臨床外科 57巻5号 (2002年5月)

特集 肝切除術のコツ

術前

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 肝切除術では,術前に肝予備能を正確に把握して術式を選択することが肝不全の発生を予防するうえできわめて重要である.肝予備能の評価法については,肝硬変合併肝細胞癌の肝切除範囲の決定を中心にこれまで多くの施設で種々の指標を用いてさまざまな判定法が検討されてきたが,いまだ信頼される標準的な評価法は存在していない.評価法としては,一般的血液生化学検査法,色素負荷試験や肝シンチグラフィなどの特殊検査法,および画像診断による肝容積測定法があり,さらにこれらの指標を用いた総合的肝予備能評価法(スコア法,予後得点法)がある.現時点で簡便で信頼性のある指標はICG R15,血清ヒアルロン酸,肝アシアロシンチグラフィにおけるLHL15と考えられる.

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 肝不全のリスクが高い症例に対しあらかじめ担癌葉門脈枝を塞栓し,塞栓葉萎縮と対側葉肥大を得ることで肝切除の安全性を高めることができる.門脈塞栓の適応は,正常肝の80%以上切除,右葉+膵頭十二指腸切除,肝硬変合併肝癌の右葉切除などである.塞栓物質はフィブリン糊,ゼラチンスポンジ+トロンビン,エタノールなどで,前2者は組織障害が少ないが再疎通が多く,エタノールはその反対である.肝門部胆管癌では前2者を用い塞栓後2週で,肝癌で切除容積をできるだけ小さくしたいときはエタノールを用い4週以降に肝切除を行う.塞栓後はドプラエコーで再疎通がないことを確認し,CTによる容積測定で肝実質切除率を算定し塞栓効果を判定する.

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 肝内胆管枝を術前に正確に同定しておくことは,肝門部胆管癌などの手術において極めて大切である.そのためには,直接胆道造影像を多方向から撮影しておくことが必要である.まずすべての区域胆管枝が造影されているかを確認する.左葉胆管枝の同定には正面像に加えて第1斜位または第1斜位・頭前斜位像が,右葉胆管枝の同定には右下側面像が,また尾状葉胆管枝の同定には第1斜位・頭前斜位像が有用である.肝内胆管枝の走向には変異が多いが,臨床上よくみる変異は知っておくと便利である.

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 肝内門脈および動脈の同定は,正確な手術や生体肝移植を行う場合に重要である.門脈はグリソンのなかで最も破格が少なく,太い脈管として各画像診断時によい目安となることより,Couinaudの分類に基づく門脈の亜区域の名称がよい参考になる.脈管を同定するうえで問題となる各脈管の破格や,グリソン系脈管を用いた区域診断と肝静脈を用いた区域診断とで違いの生じる場合のあることを述べた.

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はじめに

 安全で正確な肝切除を行うためには,肝の授動や肝切離をできるだけ良好な視野のもとに行うことが重要である.不測の出血への対処の難易も視野によって大きく異なるし,正確な切離面の確保のためにも良好な視野が必須である.この目的のため,筆者らはJ字型切開による開胸開腹アプローチ法を頻用している.このアプローチ法の最大の利点は肝切除で重大な事故が起こり得る肝静脈根部付近の操作を驚くほど良好で浅い視野で行うことができることである.開腹のみのアプローチと比べるとその差は歴然としている.この開創法は主に右肝の切除時に用いられるが,左肝への視野も良好で,肝切除のほとんどに対応できる1,2)

 欠点としては,開腹のみのアプローチに比べて開創と閉創に余分に時間がかかることが挙げられる.しかし,良好な視野による肝切除操作そのものの容易さと時間短縮を考えると,この時間的不利も相殺される.一部の肝機能不良例を除き,術後の胸水貯留によって胸腔ドレーン留置期間が延長することも少なく,早期離床が可能である.

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はじめに

 肝臓外科において,術中超音波検査は肝内脈管解剖の把握,病変の局在診断,微細病変の発見などに必要不可欠であり,現在では本検査を行わずに肝切除を行うことはありえない1).術中超音波検査では,高周波数の探触子を用いて直接肝表面から走査することにより,あらゆる方向から死角のない,解像度の高い画像を得ることができる.一方,術中検査の制約上,短時間で効率よく情報を得る必要があり,そのためには一定の手順に従って検査を進めることが無駄や見逃しをなくして正確な診断を行ううえで重要である.本稿ではその手順ならびに術中超音波検査による肝切除のナビゲーションを呈示し,さらに今後の展望についても触れてみたい.

