看護学雑誌 49巻12号 (1985年12月)

特集 日常ケアを見直そう[総集編]

  • 文献概要を表示

わたしたちは,どんなことにしろ,そのものの意味を知らなければ、それを大切にしたり愛したりすることはできない.現実を理解しなければ、それを愛し、そこにはたらきかけていく人間の歴代のうけつぎ手として,今日生きている喜びや感動を味わうこともできない.(宮本百合子)

  • 文献概要を表示

 患者の配置および転ベッドをテーマとして取り上げた時,病院の設備,療養環境,患者の安全・安楽,プライバシーとの深い関連を今さらながら考えさせられた.私たちは‘病人の生活の場として,快適な住環境を整える’という大きな役割を担いながらも,現状では病状を主体として配置を考え,そこから生じてくる転ベッドの多いことが,患者にがまんの連続を強いてはいないだろうか.そして,患者のため,といいながら,病院側の都合でそれを行なってはいないだろうか.

 患者の快適な住環境を考える上で‘古典’ともいえるナイチンゲール病棟の理念などにも立ち戻りながら,差額ベッドの問題なども含め,患者配置,転ベッドの現状を見てゆきたい.

  • 文献概要を表示

 ある病院でSOAP式の記録を始め,特に評価もしないまま続けて約1年が過ぎた.カルテを見て目立つのは,‘考えたこと’(判断)の欄の空間が一番広いことだ.ある看護婦は,空欄がもったいないからといい,観察の内容も続けて判断の欄に書き,また,ある看護婦は,欄があるんだから何か埋めなければという意識を持ち,怒力して書く.しかし,努力して記入してもその場限りで,以後のケアに生かされていないという現状である.

 それはなぜなのだろうか.看護婦がする判断は,看護の実践過程において,どのような意味を持つのだろうか.

  • 文献概要を表示

 退院指導とか継続看護の必要性が強調されるようになって久しい.これらの必要性がいわれるようになった背景には,急性疾患に代わって慢性疾患の患者が多数を占めるようになった疾病構造の変化がある.慢性疾患の患者は退院後も引き続き医療の管理が必要であり,日常生活をコントロールしていかなければならない.したがって退院に当たっては,急性疾患とは違った援助が要求される.さらに最近では,医療・看護両面で高度なケアを継続していく必要のある患者が退院して在宅に移行する例も増えており,なおいっそう退院の援助が重要になってきた.この項では,患者の退院に当たって看護婦が行なう援助について,特に慢性疾患の場合を中心に見直してみたい.

  • 文献概要を表示

 看護の道を選び,看護学生時代に出会った婦長さん,看護婦として就職し配属された臨床の場で出会った婦長さん,それから数年の臨床経験を積んで出会った婦長さんなど,それぞれどんなイメージを婦長に持っているのだろうか.皆さんの胸の中では婦長に対する期待と不平・不満が限りなく交錯しているのではないだろうか.吉田浪子氏は,“看護管理──99の要点”(日本総研出版)で,婦長,主任に求められるものとして99の事柄を述べている.

 日々これだけのことを求められていると最初からわかっていれば,婦長の引き受け手は激減してしまうかも知れない.また,婦長が自分が負っている責任をあまり強く意識しすぎると,きっと身体的にもクタクタに疲れ切ってしまうのではないだろうか.苦しみの後に楽あり,重責を担う一方,婦長としての喜びというのも当然なければならない.

  • 文献概要を表示

 ある先輩ナースが次のようなことを話していた.‘中国残留孤児たちが来日して,その様子が毎日のように報道されているけれど,肉親とめぐり会えた人,会えなかった人のそれぞれの姿が報道されるたびに,あらためて血のつながりとは何か,家族とは何か,と考えさせられる’と.

 またある知人より,次のような質問を受けた.妻の父親が80歳で喘息で入院,そして更にその妻が70歳で急性骨髄性白血病で入院と,病気の人間をかかえる家族となった.その時に,妻の両親の家族や,地域の親しかった人たちが次々と病院へ面会に来た.僕にとっては初めて会う人たちで,付き合いのない人たちだが,その時に家族って何だろうと考えてわからなくなった.病院では,ナースはこういう人間たちをどうとらえているのか,家族というものをどういうふうに考えているのか,という内容だった.

ホスピスからのレポート 続・死にゆく人々のケア・12(最終回)

これからのホスピスの展望 柏木 哲夫
  • 文献概要を表示

はじめに

 ホスピスでは1年間に79名の患者が亡くなった.1人1人の患者がホスピスで人生の総決算をしたわけである.スタッフにとっては,1人1人の患者が教科書であった.

 患者は私どもに多くのことを教えて,この世を去っていった.1人として同じ死はなかった.それぞれが異なっていた.しかし,それを79名というまとまったグループとしてみることも大切である.79名がどのような特色をもっていたかをまとめたのが,今回の報告である.

