臨床外科 55巻5号 (2000年5月)

特集 輸液:その組成・アクセス・管理

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 ヒトの体の約60%が水分であり,その約2/3は細胞内(細胞内液)に,1/3は細胞外(細胞外液)に存在する.細胞外液の25%は血漿として血管内に存在し,残り75%が主として間質液として血管外に存在する.これら各水分区画に含まれる溶質組成は異なり,細胞外液にはNaが,細胞内液にはKが多く含まれている.また血漿に含まれる蛋白は,膠質浸透圧を形成し,血管内外の水分移動に重要な役割を果たしている.臨床的には,細胞内液の状況を直接知ることは難しく,細胞外液,特に血漿の情報をもとに輸液管理が行われている.したがって,各種病態における水分区画間の水分の移動やその調節機序を十分理解することが重要である.

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 輸液ルートの確保は,日常臨床上最も基本的な手技のひとつである.投与経路としては末梢静脈と中心静脈とがあるが,それぞれのルート確保にはいくつかのコツがあり,日頃から習熟しておく必要がある.中心静脈を介する輸液ルートの管理としては,カテーテル敗血症の発生を防止することが最も重要であり,井上らの開発したI-system(ニプロ社製)が有用である.

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 輸液は水分・電解質の補給を目的とするいわゆる一般輸液と,さらに十分な栄養補給を目的とする静脈栄養があるが,一般輸液は通常末梢静脈から投与し,十分な静脈栄養は中心静脈から投与される.末梢静脈から投与できる輸液剤は中心静脈からでも投与できるが,一方,高張糖液などは中心静脈からでないと投与できない.しかし,ある程度の栄養補給が可能な中カロリー輸液とも呼べる末梢静脈栄養も行われている.ここでは末梢静脈から投与される市販輸液剤を糖類剤,アミノ酸製剤,一般輸液製剤(電解質液),電解質・酸塩基補正剤,血漿増量剤,脂肪乳剤に分けて,組成ならびに特徴,使用上の注意点などにつき述べた.

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 中心静脈栄養法(IVH:intravenous hyperalimentation)は本邦に紹介されて以来,その絶大なる効果のため著しく普及した.これには次々に便利で有用な輸液製剤が開発,市販されたことの影響も大きい.近年は,外科栄養の専門家の問ではIVHよりも経腸栄養(EN:enteral nutrition)が推奨されているが,依然として一般には高カロリー栄養補助が必要なケースでは,管理が容易と考えられているIVHが選択されることが多い.本稿では色々と工夫されて便利になったIVH用輸液の種類と特性について紹介する.

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 開始輸液は,病態不明であるが脱水があり輸液を必要とするときに行われる.一般にとりあえず細胞外液あるいは1/3ないし2/3等張液を投与しておき,その間に電解質をチェックしその補正を行う.投与量=維持量+欠乏量×安全係数となる.維持輸液は体液の恒常性を維持するための輸液で,維持量に加えて体内から失われる水分を補給する.投与量は尿量+不感蒸泄+糞便水分量一代謝水となり,1日必要量は水分2,000〜2,500ml,不感蒸泄9,000ml,代謝水200〜300mlと考える.輸液施行にあたっては注射針挿入部局所の発赤,腫脹の他,注入速度,注入量,血液生化学検査の異常の有無など注意深く観察し,異常の早期発見と適切な処置を行うことが大切である.

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 外科手術前後の輸液の目的は水分・電解質バランスの維持と栄養補給にある.術前から体液バランスの異常を来している例もあり,水・電解質異常の有無を的確に把握し,個々の患者の病態に応じた管理を行い状態の改善を図ることこそ術後合併症予防の点からも重要である.また,術後管理においても疾患の重症度や手術侵襲による生体反応を良く理解し,臨床所見,検査成績とともに術後経過をみながら適切な輸液管理を施行する必要がある.

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はじめに

 脱水とは体液が正常量より減少した状態をいうが,実際には水分の喪失に加え,種々の電解質の喪失も伴うのが普通である.健常時,1日の水分摂取量と排泄量はほぼバランスがとれており,体内水分量は体重の約60%と一定に保持されている,そのうち1/3は細胞外液として存在し,その2/3は組織間液,1/3が血管内液といわれている1).この分布は当然ながら年齢,性別,体格により異なっており,たとえば小児では体内水分量は65%と成人より多く,また脂肪組織は水分を含まないため,やせ型の人は肥満型の人より水分の割合が大きく,また加齢とともに体重あたりの体内水分量は減少する.

