総合リハビリテーション 47巻1号 (2019年1月)

特集 病院横断的活動とリハビリテーション

今月のハイライト
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 医療機関におけるリハビリテーション職種の役割は,単に,個々の患者に理学療法,作業療法,言語聴覚療法,摂食機能療法などを提供するだけではありません.病院横断的な多職種連携チームに参画し,病院の診療の質の向上に寄与することが期待されています.病院横断的活動には診療報酬収載の始まったものもあります.本特集では,さまざまな病院横断的チームの一員として先駆的に活動されている方々に,その実践のポイント,今後の展望をご執筆いただきました.

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はじめに

 2018年理学療法士の国家資格取得者の累計数(1966年度以降)は161,476人1)となり,作業療法士・言語聴覚士と合わせて282,902人となった1〜4).言語聴覚士の第1回国家試験が行われた1999年の時点で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士合わせて40,503人であったから,20回行われた国家試験の結果,約7倍という驚異的なスピードで増えたことになる(図).日本理学療法士協会員の場合,医療施設に就職しているのは約67%1)であるから,医療以外の現場で活躍する理学療法士も増えており,その職域は広がっている.医療施設も急性期病院,回復期病院,療養型病院など,細分化してきた.超高齢社会に対応するために急性期病院では在院日数の減少を求められており,リハビリテーション職種の役割も変遷してきている.横断的活動の広がりがまさにその具体例であり,リハビリテーション職種はその働き方において柔軟な対応が求められる.

 2006年度の診療報酬改定で「疾患別リハビリテーション」が登場して12年,新たな潮流である病院横断的活動を見直して理想的なリハビリテーション診療を模索する時期がやってきている.本稿では急性期病院における病棟専従的な,あるいは病院横断的なリハビリテーション職種の参画が評価されるようになった流れについて触れつつ,その実際に展望と課題を加えて解説する.

呼吸ケアチーム 鵜澤 吉宏
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呼吸ケアチームの概要

 呼吸ケアチームは平成22年(2010年)度の診療報酬改定により生まれた.当時重点課題であった急性期入院医療の評価と勤務医負担軽減という点から,急性期入院医療において手厚い人員体制を確保し,多職種が連携してより質の高い医療を提供することで,病院勤務医の負担軽減にも寄与することを目的とした取り組み1)の一つとして,呼吸ケアチーム加算が新設されたことが背景にある.なお同時期に同様の目的で新設されたものに栄養サポートチーム加算がある1)

 呼吸ケアチームは医師,看護師,臨床工学技士,理学療法士などからなるチームであり,人工呼吸器の離脱に向け,適切な呼吸器設定やリハビリテーションなどを総合的に行うことが期待される.現在の診療報酬の規定では,呼吸ケアチーム加算の算定対象は,48時間以上継続して人工呼吸器を装着している患者で,人工呼吸器を装着している状態で当該病棟に入院した日から1か月以内の患者,または当該病棟に入院した後人工呼吸器を装着し,装着日から1か月以内の患者であることとされる.この加算の算定は呼吸ケアチームによる診療が行われた場合,週1回に限り150点を算定できる2)

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はじめに

 日本の高齢化率は27.7%とされ「超高齢化社会」となっている1).それに伴い,7対1入院基本料算定病院の入院患者の平均年齢は65歳を超え2),急性期病院の高齢患者が増加している.

 高齢者が入院すると,疾病と加齢による身体機能や精神機能の低下などの内的要因に,住み慣れた生活場所から突然入院するという外的要因の変化が加わり,転倒しやすくなる.すなわち,転倒リスクの高い患者が急性期病院で増加している.

 入院中の転倒事故は,厚生労働省によると医療事故報告中21.7%を占め3),骨折などの重傷例では,本来の疾病治療に影響を与え,入院期間の延長が余儀なくされる.また,高齢者の転倒は,その後の日常生活動作(activities of daily living;ADL)や生命予後に影響を与えることがわかっており,急性期病院での転倒予防は非常に重要である.

