今月の臨床 産婦管理—on callに応える
陣痛室
8.誘発と陣痛強化
瓦林 達比古
1
Tatsuhiko Kawarabayashi
1
1福岡大学医学部産婦人科
pp.937-939
発行日 1993年8月10日
Published Date 1993/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901397
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自然陣痛発来のメカニズムに関しては,多くの因子が関与しているため依然として解明すべき点は多いが,少なくとも薬物として投与したオキシトシンやプロスタグランジンによって陣痛が誘発され促進されることは周知の事実である。これらのホルモンは,細胞膜の電位依存性カルシウムチャネルや受容器依存性カルシウムチャネルを通した細胞外から細胞内へのカルシウムイオンの流入や,細胞内カルシウム貯蔵部位からのカルシウムイオンの放出により,最終的に細胞内遊離カルシウムを増加することによって収縮を惹起している。基本的にはこのような作用機序で子宮収縮は増強するが,この程度は単に投与された同薬物の濃度のみには依存しない。すなわち,オキシトシンについては細胞膜の受容器の量によって反応性は異なるし,ブロスタグランジンについてはオキシトシンとの相互作用が存在する。また,オキシトシンの作用は細胞外のカルシウムイオン1)やマグネシウムイオン2)の濃度に依存する。したがって,自然分娩の経過を観察する時はもちろんのこと,陣痛の誘発や促進に薬物を使用する際は,経時的に生体内で変化してくる上記ホルモンを含む多くの生理活性物質の作用も念頭において管理しなければならない。そこで,まず最初に現在証明されている陣痛発来や分娩進行に関する諸事実について解説する。
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