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はじめに

 肝切除術は安全そして確実に行える術式の一つとなり,消化器外科の手術のなかでも決して特別なものではなくなっている.的確な肝予備能評価に基づいて切除範囲が決定されるようになったことや,周術期管理の進歩などが肝切除術の成績の向上につながったのはいうまでもない.しかし近年,著しく向上した肝切除術の安全性は術中出血量の減少によるところも大きい.術中出血量と術後合併症や予後は相関することがよく知られており1,2),肝切除術においては,いかに出血量を少なくできるかは重要な点である.

 1908年にPringleは肝外傷による出血に対して肝動脈,門脈という肝臓への送血路を遮断する肝阻血法により出血のコントロールを行った3).肝切除術においても,この肝阻血法が術中出血量の減少に大きな役割を果たしており,現在ではさまざまな肝阻血法が報告されている.本稿では肝切除術における代表的な肝阻血法であるPringle法について当教室で行っている方法を示し,手技の実際とそのポイントについて解説する.

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下大静脈靭帯とは

 下大静脈靭帯はIVC(inferior vena cava)の肝静脈流入部よりやや足側でIVC背側にあり,肝臓の左右を結合している索状組織のことを指し,AnsonとMaddock1)やSobottaの解剖学書には,取り出した肝臓の背側からの俯瞰図にその描写がある(図1).肝の横断図では,右側尾状葉と左側尾状葉の頭側部分をIVCの背面で結合するように張っている線維組織である(図2a).

 その位置関係のためにIVCから肝臓背面を剥離する際,RHV(right hepatic vein)背側を露出するために必ず切離する組織であり,認識していないとRHVを同定する際に困難を感じることになるという理由で臨床的に重要であり,Kune2)は「RHVはIVC流入部近くで0.5〜1.8cm程度肝の外を走行するが,多くの症例ではその部位に線維性の層状組織があり,流入部位がわかりにくくなっている.その線維性の組織は肝被膜より発しRHVの右側にある」と記載している.幕内ら3)は右葉切除や後区域切除の際にRHVを肝外から処理する際にこの靭帯を同定切離することの重要性を指摘している.

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手術直前の準備

 肝静脈を剥離する際に起こる出血のほとんどは分枝の引き抜き,引き裂き損傷1)によるもので,その量は肝静脈圧すなわち中心静脈圧(CVP)に依存する.肝静脈壁が心拍動に同期してペコペコする状態が理想的で,通常CVPは5cmH2O以下がよい2,3).麻酔科医にこの事実をよく理解してもらい,肝切除が終了するまではhydrationを抑えるように協力してもらうことが極めて重要である.肝静脈壁が張りっぱなしの状態は圧が高すぎる危険な状態で,小孔からでも血液は噴出する.この場合はむりに手術を進めないほうが賢明で,麻酔科医にCVPを下げてもらうよう要請する.希釈式自己血輸血の要領で瀉血することにより劇的に出血が減少することも経験している.

 肝静脈圧を低く保つためには体位の選択も重要である.手術台のローテーションを利用して手術操作部位をできるだけ右房よりも高くすることで肝静脈圧を下げることができる.この点で,右肝静脈(RHV)を剥離する際には右開胸開腹連続斜切開(いわゆる右胴切り)(図1,2)はきわめて有効である.

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はじめに

 肝切除における左肝静脈へのアプローチには,①肝離断前に,中・左肝静脈共通幹あるいは左肝静脈を肝外で剥離,テーピング,②肝離断の最終段階において左肝静脈を肝実質内で剥離,テーピング,の2通りがある.

 左肝静脈は,中肝静脈と共通幹を形成するか,または単独で下大静脈に流入する.この中・左肝静脈合流部の形態は,Nakamuraら1)によって5型に分類されている.中・左肝静脈が共通幹を形成して下大静脈に流入するⅠ〜Ⅳ型は84%にみられる.I型は下大静脈から1cm以内に分岐を持たないもの,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ型はそれぞれ1cm以内に2,3,4分岐するものである。中肝静脈と左肝静脈が独立して下大静脈に流入するⅤ型は16%にみられる.これら5型はさらにいくつかの亜型に分類され,その分岐形態は多様であることをまず認識しておくべきである.

