臨床婦人科産科 47巻8号 (1993年8月)

今月の臨床 産婦管理—on callに応える

入院時

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 正常の分娩経過はFriedman頸管開大曲線と児頭下降度の関連から評価される(図1,表1)。産婦入院時における胎児well beingならびに陣痛状態の把握は分娩監視装置により可能であるが,分娩進行状態の把握と分娩難易度の予測は綿密な内・外診が臨床的対応の起点となる。

 以下,産婦入院時の外診,内診所見による臨床的判断につきその要点を概説する。

2.合併症妊婦の取扱い 高木 耕一郎
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 妊娠により母体の諸臓器は非妊時に比べて種々の程度の負荷を受ける。その結果として合併症を伴う妊婦では合併症そのものが増悪する場合や,合併症が妊娠の負荷を増大させることにより,母児双方に種々の障害を起こすことが問題となる。合併症の存在が妊娠分娩に先だってわかっている場合と,救急搬送などで分娩時に明らかとなる場合があるが,後者の予後が不良であることは明らかである。本稿で偶発合併症すべてについて述べることは不可能であるため,とくに陣痛開始で入院となった産婦のリスク評価の上で重要と思われることについて述べる。

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 本院,外来を受診した妊婦の全症例に対して妊娠初期に超音波検査にて分娩予定日の修正を施行し,さらに少なくとも妊娠中期,妊娠後期および妊娠末期に超音波(胎児奇形,胎児発育,羊水量,また胎盤付着部位)などを確認している。計画分娩すなわち分娩誘発に当たっては,少なくとも超音波検査(胎児の推定体重,臍帯動脈血流,羊水ポケット量,胎盤所見)とnon stress test(NST)などを施行する。

4.CPDの評価 松本 譲二
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 まず分娩開始前にその分娩経過を予測するためにCPD(児頭骨盤不均衡cephalopelvic dispro—portion)の評価が行われる。CPDが存在し経腟分娩が不可能な場合はいたらずに自然分娩開始を待つ必要はなく,帝王切開を行うべきである。しかしCPDの評価は完全とはいい難く,児頭という最良の骨盤計を用いて分娩経過をみることによりCPDの診断がなされることも多い。

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 “Double set up”という言葉は今日ではポピュラーに使用されている。あらためて語源を探ってみると産科学教科書の2〜3に記載がみられたがいずれも前置胎盤の章に発見される。その一つはHA Kaminetzky の“Principles and Practice ofObstetrics & Perinatology”1981から引用してみる。“For this reason any vaginal examinationmust be done with the obstetrician, nurses, andanesthesiologist prepared, surgical instrumentsready, and blood crossmatched and available inthe operating room.This scenario is renowned”double set-up“,which enables the physician to explore the cervix digitally for the location of the placenta and at the same time to be pre—pared to do a ceasarean section immediately if the examination incites a hemorrhage”.

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 産婦が分娩経過中を通して,いつもよい状態に機能するために,看護職者は何をすべきかを検討することが産婦管理である。

 本特集号のテーマは,on call中にある医師が産科医の立場で何を行うべきかを提示されるものである。そこで本稿は,看護サイドから入院時の産婦管理に求められるものは何か,また,on call中の医師への看護サイドからの役割を検討することとした。

陣痛室

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 分娩進行状態の把握と予測は分娩管理の基礎であり,その原点である。ひとたび,分娩が開始したと判断すれば,正常分娩経過のタイムリミットが設定されたことになる。

