総合リハビリテーション 47巻2号 (2019年2月)

特集 脳卒中診療とデータベース

今月のハイライト
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 脳卒中患者数増加とともに,リハビリテーション医療を含む脳卒中医療費は増加の一途をたどっており,限られた医療費のなかで良質な医療を提供するために,脳卒中診療の体制整備や効率化が求められています.医療データベース(database;DB)をもとにしたビッグデータの活用などが進められ,脳卒中診療においても医療の質の評価(quality indicator;QI)の導入が検討されています.今回,研究あるいは事業として進められている脳卒中DB登録について,リハビリテーション関連職種も知っておくべき脳卒中DBを取り上げ,今後の普及や活用に向けた特集を企画しました.折しも,特集内でも触れられているDB登録事業の法整備につながる「脳卒中・循環器病対策基本法」が国会で可決,成立したというビッグニュースが舞い込んできました(2018年12月).わが国の脳卒中診療が大きく変わる前触れのように感じています.

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はじめに

 脳卒中は,心血管疾患のなかでも頻度が高く,2017年には再び死因の第3位となり1),要介護状態に陥る疾患では認知症に続く第2位である2).また,今後の高齢者人口の増加に伴い,脳卒中患者数は2014年の118万人から増加して2020年には166万人と将来推計されている3).脳卒中医療では,急性期の入院治療以外にも,脳卒中の発症予防,後遺症に対するリハビリテーション,在宅介護など膨大な資源が投入されており,2016年度の国民医療費における脳血管疾患の年間医療費は1兆7439億円であったことが報告されている4)

 限られた医療費のなかで良質な医療を提供するためには,脳卒中診療の体制整備や効率化が必要であり,そのためには悉皆性と信頼性を合わせもつ国家的な脳卒中登録事業が不可欠とされている5).海外においては,1990年代よりビッグデータを利用した全国規模の脳卒中登録研究が進められている6).一方,わが国においても医療のIT化が進み,近年ではビッグデータの解析による医療への活用が注目されてきている.

 本稿では,まず脳卒中登録研究における海外の動向を紹介し,日本の脳卒中診療における症例登録(事業/研究)の目的やデータベース構築の意義および継続性の課題を述べる.

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はじめに

 わが国において,脳卒中は死因の第3位,要介護に至る原因疾患の第1位を占め,その対策は行政,医療従事者その他の関係機関にとって喫緊の課題となっている.脳卒中に対し適切な疾病対策を行うためには,疾病登録事業などにより,国および地域における脳卒中診療の実態を正確に把握し,その結果に基づいた施策を立案することが重要である.しかし,2018年現在,わが国の脳卒中診療の領域には,「がん対策基本法」,「がん登録の推進に関する法律」に基づくがん登録に相当するような,強制力のあるデータ登録事業がなく,一部の地域の事業や研究として個別に実施されるのみである.行政がかかわって症例登録事業などを実施している都道府県も,12府県にとどまっている1).悉皆性の高いデータ登録事業がない現状において,診療実態を適切に把握することは困難であり,2016年より開始された厚生労働省健康局の「脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」の報告書2)において,疾病レジストリなどのデータベースのあり方については今後の検討課題である旨の言及がみられたり,また同年に日本脳卒中学会,日本循環器病学会などの連携のもとで公表された「脳卒中と循環器病克服5か年計画」3)でも,登録事業の促進が,5か年計画を達成するための戦略のひとつとして挙げられるなど,疾病対策を立案するうえでの重要な課題と認識されている.

 本稿では,わが国における現行の個別の脳卒中登録事業のうち,脳卒中急性期の症例を登録している日本脳卒中データバンクについて,取り組みや変遷を紹介する.また,特に脳卒中のリハビリテーションに係るデータの収集における日本脳卒中データバンクの役割を示し,その課題について考察する.

J-ASPECT study 連 乃駿 , 飯原 弘二
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はじめに

 厚生労働省発表の「人口動態統計月報年計の概況」によると,2017年1年間の脳血管疾患による死亡数は10.9万人で,前年に比べ増加傾向を示し,全死因においても再び第3位となった.超高齢社会の到来に伴い,医療および介護に依存せずに生きられる健康寿命の延伸が最重要課題となるが,脳卒中は要介護の原因疾患として最も大きな割合を占めており,脳卒中における医療の質の向上が健康寿命の延伸に直結するといえる.また,脳卒中においては急性期医療の均てん化が重要であり,各地域の実情に応じて急性期脳卒中の医療提供体制を至適化することが喫緊の課題となっている.