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はじめに

 肝切除を行う外科医は肝門部の解剖に精通しておく必要がある.肝門部ではグリソン鞘に連続するようにして肝実質側の半周を強固な結合織からなる肝門板(hilar plate)が存在し,左右肝管合流部を覆っている1〜4).本稿では肝門板の解剖と肝切除における肝門板の存在を考慮した術式のポイントを中心に述べる.

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グリソン系からみた肝区域

 門脈,肝動脈,胆管は肝内ではグリソン鞘とよばれるしっかりとした結合織で被われている.肝外においても動脈,門脈,胆管は粗な結合織に囲まれ,その周囲を腹膜に被われていることから,肝内・肝外門脈系をグリソン鞘樹として扱うことは可能である.尾状葉枝の分岐する肝外グリソンをグリソン鞘一次分枝とすると,肝内に入る二次分枝は左区域枝(左葉枝),中区域枝(前区域枝)右区域枝(後区域枝)の3本がある1)(図1).グリソン鞘一次分枝内の動脈,門脈,胆管の分岐形態には一定の規則性がなく,症例によりさまざまである.ところが肝内に流入するグリソン鞘二次分枝以降では動脈,門脈,胆管はそれぞれ区域枝,区画枝として規則正しく分岐する.このため,グリソン鞘一括処理はグリソン鞘二次分枝以降で安全に行うことができる2).すなわち左葉切除は左区域枝の処理により,右葉切除は中区域枝および右区域枝の処理により行われる.

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Arantius管の発生とその意義

 胎生期の肝臓の発育の過程で,肝内に左右の卵黄嚢静脈どうしの吻合(卵黄静脈叢)が作られる.さらに,この中に臍静脈が直接入り込んで吻合する.胎盤からの血流が増加するに従ってこの吻合路の中の1本が次第に太くなり,Arantius管(Duc-tus venousus:静脈管)が形成される(図1).胎生期には,この臍静脈と下大静脈の吻合路である静脈管によって胎盤からの酸素に富む血液が,肝臓の類洞を通過することなく下大静脈に直接注ぎ込むことが可能となる.Arantius管は,中膜の平滑筋束の作用で,生後2〜3か月以内に内腔が閉鎖して,Arantius管索(ligamentum venosum:静脈管索)とよばれる線維性組織へと変化する.

 先天的あるいは後天的因子で臍静脈の開存を認め,腹壁静脈の怒張,静脈性雑音などを主症状とする症候群はCruveilhier-Baumgarten syndromeとよばれる.また,成人で何らかの要因で静脈管が開存し,門脈と下大静脈間にシャントを形成し,肝性脳症類似の症状を呈した症例の報告1)もある.

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はじめに

 肝動脈,門脈,肝静脈の切離には解剖学的知識,適切な各脈管の剥離が重要である.本稿ではとくに肝門部の解剖および脈管処理の仕方に重点を置いて述べたい.

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はじめに

 肝臓切除では術中の出血量のコントロール,肝細胞癌切除では術中操作による経門脈性の肝内転移を防止するために,肝門部において切除領域の脈管処理を先行することが重要である,脈管の処理法としてcontrolled methodとGlisson鞘一括処理があり,また,肝阻血法としては古典的Pringle法,片葉阻血法(Makuuchi)がある.さらに,今までは,肝腫瘍に対する肝切除が肝臓外科の主流であったが最近では生体肝臓移植に対する肝切除も重要な肝葉切除の一つとなっている.本稿ではそれらの違いについて言及する.

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はじめに

 肝切除において系統的切除を完遂するためには,肝切離線にランドマークとなる肝静脈を全長にわたって露出させることが必須の手技である.しかし肝静脈はグリソン系脈管に比べて脆弱であるため,粗雑な手技では損傷しやすく,とくに下大静脈流入部を損傷すると大出血をきたす可能性が高い.したがって的確な肝切除を行うためには肝静脈を適切に処理し,肝静脈からの出血をコントロールする手技が重要である.本稿では,肝静脈からの出血を最少にとどめ,肝切除線に肝静脈を露出させる具体的なコツについて述べる.