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はじめに

 高Na血症とは血清Na濃度が145mEq/l以上の場合と定義され,その病態は,高浸透圧血症によって細胞内液から細胞外液への水分の移動が生じ,細胞内液量の減少が起こる1).Naと水分の両者の喪失(細胞外液減少型),水分のみ喪失(細胞外液正常型),Na過剰(細胞外液増加型)の3つに分けられる.特に脳細胞の脱水による意識障害が重要である.

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はじめに

 低Na血症は日常臨床上,最もよく遭遇する体液・電解質異常である.血清Na濃度が135mEq/l以下が低Na血症と定義されるが,体内Na量が減少していることもあれば,水分の過剰による希釈性低Na血症のこともある.また,浮腫性疾患のように体内Na量,水分量ともに増加している場合もある,したがって,低Na血症を治療するうえで重要なことは,病歴および理学的所見からその病態を十分に検討し,適切な輸液管理を行うことである.低Na血症は臨床的な立場から有効循環血漿量の減少を伴うかどうかにより,細胞外液減少型,細胞外液軽度増加型,細胞外液増加型の3つに分類される.本稿では低Na血症の病態ごとの対策と具体的な輸液補正法について述べる.

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はじめに

 電解質異常の患者を診療するにあたっては,問診と診察,検査によりその異常が惹起された病態を把握する必要がある.体内では複雑な機序が働いて臨床症状を呈しているのであるから,異常値そのものを治療の唯一の目標とするべきではない.消化器手術の術後管理のように,経口摂取が不能なうえに,手術侵襲,術後合併症,併存症などにより調節機能が低下している患者を対象とする場合には,不適切な輸液管理が電解質異常の原因となることが多いことに注意する必要がある.

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はじめに

 低K血症は高K血症に比して致死的な不整脈を起こすことが少ないため軽視されがちであるが,下痢,嘔吐などの際に,経口摂取が制限された状態で十分な補給が行われないと,比較的容易に起こってくる頻度の高い電解質異常である.中枢神経症状,不整脈,麻痺性イレウスなどの重篤な症状の原因となり,その補正は重要である.

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カルシウムの調節

 血清カルシウム(Ca)濃度の維持は3つの調節機構による.骨でのCaの吸収と放出,腎尿細管でのCa再吸収および小腸でのCa吸収である.おのおのの相互作用により血清Caはほぼ一定値に維持されている.骨から血中へCaが放出されるのは骨でのCa吸収が亢進したときである.小腸でのCa吸収が亢進するのはビタミンD活性が亢進したときである.腎尿細管でのCa再吸収の亢進は脱水,腎血流量低下に加え,副甲状腺ホルモン(PTH)やPTH関連ペプチドが増加したときである.PTHは腎遠位尿細管でのCa再吸収を促進するのみならず骨でのCa吸収を亢進させるホルモンである.さらにPTHは腎近位尿細管において1α水酸化酵素活性を亢進させ,その結果,1.25(OH2)ビタミンDが生成され,これがCaとリンの小腸での吸収を促進させる1).したがってPTHの過剰,ビタミンDの過剰,骨吸収の亢進,腎尿細管でのCa再吸収により高Ca血症が出現する.

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代謝性アシドーシスの成因

 代謝性アシドーシスの成因は,塩基(HCO3)の喪失,酸(H)の産生過剰・過剰供給・排泄障害に大別される(表1).臨床の現場では,これらの中でいずれの原因によって代謝性アシドーシスの病態となっているかを診断することがきわめて重要と考えられる.

 代謝性アシドーシスは,アニオンギャップ(AG)を測定することによって分類することができる(表2).AGとは血中Na濃度から(Cl+HCO3)濃度を減算した値でClとHCO3以外の陰イオンの総和を表す.正常値は10〜15mEq/lである.代謝性アシドーシスの中には,AGが正常域のものと上昇しているものがある.AGが上昇している場合は,陰イオンである無機酸(PO4,SO4)や有機酸(乳酸,ケト酸),蛋白が増加していること示している.