 医療の質に対する関心は,世界的に急速に高まりつつある.従来の死亡率などのアウトカム指標(効果・成果指標)のみではなく,標準的医療の実施率(プロセス指標)や施設の必要設備,スタッフ数,診療を行う最低必要症例数などを定めたストラクチャー指標(施設要因)を合わせて医療の質の指標(quality indicator;QI)として扱うことが主流となっている.Evidence Practice Gap(良質なエビデンスに裏打ちされたアウトカム向上に繋がり得る診療行為と,実際の臨床で行われる診療行為とのギャップ)を評価することで,継続的に医療の質を高めることが重要とされている.この継続的な評価にはビックデータの利用が大きく関与している.まず,医療のIT化がわが国より早く進んだ米国での例を紹介する.

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はじめに

 急速に超高齢社会を迎えつつあるわが国では,脳卒中患者が増加している.脳卒中はわが国における死因の第3位であるとともに,要介護者の原因疾患の第2位となっている.その後遺症により患者の日常生活動作が制限されることで,生活の質(quality of life;QOL)が低下し,健康寿命を損なう原因となっていることから,脳卒中発症の予防と医療の充実が急務であると考えられる.現在,脳卒中診療の現場では,脳卒中治療ガイドラインを活用し,エビデンスに基づいた診療が行われているが,そのガイドラインの根拠となっているエビデンスの多くは海外の臨床研究の結果に基づいている.そのため,わが国においても多数の患者情報を集積した大規模臨床研究からの,日本人の日本人による日本人のためのエビデンスの確立が必要である.

 われわれは,共通の診断基準や治療方針のもとに専門医療を提供できる脳卒中専門医をそろえた福岡県の7施設による多施設共同脳卒中データベース〔福岡脳卒中データベース(Fukuoka Stroke Registry;FSR)〕を構築した.このデータベースを用いて,本邦における脳卒中患者の病態の解明とともに,治療成果の評価につながる研究を行い,わが国における脳卒中医療の基盤となるエビデンスを構築することを目的としている.本稿では,FSRについての概要とこれまでの成果の一部1-7)を紹介する.

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はじめに

 リハビリテーションのデータベースには,多施設データの利点,リハビリテーションの可視化と質の向上,臨床試験や診療報酬・介護報酬への貢献,臨床研究の活性化などさまざまな効果がある1).しかし,リハビリテーションのデータベースの現状は十分とはいえない.本稿では,日本リハビリテーション・データベースの概要,登録データ数,活用,今後の展開などについて概説する.また,回復期リハビリテーション病棟協会のデータベースについても述べる.

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はじめに

 近年わが国では,診療データのデータベース化が急速に進んでおり,さまざまな種類のデータベースが存在する.そのなかで,診療報酬請求データを二次利用して作成されているのが,National Data BaseとDPCデータベースである.前者は,全レセプトデータを,後者はDPC制度参加病院の全DPCデータを集積しているもので,どちらもわが国有数の大規模診療情報データベースである.これらは,疾患を問わず診療を受けた全患者に関する情報を含んでいるという点で,がん登録や脳卒中データバンクのような疾患レジストリとは異なる.また,診療報酬を請求するために作成されたデータであることから,診療行為に関する情報は入院・外来ともにすべて記録されるという強みがある.その一方で,疾患レジストリに比べると細かな臨床情報を含まないという弱みもある.

 本稿では,DPCデータに焦点を当て,前半ではDPCデータの概要を説明し,後半ではデータの活用事例を紹介する.

巻頭言

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 リハビリテーション科医の私にとって,近年嬉しいことがある.それは日本のリハビリテーションの診療現場や研究室からの論文の発信が増えていることだ.PubMedで,キーワードを「rehabilitation AND Japan[AD]」として検索してみるといい……ここ5年ほどの飛躍的増加がみてとれる.

 本誌読者の多くは,私と同じく,リハビリテーション医学にかかわる臨床家である.たとえ論文を書かなくても,食べるに困る訳ではない.ならばなぜ,論文を書くのか? 私の場合,芸術表現欲である.