褥瘡対策チーム 前澤 史織
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はじめに

 2002年度に褥瘡対策未実施減算が診療報酬に盛り込まれ,2012年度には入院基本料への褥瘡患者管理加算の包括化がなされた.褥瘡対策が入院基本料に組み込まれ,対策を実施できなければ入院基本料自体が算定できなくなったため褥瘡対策チームはすべての病院で整備すべき項目となった.質の高い褥瘡対策のためには多職種によるチームアプローチが重要である.そのなかで理学療法士,作業療法士は姿勢筋緊張や運動連鎖を考慮し適切なポジショニングを提供できる職種である.しかし理学療法士,作業療法士がそれらを提供できる時間はわずかであり主に看護師・介護士がかかわっている.多忙な業務中の体位変換やポジショニングは施行者の関心が低ければ患者の個別性を軽視しルーティン化されがちであり,不適切な体位変換は創にずれ力を与え褥瘡の治癒を遷延させる.主にかかわる看護師・介護士のスキルアップを図ることは褥瘡予防・治療につながり,より質の高い褥瘡対策を提供できる.しかし生体力学的視点をふまえた体位変換を日々多忙な他職種のスタッフへ伝達することは容易ではない.

 本稿では,赤穂市民病院(以下,当院)の褥瘡対策チームの活動,理学療法士の役割を概説し,活動の一部である院内講習会における過去3年間の試行錯誤を紹介する.

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はじめに

 脳卒中で摂食・嚥下障害のある患者はない患者に比し栄養障害の割合が2倍高い1).また,嚥下障害のある高齢者の55%は低栄養のリスクがある2).栄養と嚥下は密接なかかわりがあり,そのアプローチには多職種の連携がかかせない.また,栄養,摂食嚥下にかかわるチームアプローチは,その有用性に関して複数の報告がなされている.こうした活動には,多方面の領域の専門性が必要であり,必然的に多職種がかかわる病院横断的な活動となる.病院におけるリハビリテーション職種は,こうした病院横断的な活動に参画し医療の質の向上に寄与することが期待されている.本稿では,栄養および摂食嚥下に関するチームアプローチの構成,効果とスキルの習得法,筆者の所属する病院の現状および今後の展望について述べる.

認知症ケアチーム 井口 圭一
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はじめに

 「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)(厚生労働省,2015年)では,2025年には認知症有病者が約700万人となり,65歳以上の高齢者の約5人に1人に達するとされている.認知症有病率の増加に伴い,身体疾患に認知症の併存する患者が一般病院を受診する機会も増えると推測される.新オレンジプランの7つの柱の1つ,「2.認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」として,身体疾患に対応する一般病院の医療従事者の認知症対応力向上が強く求められている.診療科を超えた連携,多職種協働によるチーム医療の必要性が記され,加えて医療と介護との連携した支援が有用とされている.

 2016年度診療報酬改定では,新オレンジプランをふまえ,身体疾患を有する認知症患者への適切な医療への評価として認知症ケア加算が新設された(表).認知症患者の適切な受入れ,多職種で構成されたチームの介入,病棟における対応力とケアの質の向上が目的とされている.対象となるのは「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」におけるランクⅢ以上の入院患者である.

 健和会病院(以下,当院)では2016年5月に認知症ケア加算1を算定開始した.算定要件の1つとして認知症ケアに係るチーム(認知症ケアチーム)の設置があり,医師・看護師・社会福祉士とともに作業療法士が参加した.本稿では当院の認知症ケアチームにおける作業療法士の活動を事例を交えて紹介し,今後望まれるリハビリテーション職種の役割について述べる.

排尿ケアチーム 松永 明子
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はじめに

 2016年の診療報酬改定において排尿自立指導料が新設されて2年が経過し,早期に排尿ケアチームを編成した病院ではチーム活動も3年目となっている.当院では2016年6月より排尿自立指導料の算定を開始し,これまで延べ1,300件を算定してきた(2018年7月時点).その経験をふまえ,これまでのチーム活動を振り返り,排尿ケアチームの活動の概要やチームの一員としての理学療法士のあり方などについて述べたい.

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 新たなる元号に第一歩を記すこととなる第56回日本リハビリテーション医学会学術集会は,2019年6月12〜16日の会期で兵庫医科大学・道免和久教授のもと,ISPRM2019(2019年6月9日〜13日)と並列・連続開催にて神戸コンベンションセンターにおいて開催されます.‘Cutting-Edge Trends of Rehabilitation Medicine’(最先端リハビリテーション医学の今とこれから)というテーマは,リハビリテーション医療のアカデミズムを追求し,先端医療の推進を自身に課せられた義務と位置付けてこられた道免教授に相応しく,リハビリテーション技術の未来を拓く国際的な学術集会となることは間違いありません.