癌患者の手記—私は前を向いて歩く たとえ声は奪われても・12(最終回)

明日へ向かって 吉見 之男
  • 文献概要を表示

再び食事に挑む

 5月も半ばを過ぎ,水を飲んでも何の障害もないので,いよいよ流動食を口にする.ストローで飲むのだが別に何ともない.この分なら何とかいけそうだと喜ぶ.ところが翌日になると昼食に突然半固型食が出た.

 驚いてしまったが医師の指示らしい.本人が納得していないし,話も違うと看護婦に抗議する.

学生の広場

  • 文献概要を表示

はじめに

 私は内科病棟実習中,白血病で予後不良の診断を下された18歳の少女と出会いました.

 今まで学生として,様々な病棟で実習を経験し,いろいろな健康レベルにある患者を見てきました.そこには必ずと言ってもよいほど‘死’というものが,いつの時も内在していました.そのような‘死に対しては,‘精神的看護’あるいは‘終末期のケア,というものが,必要不可欠なものとして取り上げられています.

  • 文献概要を表示

はじめに

 本事例は,前立腺肥大症のため恥骨上式によって,前立腺の摘出術を受けた69歳の男性患者である.患者は高齢ではあったが,諸臓器機能低下,適応力減退,筋力低下などは比較的少なく,経過は順調であった.

 私は術前術後の指導の際,コミュニケーションの展開の場面で何度か患者との行き違いを経験した.そこで私は,この患者を老人の看護というとらえ方だけではなく,一人の人間の看護としてとらえ,コミュニケーションについて考えてみた.

  • 文献概要を表示

 看護をしていく上で看護者は人間を理解していくことが大切である.人間理解の方法として,まずコミュニケーションがある.病院におけるコミュニケーションは患者と看護者の両者に良い人間関係,信頼関係をもたらし,何でも話せる環境を作り出すことにより患者理解へとつながっていく.

 看護学校へ入学して以来,1年次のコミュニケーションを主とした基礎実習,2年次の技術実習,そして3年次の系統別実習,総合実習と3年間の実習が,終了しようとしている.どの実習においても共通して切り離すことのできないものが,患者理解に必要なコミュニケーションだと思う.

  • 文献概要を表示

 今回私が受け持った患者は閉鎖病棟に入院しており,精神分裂病で他人に対して恐怖心が強く,被害妄想があるため,周囲とのコミュニケーションが全くとれなかった.特に看護婦に対しての拒絶は甚だしく,必要以外はほとんど頭から布団をかぶって臥床しているという状態であった.

 しかし,以前に実習生が受け持った際,いろいろなかかわりの結果,良い人間関係が持てた例があったということだった.それを聞いて,私にもそのような関係が作れるのではないだろうか,という期待と,看護婦に対しては拒絶的でも,実習生にはそうではないのはなぜか,という疑問がわき,その理由を知りたいと思い,この患者を受け持つことに決めた.

  • 文献概要を表示

はじめに

 救命救急センターに搬送されてくる患者は,気道確保として気管内挿管を要することが多い.この様な患者において,肺感染症の合併は多くその原因として,血行性感染,吸入ガスの汚染のほかに,口腔内細菌の気道への流入(silent aspiration)があげられており,その報告も多い1)-3).そこで私たちは,口腔内分泌物と気管内分泌物を調べると同時に,口腔内ケアを重視し,その方法に関し検討を行ない,新しいケア方法を考案したので,その詳細を紹介したい.

  • 文献概要を表示

 放射線科で働く私たちは,癌と闘う患者と毎日接していますので,患者とともにその病状に一喜一憂しています.特に,ターミナルステージ(末期)にある患者といると,その表情や交わす言葉の中に,末期患者特有の心理やその人の人間性を垣間兄ることがしばしばあります.

 40代以上は癌年齢と占われていますから,私も実は黄色の点滅信号の中にいるので,自分が癌になって入院することになった時は……と最近時折考えます.癌の進行,その過程の諸症状,肉体的苦痛,内面の葛藤など,際限なく想像してしまいます.

  • 文献概要を表示

はじめに

 私たち聖路加国際・病院の,フライマリ・ナーシングのプロジェクトチームが.過去目回,プライマリ・ナーシングの諸側面について連載をしてきたが,いよいよ今回が12回目の完結編となる.

 そこで私たちが,当院でどのように具体的に,このシステムを導入していくか,そのためのフランのあらましについて紹介をして,このシリーズの締めくくりとしたい.