入門講座 リハビリテーション医療のエビデンス—回復期リハビリテーション・2

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はじめに

 回復期リハビリテーション病棟は,脳血管疾患や大腿骨頸部骨折などの患者に対し,日常生活活動(activities of daily living;ADL)の向上による寝たきりの防止と家庭復帰を目的に,リハビリテーションを集中的に行うための病棟として2000年に制度化された.そして,その病床数は年々増加し続け1),現在は8万床を超えている2).本稿では,回復期リハビリテーション病棟の現状について概説する.

実践講座 義足歩行を見据えた下肢切断術・2

血管・神経・骨の処理 木下 篤
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はじめに

 先人たちの経験の積み重ねにより下肢切断術の手技は確立されているといってよい.最近は血行障害による切断がその多くを占めるようになったが,義足装着を前提として行う手術の原則は現在までほとんど変わっていない.一方で,リハビリテーションの現場ではこの原則に沿っていない切断例を目の前にし,リハビリテーション科医が躊躇させられることもまれではない(図1).本稿では下肢切断術における骨,神経,血管の処理の考え方と手技について述べる.

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要旨 【目的】片足カーフレイズ時の上肢支持量と足関節底屈角度の変化が下腿三頭筋活動へ及ぼす影響を測定し,効果的なトレーニング条件を検討する.【方法】健常成人男性10名を対象に腓腹筋(内側頭,外側頭),ヒラメ筋の筋電図を測定した.課題動作は上肢支持量3条件(0%支持,体重の10%支持,20%支持),足関節角度3条件(底屈15°,底屈30°,最大底屈45°)の組み合わせ計9条件で片足カーフレイズを行った.【結果】3筋ともに上肢支持量減少,足関節角度増加で筋活動増加が示された.「0%支持」と「最大底屈45°」の組み合わせで,3筋ともに筋力向上に効果的とされる最大随意性収縮の約60%以上の筋活動が得られた.腓腹筋内側頭,ヒラメ筋では条件の一方が「1指支持」あるいは「最大底屈45°」であれば,最大随意性収縮の40%以上の筋活動が得られた.【結語】上肢支持量と足関節角度の組み合わせにより,対象者に適したトレーニング条件を選択できることが示唆された.

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要旨 【背景】日本版ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(日本版A-ONE)の内的妥当性を検討した.日本版A-ONEは,日常生活活動(activities of daily living;ADL)観察を通して,神経行動学的障害を同定する評価法である.【対象と方法】対象は,脳卒中の診断のある65例であった.全65例の22 ADL項目に対してRasch分析を行った.次に属性による特徴を明らかにするために右半球障害30例と左半球障害35例に分けて同様に分析した.【結果】全65例の分析では,「理解」,「表出」,「箸の使用」,「浴槽移乗」,「洗顔と手洗い」の5項目が不適合項目となった.右半球障害の分析では,「理解」,「浴槽移乗」の2つが,左半球障害の分析では,「理解」,「表出」,「箸の使用」,「洗顔と手洗い」の4つが不適合項目となった.【結語】全65例で不適合項目となった5つを除く17項目で内的妥当性が認められた.不適合項目になった理由として,特定の障害の有無で能力が決定する項目があったことが考えられた.今後は,対象者数を増やして検討する.

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はじめに

 筆者らが属する平成医療福祉グループ(以下,当グループ)は,リハビリテーションの原点は歩行自立よりも,まずは「口から食べて,トイレに行って排泄する」といった人間としての尊厳を優先的に改善させることを重要視している1).現在われわれは,系統的な膀胱直腸障害タイプ別訓練プログラム(以下,訓練プログラム)を作成し,重点的な膀胱直腸リハビリテーションを提供している.本稿では,訓練プログラムを作成および実践し,良好な結果を得たため報告する.

連載 補装具支給・判定Q & A・第8回

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A 2018年4月から改正障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)が施行され,補装具費支給制度における従来の補装具の「購入」,「修理」に加え,利用者にとって新たな選択肢として「借受け」が追加となりました.厚生労働省令で「借受けによることが適当である場合」が規定され,障害児を対象に座位保持装置構造フレーム,歩行器,座位保持椅子(車載用カーシートを含む),障害児・者を対象に重度障害者用意思伝達装置(本体)と義肢,装具,座位保持装置の完成用部品が借受けできることになりました.

連載 リハビリテーション医療に必要な薬物治療・第2回

脳卒中後うつ 岡田 和悟 , 山口 修平
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 脳卒中患者に対するリハビリテーションは,明確な目標設定やアウトカム評価が求められる時代となり,リハビリテーションの進展を阻害する因子への対策が必要であり,うつ状態をはじめとする患者の情動・意欲に配慮し,それに介入することは,リハビリテーションを円滑に進めるうえで重要なポイントである.