 胎児に異常がなく,異常となる可能性が少ないときは分娩の進行が主たる関心事である。

8.誘発と陣痛強化 瓦林 達比古
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 自然陣痛発来のメカニズムに関しては,多くの因子が関与しているため依然として解明すべき点は多いが,少なくとも薬物として投与したオキシトシンやプロスタグランジンによって陣痛が誘発され促進されることは周知の事実である。これらのホルモンは,細胞膜の電位依存性カルシウムチャネルや受容器依存性カルシウムチャネルを通した細胞外から細胞内へのカルシウムイオンの流入や,細胞内カルシウム貯蔵部位からのカルシウムイオンの放出により,最終的に細胞内遊離カルシウムを増加することによって収縮を惹起している。基本的にはこのような作用機序で子宮収縮は増強するが,この程度は単に投与された同薬物の濃度のみには依存しない。すなわち,オキシトシンについては細胞膜の受容器の量によって反応性は異なるし,ブロスタグランジンについてはオキシトシンとの相互作用が存在する。また,オキシトシンの作用は細胞外のカルシウムイオン1)やマグネシウムイオン2)の濃度に依存する。したがって,自然分娩の経過を観察する時はもちろんのこと,陣痛の誘発や促進に薬物を使用する際は,経時的に生体内で変化してくる上記ホルモンを含む多くの生理活性物質の作用も念頭において管理しなければならない。そこで,まず最初に現在証明されている陣痛発来や分娩進行に関する諸事実について解説する。

9.人工破膜のタイミング 本郷 基弘
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 胎胞が子宮口開大のために果たすという楔作用の役割はすでに否定され,前早期破水が分娩進行に支障とならないことも実証されている。さらに,人工破膜法は陣痛誘発法あるいは陣痛強化法として,わが国でも日常の産科臨床において広く支持を得られている。

 分娩第1期の終り頃か分娩第2期にはいって,胎胞を破り前羊水を流出させる人工破膜法によって,わずかに陣痛が微弱になったり異常陣痛になるとの報告もあるが,概して陣痛は強化されるとの考えが支配的である1)

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 1955年トコロンビア大学に当時の産科麻酔主任教授のアプガー女史を訪ねたとき「昨年発表した方式です」と気軽にご本人からもらったノートの内容が実よその後の産科の金科玉条となった世界的なApgar scoreであった。新生児の呼吸循環状態の目安としては確かに有益だけれども,最近はもっと微妙な新生児の神経機能については,検査の目があらすぎて,より敏感な他種の検査法が望まれてきた。Brazeltonが1973年に単行本として発表したNBAS(The Neonatal Bchavioral Asess—ment Scale)が有名となったが,これは熟練者がチェックしても1例に45分も要するので,新生児室に収容してからはよいアプガーなみに分娩室で用いることは不適とされる。ENNS(The EarlyNeonatal Neurobehavioral Scale)(Anesthesiology40:121, 1974)は早く簡単にできるようで北里大の天野講師が10年前に無痛分娩研究会で紹介した。

11.LDRの実際 神津 弘
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 最近,妊産婦の精神的支持を重視した分娩環境の提供と整備が多くの産科施設で行われている。当科では昨春スタートした新病院でLDR(LaborDelivery Recovery)システムを導入した。従来型分娩室からこのシステムになり,分娩の管理体制が代わったことで個室分娩室のケアが,どのように変化したかを,現在検討しつつある。

 LDRルームは従来の分娩室と比べて内部環境が変わり,それに伴い産科スタッフの対応がやや変わってきたように思える。

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 上記テーマについて麻酔を研修した産科医の立場でより臨床的に私見を述べたい。

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 分娩に伴う苦痛の緩和は古来よりの大きな課題であったが,今日では単に母体の産痛を和らげるのみでなく,母児の心身の負担の軽減と分娩中の全身状態の把握をも含めた,積極的分娩管理の一部と考えられる。

 その方法は,表1に示すごとく,ラマーズ法を中心とする心理学的方法から高度な麻酔学的手技と知識を要する部位麻酔に至る多岐にわたるが,そのうちの誰にでも,どこでも,いつでも容易に実施できるバランス麻酔について,陣痛室における産婦管理の要点を述べる。

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 当センターでは,年間約800例前後の分娩を取り扱っている。特徴としては,内科,外科疾患合併の妊婦が多く,全分娩数の20%を超える。