 道免教授は,慶應義塾大学在籍中に脳卒中片麻痺の機能評価法Stroke Impairment Assessment Setを開発し,また,Functional Independence Measureの日本への導入,普及に多大なる貢献をされました.随意運動制御とその障害に対する運動学習を主たる研究テーマとして,Constraint-induced movement therapyをはじめとするニューロ・リハビリテーション推進の立役者であり,まさに,日本のリハビリテーション医学を牽引してこられました.先端的リハビリテーション医療技術を学術的に体系化するだけでなく,それを実学として社会還元することを実践している真の‘Physiatrist’です.学術集会では,ロボット・リハビリテーションなどの最先端技術にさまざまな角度から光を当て,今後の展望と課題を私たちに指南いただけることと思います.

入門講座 リハビリテーション医療のエビデンス—回復期リハビリテーション・1【新連載】

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はじめに

 わが国のリハビリテーションの変遷を辿っていくと,その主な対象となった障害者が小児疾患から始まり,青年・成人を中心とした切断や脊髄損傷へ,その後は脳血管障害を中心とした高齢疾患へと,まるで人の一生をなぞるかのように重点を移してきた歴史がある.それらの時代の移り変わりは,1つの時代が終わって次の時代になるのではなく,以前の課題が解決しないうちに新しい時代の課題が加わり,新たな人々がそれに挑戦するという連続しているなかでの重点の移動であった1)

 本稿では,重点的に取り組むべき障害者の課題に対して,先人たちが真摯に取り組み,学問・技術を進歩させ,制度面の保障も整備しながら重層的に発展してきたわが国のリハビリテーションの100年間について解説したい.

実践講座 義足歩行を見据えた下肢切断術・1【新連載】

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はじめに

 下腿切断や大腿切断の術後に患者が義足を活用するためには,義足装着を考慮に入れた切断術が行われることが重要である.義足を成功させるための第一歩は外科医の手技にかかっている.本稿では下腿切断と大腿切断における,義足装着に適した切断部位や断端長,皮膚・筋肉の処理について述べる.

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要旨 【背景】立位での側方体重移動時の腹筋群の役割を解明するため,腹筋群の筋活動を検討した.【対象】健常男性26名(27.0±6.5歳)とした.【方法】立位にて両側の内腹斜筋単独部位,外腹斜筋単独部位,内外腹斜筋重層部位,腹直筋の筋電図を測定した.一側ずつ体重の60%荷重と95%荷重の筋電図を測定した.95%荷重は両側肩峰を結ぶ線を水平に,非移動側膝関節伸展,足関節底屈とした.立位が1の筋電図積分値相対値変化を検討した.【結果】両側内外腹斜筋重層部位と移動側内腹斜筋単独部位の筋電図積分値相対値が,60%荷重と比較して95%荷重にて増加した(p<0.05).【結語】95%荷重では,両側肩峰を水平に保つため非移動側内外腹斜筋重層部位が体幹非移動側側屈作用にて関与した.移動側内外腹斜筋重層部位は移動側側腹部が伸張する働きに対し関与した.移動側内腹斜筋単独部位は移動側仙腸関節に生じる剪断力を防ぐ作用にて関与した.

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はじめに

 ボツリヌス療法は,施術後に運動療法や物理療法を併用することにより,より有効性を高めることができる.なかでも運動療法としてのストレッチが特に重要であり,そのストレッチも長時間の持続伸張を行えば,さらに効果が上がる1-3)

 ただし,徒手訓練にてそれを行うには限界がある.それを可能にするのは,装具をおいてほかにないが,装具は作製に要する期間やコストに問題がある.

 そこで本稿では,外来の整形外科治療において頻用されている水硬性スプリント(オルソグラス®)を用いた,上肢を対象にした即席簡易肢位保持装具について紹介する.

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はじめに

 現在の診療報酬において,退院支援の1つとして退院前訪問指導がある.2018年の診療報酬では退院前訪問指導料は,入院期間が1月を超えると見込まれる患者の円滑な退院のため,患家を訪問し,当該患者またはその家族などに対して,退院後の在宅での療養上の指導を行った場合に,当該入院中1回(入院後早期に退院前訪問指導の必要があると認められる場合は,2回)に限り算定する1)と明記されており,580点の診療報酬が算定可能である.また,最近ではケアマネジャーなどの介護保険サービスにかかわる職員も同行し,意見交換を行う機会も増加している.