 脳卒中患者の33%にうつ状態の併発がみられ,予測因子として,身体的障害,脳卒中の重症度,うつ病の既往および認知機能障害が挙げられる.うつ状態があると日常生活動作(activities of daily living;ADL),認知機能,健康関連の生活の質(quality of life;QOL)の低下がみられ,社会参加の阻害因子としても重要である.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 昭和24年から29年にかけて発表された川端康成の『山の音』(新潮社)には,信吾という62歳の初老の男性が自らの記憶障害に悩む場面があって,物語の冒頭では,信吾と息子・修一の間で,次のような会話が交わされる.「このあいだ帰った女中,なんと言ったっけな」,「加代ですか」,「ああ,加代だ.いつ帰ったっけ?」,「先週の木曜ですから,5日前ですね」,「5日前か.5日前に暇を取った女中の,顔も服装もよく覚えてないんだ.あきれたねえ」.

 信吾は,半年間家にいた女中の顔も名前も服装も思い出せないほど,記憶障害が進んでおり,しかもそのことを自覚して,「軽い恐怖」を覚えているのである.

Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション

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 筆者は,発達障害や精神的な困難を抱える青年・子供への教育的支援の現役プレイヤーである.支援において構築すべき課題は,周囲の適切な理解と対応,本人の工夫と努力である.すなわち,理解・対応・工夫・努力によって生きづらさが軽減されるという観点から,対話(聴き取り)と必要な支えを入れるという実践に取り組んできた.ただし,筆者が一定の熱量をもって対応したとしても思うほどに好転しない,すなわち人的・物的条件を整え,対話を重ねても,筆者の実感からすると「自滅」としか言いようがない道にはまり込んでしまう場合があり,新たな支援方略や本人の自己内闘争が課題となる.

 「生きてるだけで,愛。」(脚本・監督/関根光才)における板垣寧子(趣里)は,鬱で過眠症である.支援しようとしている周囲の側の視点に立つなら自滅型だが,本人の視点に立つなら周囲の自分への理解が不足しているということになる.

私の3冊

私の3冊 岡本 隆嗣

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1.「みんなのボッチャ」—福祉施設によるリハビリテーションスポーツ普及活動

 川崎市社会福祉事業団れいんぼう川崎

  長澤充城子

 れいんぼう川崎(以下,当施設)では,リハビリテーション理念を地域に普及するツールとして,パラリンピック競技である「ボッチャ」を障害の種類や有無,年齢を問わずに誰でもプレーできる簡単なルールに変更し,2017年からユニバーサルスポーツ「みんなのボッチャ」として地域に広めている.普及方法はリーフレットの作成と配布,市イベントでの体験コーナー開催,出前体験会等である.その成果は個々の身体・精神機能の向上だけでなく,当施設入所者が体験会で講師を務めるなど役割をもって地域の活動に参加する機会となった.また,団地自治会が体験会を開催する支援を行ったことで,その地域在住の障害をもつ人が住民として参加し交流する機会となり,ノーマライゼーションを推し進めることができた.まさに地域リハビリテーションの実践といえる.

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 このたび,音声障害の研究と臨床の基礎を築かれてきた廣瀬肇先生が『音声障害治療学』を上梓された.廣瀬先生は,音声治療を担当する言語聴覚士の育成にも長年力を尽くされてきた.本書においても,言語聴覚士として音声障害の治療・研究に長年取り組んでこられた城本修先生,生井友紀子先生が音声治療(行動学的治療)の理論と臨床について担当している.本書出版の意図が言語聴覚士の音声治療の普及とその技術向上にあることがうかがえる.

 本書の特徴は音声障害の治療に力点を置いていることである.音声障害の治療は,医学的治療と音声治療の両者の特徴と適応をよく理解して行う必要がある.医学的治療に関しては,多くの教科書で詳しく述べられているが,音声治療について詳述した教科書は少ない.本書では,廣瀬先生が医学的基礎・治療,評価から治療までの流れを簡潔に記述され,城本,生井両先生が記述した音声治療(行動学的治療)について多くのページが割かれている.