 さらに,第三次周産期センターであるため,他施設から異常のある母児を,随時収容するので,産科合併癌,母体搬送などを含めると,全体の1/3がハイリスク妊娠と言える。

分娩室

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 分娩を管理する上で分娩開始からの経過時間と子宮口の開大度,児頭の下降度の関係を知ることはたいせつである。もちろん分娩の進行は娩出力,産道,胎児のいわゆる3要素の相関で決まるが,その所要時間もまた個人差が大きい。われわれは原則として分娩は自然の流れにまかせることにしているが,外来での経過と,入院時所見から各個の分娩進行状態を推測しそれから大きく外れる場合には早急に手を打つことにしている。この点から分娩の進行状態の把握と予測は産科医にとって重要な役務と言えよう。言うまでもなく分娩の流れは妊娠初期から継続しているわけで一時点で論ずることは難しいが,今回は分娩室でのことに限ってと論点を絞って当院での対応について述べたい。

 陣痛室から分娩室への移動の時期は,初産か経産か,頭位か骨盤位か,単胎か多胎か,破水しているか否か等々産婦の状態によって,また各施設の事情(産科スタッフの力量,分娩室の状況等々)によって違ってくる。当院では上記の状況を加味した上で,子宮口が8cm以上開大,約1時間で分娩が終了すると予測されたときに分娩室に入室することになっている。仰臥位の分娩台を使用しているために分娩までに2時間以上かかることは居住性の悪さから産婦は不快を感ずるし,産後腰痛の原因ともなる。30分以内だと血管の確保や,消毒,分監の装着など分娩への準備に十分な時間が取れない。

16.胎児仮死の診断 原 量宏
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 妊娠分娩管理において重要なことは,胎児仮死を見落としなくしかも確実に診断することである。従来より多数の胎児仮死診断法が検討されてきたが,なかでも分娩監視装置や超音波診断装置による胎児心拍数と胎動の分析,さらに羊水量および胎児血流パターンの分析は,胎児の中枢神経系と循環系の状態を直接的に反映するものであり,分娩中に急激に発生する胎児仮死にはもちろん,妊娠中からの潜在胎児仮死の診断にも利用されている。

 今回の主題は分娩室における胎児仮死の診断ではあるが,分娩中に生じる胎児仮死の大部分は,臍帯圧迫や過強陣痛が原因であり,分娩監視装置のみで容易に診断できることが多い。したがって本稿では分娩室における問題にかぎらず,入院から分娩終了までにおいて,とくにME機器を中心とした胎児仮死診断に関して解説する。

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 胎児仮死とは胎児の低酸素状態とアシドーシスによって引き起こされた胎児の呼吸循環不全の状態である。原因は種々のものが考えられるが,分娩中の急性胎児仮死と胎児発育遅延や重症妊娠中毒症に代表されるような潜在性胎児仮死に大別される。近年,胎児管理の著しい進歩によりハイリスク妊娠においてもintact survivalが当然のごとく要求されてきている。こうした状況下において,われわれ産科医は胎児仮死への対応について十分に精通しておく必要がある。

 本稿ではこの特集号の主旨より,実際分娩室で急性胎児仮死に遭遇した際,低酸素状態を軽減させる目的で筆者が行っている胎児仮死の治療法を紹介する。しかし分娩中の胎児仮死の治療は,急速遂娩が最も効果的であり,母体への酸素・輸液療法は急速遂娩までの一時的応急処置と考えるべきである。

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 分娩時には,aorto-caval compression, cordcompression, uterine hyperactivityなどに起因する急性胎児仮死が生じ得るのでlow risk妊娠であっても胎児監視が必要になる。pathologicalな心拍数所見が出現した場合には,その原因を検索しつつ所見の改善を図ることになり,体位変換,子宮収縮の抑制,酸素投与,羊水補充療法などが行われる1)(図1)。羊水補充療法(amnioinfusion)は人工的に子宮腔内に生理的食塩水,もしくはラクテックリンゲル液を注入するもので,手技そのものは比較的簡単である(図2)。治療的あるいは予防的な目的で行われるが,絶対的なものではなく,他の方法との併用や,最終的には帝切も考慮した対応が必要になる。sev.variable decelera—tion, prolonged decelerationが頻発する場合や過期産,IUGR, PROMなどの羊水過少例,羊水混濁例などが適応となるが,late decelerationやvariabilityの減少など明らかな胎児仮死所見がみられる場合や胎盤早期剥離が疑われる場合は禁忌と考えられる。