ここまできた日本の医療・12

  • 文献概要を表示

マイクロサージェリー応用の歴史

 ──卵管が種々の理由で,癒着したり,つまったりして不妊症になってしまう人に対して,顕微鏡下で手術を行なう,いわゆるマイクロサージェリーを用いた手術で卵管の疎通障害が飛躍的に改善されるようになり,その結果,妊娠率も高まったと聞いていますが,この卵管形成術に,マイクロサージェリーが応用されるようになったのは,いつごろからでしょうか.

 そもそも,卵管に異常があって不妊となり,それを外科手術で解決しようとする試みは欧米で始まりました.

 欧米では日本と違い10代(女性)で結婚し,妊娠・出産を比較的若いうちに終え,卵管結紮などの,永久不妊手術を受ける人が多くいました.

  • 文献概要を表示

‘この忙しい時に,なにも看護婦が……’

 ……今日の退院は2名,○号室のAさんと△号室のBさん,入院は3名……’と,今日も病棟の朝の申し送りが行なわれている.E看護婦は,自分が受け持ちとなる入院予定患者の情報をもとに,‘ゴムシーツと吸引器を用意して……’と頭の中で今日の仕事の手順を孝えている.

 さて一方,入院してくるその人はどんな朝を迎えるだろうか.脳腫瘍—入院・手術—克服の道を歩んだ中条さんは,その闘病記の中で入院に関して次のように述べている.

  • 文献概要を表示

 今回のグラフの主役,長谷川美津子さんは本号の特集を執筆している〈日常ケア検討会〉の有力なメンバーでもある.検討会の席上で彼女のソプラノが名調子を奏で始めると,会は俄然盛り上がる.歯に衣着せぬというよりは,正義感が服を着て歩いているような人だから,彼女の舌鋒には他のメンバーから「言いにくいことをよくぞ言ってくれた」との思いを込めた感嘆の声しきりなのである.

 その長谷川さんに,千葉県野田市に新設された小張病院(小張淑男院長)から誘いがかかったのは,今年の2月のことだった.これまで都会の大病院で,しかも,スタッフとしてしか勤務したことのない彼女に,地方の個人病院が,総婦長で来てほしいという「寝耳に水」のラブコールを送ってきたのである.迷いに迷った挙句,彼女が招請を受諾した時には,すでに開院が目前に迫っていた.最終的にどのような判断でこの困難な道を自らに課したのかは知る由もないが,それこそいつものように,真正直に‘看護’を考えた末の決断だったことは間違いない.

痛みの臨床・20(最終回)

痛みの意味の発見 中島 美知子
  • 文献概要を表示

 私は,痛みの意味を発見することが痛みの治療の最前線であり,また今後の方向でもあると考えている.痛みの意味には,否定的な意味と積極的な意味がある.前者は痛みによって表現される怒りや敵意などの,隠れたいまわしい感情であり,心身症としての慢性痛(特に慢性良性の手に負えない痛み症候群:CIBPS,連載3回目参照)にみられる特徴である.

 後者は癌性痛やリウマチ,そのほか難治性の痛みのある患者が,自分の痛みのある状況に対して,より積極的な高い次元での意味づけを発見することを通して痛みを耐えやすくし,現実に痛みも減少することが神経生理学的に証明されている.

ぼけの臨床・8

ぼけの症状[7] 井上 修
  • 文献概要を表示

 前号までは,ぼけに伴って現れる知的・感情的・性格的な障害のいろいろを取り上げて述べた.これらの障害を持つぼけ老人は,さまざまの問題行動を呈するものである,そこで,今回はそれらの問題行動について触れてみよう.

  • 文献概要を表示

思い出しておこうPOSとは‘プロブレムごとに’

 前回の最後のところ,覚えているかな.自動車の修理工場のオジサンのことではなくて,ほらっ.この絵(図1)を見れば思い出せるでしょう.

 そう.“POS=プロブレムごとに”.このこと,P-OSではいちばん大切なことだから絶対に覚えてくださいね.

病む人々へのカウンセリング・11

  • 文献概要を表示

カウンセラーに求められる基本的態度として,‘クライエントの訴えを共感的態度で聞く’ということがあります.何かで悩んでいる時に温かい同情と関心をもって自分の訴えに耳を傾けてもらえるのは,なんと心の慰められることでしょう!

 思いもかけない困難に直面し,心のエネルギーをすっかり使い果たし,自分の足で立つことさえできないと感じるほど意気消沈している時,エネルギーを再び注いでくれるのは,共に感じる心をもって自分の訴えを聞いてくれる人の存在でしょう.

インフォメーション 新しいナーシングケアのために

習慣病 中野 正孝
  • 文献概要を表示

 ‘習慣病’(habit diseases)とは,日野原によれば‘あなたの日常の悪い習慣から来る病気,何年も何十年も毎日繰り返しているあなたの習慣の中に,何か悪い因子があって,そのために病気がだんだんと作られる,そのような病気の総称’ということであり,いわゆる‘成人病’(diseases of the adult)の代わりとして提唱された言葉である.その背景には,成人病という言葉や概念が分かりにくいということがある.