 退院前訪問指導の際,住環境の状況を記録するための用紙として家屋環境チェックリスト2)や住環境整備のための記録用紙3)などが存在し,活用されている.そのほかに住環境を記録することを目的にデジタルカメラを使用して写真撮影を行うことがあるが,訪問する職員の意向により撮影箇所が限られることや,経験が浅いと撮影に多くの時間を要することが課題として挙げられる.今回,Virtual Reality(VR)の活用として,退院前訪問指導の際に全天球カメラを使用した動画撮影を行い,主体会病院(以下,当院)の職員と動画の共有を行ったため,取り組みと共有結果について報告する.

連載 補装具支給・判定Q & A・第7回

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A 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)では,座位保持椅子,起立保持具,頭部保持具,排便補助具が障害児に限る補装具とされています.車載用の座位保持椅子も児童に限ります.

 今回は,障害児に限る補装具だけでなく,児童に対する補装具全般の考え方などについても解説したいと思います.

連載 リハビリテーション医療に必要な薬物治療・第1回【新連載】

脳梗塞再発予防 平野 照之
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 脳卒中は再発しやすい病気である.脳卒中全体で年間再発率は約5%,つまり1年間に20人に1人が再発し,10年間で約半数が再発したというデータもある1).一度,脳卒中を発症した患者は脳卒中を起こす生活習慣や基礎疾患を有しており,新たな脳卒中を起こす可能性が高いためである.近年,脳卒中の主因を占める脳梗塞に注目すると,臨床病型に応じて再発率は異なる.高齢者に多い心原性脳塞栓症の10年間の累積再発率は75%にも及ぶ.また,脳梗塞再発予防に用いる抗血栓薬の不適切使用により,脳出血を発症する例も増えている2)

 脳梗塞再発予防の二本柱は,危険因子の徹底管理と適切な抗血栓療法の実施に要約される(図).急性期病院では,診断機器を駆使し詳細な病態把握に基づき再発予防方針を決定している.リハビリテーション病院でも,この方針を引き継ぐことが原則である.本稿では,脳梗塞の臨床病型診断の基本を紹介したうえで,再発予防のための薬物療法を総括する.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 プラトン(前427〜前347)40歳代の作品とされる『パイドン』(松永雄二訳,『プラトン全集1』,岩波書店)には,裁判で死刑判決を受けたソクラテスが,その後意外にも獄中で詩作を始めたことに関する会話が記されている.

 『パイドン』の4章には,獄中のソクラテスをケべスという男が訪ねて,ソクラテスが最近,イソップ物語を詩の形に直したり,アポロン神への讃歌を作った理由を聞きたいと言い出す場面がある.ケべスは一昨日,エウエノスという詩人から,ソクラテスは以前は詩作などしなかったのに,ここに来て詩を作るようになったのは何を思ってのことかと,尋ねられたというのである.

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 「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(監督/湯浅弘章)が描いたのは,重い吃音障害を抱える女子高校生・大島志乃(南沙良)の入学から学校祭までの半年間の軌跡と到達点.

 志乃が特に苦手とするのが母音.最初の自己紹介で,「大島」の「オ」を発することは最難関の課題だ.立ち往生しながらも「ス,スミマセン」は辛うじて出てくる.ここは,頭の言葉を変えるしか術はない.苦し紛れに「シノ…オオシマ」と発すると,本作において3番手の役回りを担うクラスメイトの菊地強から「外国人かよ」とからかわれる.菊地の志乃への侵襲はその後も続き,「大島さん,名前言って」と無理難題をぶつけながら,「オ,オ,オ,…」と吃音の口マネをする.菊地もまた過去にいじめにあっており,人気キャラになるべくもがいている.とはいえ,もがけばもがくほどクラス内で孤立を深める.自身の行動の振り返りと組み立てにおいて他者の視点が欠けているのだ.吃音障害者は時に菊地のような人物からの<ちょっかい>にも晒される.