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 旧来から会陰切開は安全に胎児を娩出させるための手段であって,産褥期の疼痛や局所の腫脹に伴う褥婦の苦しみに関しては,余り問題にされていなかったといっても過言ではない。そのため切開法についてもcase by caseによりその方法を選択したりすることもあまりなかったようであるし,縫合糸の吟味,改良に関しても注意が向けられることはほとんどなく,歴史的に絹糸とカットグットが用いられてきている。ときに,会陰切開・縫合に興味ある産科医がナイロン糸を用いたり,特殊な縫合法を開発したりしているが普及するまでに至っていない。近年,会陰の縫合に理想的な合成吸収性縫合糸が開発されたことにより,会陰切開縫合に新しい時代が到来したといっても過言ではない。この縫合糸の出現によりアメニティ(快適性)を追及することが可能になり,それに伴い理想的な切開部位やその方法,切開のタイミングが論議されることになったのである。

20.吸引遂娩術 花田 征治
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 吸引遂娩術は,分娩の進行中に母体あるいは胎児に危険な状態が発生した場合,もしくは発生の恐れがあると判断されたときに,分娩第2期の短縮を目的として実施される急速遂娩術の一つとして,わが国では広く臨床応用されているようである。比較的手技の簡便な遂娩術ではあるが,実施に臨んでは適応と要約を遵守すべきことは言うまでもない。そして,吸引遂娩術の実施理由,母児に起こりうる不利益についてもわかりやすく産婦に説明し,可能な限り配偶者の承諾も得たうえで手術を実施するように心がけるべきである。

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 FH Howardらによって主張された座位分娩の優位性は,Caldeyro-Barciaらによって多方面より実証された1,2)。わが国でも関場,永井らを中心として検討が行われ,種々の利点が浮上し(表1,2)論文3〜9)も多い。

 すなわち,座位分娩は自然の摂理にかなった分娩体位である。座位をとることによって分娩時の姿勢は,体幹が直立した体位となるが,産道(分娩誘導線),陣痛の作用方向,胎児下降方向,胎児重力のすべてが一致して下方に向くことになり,力の消費を少なく出産を迎えることができる。また上半身が起きているため視野が通常の生活と同じ範囲で得られる。そのため周囲を十分に認識することができ,不安感を最小限に抑えることができる。

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 出産をどうとらえるかは産科医によって百人百様である。自然な出産をめざす人もあれば管理的出産を行う人もある。私自身はミッシェル・オダン1)の自然出産に共鳴し出産は自然でなければならないと考える産科医の一人である。いずれにせよ分娩の様式はそれが“いい出産”につながるか否かで評価されなければならない。私は“いい出産”を次のように考えている。

 1)母子ともに安全で,快適で,産む人にとって納得と喜びの得られる出産

23.肩甲難産 佐藤 孝道
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 肩甲難産は,高頻度ではないが産婦人科臨床医の多くが少なくとも数年に一度は遭遇する産科の緊急疾患である。肩甲難産になる症例の大部分でその予測は現状では不可能であるから,緊急時の対処については起こった場合の手順を決めて日頃から習熟し,関係者を教育しておく必要がある。

 今回のテーマの副題は「on callに応える」である。その視点から,児頭が娩出する前と,児頭が娩出してしまってから後続肩甲が娩出できない場合に分けて肩甲難産を論ずる。

24.臍帯巻絡 越野 立夫 , 朝倉 啓文
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 臍帯巻絡は,約25〜40%の分娩時に観察され,最も頻度の高い臍帯の異常である1)。臍帯巻絡があると,分娩時に臍帯圧迫の原因となり,変動性一過性徐脈(variable deceleration:VD)や遷延性徐脈などの出現頻度が高くなる。したがって,臍帯巻絡のある児の分娩では,われわれ産科医はVD出現による胎児仮死発症に対してつねにoncallの状態にいることを意識していなければならない。症例を提示し考えてゆく。