 成人病という言葉は,昭和32年に厚生省が初めて用いている.周知のように,我が国では,戦前までは感染症による死亡が死因の上位を占めていたが,昭和30年代になると脳血管疾患などの慢性疾患が上位を占めるようになった.その対策のために生まれた言葉であるが,成人病として扱われる病気の範囲は必ずしも統一されているわけではない.例えば,厚生省の統計でいう成人病とは,死因を5つの群に分け,その中のB群を指しており,糖尿病などは成人病から除かれている.

教育婦長

吉井良子さん—聖路加国際病院 本誌
  • 文献概要を表示

1975年まり看護教育婦長を務める.聖路加病院は勤務しているナースの1/3強が4年制大学の卒業生,また継続教育を目指して就職してくる人たちが多い.そのため「この病院のナースは全体にモチベーションが高く,かなり高度の内容を求めています.幸い指導者にも惠まれているので,それに十分答えられるプログラムを提供し,更に,指導者を教育てることが,私に与えられた役割だと考えています.若い人たちは,私に追いつき,追い越していきます.もちろんそれでいいのですが,私自身も勉強して,その差をできるだけ少なくしたいと思っています」

ちょっと一言 総婦長のつぶやき

あるがままに 斎藤 カツ子
  • 文献概要を表示

 東北のこけしで有名な鳴子温泉街にあるリハビリテーションを目的とした,ベッド数90床の病院が,この4月から私が勤め始めた病院です.それまで大きな病院で,上司に向かって占いたい放題言わせてもらっていたースタッフの私が,今度はまるで逆の立場に置かれたわけですから,私はともかく,スタッフのほうが戸惑っているのではないかと思います。立場上ぶつかり合うとは言っても,それはお互いの気心がある程度通じ合っているからこそできることで,よその病院から米たほっと川の型、が相手では‘けんか’のルールづくりから始めなければなりません.

 私の方はと言えば,患者さんとの対応場面で‘ねばならぬ’倫をやめて,その人なりにという考え方が,援助の方法も含めてようやく見え始めてきた時期に現場を離れることになってしまいました.ところが,部長業務の中には‘ねばならぬ’を前面に出さないとダメな場合が多く,思考回路のチャンネル切り換えが大変です。でも今は,対象が患者さんから病院の看護部になったのだと考えられるようになりました.これまで生きてきた生き物として病院の流れをとらえることから始め,まるで1人の人間に対応するように私の今までの経験を応用しながら,私なりにやっていこうそう思った時から肩の力が抜けて気分がずっと楽になりました.病院を入間にたとえると看護部は手足になりましょうか,四肢麻痺を起こさぬよう他部門と連携してやっていこうと思います.

  • 文献概要を表示

 1981年からサンケイ新聞紙上に‘ガン110番’が連載されるようになったがこの欄に対する問い合わせがとても多く,これに答えるシステムを早急に作る必要に迫られた.

 そこで,癌研究会付属病院と生命保険会社のアメリカンファミリー,サンケイ新聞の3者で,1982年8月にガン電話相談室を癌研病院内に設置した.その2代目のカウンセラーとして,月曜から火曜まで相談室に詰めっきりで電話相談に応じている.

南の島での保健医療 インドネシアで保健婦として働いて・12(最終回)

海外医療協力のすすめ 塚本 香代美
  • 文献概要を表示

 私が海外ワーカーを志したのは高校生の暁元キリスト教海外医療協力会ワーカー・岩村昇医師の講演を聞いてからです.シュバイツアーは愛の人と呼ばれ、多くの人に博愛について考えさせる人ですが,私が彼について心をひかれたのは,自分の人生を,30歳までは自分自身の成長のため,それ以後は入のために用いようと言ったという点です.しかし私自身について考えてみると,まだまだすべての面で足りないことや,欲望が多く,人に捧げられるほどのものを持ち得ていないと思います.

 我々日本人にとって英語を話すことは難しいことですが,なんといっても英語は世界中で通用する言葉ですから,知っておいて損はありません.それどころか外国人の中で働く時には,完全に使えれば使えるほど仕事に自信が持てることになります.

子供たちの痛み 指導相談科からのお便り・12

  • 文献概要を表示

 M新聞投書欄“女の気持ち”にこんな文章が載っていた.

 ‘感冒で受診した医院には産婦人科もあり,赤ちゃんを抱く若い母が待合室に多い.おしりの兄えそうなミニスカート,髪も爪も赤い女が乳を含ませている.濃いアイシャドー,ピアスも気になる’とあった.

--------------------

基本情報

03869830.49.12.jpg
看護学雑誌
49巻12号 (1985年12月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月14日~9月20日
)