私の3冊

私の3冊 小川 彰

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 医師の日常は,臨床カンファレンスから学会発表,研究成果発表会など,プレゼンの機会に事欠きません.若手の医師にとっては,初の全国学会での口演発表,中堅医師では,シンポジウムの発表,共催セミナーでの口演が当たると,大変うれしいものです.また公的研究費の獲得や公的なポストへの昇進など,プロフェッショナルとしてのキャリアをアップする上でも,プレゼンの重要性に異を唱える人はいないと思います.しかし,いかに仕事の内容が素晴らしくても,聴衆に効果的に伝える努力を私たちは十分しているでしょうか? 今から思いますと,私も若いころ,かなり独り善がりなプレゼンをしていたように思います.

 このたび医学書院から,医療者向けに『脱・しくじりプレゼン』が刊行されました.編著者は,名著『パーフェクトプレゼンテーション』(生産性出版,1995年)で有名な八幡紕芦史氏です.私自身,プレゼンの基本を八幡氏から学んだ一人です.本書は,多忙な臨床医や研究者向けに,プレゼンの極意を,マンガと丁寧なレクチャーでビジュアル中心に解説しています.効果的なプレゼンには,事前の情報収集と分析がまず必要なこと,聞き手に当事者意識を持たせることを示して,さまざまな場面での失敗の要因を分析しています.デリバリーとは,まさに伝えるテクニックです.内容を聴衆に理解してもらい,さらに信頼してもらえるかは,このデリバリーの技術にかかっています.また,研究費の獲得や公的なポストへの昇進でのプレゼンでは,プレゼン後の質疑応答が,より大切になってきます.この質疑応答の成否は,深い意味では,プレゼンした内容が,いかにあなたの実体験に基づいているかにかかっています.本当に身についた知識や内容であれば,聴衆は本当に理解して,共感してくれると思いますが,プレゼンの目的や聴衆はさまざまだと思います.

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 ナチス政権の時代にドイツでは「遺伝疾患をもつ子孫を予防するための法律」のもとで36万人の人間が強制断種された.手術の侵襲によって死亡したものも多い.ドイツの占領地域では,精神的,身体的疾患をもった25万人以上の人々が「安楽死政策(T4計画)」を適用されて殺された.精神科医をはじめ医者たちは,この政策に本質的に荷担し,自分たちに向けられていた信頼を裏切った.自分たちを信頼した人間の幸福よりも,他の価値を優先したのだ.精神科の専門学会はこの出来事に対して長くあいまいな態度をとりつづけた1)

 「私が最初に抱いた,『なぜこんなことが』の大部分は,まだまだ闇の中です.社会の闇と心の闇が重なりながら,人類社会の前に横たわったままです.明確な答えがでるかどうかは別として,この闇に光を当て続けることが大事です.それがいまを生きる私たちの責務であり,何よりもおびただしい数の犠牲者に対する誠実な向き合い方かと思います.」著者はドイツから遠く離れた日本にあって,このような疑問をもって資料に取り組み,そして協力者とともに現地を訪れ,関係者と直接会って討論し,その結果がこの一冊となった.事件からすでに80年が経っていたが,それがなおもアクチュアルな問題であることを,自らの経験として,身をもって体験してきた.

お知らせ

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目次

文献抄録

次号予告

編集後記
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昨年の5月1日から「平成最後の〇月〇日」がはじまり,とりあえず「平成最後の……」とつけてスペシャル感を出しておこうといった風潮が見受けられます.昭和に青春を過ごした立場からすると「平成最後……」と言われてもいまひとつ気分的に盛り上がりに欠けるのですが,確かに「昭和最後の日」は突然やってきたわけで,「昭和最後の夏」も「昭和最後のクリスマス」も,「昭和最後の朝ごはん」も,「あれが昭和最後の○○だったのか」と後からしんみりと振り返るものでした.せっかくあらかじめ「平成最後」とわかっているんだから,この際盛り上がっておこう! 思い出に残るものにしよう! という気持ちはよくわかります.というわけで「平成最後の今年の漢字」は平成の“平”と勝手に予想していましたが,「災」が選出された模様です.納得ですが,明るい漢字じゃなかったのが残念です.新元号には大いに期待したいところです.

 さて,「平成最後のお正月」ですが,今年もかわらず,読者の皆様に役立つ誌面作りを目指す所存です.2019年もよろしくお願い申し上げます.

基本情報

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総合リハビリテーション
47巻1号 (2019年1月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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