きさ約2cmの隆起性病変が発見されたが,内視鏡的生検診断はGroupⅠであったことから,胃粘膜下腫瘍の診断のもとに経過観察が行われた.3年間の経過観察中,計3回の内視鏡的生検が行われ,前2回の生検はいずれもGroupⅠの診断であった.その後,病変は大きさ約8cmの腫瘤へ急速に増大し,3回目の内視鏡的生検でGroupⅤ(tub1)と診断され,手術切除が行われた.病理診断は,肉眼型1型+Ⅱa型,大きさ85×75mm,組織型tub1(胃型分化型腺癌),se,ly(+),v(-),INFβ,StageⅡで,病変は胃底腺領域に存在していた.X線・内視鏡ならびに生検組織診断にとって,示唆に富む症例と思われたので報告した.

  • 文献概要を表示

 現在,早期食道癌は内視鏡的粘膜切除術も広く行われるなど,それほど珍しい疾患ではなくなった.ところで,早期食道癌の最初の症例報告となるとだいぶ古い話になってしまう.このことにいささか携わった者として,当時を手繰り寄せてみたい.

 われわれは1966年の早期胃癌研究会に症例のプレゼンテーションを行ったが,これがおそらく同会におけるわが国の早期食道癌の第1例目だと思っている.ちょうど早期胃癌研究会の機関誌「胃と腸」が創刊出版された時期にあたり,早速,原稿の執筆依頼状が届いたのも私にとって幸いであった.原稿をまとめ山形教授に提出した(山形敞一,石川誠,大柴三郎,他.主として細胞診によって診断された早期食道癌の1例.胃と腸 1:259-266,1966).当時,東北大学第3内科(山形内科)ではこの症例をめぐって大柴三郎現大阪医科大学名誉教授以下のスタッフが,ファイバースコープのほか川島式硬性胃鏡を使用したり,直視下細胞診を繰り返すなど張り切ったことである.同じ年に千葉大学中山外科から同様の症例報告があり,「胃と腸」に掲載されている(中山恒明,遠藤光夫,太田八重子,他.早期食道癌の1例.胃と腸 2:683-688,1967).そのころ,わが国における早期食道癌の第1例目の報告は,どちらが先かという先陣争いもどきの話もあったようであるが,筆者は,ほぼ同時期であったと考えている.

海外だより

Oxford大学留学記(2) 松井 敏幸
  • 文献概要を表示

 inflammatory bowel disease(IBD)に関する研究では,Oxford大学は高いレベルの研究成績を発表し続けている.1996年に,世界に先駆けてIBDのsusceptibility genesのlocusを発見した研究は記憶に新しい.その後も更に詳細に染色体上のlocusを特定する研究が行われている.また,IBDを亜分類し,病態と病因の違いを遺伝子学的に探求する努力も続けられている.わが国にはほとんどないceliac病と潰瘍性大腸炎術後のpauchitisについても,臨床研究が行われている.

 Oxford大学におけるIBDに関する臨床は,Dr.Jewellの前任者である有名なDr.Sidney Trueloveが基礎を築いた.1950年代から,彼は炎症性腸疾患診療のパイオニアとして診療体系の教科書的な骨格を形づくった.すなわち,IBDのnatural historyを記述し,治療手順を完成(steroid剤の注腸治療を考案,steroid剤の静注療法,いわゆる強力静注療法を考案)し,更にSASP剤から5-ASA剤への転換を考案した.その臨床の伝統のためか,Oxford大学を訪れるIBD患者の数は非常に多い.

アメリカ留学体験記(3) 斉藤 裕輔
  • 文献概要を表示

 今回は日本とアメリカの疾患の違い,検査の適応の違いについて報告いたします.UTMB(The University of Texas Medical Branch)では朝7時45分からその日の内視鏡検査の患者さんの症状や,検査の適応についてのmeetingがあり,8時ごろから内視鏡検査が始まります.後ほど説明しますが,アメリカでは検査費用が高額なため,検査の適応が厳しく問われます.日本のようなスクリーニング検査はほとんどありません.必ず何かしらの症状を有しないと内視鏡検査を行いません.例えば上部なら,嚥下困難や上腹部痛,大腸なら下痢や腹痛などです.しかも,吐血,下血以外の症状に関しては,対症療法を行って良くならないときに初めて内視鏡が行われます(例えば胸やけの症状に対してH2 blockerを3か月投与したが改善しないなど),また,例えば2年前に下血の既往があり,そのときのCFで大腸憩室からの出血と診断されていたとします.今回,また下血があっても,なぜCFをorderしたかが問題となります.CFでは憩室炎の診断,出血憩室の同定は困難だからです.そして“注腸X線検査をorderすべきである”との結論になるのです.また,例えば注腸X線で上行結腸に進行癌が見つかって内視鏡がorderされたとします.“注腸で診断がついているのだから単に病理組織を得るためだけの内視鏡検査をorderする必要はない.手術後に組織は得られる”とのdiscussionがなされます.日本では“組織確定のために内視鏡を行いましょう”となりますが,この内視鏡検査の適応についてはcost benefitの面からかなり厳格に議論されているようです.このように検査の適応が厳しいことから,発見される癌は進行癌が多く,早期癌はほとんど発見されないのが現状です.