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はじめに

 肝切除は基本的に肝の授動,肝門処理(またはグリソン鞘処理),肝静脈の処理,肝切離の順で行われる.この一連の手術操作のなかで肝切離は外科医が最も緊張する場面の一つであろう.肝切離時の肝静脈の損傷は大出血や空気塞栓を起こす危険性をはらんでいるからである.この肝切離にあたって最も重要なことは,つねに肝切離面と主要な脈管(とくに肝静脈)との位置関係を念頭に置きながら,脈管の温存と切離を的確に進めることである.

 肝切離時の出血量を減少させる方法として,Pringle法や全肝阻血法などの肝阻血法が工夫され1〜3),またwater jet4),cavitron ultrasonic surgicalaspirator(CUSA)5,6),microwave tissuecoagulator7),ultrasonically activated scalpel8,9)などの手術器具が用いられてきている.どのような阻血法や器具を用いるにしても,いかに肝切離線を決定するかが最も重要であることに変わりはない.使い慣れた器具で,適切な切離線を描くことが安全な肝切除につながると考えられる.本稿では,肝切離線決定のコツと方向の維持について述べる.

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はじめに

 肝切除は技術,器械の進歩により,最近10年間に飛躍的に進歩し,安全に行えるようになり一般的な外科的手技の一つとなった.しかしながら,肝門部でのグリソン一括処理1)や,系統的切除のため術中超音波下に支配門脈を穿刺・色素注入による切除区域同定2)などに代表されるように,工夫の余地も残されている領域でもある.

 筆者らの施設でも,①肝切離時に肝表面近くはハーモニックスカルペルを用い出血の抑制と時間の短縮を図る,②尾状葉合併肝葉切除時には残肝愛護の目的で尾状葉のIVCからの剥離は切除側からのみのアプローチで行う3,4),③肝切離に超音波メス以外に,水滴滴下型のバイポーラー(MalisBipolar)を用いるなど積極的に新しい手技を導入し,意義が認められる場合には継続して行い,肝切離をより安全かつ確実に行うよう心がけている.肝切離時の肝表面のstay sutureに関しては,簡単な手技であり他施設でもごく普通に採用されているとは思われるが,それについて述べている文献は見あたらない.

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肝切離の方法は好みの方法でよい!

 肝切離には,ペアン鉗子を用いる方法,CUSAを用いる方法,マイクロ波凝固を用いる方法,Water JetTMを用いる方法などさまざまな方法がある.

 ペアン鉗子を用いる方法は,forceps fracturemethodやcrushing clamp methodなどとよばれ,ペアン鉗子で肝実質を挟んで破砕し,残った脈管を小児用ケリー鉗子ですくい,結紮・切離していく方法である1).他の方法と異なり,特別な装置の必要がないので,いつでもどこでも特別な準備なしに施行可能である.本稿では肝切離をペアン鉗子で行うコツについて述べる.

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CUSATMの基礎知識

 CUSATMはCavitron社製のultrasonic surgical aspi-rator(超音波吸引装置)の略であり,現在では数社から同様の機種が発売されている.開発当時は白内障に対する乳化吸引装置として使用され1),その後さまざまな分野で用いられるようになった.1984年にCUSATMを用いた肝切除術が報告され2),1990年代にかけて出血量や手術時間などの点から肝切除におけるCUSATMの有用性が数多く報告されている3,4)

 本稿では筆者が行っているCUSATMを用いた肝切離とそのコツおよび手術成績について述べてみたい.

カラーグラフ 正しい外科切除標本の取り扱い方・14

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はじめに

 外科医にとって標本整理は術前診断と手術の結果を標本上で判定することであり,手術と直結したきわめて大切な作業である.また標本整理は,患者本人および貴重な症例を外科医に紹介していただいた内科医への礼儀である.

 ひとくちに標本整理といっても,標本造影から写真撮影,スケッチなどいろいろな作業があり,長時間の手術後に行うのは大変である.しかし,術前画像所見と標本肉眼所見とを一例一例検証することは次の症例に役立ち,その積み重ねが手術成績につながる.

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はじめに

 (拡大)肝右葉・尾状葉切除+肝外胆管切除は肝門に主座をもつ,あるいは肝門に浸潤した胆道癌に対する根治切除の中では最も多い術式のうちの1つである.本稿では本術式の適応,手術手技について概説する.