25.緊急帝切決定後の手順 佐藤 郁夫
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 緊急帝切は産婦にとってもわれわれ産科医にとってもリスクの高いものの1つである。しかもわが国では大規模な総合病院であればあるほど,中央手術室での帝切が多いので,決意してから児娩出までに30分程度の時間を要するので,児の予後に重大な影響を及ぼしかねない。

 本稿では,まずわれわれが経験した3例の緊急帝切例を紹介し,これらの症例をふまえながら緊急帝切決定後の手順について解説する。

26.胎盤の娩出 北井 啓勝
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 胎盤には胎児の呼吸,栄養補給および老廃物の排泄という重要な機能がある。胎盤は胎児の娩出直前まで子宮壁に付着してこの機能を保ち,その後すみやかに剥離して子宮腔より娩出される。胎盤の娩出が不完全であると,出血または感染などの異常を生じる。

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 分娩時出血は突然大量となることがあり,急速にショック状態に陥る危険性を含む。妊産婦死亡のなかで出血が占める割合は分娩後患者出血が23%,分娩前出血が9%で両者で30%を超える。したがって分娩時出血の対処法は産科医にとって重要であり,緊急性を要する。ここでは胎児・胎盤娩出後の分娩時出血に絞って述べる。

28.会陰裂傷の縫合 吉沢 浩志
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 今日の分娩管理では必要に応じた会陰切開術と縫合による適切な会陰保護が行われていると思うが,分娩に対する考え方はアクティブバース,ラマーズ法などに代表される産婦の希望も多様化して,中には会陰切開術をことさらに忌み嫌う風潮がない訳でもない。無用な会陰切開術は批判されて当然であるが,会陰裂傷の避けられない場合もあり,分娩に関わる人たちがお互いに理解し,協力し合って無事な分娩となるように心がけたい。

 分娩に際して会陰・腟裂傷による担当医からのon callを想定すると,肛門粘膜や直腸粘膜に及ぶ大きな裂傷,腟円蓋に達する深い裂傷,血腫などが発生した場合になろう。

褥室

29.子宮復古不全への対応 荒川 公秀
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産褥における子宮の復古

 分娩による胎児の娩出とともに子宮の復古ははじまり,重量は分娩直後には約1,000gであるが,1週後には500g,3週後には200g,そして6週後には約60gとなる。一方,子宮腔長も速やかに短縮し,分娩直後には約15cmを示すが,6週後にはほぼ非妊時の7〜8cmに復する(図1)。

 従来より子宮復古の状態は,子宮底の高さによって表現されることが多い。分娩直後に恥骨上縁4〜5横指を示した子宮底高は,その後一時上昇し,産褥1日目にはほぼ臍高となり,その後1日ごとに約1横指ずつ下降する。したがって産褥5日目には臍高と恥骨結合の中央,7日目には恥骨結合上約2横指となり,12〜14日目でまったく触れなくなる。

30.乳房管理 合阪 幸三
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 産褥期の乳房管理は,母乳分泌不良,母乳分泌過多および乳腺炎の3症状にどのように対処するかがポイントとなる。以下にこれらの対策を各症状別に述べる。

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 褥室における乳頭異常の問題は,第一に授乳がスムーズに行えるかどうか,第二に乳頭や乳輪の外傷や炎症の処置の問題であろう。これらの問題は,産婦人科医や助産婦の指導により保存的に解決されることが多く,実際に外科医の処置を必要とする機会は少ないと思われる。本稿では,乳頭の形態と機能の異常に大別して,その対応,とくに外科的治療に重点を置いて述べる。

32.MRSA 野口 昌良
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 MRSA(methicillin耐性ブドウ球菌)は強力な毒性をもつグラム陰性桿菌などの耐性と戦った結果として出現してきたものである。このことはMRSAの出現が第三世代セフェム系抗生物質の使用による結果であることを裏づけてはいるが,このβラクタム製剤によりいかに多くの人類が重症の感染症から救われてきたかということを忘れるわけにはいかない。