 日本では早期胃癌発見のため胃内の丁寧な内視鏡観察がなされます.しかし,ここアメリカでは,まずcardiaを除いた胃癌がほとんど発見されないこと(小生10か月になりますが2例しか見ていない)が多く,また先ほどお話ししたように,発見しようとしている癌が早期癌ではないために胃内の観察は非常にあっさりしています.その代わり,胃の噴門部癌,Barrett食道に合併した下部食道癌が多いため,cardiaとEG junctionはかなりしつこく観察しています(行ったり来たりを数回繰り返す).sliding hernia,逆流性食道炎も日本と比べてびっくりするほど多く,特にここテキサスでは上部消化管内視鏡検査の半数以上で逆流性食道炎を認めます.Barrett食道も多いことに驚きました.慢性下痢の症状の患者さんではsprue鑑別のため十二指腸から必ず生検を行います.NSAIDsを常用する患者さんも非常に多いため,日本ではあまりみられない配列の多発びらんや潰瘍もよく認めます(かなり激しいテキサスサイズの所見).

  • 文献概要を表示

〔患者〕71歳,女性.高血圧,慢性関節リウマチで名賀郡青山町・城医院で通院加療中,X線検査・内視鏡検査を行ったところ,胃前庭部に異常を指摘され,当院に紹介となった.なお,患者は抗炎症薬も5年前から服用中であった.

早期胃癌研究会

  • 文献概要を表示

 1998年11月の早期胃癌研究会は,第38回「胃と腸」大会として11月18日(水)にホテルグランヴィア岡山で開催された.司会は飯田三雄(川崎医科大学消化器内科Ⅱ)と渕上忠彦(松山赤十字病院消化器科)が担当した.

 〔第1例〕 69歳,女性.小細胞未分化型の早期食道癌(症例提供:松山赤十字病院消化器科 長村俊志).

  • 文献概要を表示

 1998年12月の早期胃癌研究会は12月16日(水)に東商ホールで開催され,西元寺克禮(北里大学内科)と田中信治(広島大学光学医療診療部)が司会を担当した.ミニレクチャーは浜田(社会保険中央総合病院消化器科)が「早期胃癌分割切除の実際」と題して行った.

 〔第1例〕 72歳,男性.食道0-Ⅱc,m2癌(症例提供:福井県立病院外科 道伝研司).

--------------------

欧文目次

  • 文献概要を表示

 本書の著者・小西文雄先生は私が最も尊敬する外科医の一人である.私が消化器の手術を受けるとすれば,迷うことなく小西先生に執刀をお願いしたい……,そのような先生である.外科医としての卓越した腕を持ち,しかも時代の最先端をゆく研究で学会を主導しており,まさに“今が旬”のリーダーである.

 小西先生は大腸疾患の病理と臨床のメッカとして名高い英国StMark's病院で研讃したご経歴があるが,その影響もあってか,特に大腸癌や炎症性腸疾患に関する豊富な手術実績と研究を継続している.その成果に対して,内外で極めて高い評価がされているのは周知の通りである.それだけに本書は小西先生の得意の分野を,自らの経験に基づいて企画・構成しており,充実した内容になっている.大腸癌や関連疾患の診療にあたっての基本的な手技,諸注意事項やポイント,最近の話題にいたるまでを要領よく解説した書籍であり,多忙な実地医家,短期間に多くを学ばなければならない研修医にとって有難い手引書,入門書である.

  • 文献概要を表示

 この度,吉田裕司先生・市川平三郎先生ご執筆の本書につき,書評原稿の執筆依頼を受けた.小生は,主として内視鏡診断と臨床病理の立場から消化管の診断を行っている.そのような小生になにゆえ書評依頼であろうか.吉田先生,それに市川先生という大先達の書かれた本について私のような若輩が書評するのは大変おこがましい話である。しかし,大学病院という医育機関に籍を置く医師の立場から,という医学書院編集部からの注文に応えてあえて筆を執らせていただく.