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はじめに

 代謝性アルカローシスは,血漿HCO3が一次的に増加して血液pHが上昇傾向を示す病態であり,代謝性アシドーシスと共に日常臨床においてしばしば遭遇する酸塩基平衡異常である.通常の代謝状態においては,常に老廃物としての不揮発酸が生成され,一方でそれに見合うHCO3が生成されて消費され,結果として血漿HCO3は正常範囲に保持されている.ところが,何らかの原因により,周術期においては体外へHを失ったり,HCO3あるいはその前駆物質が生体内に負荷されて,血漿HCO3が高値で維持された状態が続くとアルカローシスが形成されることとなる.

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はじめに

 心不全とは,様々な原因による心臓のポンプ機能の低下である1).そのため肺や全身にうっ血を来す病態をうっ血性心不全という.当科における周術期でのうっ血性心不全合併の割合は過去5年で0.8%であったが,術死となった症例はなかった.現在では多くの効果的な心不全治療薬も開発され,心不全は恐れるに足らない合併症の様相を呈しているが,外科医であれば1度はこの合併症により治療に難渋した経験を有しているのではないだろうか,心不全に対する不適切な対応は,術前の主治医の認識不足による場合が多い.ここでは,周術期管理の面から,うっ血性心不全を中心とした心不全の輸液の要点を述べる。

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はじめに

 呼吸不全とは空気呼吸下で動脈血酸素分圧が60mmHg以下となる状態であり,動脈血中炭酸ガス分圧によりI型(45mmHg以下),II型(45mmHg以上)に分類される.また,期間により急性と慢性(1か月以上続く)に分類され,両者は全く異なった病態を示す.

 急性呼吸不全は基礎疾患として肺炎,肺塞栓,気道閉塞,心不全,脳出血,成人呼吸窮迫症候群(ARDS:adult respiratory distress syndrome)などがあげられ,特徴として①著明な低酸素血症,②呼吸性アシドーシス,③電解質異常(総体内量は不変),④多臓器不全の合併がある.一方,慢性呼吸不全は基礎疾患として肺気腫,慢性気管支炎,肺結核,胸郭形成術後後遺症などがあげられ,特徴として①低酸素血症,②酸塩基平衡異常,③電解質異常(総体内量も変化),④高齢者が多い,⑤呼吸・循環予備能に乏しい(肺性心の存在),⑥慢性低栄養状態,⑦多臓器不全の合併がある.

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はじめに

 肝臓は体重の約2%と体内で最も大きな臓器であり,主として代謝・解毒・胆汁分泌の機能をつかさどり,その制御機能は複雑多岐にわたる.肝硬変患者においては,生体の化学工場である肝臓が器質的,機能的に障害されており,その結果様々な病態を呈する。本稿では肝硬変患者における輸液管理につき述べる.

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はじめに

 腎機能障害を有する患者の輸液管理においては病態に即したため細かな輸液formulaの決定が重要となる.また,腎機能障害の程度は軽度のBUN,クレアチニン(Cr)の上昇にとどまるものから,水・電解質異常を伴い透析が必要となる急性,慢性の腎不全まで患者によって様々であり,機能障害の程度を正確に把握することが第一歩となる.そこで本稿では,腎機能障害の病態と障害度に応じた周術期の輸液管理について概説する.

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糖尿病の病態と輸液療法の目的

 生体に手術侵襲や感染などのストレスが加わると,カテコールアミン,グルココルチコイド,グルガゴンなどのインスリン拮抗・異化ストレスホルモンレベルが上昇し,貯蔵脂肪から脂肪酸とグリセロールが放出される.肝臓貯蔵グリコーゲンはブドウ糖に分解され,筋肉組織からはアラニンなどの糖新生基質が放出され,糖新生は亢進する.その結果,高血糖,高アミノ酸血症,高遊離脂肪酸血症やケトン血症が見られ,体蛋白は喪失し,体重は減少する.この状態を外科的糖尿状態(surgi—cal diabetes)と称するが,エネルギー基質とタンパク質が適正に補給されないと,栄養障害から最終的には免疫機能や呼吸循環機能などの全身の機能障害に陥る.

 未治療の糖尿病患者では,インスリンの絶対的または相対的作用不足による日常的な異化亢進のため,非ストレス下でも高血糖,高遊離脂肪酸血症やケトン血症が見られる1).このような状態にストレスが加わると異化亢進と代謝失調はさらに深刻化する。糖尿病患者の輸液療法の目的は,インスリンを併用し,エネルギー基質とタンパク質を適正に補給し,術中,術後あるいは絶食期間の異化亢進と体蛋白の喪失を抑制し,全身の機能障害ならびに糖尿病に起因する糖尿病性ケトアシドーシスや非ケトン性高浸透圧性昏睡などの重篤な代謝失調状態を治療・防止することである.