 しかもMRSAは黄色ブドウ球菌の中で特殊な遺伝子をもち,いわゆるβラクタム製剤に対して耐性をもつものの総称である。したがって,MRSAすべてが人間にとって重大な症状を引き起こすものではない。その中の一部のものが特別の状態にある患者において急激に増加し,ときに致命的な結果をもたらすこともあるが,きわめてまれなものである。

カラーグラフ 摘出標本の見方・2

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 表層上皮性・間質性悪性腫瘍は悪性卵巣腫瘍の80〜90%を占め,この内ムチン性腺癌は10〜20%と漿液性腺癌につぐ頻度である.予後に関しては従来,類内膜腺癌とともに比較的よいとされていたが,近年の進行期別に評価されたいくつかの成績では,とくに進行症例において予後が悪いことが示されている.

 今回,当院において経験したムチン性腺癌の1例を呈示し,その摘出標本の特徴などについて解説する.

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 品胎妊娠では早産や妊娠中毒症などを合併しやすく,新生児予後は不良である。11例の品胎の妊娠・分娩経過,児予後の検討を行った。8例(73%)に排卵誘発が行われていた。全例に切迫早産を認め,8例(73%)が早産となり,分娩時平均週数は33.7±3.4週であった。6例に妊娠中毒症を合併した。分娩前入院日数は43±24日であった。Termi—nationの決定要因は,極度の腹部膨満感4例,前期破水3例,tocolysisの不成功3例,妊娠中毒症悪化1例であった。平均出生時体重は1,697±502gであり,10例(31%)の新生児に挿管を要したが,すべて32週以前に分娩となった児であった。以上より,品胎妊娠では予防的頸管縫縮術と子宮底長が30cmを越える24〜26週での予防的入院を考慮し,妊娠中毒症の発症に注意しつつ33週以降の分娩を目標とすることが,児の予後改善につながると思われる。

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 子宮体癌の筋層浸潤とリンパ節転移および付属器転移との関連について検討を加え,次にFIGO新子宮体癌進行期分類(1988年)に従って症例を再分類し,新・旧両分類を用いた進行期と予後との相関を解析した。筋層浸潤が1/2以上の症例では付属器およびリンパ節への転移頻度は高くなり,傍大動脈リンパ節転移も認められた。新・旧分類による進行期の一致率は,I期で60.0%,Ⅱ期で25.0%,Ⅲ期で60.0%であり,新分類においてのみ進行期と予後との間に相関を認めた。その他の予後因子としては,筋層浸潤,付属器転移ならびにリンパ節転移が累積5年生存率との間に相関を有した。

 以上の成績より,子宮体癌進行期判定における新分類の有用性が明らかとなった。また,筋層浸潤1/2未満のり症例では傍大動脈リンパ節郭清の必要性は少ないことが示された。

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 子宮頸部dear cell adenocarcinoma, stage Ⅱbの患者に対してneoadjuvantchemotherapy (NAC)として多剤併用動注療法(CDDP 70mg, ADM 40mg, MMC20mg.5—FU 500mg)を2クール施行した。施行前に11, 809U/mlであったCA 19-9は有意な低下を示し,施行後の画像診断で腫瘍の縮小率は67.7%(MRI矢状断像)であった。この後広汎子宮全摘出術を施行したが病理診断にてリンパ節への転移を認めたために,術後CAP療法(CDDP 600mg, Epi-ADM 50mg, CPA 500mg)を2クール追加した後,現在外来観察中である。

 子宮頸癌で本来手術適応外であるⅢ期,Ⅳ期症例や,扁平上皮癌に比較して放射線感受性が乏しくコントロールが困難とされている頸部腺癌症例に対して,NACとしての動注療法を施行することは,down stagingによるcurative operationを可能にし,その予後を向上させ得る可能性が示唆され,子宮頸癌治療における有用な手段の一つであると考えられた。

基本情報

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臨床婦人科産科
47巻8号 (1993年8月)
電子版ISSN:1882-1294 印刷版ISSN:0386-9865 医学書院

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