 消化器疾患を主たる研究対象としている医育機関で共通して抱える問題点の1つは,若手医師の形態学への情熱が冷めつつあることであろう.分子生物学的研究,Helicobacter pylori研究などが盛んに行われている一方で,基本中の基本とも言うべき形態学診断がおざなりになり憂慮すべき傾向である.内視鏡の領域でも,治療には関心を示すが診断については情熱が薄れつつある印象を受ける.X線診断については,内視鏡に比較しても一部の先生方を除いて興味を示さない.原因はいくつかあると思うが,著者の吉田先生が述べられているように,“内視鏡はX線より診断能が高いという誤解,操作も簡単という誤解”があるからであろう.ところが“X線診断能は低いのではなく難しいのです.”まさにそのとおりであり,X線検査は研鑽次第では大きな診断能をもたらす.小生もこの指摘にまさしく同感した次第である.

  • 文献概要を表示

 「市場原理に揺れるアメリカの医療」がついに一冊の本として出版された.“ついに”と私が言うのは,実はこのシリーズが1996年から医学書院発行の「週刊医学界新聞」に連載されたときから大変おもしろく,その内容の正確さに感心して毎回非常に興味を持って読んでいたからである.しかもこれはまさにアメリカの医療の改革における,いわゆる“マネージドケア”の導入から始まり,それに対して大学あるいは病院が急速に対応を行ってきた時期にこの連載が始まっているからである.

 著者の李先生はハーバード大学で研修・研鑽を積まれ,現在助教授としてご活躍の方であるが,このアメリカの医療を巡る多くの経済的な動きやビジネスの動き,それに対する医療現場での色々な問題,社会的な問題,更に患者と医者との関係,病院との関係などについての多くの問題点や苦悩を,極めて正確にしかも臨場感溢れるタッチで書いている.私はその都度コピーをとっていたが,出版元あるいは著者にこれは必ずいつか一冊の本にして出してもらおうと書こうと思っていたぐらいであり,これがいよいよまとまって出版されたことは大歓迎である.しかも著者のいるボストン周辺でのいろいろな医療に関する話題,例えば「あるガン患者の手記」や「ダナ・ファーバー事件」「スター選手の死」などが極めて興味深く書いてある.日本での医療現場の人にはなかなかわからない,そして理解できないこともあるかもしれないが,私のように長年アメリカの現場にいた者にとっては誠に身にしみるような筆の進め方であり,おもしろい読み物になっている.

  • 文献概要を表示

 本書は,現東邦大学三木一正教授がライフワークとして研究された胃癌のスクリーニング法であるペプシノゲン法についての成書である.

 胃液内に分泌される蛋白分解酵素であるペプシンの前駆物質ペプシノゲンは,L.M.Samloffにより1969年にグループⅠとグループⅡに大別された.Ⅰは体部腺領域の主細胞・副細胞から,また,Ⅱは噴門腺,体部腺,幽門腺,ブルンネル腺細胞から分泌されることが報告されている.ペプシノゲンは約1%内外が血中に入り,尿に排泄される,したがって,血中のペプシノゲン値は胃の分泌状態を反映し,その組織学的変化とよく相関している.さて,日本人に多発し現在でも年間約5万名の死因である胃癌に対しては,早期発見の目的で胃癌の集団検診が国家レベルで全国的に行われてきた.その中で,一次スクリーニング法としてはX線診断(間接も含め)によってきたが,X線機種の進歩,造影剤の改良などにより,精度は大きく向上している.一方,新しいスクリーニング法の出現も期待されていた背景もある.

編集後記 小池 盛雄
  • 文献概要を表示

 中村の分類,あるいはLauren分類では胃の分化型癌は腸上皮化生,未分化型癌は胃固有粘膜から発生するとされていた.近年,各種の粘液形質の発現を検索することが可能となって,分化型癌の中に胃型の形質を有するものが相当数あることが知られてきた。このような癌が胃型分化型癌と呼ばれ,最近問題として取り上げられるようになってきている,もちろん,純粋な腸型,胃型形質を有するものばかりではなく,両者の性格を持つものが多数ある.胃型分化型癌の問題は,生検診断と治療の両面にある.生検診断では極めて異型度の低い癌が存在することで,小さな組織片で,構造異型を中心に正確な病理診断を下すことが必要となる.このような癌の存在を認識していなければ,病理医にとっても診断は容易ではない.

基本情報

05362180.34.4.jpg
胃と腸
34巻4号 (1999年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月9日~9月15日
)