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 「発売前重版出来!」景気のいいニュースがTwitterから飛び込んできた.版元の情報が即日読者に伝わってしまうのだからすごい時代である.本が売れなくなったと言われて久しい昨今,刊行前の本が重版されるというのは,どういうことか? まだ誰も読んでもいない本がバカ売れして初版印刷部数が足りなくなった,つまりは医学書院の市場調査が甘かったってコトだよね(笑),などといじわるな想像を膨らませていると,アッと気付いた.「世界に名高いスペシャリスト50名が執筆」.ああそうか,50名にそれぞれ弟子が100人ずついれば5,000部売れるもんな.だからか.

 私は誰の弟子でもなかったが,とりあえず書籍の予約は早めに済ませた.B5判型のしっかり重そうな本.5,000円というからもう少しペラッペラな本かと思った.ちょろっと試し読みしてみようかな…….

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 本書は,看護が栄養についてもっと責任を持つべきだという主張に貫かれている.読みやすく,サルコペニアと栄養管理を学ぶためには,看護師ばかりでなく,医師,歯科医師,リハビリテーション関連職種を含めた多職種にとっても極めて役立ち,優れた内容となっている.題はリハビリテーション栄養となっているが,一般栄養管理としてのポイントを学ぶこともできる.疾患ごとの実例も多数取り上げられていて,臨場感があるし,コラムもおもしろい.実際の臨床現場では,経験の浅い研修医や,栄養に関心の薄い医師が出す指示に栄養管理上の問題があるケースは相当数存在する.NSTの活躍している病院においてさえ例外ではない.これに対して看護が積極的に関与して,チームで医療を展開すべきであるという考えには心から賛同する.さらに踏み込んで,編者の一人である森みさ子さんが「サルコペニアという概念が広まり一般市民にも周知されるようになれば,医原性サルコペニアをつくった看護師が過失を問われる時代がくるであろう」(p.114)とまで述べている箇所には驚いた.看護師が果たす役割は,それほど大きいのである.

 近年,「リハビリテーション栄養」が注目を浴びている.評者は10年ほど前に「栄養を与えないでリハビリテーション訓練が行われている弊害」について日本リハビリテーション医学会の専門医会で若林秀隆先生の講演を聞いて感銘を受けた.それまでも栄養に関しては関心があり,大変重要であると認識してはいたが,日本の医療現場の実情は異なっている.実際,1日1,000kcalにも満たないエネルギー量で「るいそう」が進んだ状態で入院してくるリハビリテーション患者は当院でも少なくないし,油断するとそのまま低栄養が継続されてしまうケースさえある.栄養管理がなされない状態でのリハビリテーションは有害無益であり,罪悪でさえあると考えられる.栄養管理の必要性はいくら強調してもしすぎるということはない.

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 本書はまず「研究とは何か?」の概説から始まる.研究とは,何らかの新規性があり,今まで知られていなかったことを明らかにすること,新たな因果関係や分類を見出したり,当然と思われていた常識を覆すこととされている.研究を志す者は,研究と勉強の違いをよく理解しておかないと研究現場で仕事を続けることは到底困難との忠告ともいえるが,研究を続けることのやり甲斐と社会的価値とともに,それをなし得るための厳しさも伝えたいという,後進に対する思いやりとエールだと感じた.また研究という言葉はとても曖昧に利用されており,医療機関においても混乱の原因ともなっているが,研究の分類とともに,この書籍によりよく理解することができた.

 各章に掲載されているチェックリスト一覧は,研究の立案から遂行,データ収集から解析,そして論文化に至るまでの重要事項が,各ステップごとにくまなくリストアップされている.それぞれの段階で,特に初心者が陥りやすい事項も網羅されており,ここまで詳細に実践的な内容が教示されている指南書を拝読できたのは初めてで,20年にわたり60人余りもの大学院生を指導されてきた豊富な教育経験に基づいた,その教える手法に感服した.私自身,今後新たな研究を立ち上げるときは,本書の手順を踏みながら進めていきたいと思う.

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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 毎年,珍問(?)など何かと話題を提供してくれるセンター試験.今年の話題は「英語のリスニング問題」だそうで,検索してみたところ……!……笑ってしまいました.

 さて,センター試験も終わり,いよいよ試験シーズンに突入です.医師国家試験,理学療法士国家試験,作業療法士国家試験,言語聴覚士国家試験,看護師国家試験などなど…….2月は資格試験が目白押しです.

基本情報

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総合リハビリテーション
47巻2号 (2019年2月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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