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リード

 癌抗原の特定,腫瘍免疫における新たなる知見,癌特異的抗体の臨床開発など新しい局面を迎えている癌免疫療法であるが,すでに癌免疫療法剤として保険診療として認可されているBRMについて解説し,今後の展開について論じる。

病院めぐり

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 「市民から信頼され,市民が安心してかかれる病院」をモットーとする川崎市立井田病院は,3万7,000m2と首都圏の病院としては比較的恵まれた敷地を有し,「市民の森」に隣接する落ち着いた環境にあります.病床数は552床(一般494床,結核58床)で,17診療科があります.職員は441名ですが,医師数は39名と少なく,病床数に対する医師数は全国の自治体病院のなかでも屈指の少なさを誇って(?)おります.それでも市民の医療需要に敢然と応ずるべく,職員一丸となり日々の診療に当たっています.

 外科は慶應義塾大学の関連病院としてスタッフ5名(川原英之,山本貴章,桜井孝志,山高浩一,立松秀樹)と研修医1〜3名で構成されています.消化器外科が中心ですが,乳腺,甲状腺,末梢血管外科など幅広い領域を扱っています.呼吸器外科と脳神経外科はそれぞれ独立して活動しています.外科系学会認定施設として,日本外科学会,日本消化器外科学会,日本胸部外科学会,日本消化器内視鏡学会,日本乳癌学会,日本呼吸器外科学会,日本脳神経外科学会および厚生省指定臨床研修病院に認定されています.

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 大阪梅田から阪神電鉄の神戸行き特急に約15分間揺られ,阪神タイガースの本拠地「甲子園球場」を通り過ぎ,西宮駅で降車しようと席を立つと,山側の車窓から兵庫県立西宮病院と表示された11階建ての建物が目に入ってきます.周辺は,西宮戎神社,灘の酒倉で知られ,人口43万人余りの西宮市の市役所に隣接してある当院は,1936(昭和11)年1月に兵庫県立西宮懐仁病院の名で開設され,当初は内科,外科,産婦人科,耳鼻咽喉科の4診療科50床で発足しました.

 1947年に現在の兵庫県立西宮病院と改称され,1970年には救急医療センターが,1972年には腎移植センターが設置されました.その間,内科,小児科,外科,整形外科,脳神経外科,泌尿器科,産婦人科,眼科,耳鼻咽喉科,リハビリテーション科,放射線科,麻酔科の12診療科に増設され,地域の中核病院として発展してきました.1994(平成6)年には,現在の本館診療棟が完成され400床になりました.1995年には阪神・淡路大震災で,新本館,2号棟,3号棟の建物が甚大な被害を受けましたが,1998年に改修工事も終了して現在の診療棟が完成しました.

外科医に必要な皮膚科common diseaseの知識・12【最終回】

光線過敏症 宇原 久
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疾患の概念

 日常生活でわれわれが浴びる光線は主に紫外線,可視光線,赤外線である.特に紫外線は人体にとって有害であり,短期的にはDNAの損傷や局所あるいは全身の免疫不全を起こし,長期的にはしみ,しわなどの皮膚変化(光老化)や皮膚癌の発生を招く.一方,このような光による直接的な障害とは異なり,他の因子と紫外線あるいは可視光との共同作業によって皮膚に障害を起こしてくる場合がある.この因子とは先天的な光に対する防御能の低下(色素性乾皮症など),内因性の光過敏物質(ポルフィリンなど),外因性の光過敏物質(薬剤など)などである.

忘れえぬ人びと

血管型ベーチェット病 榊原 宣
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 ベーチェット病.要蔵さんはベーチェット病だったのだ.いまさらステロイドを用いることもできず,これまでの処置,ガーゼ交換と大量出血に対する輸血しかない.直ちに文献を調べてみたが要蔵さんに適応する処置,治療法を見出すことはできなかった.