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はじめに

 静脈輸液をする場合,その投与方法は末梢静脈にサーフロー針などを留置する場合と,中心静脈にカテーテルを挿入する場合とに大別される.前者の場合は投与する輸液の浸透圧により静脈炎を生じることがあるが,この場合は留置針を抜去することで自然に軽快し,臨床上問題になることはほとんどない.しかし,ある腫の抗癌剤などを末梢より静脈注射する場合,血管外に抗癌剤が漏出すると同部の皮膚に難治性の潰瘍を形成する場合があり注意を要する.本稿では,輸液ルート関連のトラブルが時に重篤な合併症となる中心静脈へのカテーテル挿入と留置に関して,予防法,対策について述べる(表1).

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はじめに

 現在,完全静脈栄養時には微量元素製剤とビタミン製剤が付加される.微量元素に関しては,わが国でも1992年以降同一内容の2製剤が市販されている.最近では,セレンなど市販製剤に含有されないヒト必須微量元素の必要性も議論されている1).これまで,必須微量元素の補充という観点から研究,製剤の改良が進められてきたが,最近,微量元素製剤長期連用に伴うマンガン(Mn)蓄積症が報告され2,3),過剰投与の問題も提起されている.

 ビタミンに関しては,1982年以来7種の静注用総合ビタミン製剤が市販されており,特殊な状況を除いて過剰症,欠乏症などはほとんど発生していない4).しかし,高カロリー輸液時のビタミンB1(Vit B1)の不十分な投与に起因する急激な代謝性アシドーシス発症には注意を要する5,6).現在,高カロリー輸液時にはVit B1投与は必須とされる一方,非高カロリー輸液時には保険医療制度によりビタミン製剤投与は制限されている.消化器外科手術後には非高カロリー輸液時,あるいは高カロリー輸液開始後短期間でのVit B1欠乏性代謝性アシドーシス発生の報告が散見される7)

カラーグラフ 早期胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術・3

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はじめに

 幽門上・下リンパ節転移の頻度が低い噴門部の早期胃癌に対しては,胃切除範囲を縮小した噴門側胃切除術が行われてきた.噴門部の早期胃癌では右・左噴門リンパ節は1群リンパ節のため,迷走神経温存術式の適応には慎重にならざるをえないが,リンパ節転移がない,またはきわめてリンパ節転移の頻度が低いと考えられる症例では迷走神経を温存した噴門部胃切除術が可能と考えられる.

 噴門部に位置する早期胃癌に対する腹腔鏡補助下噴門側胃切除術(laparoscopy assisted proximalgastrectomy:LAPG)は,北野ら1)が最初に報告した.

病院めぐり

草加市立病院外科 八重樫 寛治
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 当院は煎餅で有名な埼玉県草加市(人口約23万人)にあり,最寄りの東武伊勢崎線新田駅からは徒歩数分,新田駅は地下鉄日比谷線と相互乗入により秋葉原駅から34分です.歴史的には松尾芭蕉の「奥の細道」“その日やうやう草加といふ宿にたどり着きにけり”と記された宿場町として発展した県東部の街で,東京都足立区に隣接しています.

 当院は昭和36年2月草加市を設置母体として設立され,現在209床で二次救急を含む地域中核病院の役割を担っています.過去5年間の平均病床稼働率は93.2%,平均在院日数は19.6日です.スタッフは東京医科歯科大学教育関連病院として同大学よりの派遣が多く,医療設備はCT,リニアック,DSA,各種内視鏡,超音波,MRI(近日導入)があります.施設の新築移転計画(草加市草加2丁目,157床増床し366床)が平成14年度完成を目指して進行中です.

大和市立病院外科 竹下 利夫
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 大和市は,神奈川県の中央部にあたる県央地区に位置し,人口21万2千人,交通の便に恵まれ,首都圏のベッドタウンとして発展してきました.

 当院は1925年,大和町国民健康保険直営病院として発足し,市民の健康と地域医療に貢献してきました.1938年,現在地に移転新築し,大和市立病院と名称変更しました.1993年,403床を有する現病院が完成し,高度医療に対応するために,MRI,リニアックを設置し,診断,治療の幅が広がりました.当市以外の近隣諸市からも,多くの患者さんが利用しています.1994年には,地元医師会との病診連携として,開放病床(15床)を設置し,地域医療の中核病院としての役割を果たしています.