 要蔵さんの病型はベーチェット病のなかでも血管型ベーチェット病といわれるものである.その当時まだこの病態についてよくわかっていなかった.心・血管病変を伴うベーチェット病の病態と予後について調査報告が行われたのは1975年のことである.病変分類によれば,静脈閉塞が最も多く,動脈瘤,動脈閉塞と続く.動脈瘤では腹部大動脈に最も多い.血管型ベーチェット病に対して手術療法が行われる.動脈瘤に対しては,a)結紮術が勝れる.b)切除する時は病巣部を完全に切り取る.c)血管縫合部ないし吻合部は補強する.d)抗凝固剤などは使用しない.e)血圧は十分コントロールする.f)縫合部ないし吻合部出血が疑われる時には躊躇することなく再手術に踏み切る.この場合は結紮術が安全である.g)他動脈瘤の消長に気をつける.しかし,術後トラブルの発生頻度は高いとある.要蔵さんの病状そのものである.死因は主として動脈破裂で,死亡しないまでも縫合部出血や仮性動脈瘤形成などのために再手術を余儀なくされることが多い.本疾患では動脈中膜の弾性線維が断裂し,血管壁が脆弱なためである.とくに動脈瘤に対する手術成績はきわめて悪いという1)

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 田中真紀子外相が更迭されて内閣支持率が急落したが,そもそも日本の政治家には女性は向いていないのかもしれない.看護師は女性が多いので常日頃女性と一緒に仕事をする者として感じることは,女性は男性よりも生真面目で,仕事の上では嘘は言えず,地位や名誉や金に執着しないということである.さらに感情的で正義感が強く融通が効かないので裏工作や賄賂は通用しない.

 ところで,金鳥の「タンスにゴン」のCMで田中前外相のパロディや関西弁のお雛様,果ては巨乳の歌手までをユニークに演じて好評の沢口靖子は,泉州堺の名門泉陽高校卒業である,清純派美人女優も大阪人の血が騒いだのであろうか,彼女のサービス精神はファンの1人として非常に嬉しい.

米国でのProblem-Based Learning形式による外科研修

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1 はじめに

 前回は,救急でのマネージメントにおけるプライオリティーのおき方についてディスカッションしました.今回のproblem-based conferenceでは,そのプライオリティーの知識を前提として,さらに救急のマネージメントを要する“ショック”をテーマとし,その病態と鑑別診断,そして緊急時でのマネージメントについてディスカッションしたいと思います.前回の症例では上部消化管出血というショックの原因がわかっていたわけですが,今回はショックの鑑別診断と治療を行う上で,患者さんの病状と種々のショックの病態生理を知っておくことの重要性に注目したいと思います.今回取り上げるショックのような緊急症例で重要な点は,以下の通りです.

 (1)プライオリティーを考慮し,まず患者の生命を救うべく処置を行う.

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はじめに

 神経鞘腫は神経鞘のSchwann細胞由来の外胚葉性腫瘍で頭頸部,四肢に好発し,その他の部位に発生することは稀である1).今回,骨盤内後腹膜に発生した神経鞘腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに

 特発性副腎出血は非常に稀な疾患であり,また副腎原発の腫瘍との鑑別が困難であり,手術によって初めて診断がつくことがある1,2).今回,筆者らは後腹膜腔に巨大な腫瘤形成をきたした副腎出血の1例を経験し,手術によって診断しえたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに

 腹直筋血腫は腹直筋内の血管の破綻や筋肉の断裂により発生し,保存的治療が第一選択とされる1).今回,真性多血症に対する抗血栓療法中に発生した非外傷性腹直筋血腫の1例を経験したので報告する.

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はじめに

 内ヘルニアの一つである大網裂孔ヘルニアは稀な疾患であり,術前診断が困難で,短期間に腸管壊死をきたし重篤な状態に陥った報告1)もあり,十分な注意が必要である.今回われわれは,大網の異常な裂孔に小腸が嵌頓し絞扼性イレウスをきたした大網裂孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.

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はじめに

 柿胃石による小腸イレウスは比較的まれな疾患である1).今回筆者らは,術前診断が可能であったが,2個の胃石のために2回の手術を必要とした柿胃石による小腸イレウスの1例を経験したので報告する.

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はじめに

 PTP(press through package)誤嚥による消化管穿孔例はしばしば報告されているが,その多くは食道,小腸であり,大腸の穿孔は比較的稀である1).今回筆者らは,PTPによるS状結腸穿孔例を経験したので報告する.

基本情報

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臨床外科
57巻5号 (2002年5月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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