外科医に必要な泌尿器科common diseaseの知識・10

性行為感染症 小田島 邦男
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 性行為感染症には性病予防法の対象となっている梅毒,淋病,軟性下疳,鼠径リンパ肉芽腫症のいわゆる性病に加え,性行為で感染する可能性のある陰部ヘルペス,腟カンジダ症,トリコモナス症,非淋菌性尿道炎,クラミジア感染症,B型肝炎,AIDSなどが含まれる.このなかで泌尿器科が扱う性行為感染症のほとんどが男性の尿道炎である.以前にはその多くは淋菌性尿道炎であったが,1970年代をピークにその割合は徐々に低下し,現在ではクラミジアを中心とした非淋菌性尿道炎が半数以上を占めるようになっている.

 ここでは,淋菌性尿道炎とクラミジア性尿道炎についてその臨床所見,診断と治療をまとめてみた.

外科医に必要な整形外科common diseaseの知識・12【最終回】

手根管症候群 和田 卓郎
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はじめに

 手のしびれや疼痛を主訴に外来を訪れる患者は多い.そのような患者のなかに上肢の絞扼性神経障害(entrapment neuropathy)が含まれている可能性がある.手根管症候群は上肢に発生する最も頻度の高い絞扼性神経障害である.本稿では手根管症候群の臨床像,治療法について概説する.

私の工夫—手術・処置・手順

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1.はじめに

 外科手術後に発生する合併症は,患者に苦痛を与えるだけでなく,在院期間を延長させ,入院治療費を増大させる.欧米では,ある基準のもとに術後合併症の発生率や死亡率を病院ごとに公表し,治療水準を比較する試みがなされている.今後日本でも極力術後合併症を減らし,医療費を抑制していくことが,病院ごとに求められてくるであろう.

 術後合併症を減らすには,外科医の技術を向上させることが基本であるが,個々の患者の予備能に応じた無理のない術式を選択することも重要な因子である.われわれはこの目的を達するために,手術リスク評価法E-PASS scoring systemを開発した1).本稿ではその使用法を紹介する.

目で見る外科標準術式・5

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はじめに

 実験的に縦隔鏡を用いて鏡視下に食道切除が試みられたのは比較的早く,1989年Kipfmüllerら1)は羊を用いて行っている.しかし,最初に臨床例で胸腔鏡下に食道を切除したのは1992年のCuschieriら2)とされる.本邦では川原ら3)の反転抜去との組み合わせによる臨床例への応用に始まり,その後井上ら4)や赤石ら5)によって通常の開胸術とほぼ同様の手順で鏡視下に食道切除が行われるようになってきた.しかし,現在においても胸部食道癌に対する胸腔鏡下食道切除の位置付けに関して施設により若干の相違がみられる.すなわち,井上らは現時点では十分なリンパ節郭清を鏡視下で行うことは困難であるとしているのに対して,赤石らや筆者ら6)は鏡視下においても通常の右開胸下と同様のリンパ節郭清が可能であると報告してきた.本稿では筆者らが行っているミニ開胸を併用した胸腔鏡下食道切除,ならびにリンパ節郭清の手術術式と工夫について述べる.

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はじめに

 破裂性腹部大動脈瘤の手術成績は現在でも満足できるものではなく,死亡率も23〜58%1〜8)と高い.そこで手術成績向上のため迅速な診断,手術までの時間の短縮,そして出血制御を含む手術アプローチが工夫されてきている.この中でショック状態を呈する例に対して左開胸にて胸部下行大動脈を遮断する方法(以下,開胸併用法)は出血のコントロールと血圧の上昇が得られ,以後の操作を容易にし手術成績が向上したとの報告1,5〜7)がみられる.われわれも最近の7年間に重症の破裂性腹部大動脈瘤4例に開胸併用法を採用し,救命率を向上させることができたので若干の文献的考察を加えて報告する.

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はじめに

 腸管子宮内膜症は比較的稀であり,その発生機序,病態に関しても不明瞭な点が多い疾患である1,2).今回われわれは,腸管傍リンパ節にも子宮内膜組織が認められた直腸子宮内膜症の1例を経験したので報告する.

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はじめに

 今回われわれはイレウス症状で発症し,術前に診断しえた多発性腸管子宮内膜症の1例を経験したので報告する.

基本情報

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臨床外科
55巻5号 (2000年5月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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